第173話  もらい泣き笑い


1月2日朝。


朝食から、アルムさんがしゅんとした。

クランの事を俺に言ったせいでお爺様にと思ったのだ。部屋で俺がなぐさめている。


アルムさんがごめんねと言うが俺は大丈夫!と笑って答える。


ううん、違うんだよ、俺の考えが浅かっただけだ。まだ二週間、全然やり直せるんだ、口に出来ずに首を振って言葉を打ち消す。口に出したら間違いだったと肯定する事になる。 


農民をあれほど助けようとした俺は冒険者を助けようとしていない。とても不公平な事だと俺自身が思った。


食料の取り合いで国同士が戦争を行うと聞いてから、それに流されて食料を作る農村、第一次産業を守らないとダメ!となっていた。ロスレーンでは冒険者家業が下火で、戦争の話を間近に聞きながら師匠の横にいた俺は傭兵ばかりが花形と思っていた。


お爺様の言葉でいびつに傾いた思考に気が付いた。冒険者も第一次産業だ、貴族の名前で貧民上がりの冒険者からテラ賎をかすめてどうするよ。ギルドの宣伝を信じて俺の家に逃げ込んで来た奴らを守らなきゃどうするよ。


客をもてなさない商売。


>「文句は言ったぞ。バルドー」


二年前思わず吐いた言葉が蘇って苦笑い。


「吐いた唾は飲めないな」


思わずつぶやいた。



新年二日目、今日も三人で新年を遊べと言い付けた。


反省したアルの心は目指すベクトルに向いていた。



・・・・



そんな俺は朝からメルデスに跳んだ。



クラン雷鳴の加入面接を思い出しながら・・・



面接中にのツノを3つ大事にバッグに持ってた女の子を視た。(後二つ欲しいなぁ)と考えていた。


常設依頼ツノ五つ(五匹分)で大銅貨6枚になるのだ(6000円)皆がツノを集めるのは五つで討伐証明と素材としてお金になるからだ。クランに銅貨6枚(600円)納めたら露店の麦雑炊なら27杯も食べられる。具も少ないお粥ならもっと安いかな(笑)


笑っちゃダメよ、お粥食べられるって凄い事なんだから。貧民が飲まず食わずで次の町へ行く途中で餓死する世界だ。視ると最後は何でも口に入る物食っちゃって消化も出来ず、体壊してそのまま死ぬ。


キャンディルみたいに栄養失調で朝起きずにコロッと逝っちゃう人もいる。ロスレーンの孤児達はお腹が空いて一杯賎貨5枚(50円)のお粥が食べたくて仕事探してた。開拓村のロセとミニスもそうだ、銅貨3枚(300円)の食事に目を輝かせて食べてたんだ。


何を隠そうクランの宿舎で餓死されたらたまんないから、暖房紋付けたぐらいだ。


日本だって知られないだけで餓死してる人一杯いる。栄養失調死って言うかもしんない。ご飯食べて生きて行くのはこの世界はもっと厳しいの。昔の日本で口減らしの奉公とか、野麦峠の世界と変わらないよ。日本だって子供を売ってた時代があったんだ。


・・・・


貴族の俺が食わせろって?

何も知らなきゃそうやって動くよ!異世界で助けて回るよ。でもね、俺は魂が器に入った意味を知ってるのよ。折角輪廻の列を並んで生まれて来たのに安易に助けたら磨けないじゃん。だから知っちゃったら最低限生きて磨けるように動いてるのよ。


だって神様は人が死んでく過程まで磨いてると思ってるんだよ?そんなのどうするのよ、何か余計な事したら磨くの邪魔してる風じゃない。俺が冷たいとか思わないでよ!ホントに思わないでよ?

(誰に言い訳してんだ、お前は)


・・・・


まぁ、そういう事なんだよ。


冒険者も先輩の見様見まねでやってきてる。角うさぎとかゴブリンとかの弱い獲物を常設依頼でやってきた連中だ。あんまり稼げないからクランも入れない。誘われない。(クランは大体家を持って共同生活している)


常設依頼や採集依頼、採り易い植物、狩り易い魔獣で食って行かなきゃならない。7位で冒険者になっても、6位に上がったとしても植生や住処や習性、オークの追い方、美味しい芋虫の捕り方なんて知らねぇよな。


