第171話 魔法のランプ
12月29日。
クランの立ち上げとメンバー募集、メンバーの部屋割り、寮内のルール作りなどで時間を使って、うちのPTは横堀の魔穴の30Fまで至ってない。というかまだ6Fだ。
色々とクランの事で攻略の足を引っ張ったから気が引けてダンジョンの話題を出せない俺がいる。
そんな感じで年末を迎えてしまった。
クランには30日から1月7日まで顔を出さない、7日までクランはお休みだからPTリーダーの言う事を聞いて好きに暮らせと言ってある。
去年はロスレーンに居なかったので今年は実家で過ごす。
そんな訳で29日の昼過ぎにロスレーンに里帰り。
アルムさん達は今日明日とダンジョン攻略と言うので明日の17時にメルデスへ迎えに行く。
・・・・
実はお正月用に料理長にサプライズを用意していた。
今日(29日)の夕食後。お爺様から|バルトン料理長に食材保管に使えるマジックバッグを
料理長専用で時間は1/185、半年経っても1日以下だ。30cmの立方体を5㎥まで引き延ばして小さい容量のマジックバッグに付け替えた。どこにでも有るバッグに偽装してある。
12月のリフォームパーティーの食材を切り分けた時に知った。
鮮度を重視して仕入れたその日に調理するしかない野菜や肉や魚。旬の食べ物も月に何度も出せないので、領の特産をお客の接待予定に合わせて出している料理長の苦労を見たのだ。
だから「サプライズで渡したいの!」とジャネットに無理言って貴族に相応しいバッグを縫ってもらってたの。29日までに必ず作るとジャネットが言ってくれたので帰って来たのよ。
旬の食材を自由に使える環境を料理長が手に入れた。
そういうこと知らなかったから今までありがとう。
・・・・
そんな訳で新年だ!
正月に腰を落ち着けて領都を皆で巡ると、勝手が少しずつ変わっていた。なんか雑多な喧騒は凄いのだが、カオスな感じが洗練されている。
村も生活が豊かになって来て暖房も薪も要らなくなり、余計な仕事が減った分ゆとりも生まれていた。
領都は賑わい、宿に入りきれない者がキューブハウスで年を越していた(笑) 窓と扉を布と板で隙間なく締め切り(冬用に執政官が用意した)暖房紋でぬくぬくしている。
冬は寒かろうと暖房紋付けたらカプセル宿屋で大盛況。
満室の上に雑魚寝で十二人も入ってるハウスも有った。5m×6m=30㎡=18畳。どれ程の雑魚寝か分かるでしょ?(笑)
領都に入るのに大銅貨(1000円)要っても、一泊銅貨2枚(200円)なら雑魚寝のキューブハウスで宿より安い(笑) 馬も荷馬車も宿ならお金を取られるが車庫なら一日銅貨5枚だ。守備隊は目の前に居るし何も怖くない。雑炊の屋台はあるし、夜には串焼きの露店も出る。
俺は今日はPTの四人でお揃いのバラライカで出て来ている。色も布も違うがバラライカがお揃いだ。
四人と言うのはメイド要らない状態になってるのだ。
二か月以上経って、普通の暮らしに慣れたシズクが色々やってくれる。エルフ姉妹が喧騒に見とれて立ち止まっても引っ張って来るし、俺とエルフ姉妹が離れても俺の傍は離れない。
要するにメイド代わりにかいがいしくお世話してくれるのだ。ハイランドで何もしなかった世界樹の御子様が人の暮らしに慣れた。最初は言ってやらないと動かなかったが、今では自分で判断して色々動く。
そりゃアルムさんにダンジョンで自立判断を叩き込まれてるから向上して判断力も上がるよな。
人形劇をやっている。
途中で銅貨一枚(100円)のせんべいや砂糖菓子、飲み物を(劇の人形が飲んだり食べたりするのに合わせて)売り子が売りに来る。銅貨四枚使う頃に劇が終わる。商人はしぶといわ(笑)
4人で人形劇を堪能した後、蚤の市へやって来た。フリマなので飲み物、食べ物も雑貨も武具も何でも売っている。俺以外の3人も稼いでるので、自由に買い食いしてる。
俺のお目当ては、剛力の指輪(力+15)に匹敵する魔道具探しだ。あれば白金貨でも買うつもりなのだがなかなか見ない。
例によって子供冒険者の格好で検索する。
使えないマジックバッグがあったので金貨一枚(50万円)で手に入れた。
何を隠そう、俺はマジックバッグ136個も持っている(笑)
譲った物が十四個(家族:八、執事長、メイド長、料理長、PT:二、家に返した聖女)渡してもまだある。
