第177話  クラン雷鳴


1月6日。


昨日はリンダウ>ミランダ>ハーヴェス回って頑張った。頑張った分、今日は丸々浮いちゃった!ガッツポーズでふんす!とみなぎるぜ。


浮いた一日を有効に使うシミュレーションを鍛錬の間に組みまくる、明日はクラン雷鳴の存在意義を世に示すのだ。


テンションは朝から上がり気味。

朝食後のお茶もそこそこに外に飛び出した。


まずはやる事だけやらないとダメ。昨日の鹵獲物資の保管庫を作らないとインベントリⅡLv7の836万㎥が埋まっている。昨日は奪った物を置きに行く場所が無いのでインベントリレベルを上げたのだ。


クフの大ピラミッド3個分だ(笑)それだけの容積の物がインベントリに収まっている。ミランダとハーヴェスの鹵獲品はバーツさんとラムール会長の保有する敷地やサントの港が有るから船も置けただけだ。俺には置くところが無いから作るんだよ!


俺が持ってるのは演習場だけで置くのに耐えきれない。80m級の世界最大級の軍船て幅約20mだよ、置くだけで幅400m超えちゃうよ、武器庫1棟って簡単に言うけど体育館の大きさなんだからね。並べるだけでクランの演習場終わる(笑)


大山脈の奥まで行って洞窟の通路を作った、難民村で用水路を作った規模で掘って内側を固めていく。硬化させて2km程進んだところに大空洞を作り、これでもかとライトの球を散りばめた。


土やら砂が武器に付着するのを嫌い、石畳の床に硬化していく。

天上の砂が落ちても嫌なので壁から天井も硬化していく。支えもたくさん作って、見た目は日本の首都圏外郭放水路(別名:防災地下神殿)まんまになった。


入り口に作った通路を1km分埋めてしまう。真冬の大山脈の奥で雪は積もっているが洞窟内は温かい。閉めたら10℃以上はある。湿度も低い筈だ、火薬貯蔵に丁度良い筈。


リンダウの魔動回路、大砲はここに秘匿する。リンダウの武器の性能は模倣品で改良されて良い物になってると思う。ハーヴェス、ミランダに工夫で対抗する魔法技術を持つ国だから充分だ。


砲弾火薬倉庫22棟、武器倉庫16棟、中身が空の武器倉庫10棟、魔動回路の予備品棟2棟、軍事用魔石倉庫2棟。鹵獲した兵器の工場及び鋳物の金型含め砲弾工場などすべて置いて行く。


大砲は台付でそのまま載せて口径ごとに並べていく。分かりやすく倉庫ごとに径の違う砲弾を仕舞って行った。使うのかどうか分からない港湾防衛用の200mmで6トンもある大砲を並べていく。空き倉庫には魔動回路を並べていく。


大空洞の容量が全然足りなかったので、同じような大きさの大空洞を3つ分作っておく。一緒に鹵獲した80m級の無敵艦隊を20隻置く。長さ82m×幅18m、船底からマスト天辺まで40mもある世界最大最新型の炸裂砲弾用の大砲を備えてる軍船だ。


300名以上が乗る艦隊に補給物資を運ぶ魔動帆船が付いていた。遠征時に付いていく補給艦隊で、同時運用と思って持って来た。なんか使うかなとオマケで持って来た小中の魔動船も一緒に置いて行く。


空の倉庫を置いて榴弾と通常砲弾を分けて置いて行く。ボーリング場の玉置きの様な棚ごと整理して置いて行く。船に積んであった砲弾と工場にあった砲弾と倉庫にあった予備砲弾、インベントリで整理されて間違いなく同じ種類で倉庫に納めて行く。


軍施設も山ほど貰って来たので納めて行く。造船所やら船を上げるレールやらソリやら、巨大な工作機械も全部入れた。


ロスレーンで使えるかも?と最初は思ったが湖で軍船作って何処に攻めて行くとか、何処に対する軍備だとツッコミ入れた瞬間に覚めた。ヘクト湖に作ったら360度うちの領だ、攻めて来る所が無い。


