第178話 ハイエルフ最強説
1月7日のクラン立ち上げで新年のお休みは終わった。
翌日から読み書き教室やら、お昼の30分は海商国行って打ち合わせ。日曜日と雨の日は神聖国行って布教と色々忙しい。そんな日々も時間を見繕って俺はソロでダンジョンに潜る。
演習場関係の諸々があって32Fで止まっていたダンジョンでの鍛錬を再開させていた。
・・・・
そんな中の1月16日。
ミランダとハーヴェスおまけのリンダスに行って10日。
毎日お昼に30分顔を出す海神商会に行くと商業国家連合への働き掛けの用意が出来たと言われた。
バーツ会長が商業国家連合の草案と現状の情勢についてのレポートを持って商国有数のワールス共和国へ跳んだ。
朝の9時に跳んだら夜の19時だった(笑)
皆が面食らう。視たら海ボケ(時差ぼけじゃない)と言われている現象だった。(船だと何か月も掛けて到着する。時間のズレが分かってない:何か月の航海で体内時間が狂うので海ボケと言われている)
時差10時間は分かったので明日の9時に伺うと守衛に伝えて、17時に食事を取ってから皆で寝て、夜の23時に跳ぶ予定だ。
14時から17時まで今晩訪れるワールス共和国のレクチャーを受ける。
ワールス共和国は商業主義を掲げる共和制の元首を置く国。
※商業主義とは元来人は物々交換する事によって生活の全てを賄ってきた原理(根本)主義的思想で人間は一人では生きられないという思想。要すれば皆で生きて行こうという和合一致(共和)の思想である。
サント海商国と同じく貴族などの特権階級はいない。商人ギルド階位上位の商人による完全実力主義の投票制で国首(元首)の会頭が決まる国だ。言語は北の中央大陸語と変わらないが、所々はなまりと一緒で聞き辛い事も有ると言う。
言語。
元々海の民が陸沿いの海路を伝って交易していた時代に海の民の言語が赤道を中心に使われ出して世界中に伝播した。その言葉を話せると海の民の持つ他国の珍しい交易品の取引が出来るから支配者層を中心に広まった。
陸路と違って山の難所も盗賊も隠れる事が出来ない海の上。馬車と違ってその何百倍も積める船による交易は強みだった。各国の支配者層は海の民の言葉を秘匿したほどだ。時代が過ぎると各国の支配者層はローカルな現地語では無く海の民の言語が他国でも通じる事に気が付き、色々な大陸の標準言語に置き換わっていった。
海に面する国は大体中央大陸語が支配階級に通じる共通語。ハムナイ国の様に王の専制政治国家(基本王や領地を治める貴族が法だ)で支配階級と部族集合体の様な形式では現地人の言葉が国内の言語となる。今回の植民地になるような国も支配階級のみは中央大陸語を話せる。
アルのいる、北の中央大陸でも先進と後進の国は当然あるが聖教国が関与して教会を置くような国は基本、全ての国民が中央大陸言語が標準になっている。
1月17日。
9時。ワールス共和国会頭(国首)の屋敷前に現れた。
俺は貴族服で仲間と4人。バーツさんは執事付きで首脳会談だ。この星の裏側だ、居なかったら予定を聞いて出直すだけだ。
立派な邸宅に二人が吸い込まれるのを見てから4人でワールスの街を見て歩く。常夏みたいで皆がバラライカや外套を脱いで腕輪に入れ長袖の服一枚だ(笑) サントの位置から見て、星の裏側のハーヴェスもリンダウも行ったが物見遊山で行った訳じゃないので興味深々。常夏の南国、街並みも石畳も窓枠さえも何もかもが珍しい。
楽市楽座みたいに大通りの両脇に露店が並ぶ。気候のせいなのか明るく陽気な街並みと露店の喧騒が心地良い。
猫の額の様なスペースで色々な物を売っている。交差点の端でカルテットが陽気な音楽を演奏している。気分良く歩きながら、いつもの通り強奪系のアイテムを検索してから、マジックアイテムを色々検索して行く。
そんな中、露店では無く魔道具の店をアイテム検索で当ててしまった。凄いのあったんだよ。真っ直ぐその店にGPS検索で向かって行く。
迷いなく真っ直ぐ向かった店の重厚なドアを押してカランカラーンと呼鈴が鳴る魔法ランプの灯る店内に入った。店主が俺をじっと見た。鑑定持ちだった。俺の獲物は鉄の片手剣だけだが唯一左手に
俺の指輪を一瞬で見破った(笑)
店主を真っ直ぐに見て正直に言った。
「この指輪ぐらいの無いです?」
浅黒い肌に黒髪短髪の精悍な店主はニヤリとして言った。
「子供のくせに見破るとは大した魔術士だ(笑)」
「ずばりこのクラスは幾らです?」
「白金貨2枚だな」
視るとコルアーノ大金貨換算24枚(4800万円)
「なるほど!」まぁ妥当だろうな。
「瞬足なら3枚だな」わーい。
「あるんです?」
「坊主こそあるのかよ(笑)」
「この国のお金は無いのですがと魔石を出した」
「どれぐらいあるんだ?」
「山の様に(笑)」
「上がって来な。後ろの姉ちゃんは護衛かい?」
「そうです」
「お店の2階に上げて貰うと商談部屋だ」
キョロキョロ見てたら笑われた。
「お前さんみたいな小さいのは初めてだ、俺の鑑定で何も見えない奴もな、どこの魔術士だい?(笑)」
「あ!見えなかったです?」わーい!