俺だって教えてもらったから知ってるんだよ。


メルデスの北東ギルドでクランの10%の賃料を見た。二週間のクラン収入ベースは、冬にも関わらず一人一日銅貨4.3枚(430円)平均の宿泊費だった。


冒険者一日当たり平均4300円の収入があると言う事だ。


冒険者として月の収入換算なら銀貨12.9枚(12万9000円)だ。税金5%ギルド手数料5%クランメンバー費10%取られる上に、冒険者宿で銀貨9枚(9万円)出したらカツカツだ。宿なら食事が付くだろうが昼は自前だ、平均値で稼ぐ奴すらそんな感じだ。


中には良いポジションに就こうと冬でも頑張るPTが10PT、50人程いる。クランに平均値以上の宿泊費を納める向上心有る奴らだ。 半年頑張ったら貢献順位でクランの役を任せるか(笑)


頑張ってる奴らがいるから平均値は一日大銅貨4.3枚だが、実際は全然やっていけないPTが半数と見た方がいいな。


別に心配はしていない、そんな奴らのためのクラン雷鳴だ(笑)


今312名。


クラン雷鳴、メンバー加入面接待ちが6名ギルドに応募していた。1月7日に練兵場に来るよう伝えてもらう。


新年以後もこの平均ならクラン収入は1日大銀貨1.3枚だ。(13万円)月なら大金貨2枚(400万円)だよ。

集まると金額が太い。ミウム拍に冒険者の駆け込み寺を作ったとお礼と報告の手紙は書いておこう。アルムさんの代筆で。



・・・・



ギルドマスターを訪ね、冒険者の先生になれる人物を紹介してもらう。ベテランの叩き上げ。ソロ活動で食っている。出来たら戦争の負傷者で妻帯者なら言う事無しと伝えた。


その様な個別のリストは無いが戦争負傷者でギルドの負傷見舞いを受け取った人のリストがあった。


が、ギルド研修所の講師として相応しい冒険者のリストを見て気が変わった。ギルドマスターが冒険者の為になる事を始めるのを理解してリストを見せてくれたのだ。


中でも傷病で人前に出られない。事情が有って辞退した人を訪ねようと思った。その理由を俺なら潰せると思ったからだ。



現役の冒険者で講師リストの該当者6名。取り合えずピックアップして当たってみる。


銀級3位、43歳独身男性レイニー。この人能力高いな。


恩寵GPSで家を訪ねる、新年だからこそ家に居る(笑)


魂の輝きを視た瞬間、勝手に決定した。傷も癒えている。言葉使いも丁寧に指輪で身分を明かし、スカウトに来た趣旨を話す。


話をすると面倒臭がるが、戦争から帰って傷が癒えるまで八年間面倒見てくれている間借りのお婆さん(60)ラーナ、その娘リナス(34)の家族を大切にしていた。と間借りから研修所の講師宿舎に入るのをいさぎよしとしなかった漢気おとこぎのある冒険者だ。


六年の養生による筋力の低下で稼ぎは落ちてるが大丈夫。本物の叩き上げで積んできた冒険者だ。腰骨の粉砕骨折は何度も通う回復士のお陰でくっ付いて痛みも無いが、次は歩けなくなるというトラウマで万全に動けていない。


丈夫な腰骨の一部を粉砕する程のハンマーの一撃だった。念入りに光魔法Lv10の再生を使って傷跡を補強して行った。再発したらいつでも治すと確約した。


持ち家だったら家ごと移動していたが、家は借家で息子が出て行った部屋を食事付きでレイニーが入っていた。当初歩くのも困難だったレイニーが戦争の報奨金と負傷見舞いで食い繋ぐのに格安で募集していた食事付きの間借りを選んだ縁だった。


お婆さんと娘込みで雇った。無償の家を貸与と約束した。親子でクランハウスに駐在させる。ラーナはギルドハウスの管理(掃除)リナスは事務をしてもらう。加入希望者の受付やPTリーダーへ事務連絡だな。


命令あるまで待機を命じ支度金を渡しておく。


・・・・


銀級3位36歳既婚男性 シャウト。嫁ジル34歳家事。子供有り、男の子1人女の子2人まだ小さい。


足が不自由で採取依頼で生計を立てているが稼いで家族を食わしてるから腕は確かだ。足を治せたら?という賭けに出た。昏睡魔法掛けて古傷の付いている所を同じ様に斬る。


俺も腱の再生なんてやった事無いけどオークの切った腕とか再生してるし何とかなるだろ?