ロスレーンの北にラーマス湖という琵琶湖の半分程もあるデカイ湖も有るが水域全周がロスレーン家の領地だ。しかも対岸はお父様の弟、サルマン伯父さんのアンドリュー男爵家。男爵家に向かって世界最大の炸裂砲弾の軍船浮かべるとか物騒過ぎて頭を疑われるわ、ウケる(笑)


大河が流れてたら軍船も赤壁みたいに良さそうだが、幸か不幸かロスレーンに大河は流れて無い、とても小さな可愛い支流があるぐらいだ・・・水深が全く足りず鵜飼いが出来るぐらいの川だ(笑)


内陸の国に世界最大級の魔動帆船はゴミだった。


コルアーノ地図(ラーマス湖、アンドリュー男爵領入り)

https://gyazo.com/553e382304957295845f92616b82a7b0


空の倉庫が鹵獲した武具で山ほど積まれながらも秩序を保って保管されて行く。次何かあったら種類で出せるから便利。


世の豪商達はハーヴェスとミランダの魔動回路と大砲を皆で分けて同盟を組み、海上覇権国となる筈だ。それ以上の武器は要らない。これから予想も出来ない第三国が出てくる可能性がある。予備をここに置いておこうと思ったのだ。


ここに入れた武器弾薬は世界の紛争の抑止力になると思う。


鹵獲してきた全ての軍需物資を封印して帰ってきた。

洞窟通路を埋めた。以後転移でしか入れない。


ゴミを片付けて3時間以上掛かっちゃった。



・・・・


10時半。


軍事的な教本と兵器の本は手元に置き、魔法関係の書類や本はアルノール大司教と導師に一度は目を通してもらう。


二人の魔法研究者は目を見張った。

遥か星の裏側での魔法研究の成果に驚いた。


モルタルに砕石を入れると、コンクリート強度が格段に上がるような爆発的効果。要するに城塞都市の壁の様に、石組みや砕石を骨にして土魔法で固めて覆うと強くなる魔法応用技術と同じだ。


魔法の基礎技術は同じでも応用力と支える工業力が違う。植民地政策も磨かれて世界の海を回る分国力が大きい。紛争や侵略で兵器へのフィードバックが多く工作技術、造船技術、軍事技術、魔法技術に生かされる。


砲弾が貫通後破裂し榴弾になる。

工作技術と魔法が結びつき、俺すら唸る仕組みに変化している。

魔法使いが強力な世界。確保できなければ代用の兵器で対抗するように進化していく。


材質の特性に魔法のベクトルを重ね合わせる技術。

石炭を蒸し焼きにして生成されるコークスと炉の形状によって温度を上げるだけでは無く、魔法技術によってさらに上昇させて合金まで作りだす製法が確立していた。


が!アルノール大司教は見破った。


「これは、ドワーフの精錬技術の大規模運用ですな」


興味なさげに本を変えた(笑) 導師が聖教国の情報収集を恐れる訳だよ。北の中央大陸にある先進国の技術情報は間違いなくこの人に集まってる。


俺は考えすぎて疲れた(笑)


この世の人が大量殺人兵器の研鑽を重ねちゃってるんだもん。俺は正義の味方でもなんでも無いけど言いたいよ。武装して他国の富を取りに行くのは国がやってる盗賊だ!


迷惑したら物申すよ。責任取ってもらうよ。


俺は知らんと、研究者に丸投げした。

大壺置いて12月分の棒給もらってきた。



・・・・



昼を食べて13時からハウスの皆と演習場に向かう。


綺麗なお店や教官の家、門や塀が増えてみんなビックリ。


そりゃリスのチー君の菓子を食ってる間に動いてたからな。って、俺またしても新年の休みが無いよ!何処行ったのよ俺のお休み!新年から覇権国襲ってるわ、休んでないわ。何やってんだよ俺!