「(笑)」
「サント海商国から来ました」
「は?」
「国主の議長を連れて、今ワールスの会頭と会談中です」
「すごい会談だな(笑)」
「すごい会談ですよ(笑)」
「ちょっと待ってくれよ」
お茶を用意してくれたら横の部屋に入って行った。
「スッとするお茶だねぇ」
「ペパーミントティーって言うみたい」
「売ってるかな?」
「あるんじゃないのかな」
隣りの部屋から戻って来て箱を出してきた。
「物はこれだ」
「瞬足の指輪?」
「そうだ」
「こういうのも有りますが」マジックバッグを出す。
「お!ダンジョン産かい?」鑑定持ちは話が早い。
「そうです、それを偽装するように作り直してます」
「いいねぇ、玄人好みじゃねぇか」
「とりあえず瞬足の指輪を頂きます」
魔石どこに入れましょうか(笑)
「今持ってるのか!本当かよ?(笑)」
「取り合えず出しときますね」
ドンゴロスに入れて3杯出した。米袋30kgサイズより一回り以上まだ大きい。
「もっと要ります?」
値段は知らんと言うか、追いかけるの面倒で視ない。
「あと1袋欲しいな」
一瞬で値踏みかよ!特化してんのか!
「はい」1袋多めに追加した。
「太い客が来たなぁ」多めも分かってる(笑)
この感じなら魔石1kg当たり金貨1枚(50万)か。
あ!大きさとか粒ぞろいとか有るな、やっぱ面倒臭い。
まぁ目安にはなったな。
「そんじゃ、これ頂きます」
指に嵌めると敏捷+15
「指輪じゃ最高クラスなんです?」
「俺もそれ以上は見たこと無いな。高くてなかなか売れないからやっと白金貨1枚の儲けだよ(笑)」
「人を見て売ってる癖に!(笑)」
「坊主!こりゃ参ったな!(笑)」
「私は死病に取りつかれて奇跡的に治ったんです。これでも13歳なんですよ。身体がその死病の分成長してないんです。だから基礎数値が上がる物が欲しくて」
「そうか・・・有るにはあるが」
「あるんです?」
「ショボイんだよ(笑)」
「分かります分かります!(笑)」
「でも、珍しいから取ってある」
「え?」
「もしかして幸運ですか?」
「そうだ!」
「・・・」
「お見せします。鑑定出来なかったステータス」
「え!」
アルベルト・ロスレーン 13歳 男
ロスレーン伯爵家 三男 健康
職業 聖騎士(10UP、幸運+2)
剛力の指輪(+15)瞬足の指輪(+15)
体力:77(87) 魔力:-(-) 力:55(80) 器用:391(401) 生命:58(68) 敏捷:53(78) 知力:686(696) 精神:720(730) 魅力:84 幸運:87 (89)
(表①:聖騎士。体力+10、力+10、生命+10、敏捷+10、精神+10、幸運+2)
(裏②:神の使徒:勝手に作った偽ジョブ。数値の向上無し)
(裏③:魔術士。魔力+10、精神、知力+10)
(裏④:治癒士。魔力、精神、知力)
(裏⑤:斥候。知力、器用+10、敏捷、幸運)
※基礎数値は重複しないが、関連恩寵効果はUPする。
この人の鑑定Lvはここまでしか見えない。
「アルベルトって言うのか?騎士じゃねぇか!」
「アルと呼んで下さい。冒険者5位です」
「本当に13歳なんだな、まったくそう見えねぇ。魔術士と思ったら騎士で、しかも冒険者5位ってなんだ!(笑) 俺はベガだ。え?魔力がねぇぞ」ステータスボードを見ながらまくし立てる。
「この魔力数値は鑑定できるのです?」
「鑑定してもそのままだな(笑)」
「しょうがないです。ボードがそうなんだもん(笑)」