切れた腱が変なつながり方で引き攣る不自由になっていた。斬られた腱の配置を視ながら真っ直ぐ繋がるようにLv10の光魔法で再生する。綺麗に繋げて治ったと思い昏睡魔法を解く。


歩いてもらった。


足を引き擦る癖はあるが普通に歩けるようになった。

笑いながらと子供貴族が脅す。


命令あるまで待機を命じて支度金を渡しておく。


・・・・


次に銀級3位と銀級3位 41歳マルと39歳インダ キツネ獣人の夫婦と子供を尋ねた。子供も魔鉄級5位18歳姉リネと魔鉄級5位16歳弟マルスの冒険者。


お母さんが戦争で顔から胸に大きな傷を負って片耳も無い。フードで隠してる。視ると必殺の一撃を持ち前の敏捷で躱したため骨は断たれず見た目が引き裂かれていた。


リストの傷病と視るのが大違いでひるんだ。フードだろうが関係なしに見えてしまうのだ。声も出なかったからバレずに良かった。


傷を治す治療を行い、完治した場合契約を結ぶ。


光ヒールかどうか悩んだが美容術と併用でやってみた。

胸なんか片胸がえぐられて申し訳程度に有るだけだ。


耳頭顔胸への袈裟懸けの一撃ですべて失っていた。深い刀傷が頭から顔、胸へと一直線に刻み込まれている。冒険者は稼げたら良いという訳では無い。女性にとって大切な物を失っていた。これで教官として研修生の前に出るなど論外だった。


とても家族に見せられないので個室でやった。昏睡させた中で、本当に色々やった。千切れた耳をもう一度切って再生を掛ける。失ったえぐれた鼻スジを切開して血を拭きながら再生して行く、片胸も美容術と再生を併用で両胸を平均化した。


終わると俺は血まるけの油汗まみれになっていた。良く見ると再生した耳や頭の毛が明るくメッシュになってしまっているが普通には分からない筈。


綺麗に治った耳、顔と胸を見て夫婦が泣いた。子供達も大泣きしてる、イヤ泣き笑いだ。見ていてした。いくら戦争の爪痕と言っても契約を持ち出した自分を恥じた。でもクランの先生を探さなきゃ巡り合えなかった。


命令あるまで待機を命じて支度金を渡しておく。

先生が4人増えたような物なので多めに渡した。



皆が俺の出自を疑わなかった。


俺が貴族でコルアーノの防衛戦争に行って負った傷に感謝したからだ。例え生活のために参戦したと言えど、視た状況は慰労金で解決できるような状況じゃ無かった。守る物のために皆が命を投げ出していたのだ。


皆が抗っていたのだ。



・・・・



神聖国に跳んで、財務部の担当司祭に不要な家の使い道を話し、余計な空き家が無いか相談する。


建築中の教会と教会広場の空き家の撤去で工事が進み、次の整備街区の空き家を撤去したいと言う担当司祭と現地を見に行った。


結構軒数が多いので、金鉱山のメガシティーに要らないのか聞くと、(最初に俺が無秩序にポコポコ置いた)貧民街の古い建物が一等地にあって変な街になっていると言われた。


知るか!ふざけんな!甘えんな!もういい!

ゴミ屋敷で泣いて縋った癖に良く言った!


じじいの言っ・・じゃない。お爺様の言ったとおりだ。

分かって無い奴らが勝手な事ほざきやがって!



御子を傷つけた罪で金掘らせるかと思ったが許してやった。神聖国が安定してからの赴任で(俺が置いたと)知らない事が我が身を助けたな。


その辺全部壊す。と言うのでその辺の家を持って来た。こんな感じ?と司祭に見せた。そこの角も2軒取ってと言われる、36軒あった。どうせ壊す家だから大喜びでもらう。


なんで充分な道が有るのに沿道の家を壊すのか不思議に思って視た。新教会が出来たら聖教国にならって奉賀参拝を行える様に区画整理し、群衆の順路を整備してる事がわかった。


司祭の持ってる計画表を見せてもらった。

「こことここも潰します?」


「はい」

「ここは?」


「そこは、こちらとこっちで奉賀参拝の順路で、両脇の家二軒までが取り壊し予定ですね」


「両脇の区画は何処までです?」


「え!いいのですか?」パッと顔が明るくなる。


「いいですよ、売りに行くんじゃないから。どうせ壊すんでしょ?壊したら壊したでゴミが大変じゃないですか」


インベントリがⅡLv5の鬼仕様でデカイので余裕だ、それ以前にうちの敷地はイオンモールだ、どんと来い(笑)