大体中身は高貴な物が入って、赤字にはならないから福袋感覚で買う。人の
土と雷の属性石の付いた指輪が有った。恩寵に属性効果が乗り5%効果アップだ。なんか微妙。元々分かりやすい魔道具はなかなか売りに出ない。分かりやすくて便利なほど値が付くし、売りに出るのを見るより先に売れてしまう。
基礎能力を+10上げるなら欲しいけどなぁ。魔法の杖も結構あるけどコテコテの骨董品だ。俺は魔法の杖を持つなら剣を持ちたい。シズクみたいに剣代わりに土魔法の杖持って斬ったり突き刺したり出来るなら別だ。
広場の机でカードゲームやってる人が目立つ。俺のターンだ!とかじゃない。ブラックジャックの様に小銭を取り合うゲームだ。
エルフ姉妹は雑踏と喧騒の中ジャグリング見て大喜びしている。そんな中引っ掛かった魔道具をどんどん見て行くと根付(キーホルダー)が魔道具と出る。視ると悪魔を閉じ込める檻と説明が出る。
直径3cmの丸い黒光りした木の球に文様が掘られて、綺麗に織られた紐が通っている。球の文様が
直径3cm程のスーパーボールの根付みたいなもんだ(笑)
年代物の根付として銀貨五枚(5万円)で売っていたので
(悪魔ではないですよ)シェル
(精霊です)シズク
(え?)
(闇の精霊を捕まえる魔道具です)
(え?そんなの捕まえるの?)
(闇の精霊の少し大きいの入ってます)
(入ってるの?捕まってるの?)
(その球が魔道具で闇の精霊が近くに来ると捕まえるです)
(そんな魔道具あるんだ!)
(魔術紋になってるですよ)
(
(分かって見せてるのかと(笑))
(彫刻で魔術紋に見せないかもですね)
(闇の精霊は悪い事したの?)
(闇の精霊は悪い事知って無いですよ)
(え?)
(闇の精霊は出来る事をするだけです)
(あ!闇系使うだけの精霊ね)
(人に嫌われるとかは考えて無いです)
(人の前で闇魔法使うなら敵になるわな(笑))
(少し大きいので力は持ってますよ)
(それで悪魔か。逃がしたらまずいかな?)
(ここで逃がすと何かあるかもです)
(分った。1800年も捕まってるなら何か考えるよ)
(年月は気にしないでいいですよ)
(そっか、シズク6万歳近いしな。そうなるな)
シズクがドヤ顔になった。
悪魔じゃ無くて安心した。餌をやる意味で魔力を込めて根付を剣の
四番街で昼食を取ったらそのまま三人を置き、午後からパーヌで酒を仕入れて、導師に新年の挨拶に行った。
導師に球を見せた。
研究室から出てきたアルノール大司教も一緒になった。
俺から聞いた説明を元に文様を綺麗に写し取った。
大司教が呪術紋の古文書を調べて行く。
「うーん・・・どうも、これですな!」
「お!
古文書の呪術文様を見比べて喜ぶ人達。
新年からこの人たちは一体・・・。
イヤ、持って来る俺が一番非常識だ(笑)
呪術的な魔術紋。ツタの魔術紋で
なんか、地球でも入れ墨で呪術的な祈祷する部族があったなぁと俺なりに納得した。大壺をいつもの様に渡して盗賊宿に跳んだ。
・・・・
盗賊宿。
寒いけど、運試しに福袋を開けるつもりで跳んだ。
盗賊が酒食らって寝てた。6人だ。
そのまま麻痺付けても寝てるから恩寵取って、採掘Lv1付ける。昏睡の魔法掛けておいた、正月サービスで寝かしといてやる。
宿を綺麗にしてクリーン掛けておく。
ヘクトにオスモさんは居なかったが、奴隷担当のリンドさんが居たので隷属紋を刻んで布教し、牢の中で寝かせておいた。
起きたら勝手に服役するので牢の中で昏睡の魔法を取った。
ついでだ!と山に登って盗賊の検索を掛けまくり追加で23名捕まえた。これで西の盗賊は居ない。
領都の大山脈から東へ盗賊を検索して狩って行く。
四組で三十六人いた。モルドの執政官事務所に隷属して届ける。守備隊が預かって明日銅鉱山に行かすと言う。
正月前に務めを終えた盗賊だから色々鹵獲した。馬を16頭手に入れたが飼葉も水も十分あったから後で迎えに来る。盗賊の鹵獲品は売れる品だから気にしていない。ゴミじゃない。武具を見てまたゴミが!と思ったけどクリーン掛けてクランに置いておけば誰か使うだろう。取り合いでケンカになりそうだな・・・ダメか。
寒いので小壺の葡萄酒を飲みながら盗賊宿に跳ぶ。
思わぬ領の大掃除が出来て心も軽い。
マジックバッグを開錠する。
ミイラが見えて新年から墓か!と思ってから動作を止めた。様子が違う、福袋だけに正月から大当たりだ!