「たぶん死病で壊れちまってるな。笑えねえよ」
「この幸運見て下さい。+1あれば90なんです」
「おぅ、そうだな(笑)」
「坊主に一番ピッタリかもしんねぇな(笑)」
「やったー!」
「おめでとう!坊主のもんだ。金貨1枚でいいよ」
※コルアーノ換算小金貨3枚(60万円)
「え?」
「そっか、金貨ねえなぁ。もうやるよ!」
「えー!」さっきの多めの魔石分か!(笑)
「そんじゃ、そのマジックバッグ預けときます」
「わはは!」俺が読んだの分かってるよ(笑)
「それでは指輪頂きますね」
子指に嵌めたら幸運+3だった。
「え!」
アルベルト・ロスレーン 13歳 男
ロスレーン伯爵家 三男 健康
職業 聖騎士(10UP、幸運+2)
剛力の指輪(+15)瞬足の指輪(+15)幸運の指輪(+3)
体力:77(87) 魔力:-(-) 力:55(80) 器用:391(401) 生命:58(68) 敏捷:53(78) 知力:686(696) 精神:720(730) 魅力:84 幸運:87 (92)
現在選択>(表①:聖騎士。体力+10、力+10、生命+10、敏捷+10、精神+10、幸運+2)
(裏②:神の使徒:勝手に作った偽ジョブ。数値向上無し)
(裏③:魔術士。魔力+10、精神、知力+10)
(裏④:治癒士。魔力、精神、知力)
(裏⑤:斥候。知力、器用+10、敏捷、幸運)
「だれも+1なんて言ってねぇよ(笑)」
「ショボイしか言って無いでしたね(笑)」
「豪運の指輪+15有りそうですよね?」
「ありそうだな(笑)」
「そんでな、アル坊主」
アル坊主に進化した。
「後ろの姉ちゃんたちエルフだよな?」
「エルフの姉妹です」
「弓の腕はどうだ?」
「二人共Lv10です」
「は。なに?」
「弓術Lv10です」
「ちょっと待ってろ!」大慌てで横の部屋に行った。
「なんか弓の凄いの出て来そうだねぇ」
「弓の良いのならクルムさんに買ってあげるね」
「えー!アルムは?」
「あんた後ろに居ないでしょうが!」
「アルムも弓上手いのにー!」
「弓以前にさぁ、前衛で弓撃ちたいの?」
「・・・うーん」
「ホラ!前衛で弓なんて撃てないじゃん(笑)」
「何
「ほらー!はい決定!良いのだったらクルムさんね」
「待たせたな。これだ」
飴色の弓が出てきた。視たらマジックアイテムだ。
「撃つとこありますか?」
「裏にある」
「取り合えずこれで」机のマジックバッグを渡す。
「認証前です。売るなら魔力を通さない様に」
「いいのか?」
「良い物出してくれましたからね(笑)」
「クルムさん普通の矢で撃って。精霊魔法の火で」
マジックバッグから矢を取り出して撃つ。
火の矢が突き刺さり的が
「次の矢は氷で」
氷の矢が突き刺さり的が氷に閉ざされる。
「次は矢を無しで火の精霊魔法を込めて弾く」
火の矢が生成、的に当たって火を爆裂させる。
「次は氷の精霊魔法で」
氷の矢が生成。的に当たると爆裂して周りが凍る。
「初めて見せてもらった!その弓は凄いな」
「精霊魔法使いしか使えません」
「あぁ、普通の弓だったよ。鑑定でマジックアイテム:エルフィンボウって出るんだ(笑)」
「はい!」
「また遊びに来て良いですか?」
「おぉ、物の解る客は大歓迎だよ」
「良いもの有ったらお願いします」
もう一個マジックバッグを渡す。
「おい!」
「次のアイテムの対価で置いて行きます」
「おいおい!」
「ベガさんが一つ使っちゃってください」
「(笑)」