「ありがとうございます!」最敬礼だよ!現金さんめ。


「とりあえず壊す予定の近い物だけにしてね」

「1年後までよろしいでしょうか?」

「1年後?・・・うーん・・・まぁ」


「2つ先の街区まで道を広げてもらえば助かります」

道を挟んで600m程ある・・・。


聖教国首都は300m×300mの区画に40m置きに小道が走る。表通りはオシャレな店舗や商会が多いが一歩入ると住宅となる。地図で見ると大通りから両脇に二軒ずつ更地にして、大通りに面する土地を首都に相応しい店舗や家に変えて行くらしい。


15mの大通りが35mの大通りに変わる。歴史あるロスレーンの25mある交易路(対向二車線並み)より大きい。岩塩の6トン馬車が余裕ですれ違う道よりデカイ(笑) なんかロスレーンが負けた感がある。道路に面する店舗や家がまだ無いから幅55mの道になってる(笑)


聞くと、奉賀参拝の年末年始は一回はぐれると宿に帰るまで家族に逢えないらしい。そういえば!大学でカウントダウンやって明治神宮行った時メチャクチャだった!あの雑踏ならここの噴水前広場なんか絶対入んない!絶対無理。


イヤ、この国400万人だからそれは無いな、と思うと周辺国も聖教国に行けない人は神聖国で参拝するから道はこれぐらい要ると真面目に言う(笑)


俺を担いでる?と視たら本当だった。


聖教国で行う新年の奉賀参拝は教皇が民衆の前に立つだけで凄い財政効果が有るみたいだ。何10万人も周辺国から信者が教会に押し寄せるのが視えた、まるでゴミの様だ(笑)



・・・・



演習場の奥の壁はそのまま城塞都市の10m程の石積みの壁である。石垣と土魔法ウォールの魔法で壁にしてある。(そういう建築だと魔力が少なく丈夫に出来る)


演習場の奥の壁に沿わせて328軒の家を並べて行く。30坪2階建てから40坪3階建て、50坪4階建てまで揃えて綺麗に並べて行くと演習場の壁沿いが新興住宅地になった。それでも奥行500mある壁から40m程埋まっただけだ、横に680m並んでるけど。


宿屋改め不動産屋になれる。一年先の取り壊し予定の家をもらってきた。新教会の建築は4年計画だから後二年分の空き家はまだ神聖国に置いておく。使わなかったらロスレーンの4番街の壁を改造して東西南北に出島の街にしたらいいんだ。領都の人口がだいぶ増えてるからお爺様が喜ぶ。


二世帯が住める家と、家族持ちで住める恥ずかしくない立派な家を選んで演習場の門近くに三軒置くついでに応接間の広い商店を置いておく。


門柱も武骨だったので一旦砂に戻して石に作り直す。

門も鉄製で所々サビてるので砂で埋めて行ったら虫食いだらけで余りにもボロく見える。

鉄を芯に全体に砂をまとわせてピカピカにしておいた。


門柱のヒンジに差し込むとそれはメチャクチャ綺麗!

燃えてきた!


門の横に真新しい壁を建てて行く。道に沿って湾曲する横幅600mを一気に作り終えると今度は奥の城壁に向けて500m建てて行く。

一気に壁を建てて駐屯地は隔離された。


応接が広い商店はクランハウスにする。PTリーダーが集まって会議出来るようにだ。クランハウスの横に一軒、向かいに二軒、教官の家を綺麗に並べる。


駐屯地だから門の幅も大きいのよ。軍用の8トンの最大級の馬車が対面で通れるほど広いの。門番の詰所まであるの。固めて家置くとポツンになって逆に変なのよ(笑)


窓を全開、四軒に向かってクリーンを多重視点で浴びせる。後は風の精霊さんを呼んで粉を全部連れて行ってもらった。


まとめて暖房紋と給湯紋を刻んで風呂付にしておいた。魔力で沸くし先生達も喜ぶぞ!