先生達は引っ越しも終わって新生活の準備していた。


・銀級3位43歳レイニー。ラーナ60歳 リナス34歳

・銀級3位36歳シャウト。嫁ジル34歳 子供3人

・銀級3位獣人夫婦41歳マル 39歳インダ 魔鉄級5位18歳姉リネと16歳弟マルス


俺のPTを皆に紹介すると共に、スカウトした時に話した雇用条件を今一度確認と明日からの通常業務を話しておく。


・勤務は朝の9時から18時まで。

・夜間訓練の場合は同様の時間を勤務時間とする。

・冒険者の基礎をPTに叩き込むことが仕事。

・教官職をやめない限り支給の家で住んでよい。

・リネとマルスが結婚し教官を続ける場合は家を支給する。

・狩りをする場合PT+教官の人数割りで分配する。

教官はそれでギルドポイントと小遣いを稼ぐ。


初任、棒給額ほうきゅうがく

3位は小金貨1枚大銀貨1枚(30万円)

4位は小金貨1枚銀貨5枚(25万円)

5位は小金貨1枚(20万円)


ロスレーン伯爵家の騎士10位初任俸給額と3位の俸給を一緒にした事は伝えてある。

※家賃込みなら安くも高くもない棒給。


・怪我はアルが治す、治らぬ場合は座学で継続雇用。

・管理員

ラーナはクラン敷地の管理。管理棟とクランハウスの管理清掃。リナスはクランハウスの受付事務とクランの収入管理。

親子2人で上手く回す事さえしたら、基本自由。棒給はラーナもリナスも大銀貨1枚(10万円)お茶やお菓子の用意や事務道具をお金渡して揃えてもらう。


家賃は不要。食事の管理は各自でやってもらう。詳細は4人の3位が合議制。集団で研修するのかPT単位で研修していくのかは、各教官がPTの技量を見ながら教えて行く。


クランマスターの下に4人の銀級3位、その下に魔鉄5位のリネとマルスが権限を持つ。管理と事務の二人は俺の補佐にした。


肩ひじ張らずに、何も知らない小僧たちの尻を蹴っ飛ばして教えてねと笑っておく。ゴブリンか角うさぎレベルのPTから率先して教えてやってと伝えておいた。


先生の皆が怪我で苦労した人間だ。怪我の辛さを知っている、それを一緒に教えてくれたらいいな。



教官達と話していたら、質問があったので雨が降った場合の武術鍛錬場所を作った。


300人もいるからな。

6人の教官がそれぞれPTを相手に出来る武道館だ。15m四方、槍も振り回せるように高さ6mのキューブハウスを6棟建てた。動けば冬でも暑いだろうと灯かり取りの窓は穴開ける。尻を叩く奴らを連れ込んでくれと頼んだ。



男子寮と女子寮からアーケードで調理棟と武道館まで行ける様にしておいた。門から寮までの普段歩く生活圏は、土ではぬかるみ易いので、エンボスを付けた石畳に圧縮して敷き詰めた。