「マジックバッグは認証してないとその袋の大きさですが認証したら1.8m×1.8m位の口になりますから冒険者の装備の大体の物が入りますからね、是非使ってみて下さい」
「そこまで大きい物が入ると思えないな(笑)」
「袋の口に騙されますよね(笑)」
「そのどちらか好みのバッグを使えばマジックアイテムも部屋に隠さなくても良くなりますし安心ですよ」
「両方とも6㎥と出るがダンジョン産はこんなもんなのか?」
「大体2㎥、4㎥、6㎥ですね」
「デカいの2つ出したのかよ!(笑)」
「はい、気持ちですね(笑)これが4㎥のやつですね」
脇の下の奴をチロッと見せる。皆の腕輪は袖で見えていない。
「なるほどなぁ。そっちは出ねぇが、これは認証前って出る。俺も初めて見たぜ」
一瞬で見抜く。鑑定持ちは話が早い!(笑)
「やっぱり見ないです?」
「出てもギルド預かりで王族かオークションだからな」
「そんじゃ前金で充分ですね(笑)」
「充分だよ、こんなの2つ持って俺が危ないよ(笑)」
「だいぶやるんでしょ?」
「坊主の4人組には勝てねえよ(笑)」
「何か仕入れて来たら、またマジックバッグ出しますから使っちゃってください。便利ですからね」
「ありがとうよ!」
「こちらこそ!さすがワールスのお店です、なかなかこんな凄いアイテム置いてる店はありませんよ。初めて見ました(笑)」
「まぁな!へへっ(笑)」
手を振って店を出てきた。1時間も色々な話をしていた。ゴールドランク2位の深層に潜れる冒険者。
真贋のベガ。二つ名持ち。
同じ深層の冒険者が持ち帰った貴重なマジックアイテムを有効に使える冒険者に渡るようにしていた。その心は生まれついて授かった鑑定を裏切らぬよう感謝して。
アルは驚くと共にベガを一瞬で好きになってしまった。
視たっていいんだよ。俺も見せたんだから(笑)
「アルムさんとシズクには何も無かったから、さっきの道の露店で串焼きでも食べようか?」
「賛成ー!」
「あれキジだな。あっちリザード・・・肉大きいねぇ」
「僕キジにしとく。昼前だし(笑)」
「そんじゃアルムも」
「みんなそれでいい?」頷く。返事しろ!
ベガも驚いていた。
持ち物では無い。アルの器用と知力と精神の値だ。どれほどその数値が魔法に乗るのかベガは知っている。
あそこまで高い精神とは・・・。
「ボード壊れる程も死病と戦って生き残ったんだなぁ」
つぶやいた。
少し勘違い。
・・・・
11時半になったので共和国の会頭の屋敷にバーツさんを迎えに行く。と執事さんとメイドさんが門で待っていた。
「会頭のランジェロ様がお食事をご一緒にと」
「4人一緒で構いませんか?」
「その様に仰せ付かっております」
「分かりました」
「会談が終わるまでこちらでお待ちください、皆様のお食事と共にご案内致します」
と応接に通されて接待を受けた。
「お昼呼んでくれたなら上手く行ったみたいだね」
「うん、戦争はみんな嫌だよね!」
「あんなの知ってる戦争じゃないわよ(笑)」
「あんな大きな船に大砲とか初めて見たし(笑)」
「みんなが魔法使えないから、ああなるんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ(笑)」
「エルフは精霊魔法使うから分かんないよ(笑)」
「???」
「言ってたじゃん、エルフの森に手を出した人間はただでは済まないって(笑) だからあんな大砲作って勝とうとするんだよ(笑)」
「あー!」あー!て分かってんのかな?