なんと12体のミイラが入っている。
視るとお姫様とお付きの侍女達が入っていた。
マジックバッグが2袋一緒に入っている。
入っていたマジックバッグの中身は高貴な魔道具のペンダントや指輪が多数あり輿道具の宝物まであった。シリングへの輿入れのお姫様の一行だった。死ぬ寸前まで騎士団の戦闘を祈るように見ていた。
700年も前で、お父様、お母様済みませんと言いながら死んじゃってるけど、もう悲しむ親族も居ないんだよ。
悪いコルアーノの王族じゃ今は死に絶えてる。
一体一体にクリーンを掛けて 宿にミイラ12体を並べてる俺を見られたら何思われるか分からない。だけど、当時の無念と頑張った姿は視ておいた。お姫様と侍女たちだ、悪い事などしていない。早い人はもう転生してると思った。
俺に取ったら頑張った器に見えるんだよ。始祖のミイラと一緒で、頑張った歴史が見たかったんだ。
凶賊に囲まれ
136個持ってる中で開けたバッグは80個を超える。すごい歴史が入った秘中の秘に当たった気分だ。
歴史の裏がどれだけあるか分かんない。賊の格好をした軍隊だ。鍛えられた刃筋が違う。こんな五十人も居る騎士団襲うのは同盟阻止のセイルスかサントしか居ねぇだろう。コルアーノの宰相は間違いなく殺されると分ってたはずだ。
俺には関係ない。
侍女達は身一つで入ってたのでそのまま埋葬する。旅姿のお姫様には一番のお気に入りのドレスを掛けた。母から持たされた10cmほどのコンパクト型の鏡を胸に置いてやった。鉛を裏に張り付けた本物の鏡だ。
高貴なお方なので、地面に硬化した
これ、盗賊にめぐり合わせたのは・・・
突然やる気が起きて領の盗賊を東西で
俺は導かれたのか・・・?
考えるのをやめた。
新しい国の生活に胸を馳せ、輿入れる姫の無念と絶望に当てられただけだ。俺には何も出来ない。そんな物に流されるな。今見た事実は700年前の出来事だ。無力と考えるだけで不遜な考えだ。
俺は神様じゃない。
この世の今じゃない、過去の
・・・・
17時ごろ 旧教会に行くとやっぱ凄い列。
去年の師匠の結婚式以来祈って無かった。
神様と話をして落ち着きたかった。そんな
守備隊の若い人が完全防寒で受付にいる、伝統になっちゃったな。一週間の非番の担当分と小壺を十四個差し入れする。
シスターに喜捨して、祈りの列を待つと長くなりそうだと一番前の席に座って祈った。
「ふむ、ずいぶん殊勝な心掛けじゃのう」
「ネロ様お久しぶりです、新年の挨拶ですよ」
「お主、去年教会に居ながら来なかったじゃろうが(笑)」
「すみません」
「なんじゃ?あの一行の事か?」
読まれてしまう。
「まぁ、そういう事じゃろうな」
黙っていても会話が進んでしまう。
「気にするな。人は一回生まれ一回死ぬ」
「でも、死に方もありますよね?」
「それも人の一生じゃ、人の生の一コマじゃ。お主が無念を感じ、憐れみを掛けることなど不要じゃ」
「はい」
「ただな、お主はこの世に縁が無かった魂じゃ」
「え?」
「普段は教えんが教えてやろう」
「何をです?」
「お主の魂に縁が出来たぞ」
「え?」
「そのうちに分かろうよ(笑)」
「?」
「エル神に会っとるの(笑)」
「あはは、やっちゃいました(笑)」
「見とったわい、お主も無茶するのう」
「デフローネがダメー!と叫んだぞ」
「あ!やっぱり豊穣の関係ですかね?」
「その後、植えて育てたので不問にしております。逆に繁栄しておりますからね。ハイエルフの呪縛から解き放ったのです」
「デフローネ様、済みません」
「この世に大事な物が失われる所でしたよ。しかし樹に罪は無いとは良く思い直しましたね」