クランに入りたい者は、月曜日の朝7時にアルが面接を行う。併設の店舗はリナスの所に従業員希望者が春までに訪ねて来ると伝える。


俺の家は走って5分のスラムの空き地横と教える。ライトの魔法を飛ばしてあの辺の変わった家だから分かると言っておいた。


1時間程演習場を歩きながら話して質疑応答を終わらせた。光曜日は完全休日。クランメンバーの収入増の成果を見て待遇も上げると言った。



今の人員で1月(30日)のクラン収入なら待遇も上がると思う。



14時近くに4人でパンケーキのお店を見に行く。

クルムさんに聞くとヤギの乳と卵とバターを用意しておけば粉末の世界樹の葉を渡せば誰でも作れるという。


パンケーキ焼くぐらいは何処の娘も出来ると言ってくれた。火加減だけが重要らしい。


クルムさんはバニー焼きを出したいと働きたがった。


お洒落で美味しいパンケーキが名物になればいいな。


「この辺に地下室か倉庫作ってヨーグルトドリンクの部屋を作ったら楽だね」


「地下室だと素焼きのかめを持って来るの大変だよ」


「あ!そうか、ここにキューブハウスが良いな」


作ってみた。部屋を3つ作ったキューブハウス。

壁の中に出来るだけ空気層を作ってみた。

保温庫、冷蔵庫、冷凍庫だ。

入り口が3つで店まで庇を伸ばしておいた。


「ドアが欲しいなぁ」


そのまま大工さんで検索して訪ねて行った。


大工と言うか建築工務店まんまだった。


「すみませーん」

「はーい」と愛想の良い奥さんが出てきた。


「ドアを作って貰いたいんですがお願いできますか?」


「はい、やらせて頂きますよ。お待ちくださいね。寒いので小屋の中で仕事してるんですよ」


「坊ちゃんがお客さんかい?」

「はい、小屋にドアを三つ作って欲しいんです」

「そんじゃ、場所を見に行こうかねぇ」

「はい、お願いします」


「この店の裏の倉庫です」


「この入り口に木の枠を嵌めてもらってドアをピッチリに作って欲しいんです」


「隙間が少なくってことだね?」

「はい」


「内開きにして枠に段差を付けさせて貰えば隙間は出来ないがそれでいいかね?」


「それでお願いします」

「これは何の店なんだい?」

「パンケーキのお店になります」

「こんな建築は初めて見たよ、良く出来てる」

「こっちの倉庫も初めて見た」


「よろしくお願いします、カギもお願いできますか?」


「わかった、期限はいつまでだい?」

「そんなに急いでないんですが・・・」

「そんじゃ1週間でいいかい?」

「はい」


「連絡先が・・・あそこに立ってる左端の商店風のあそこに事務員がいますので連絡あればお願いします」


「アルベルトって言います」

「クラムって言うんだ、よろしくな坊ちゃん」



外で寒いので冒険者宿で皆でお茶とおやつにした。

お茶と何か有る?と聞いた。と言うとソーセージみたいな物だったり、塩味のクラッカーみたいだったりする。今回はランチセットの余りのキッシュが出てきた。こういう腹に溜まるおやつは嬉しいなぁ。


「ごめんね、パンケーキの店やクランの家を見せようとしたら、石畳とかアーケードとか、また仕事になっちゃった(笑)」


「アル君は本当にすごいよ」

「アルはよくそんなにやることがあるわね」


「僕だって自分の事したいよ、お爺様に言われたじゃん、色々と貴族は面倒なんだよ、宿泊代一つでも(笑)」


「アル様はいつもお悩みなのです」

「シズクも分かったような事言って(笑)」

「アル様はいつも皆様の事をお考えです」


(こら!シズク!何言ってんだ、だめだ!(笑))

(でも)


(でもじゃない!いいの!俺が悩むぐらい自由にさせてくれ)


(はい)

(ありがとうね)

(はい)


(シャドさぁ、影縛り出来るなら夜にヨーグルトドリンクの素焼きの瓶とか揺すれる?)


(揺すれます)


(そんじゃ僕の魔力を使って誰も居ない夜に揺すってくれるかな?)


(はい!わかりました)

(毎日揺すった方が嬉しいよね?)

(毎日やります!)

(やったー!おねがいね!)

(任せて下さい!)


「お茶したら帰っていいよ」

「アル君はどうするのよ?」


「ギルド長の所に冒険のススメみたいな教本無いかと」


「こういうの?」なんか出してきた。


「あ!これはギルド規則の本だね(笑)」

「これじゃないの?」


「オーク狩ってる最中でも美味しい芋虫探すでしょ?あんな感じでこういう草が採取できるとか、こういう所に角うさぎが居るとか書いた本無いかなって」


「あー!そういうことね!」


「アル君。みんな読めるの?」


「あー!それがあった!」アルは力尽きた。


「読み書きからかよー!ホントかよー!」


マジ、泣きが入った。どうするよ・・・。


いや待てよ!俺もついでに汚い字を練習するチャンスかも?このまま行ったら字を練習する前に大人になりそうだ(笑)