喋ってたらノックと共にバーツ会長が顔を見せる。
「御子様!」
「会長、同盟は上手く
「
「こちらワールス共和国の国首。ランジェロ会頭だ」
「お初にお目に掛かります聖教国のアルベルトと申します」
「ランジェロと言います、ご指導願いたい」
「え?」
「交易路の安全を商業国家連合が導く構想。感服しました」
「植民地政策の犠牲となった国も導いて頂けますか」
「こちら方面はうちが中心となって
「よろしくお願いいたします」
「メイドが待っているな。食事に行こう」
「はい。頂きます」
「御子様が武装解除を仕掛けたので?」ギク。
「そうなることを神託で知っただけですね」
「神託とは、眉唾では聞きますが・・・」
「神がこうなる、ああなるとか言いませんよ(笑)」
「神が枕元に立つのでは無いのですかな?」
「そういう事も稀にありますが」俺の時だ(笑)
「違うと?」
「知ってしまうだけですね」
「知るとは?」
「突然知るのですよ、今回は海上の覇権を持った国が失脚すると知っただけですね、バーツ会長に教えただけです。この海上封鎖を機に交易路の安全を海の事を知る商人達で導けないかと」
「失礼だが御子様はお幾つかな?」
「あ!13歳ですが、私の考えではありませんよ。ハムナイ国のラムール商会長の入れ知恵です。商人が導くお話を聞いた私が心配すると、話をバーツ会長に持って行けと言われました(笑)」言われてない。
「ラムール
勝手に勘違いしてくれた(笑)
「相談したら、コインを持つ豪商であれば可能と」
バーツ会長を見る。
「なるほど!相分かった!サントとの商国同盟は結ばれました。ハーヴェスの領域はワールスが商人の音頭を取って受け持つ。ミランダ方面はバーツ議長にお任せする(笑)」
「お任せを(笑)」
「ありがとうございます。
あっちの世のアポリジニの悲劇みたいのは無くなると良いな。
・・・・
バーツ会長は、時間の許す限り話を詰めて行きたいと17時に迎えに来る事となった。
ワールスは赤道に近く常夏なので4人で散歩がてらの散策をする。人の流れと一緒に異国の石畳みを歩き、大通りを抜けたら海に出た。
「海の色が全然違うよね?」
「うん、エメラルドグリーンだね」
「こないだの宝石の色だよね」
「そうそう!みんな泳いでるね(笑)」
大きな砂浜に細い竹垣の囲いをした海のお店が並んでる。焼き物とかも売ってるわ、定番だな。海の家はどこも一緒か(笑)
「4時間近くあるし水着買って泳いでみる?」
「うーん・・・」
「シズクと一緒なら何処にいても僕の場所分かるよ」
「そうしよっか!」
「シズクのバッグは腕輪に入れたら3人で泳げるよ」
「はい!」ポシェット巾着を気にしてた。
「あ!お金両替しなくちゃ、賎貨じゃ駄目だわ」
大きなお店で魔石出したら
2人が水着と上に羽織るローブの様な物を着て店から出て来る。
伸縮素材みたいのないから、短パンとボタンで着るTシャツみたいな格好だ。短パンは腰と足をジャージの紐みたいに縛る。
意外と大きい波が3人の20m程先で立ち上がる。あの辺から浅くなってるんだな。立ち上がった山の頂点に達して丁度3人の手前で崩れていく。波がジェットコースターのループみたいに巻いて弾け飛ぶ。
アルムさんとクルムさんの胸まで洗う、シズクがピョーンと飛ばないと頭まで呑まれちゃう波だ。あ!アルムさんとかワンテールのお団子が海水に・・・みんな編込んでるじゃん!
じゃないわ!クリーンあるから関係ないわ、真砂屋の温水シャワーの女子の込み具合を思い出して心配してしまう(笑)
バラバラに弾け飛ぶ
水着の露出なんか関係ないな、笑って跳んで遊んでるだけで見てる俺まで楽しくなる。はしゃいで走り回っても山が無いから3人共安心だ。と言うかこっち来てから俺の回りは山が無いの多い気がする。そういや、山っ気が無いとか言うよな。
箕輪さんや橋本さんとは言わなくても服部さんクラスで目の保養になるのに・・・服部さんの山は暴れて布から出ようとしてたなぁ(笑) 俺の周りだけあっちの世界から変わらない。その辺はなぜかテンプレだなぁ。笑えねぇ。
シズクの首が回って俺を見た。あ!しまった!
(やめろよ!シズクは可愛いから成長しなくていい)
(・・・)
(そのままだぞ!胸変わるなよ!命令だぞ!)
(はい)
(シズクの齢で胸有ったら変なんだぞ!)
(わかりました)
(もっと成長したら胸出してもいいから今はダメ)
(・・・)
(もうちょっとマテ!あと4~5年で出していいから)
(はい)
(その時だって出し過ぎちゃダメだぞ、エルフの立場を考えて出さなきゃ可愛がって貰えないからな、シズクだってアルムさんやクルムさんと仲良くしたいだろ?)