雇ったレイニー先生(43)の所に行き、職場併設の家に引っ越す様に言い含め、お婆さん:ラーナ(60)、娘:リナス(34)も共に駐屯地に連れて行く。クランの事務をリナスに任せるのでクランハウスの横だ。クランハウスは門から近く事務室を兼ねる位置だ。


仮にも帝国の首都に立ってた垢ぬけた建物だ。お婆さんより娘のリナスの方が家を気に入った。ラーナは娘のリナスを先生にもらって欲しいと思ってるからそのまま引っ付いちまえ。宿舎だから家賃要らないと聞き驚く。


1月7日から勤務。それまでに引っ越すように言った。


同じくシャウト先生(36)と嫁のジル(34)を連れてきた。

この家に家族で住めと子供貴族が言う。フレデリ(8)ネーレ(6)アニス(5)も大喜びで走り回る。門に一番近い位置でクランハウスの正面の家だ。1月7日より勤務なので引っ越す様に言う。



獣人家族のマル(41)とインダ(39)も連れてきた。成人4人の家なので少し大きい。シャウト先生の家の横でレイニー先生の家の向かい。この家に住んで冒険者のひよっ子を鍛えてくれとお願いする。キツネ獣人の子供達、姉リネ(18)マルス(16)にも先生をお願いする。親に鍛えられて尋常じゃない経験を持つ獣人冒険者だ。


1月7日までに引っ越す様に言う。



クランの宿舎を視てみる、新年二日目だ、昨日酒飲んでひっくり返ってるのもいた。低位の依頼でギルドポイントにはならないが紙級7位の汚れ仕事をやって冬をしのぐ冒険者も居た。


大森林でも山影側は雪が解けずに残っている。狩れるか分からない冬に森に行くより紙級7位の常設依頼で確実に稼ぐ方が間違いない。


宿舎に残っている者に、各PTのリーダーは1月7日の9時に前のクランハウス(空き商店)に集合と申し伝えておく。


基本を知らないPTから先に鍛え直してもらう。


1月7日が楽しみだ。


15時過ぎの遅い昼を済ませてハウスに行きヨーグルトドリンクの瓶を揺すっておく。三日に一回は揺すって攪拌かくはんするんだよ(笑)


ついでにロスレーンに瓶を持って帰る。



・・・・


ロスレーンの四番街。三人は何処かな?と視てみると人形劇の観衆の中に居た。皆が劇団の売ってるお菓子を食べながら見てる。昨日見たのに、と思ったら出て来る動物は一緒で物語が違う(笑) しかも食べてるお菓子も違う!あざとい!


三人は幸せそうなので置いて、教会に足を運びお年玉をやり、ヨーグルトドリンクを一人二杯飲ませてやる。人形劇が盛況な事を教えてやる。銅貨4枚はお菓子や飲み物買うのに必要と教えておく。


あの劇団マジでんだよ。


「今リスのチー君が食べてる砂糖菓子だよー」


と客席に回って来るんだぞ。親なら子に買ってしまうわ!考えた奴出て来い!800歳超えてるクルムさんがチー君と一緒のお菓子食べてるのが可愛いすぎる。


パンチの効いた商売に魅せられて燃えてしまう俺は同族なのだろう。俺だって!とこの世で一旗揚げたくなってくる。伯爵家メイドが握った不揃いのおにぎり見せてやる。と思ってしまう。麦のおにぎりだけど・・・



・・・・



料理長にもヨーグルトドリンクを二瓶渡して使用人の食後にも出させる。ぬくぬくの部屋で冷たいの飲みなさい。


夕食を取っているとお父様が暖房紋の苦労話を聞かせてくれた。今まで冬は寒いものとしてまったく気が付かなかったそうだ。


すきま風(笑)


暖房紋が付いてから屋敷中の暖房紋はメイドが管理する。

何処にいても温かい。しかし、なんか気持ち寒い部屋もある。


お父様とお母様の寝室がそうだった。


暖かい部屋でぬくぬくで寝てる筈なのにちょうど顔の上を寒い風が通るので気付いたと言った(笑)


すぐに窓枠のすきま風を防いで一緒に煙突を完全に塞いでもらったそうだ。


「暖炉から比重の軽い温風が上に行くと負圧が発生・・・」


あっちの理科みたいな事を言ったら、導師の研究は凄いと皆に感心されてしまった。あの人魔法の研究しかしてないのに。


それが賢者の良いところ。

賢者はどこかの5才の様に何でも知っている。


今年も賢者の名声にすがって生きよう。





次回 174話  覇権国家

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