「僕が先生で教えてみる」

「えー!アル君が?いつ?」

「20時から?」

「無理だよ(笑)」

「え?」


「帰れない日多いでしょ?みんな時間に待ってるんだよ」


「そっかー、そうだな・・・」


「やるならアル君が起きた5時から9時までの間だよ」

「朝の稽古やって走りながらクランに行く!(笑)」


「読み書きの本代わりにギルド規則もらえないかな?やっぱギルドマスターの所に行って来る!」


皆を食堂に置いてテッテテとギルドに走った。


ギルドマスターの所へ行くと、箱一杯くれた。

初心者教本みたいのは研修所の使い古しを職員が持って来てくれた。研修所があったわ!本は結構破れている。


16時半じゃん。後1時間で日が落ちる、急がないと。


街でざら紙、白墨(チョーク)石板を買った。

黒土で石板と同じような摩擦係数で色々試して大きい黒板みたいなの作った。


サント海商国に跳んで 白い砂で長机と椅子を作った。

大きな黒板を白い枠で覆いキャスターの無い脚を作っておいた。


あ!この細かい白砂良いわ。

2㎥の石の箱を作って砂を山盛りに入れて貰ってきた。


大森林の黒い土で40cm×30cmの枠付きの石板作って砂入れて書いてみる。5mmの砂の厚さで丁度良く字が浮き出る。黒板の厚さ1cm外枠が2cmの高さ、内枠を5mmで作った黒板が出来た。わーい。


一気に同じ規格を作っていく。60個あればいいかな?イヤ文盲率から考えたら300名なら200人は潜在的にいる筈だ。冒険者をやって行く過程で20歳位には依頼票の単語を読めるぐらいになってると推測した。


・・・時間無いんだ、とにかく動け!と思いながら朝の保管庫や導師に本なんていつでも良いじゃん俺のバカ!と自分にまで八つ当たりしだす。


取り合えず150個作るか・・・イヤ、もしかして足りなかったら1日の授業分が出来なくなるな。鍛錬代わりに200個作っとくか。


砂を均す定規もあればいいな。均しても1cmの外枠越えなきゃ砂は落ちない、大丈夫だな。5mmの内枠に沿って定規を流せば砂が5mmの厚さで平らになる。同じ規格で作っていく。


ペン代わりの丸棒も300本ほど作る。地面でも練習出来る。


砂を継ぎ足すカップが一人一人欲しいな。とまた作りに行く。



演習場に寄って教室を作りに行くが17時半でもう暮れてる。冬ってマジ暮れるの早いな。焦ってると余計に早い(笑)


巨大なライトボールを作ってその辺に置きながら作業。


砂が落ちるから、地面より高くして砂を回収しやすい様に掃き出し口も作って。暖房紋入れておくか、石でマジ冷たいからな。

イヤ、暖房紋を椅子に付ける!魔力込めてから座れば温かい(笑)


冬で窓が作れないので、マジックバッグで出てきた野営用に取っておいた魔法ランプをそこら中に付けた。骨董品やら年代バラバラのランプだ。


机と椅子はツルツルだから床もツルツルなら砂は回収しやすいな。掃き出し口に砂を受けるお盆を作ってやれば回収も楽だな。


設備は貧弱だが心は錦だ(笑)