(はい)
(だからね、出せばいいってもんじゃないの)
(はい!)
なんて会話だ、俺の人格疑われるわ。
お互いに考えてる事を読み合いながら先回りして会話するのは疲れる。シズクは人間じゃ無いから俺の喜ぶ事を良かれとしようとする。シェルみたいに人間を分かって無い。6万歳近いけどまだ若いの。
冷やした葡萄ジュースを飲みながら椅子でぽわーんと遊んでるのを眺める。竹垣で囲われたスペースの机と椅子が大銅貨3枚だ。ミカンジュースを出した。休憩に冷やして飲むだろ。革袋に大銅貨入れてクルムさんに渡しておく。
遊ばしておいて、俺はヤシやソテツっぽい海辺の林に来た。
今までは皇帝のマジックバッグやら雷雲団長のマジックバッグを何か知りそうで避けて来た。あいつらがやらかしてきた事件の遺品を視るのが怖かった、絶望や号泣を見たくなかった、忙しい理由を付けて逃げていた。ハイエルフの所で貰ってきたバッグも同じ様に避けていたのだ。
何か因縁とか過去の事件を知り、俺が巻き込まれる。いかにも有りそうで面倒臭そうだから逃げていた。終わり良ければと言うけれど神聖国だって終わって無い。これ以上何かあれば過重労働でヤバイ。とまた自分を納得させる。
俺はそんな聖人君子じゃない。自分の事だってしたいんだよ。基本的に人の予定で振り回されるのが嫌なんだ。野球やってて知ってるんだよ、練習するだけマジで上手くなるんだよ。やらなきゃ損なんだよ。やればやるだけ練習した神経が繋がるんだよ、監督の言ってた通りなんだ。
だから、色んな事知って遠回りすると凹むんだよ。
--そう思っててもさぁ--
あれだけ沢山の神様に恩寵貰って行ってこい!自由に生きてこい!と言われたから、神様に申し訳なくてその分知った事を俺なりに頑張っちゃうんだよ。
でもエルフィンボウを見て気が変わった。
ハイエルフのバッグにエルフの武器が有るかも知んない。
17時まで時間がある。ハイランドで手に入れた21のマジックバッグを開けて行く。
その中の一つに有った。
瓦礫の中から拾った色んな部族の宝や技物のミスリルの弓やら槍やら剣やらの武器なんか目じゃ無かった。元老院に陳列してあったハイエルフ勇者の持ち物でさえ。
ハイエルフ元老院議長が歴代に受け継ぐ種族の宝。種族存亡の危機に用意されて2回使われてる。前回の戦いで定数30が半分以上失われてる。
前回の戦い・・・
1300年前の
・精霊の指輪×11 精霊を良く集め魔法発動が早くなる。
・エルフの髪飾り×11 恩寵遠視
・エルフの耳飾り×11 地形効果:森
・エルフィンボウ×11 精霊弓
・エルフィンアロー×11 具現の矢筒
・妖精の靴×11 瞬足の靴(魔法の靴)
・つる草のベルト×11 身体保持のベルト
・精霊剣×11 俺の持ってる奴だよ
ハイエルフの宝を俺が奪ってた。
恐ろしい種族だったんだ・・・ハイエルフ。
こんな武器とエリクサー持ったらマジ最強だわ。
そりゃ、最高の種族とか誇るわな。
種族の宝を返さなくちゃ。えーん。
持つに相応しい人探さなきゃ。またやっちまった。
変な奴に渡せない、あのハイエルフだ。人やエルフ、世界に向けて牙を剥く。とにかくエル様の所に行こう。
こんなに太陽が眩しくて、海が綺麗なのに!波がキラキラ弾け飛んでるのに!先立つ苦労を忘れたくて目の前の海に貴族服のまま跳び込んだ。極彩色の魚が群れを成す、はぐれた魚が俺の髪を海藻と思ってガスガスとツツキに来る(笑) 眼にはスズメダイと出る。真っ青やグリーンの極彩色なスズメがチュンチュン来る。
ハイランドには囚われたままの30万の奴らがいる。宝を渡したらハイエルフがツインタワーの世界樹まで攻めてきそうで面倒臭くて考えたくなかった。
次回 179話 赤ちゃん的には良い?
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ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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