教室に落ちた砂を集める箒とちり取りを買いに行った。買いに行く時、倉庫の横を見たら大工のクラムさんと息子さんがランプの明かりで寸法取ってた。


「クラムさーん、もう暗いじゃない(笑)」

と言いながらライトボールで明るくしてあげる。


「坊ちゃん!」


そう言えば扉の打ち合わせしたの15時頃だったわ。


「あそこの教室の扉を大至急出来ませんか?」

「え?」

「明日は使わないから、明日の晩までに」


代金は倍請求しろとか、あっちに立ってる教官の建物を時間が出来たら見て回って不具合があれば修繕してくれと言いながら教室まで案内する。


「これです、明後日の朝から使いたいんです」

「このドアですね?」

「倉庫のドアはすぐじゃなくても良いです」

「わかりました」

「あーよかった!(笑)」


箒とちり取りを買ってきたら、もう夜だ。


クラン雷鳴、読み書き教室は出来上がった。

良く考えたら先生は俺しか居ないから40人教室を2つも作る意味なかった、慌て過ぎた(笑) 生徒が多かったらその場で教室を繋げてしまおう。


よし、今日は形だけで良いんだ。明日の朝、皆にと紹介出来るだけの建物が無いと生徒を集められないんだもん。


紹介した後は、みんなが期待して絶対教室を見にくるからな。字が読めて、書ける様になれそうな立派な教室を作った。


19時に何食わぬ顔でハウスに帰った。

明日の朝、3人を驚かしたい。


・・・・



そして1月7日


新生クラン雷鳴は始動する。



朝8時。


うちのPTに2つ並んだ教室を見てもらった。机には研修所の教本、ギルド規則の本。黒板とペンとカップに入った白砂が置いてある。


「えーーー!」

「昨日の夕方からこれが出来ちゃったの?」

「うん、頑張った(笑)」何でもない顔をする。


「こうやって、書く練習が出来るの」

「すごーい!」

「読み書きの勉強にお金要らないでしょ?」

「うん」


新しく出来た建物を一緒に見に来た先生にも生徒が字の練習してたら見てやってと頼んでおく。


8時半に面接のPTが来た。2PT11人に増えてた。取り合えずクランに加入させてPTリーダー達と朝の会合で話があるからと控えさせた。



9時にクランハウスにリーダーが65人も集まった。そりゃソロの奴は自分がリーダーだわ!想定外だよ!(笑)


先生の紹介もある。せっかくなので全員呼ぶ。皆に演習場に並んでもらった。管理棟の前から寮に向かって拡声魔法で叫んだ。



「リーダーが65人も居るので急遽きゅうきょ外で訓示をすることになった。今、!寝てる奴は起こしてやれ。クランマスターが訓示を行う!」


貴族風全開で怒鳴り散らした。


「出て来ない奴は連帯責任でPTごと叩き出す!」

「早く出て来ーい!」


全員出てきた、完全武装と寝巻の奴と無茶苦茶だ(笑)


「全員、揃ったな!」


一瞬にして演台と階段を作って上る。



「俺はアルベルト・ロスレーン。面接したから知ってるな? 12月の2週間、お前らの稼ぎを見せてもらった」


「なってねぇ!冒険者解ってねぇ。冒険者はもっと稼げる!角うさぎのツノあと何個とか大事に持ってる奴!お前らなんも分かっちゃいねぇ」


いきなり始まる子供の説教だ。


「当然だ!誰も教えてくれねぇからな。知らなくて当然なんだよ。オークの追い方も知らねぇ、剣術も知らねぇ、文字も書けねぇ、読めねぇ!」



「どうすんだ!アホ共ー!(笑)」そしてディスる。



「お前らはクラン雷鳴に面接で受かった。受かる事の出来た幸運なお前らに冒険者の基本を俺が叩き込んでやる!」


「当然俺は一人だ!お前らの相手をしてやれねぇ」


「ありがたい事に、に教官が来て下さったぞ!に稼げる方法を教えに先生が来て下されたんだ。何も知らないの為に来て下された!」


一旦言葉を止めてメンバーを睥睨へいげいする。

目を合わせに来るような威圧で皆の顔が引き締まる。


「今から教官方の紹介に入る。清聴せよ!」


「お前らの前にいる、この方は3位のレイニー教官だ。有り難いレイニー先生のお話をよく聞いてむせび泣け!冒険者の生きる術を知れ!特に前衛で獣や魔獣と戦う奴はこの教官を目指せ、この教官の技術をむしり取れ!一人前の冒険者になれ!」



「この方は3位のシャウト教官だ。情けないお前たちは足元にも及ばない先生だ、特に採取技術についてはピカ一だ、ソロの奴らはまず一人で食って行く技術を教えてもらえ、すがりついて教えを乞え!」



「こちらのお方は夫婦で3位のマル教官とインダ教官だ、その横に居るのは5位リネ教官とマルス教官だ。見た通りの冒険者一家だ。お前らの中に5位もいると思うが、なめんなよ。物が違うぞ。先生方に最初からもう一回冒険者の稼ぎ方を教えてもらえ」



「こんなお高い所で威張ってる可愛い俺は5位の冒険者だ。ギルドのそんな肩書に惑わされるな。ギルドの階位なんぞモンスターの前じゃクソの役にも立たねぇんだ!ギルドのタグは助けてくれねぇぞ、死体が誰か教えてくれるだけだ、勘違いしてんじゃねぇ!」


「実力無ぇと魔獣に食われるだけだ!」


演習場を指差す。


皆が演習場を釣られて見る。


ズドーン! 雷が落ちた。


「上を見ろ!」巨大な火球が浮いている。


皆の顔が恐怖に引き攣った。


「分ったな?肩書など関係ない!」火球はフッと消えた。


「絶えず磨け!12歳で冒険者になったなら歯を食いしばって這い上がって見ろ!何も教えてもらえなかったお前らに、前に並ぶ教官様が教えてくれる。このチャンスを逃す奴に用はない。勝手にクランを去れ!何も知らずに大森林で野垂れ死ね!」


「読み書きが出来ない奴!」


「お貴族様の俺が直々に教えてやる!読み書き覚えたかったらあそこの教室に毎朝6時集合だ。厳しいからな(笑)」



「お前らの前にいる3位の教官方は皆、2回の戦争を知っている。戦争行ってこの国を守った方だ。おまえらがおっぱい飲んでクソ垂れてる時に戦ってんだよ!舐めんじゃねぇぞ!冒険者を昇った話を聞いて如何に自分が平和な時代に甘えているクソ野郎か思い知れ!」



「そこの奥さんが施設の管理人ラーナさんだ。横がクランの事務をやってくれる娘のリナスさんだ」


「前に並んでる方はお前たちの親と思え。親に逆らうんじゃねぇぞ!」


皆の喉がゴクリと鳴る。


「そうだ、このクランは全体が家族だ。出来損ないの息子と娘はしつけるぞ。世間様に立派な冒険者をお出しできないからな。うちの家の恥ずかしくない息子と娘になってくれ」



「環境は整えてやった。昇るも落ちるもお前たち次第だ。お前たちの人生だ、好きにしろ!」



「12月の寒い中頑張っていたPT!」



「ギルドが褒めてたぞ、頑張れば誰かが見ててくれるんだ。願う事なら冒険者を昇って、今の教官の位置に立ってみろ。演習場の奥に置いてある家が教官の家の横に建つだろうよ」


「このクランの基本は俺も教官方も施設管理も事務員も光曜日はお休みだ。おまえらはいつ休もうが好きにしろ。光曜日はクランの親に迷惑掛けんなよ!(笑)」


「そこに立ってる2PTの11人は今日から家族だ。宿舎に案内してやれ」


「おい!お前ら、このPTに色々教えてもらえ!」


「以上!寒い中呼びつけて済まなかった」


「新年の挨拶は終わりだ!解散!」


「寝るなり狩るなり鍛錬するなり勝手にしろ!」



メンバーはクランマスターがどんな人間か分かった。舐めた2位PT主催のクランからケジメ取った事は知っていた。


貴族の子供が余りに酷い物言いに皆が震え上がった。

教官たちだけがその優しさを知っていた。

アルムさん達は若い子を脅し過ぎと笑っていた。


アルがクランマスターの雷鳴はこうやって生まれた。



アルに経営Lv1がついた。





次回 178話 ハイエルフ最強説

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