「あの樹に囚われているのを奪うのが目的でしたから・・・奪った後にエルフに面倒をと思ったのです」
「世界樹が八本も。保護もしてくれましたね」
「シズクはデフローネ様の組でも良かったのに!(笑)」
「アル、忘れてますよ。全てが同じ組ですよ(笑)」
「あ!すぐに小さく考えちゃう(笑)」
「お主にネフローも話があるそうだぞ」
「ネフロ―様が?」
「御子が朝に買ったあの球の事です」
「はい?闇の精霊です?」
「あれは私の司る流れの者です」
「え?ネフロ―様が?」
「私は生と死を司る者ですよ」
「あ!戦いの神様だけでは無いのですね」
「闇の強い質であったためネロ様に託されました」
「そういう感じなのですね」
「光は闇より
「生と死、輪廻の最高神の組ですね(笑)」
「その組ですよ(笑)」
「御子が言い含めるのも良いでしょうが、その精霊は力があります。ここで御子の存在を見せるが早いので呼びますよ」
あはは!後で説得しようと思ったの読まれてた。
「球から出しますよ」
「お願いします」
影が現れた。人型だが、人か何だか分からない。
影と言うか黒い陽炎の様だ。
「やはり薄いのう(笑)」
「この世界で形を取ろうと思えば相当の者かと(笑)」
(シェルがすごいのがどんどん分かっちゃうね)
(えへへ)
影が動揺してるのが分かる。
「私たちの存在は分かりますね」
「 」聞いてるのはわかる。
「闇の悪戯はおやめなさい」
「 」戸惑っている
「お前の存在は今狭間に有ります」
「お主の捕らえられた球の持ち主を見てみよ」
ゆらゆらと影が振り向く。
「機嫌を損ねれば一瞬で消えることを知りなさい」
「アルよこの精霊に名前をくれてやらぬか?」
「契約ですか?」
「そうじゃ、精霊と中精霊の境界におるでの、魔法も大きく悪戯では済まぬ。風の精霊が悪戯で旅人を凍死させるとは訳が違うぞ」
アルムさんから聞いた精霊の話を読まれている。
名前かぁ。黒い陽炎:カゲロウ 和名ぽいな。
シャドウ:影。シャドー:秘密結社みたいだな。
シャドか。
シャドいいな、呼びやすい良い名だしシャドだ。
「シャドと名前を付けましょう」
「ほう、なるほど!そう付けてやったか」
「シャドよ、そなたの遥か高みの系譜、生と死を司る最高神の使徒がアルじゃ。以後忠実に仕えよ」
シャドの体の輪郭が陽炎から黒くハッキリした。
でも影のまんまだ。
「はい」
「あ。しゃべった!(笑)」
「しゃべれるようになったの?」
「はい!喋れるようになりました」
「具現化は・・・出来ない感じだね」
「姿は表せますが完全に物質化までは出来ません」
そっかー。何できるのか分からないな。
「困った時助けてくれる?魔力はあげるからね」
「はい」
「あ!また球に吸われちゃう?」
「もう大丈夫です。大きくなって自分で出られます」
牢獄みたいで苦しいのかな?
(苦しく無いです、中は広いです)
あ!
(そんじゃ、その中にいて僕を陰から守ってね)
「念話もしゃべるのも考えも一緒じゃ(笑)」
「そういえば!」
「名前を頂き、大きくなった存在でお助けします」
桃太郎のキビ団子みたいやな(笑)
皆が笑った、全員に考えもバレバレだわ。
「アルよ、話が違うわい(笑)」
「え?」
「お主の記憶だとアラジンと魔法のランプじゃろ」
アラジンを検索した。ジン:人にあらざる存在。
ジンは神に次ぐ存在。魔法で閉じ込められたランプの妖精、精霊、魔人。賢者ソロモン王がジンをランプに閉じ込め自由に使役した。ア・ラ・ジン。
旧約聖書の逸話から創作された冒険のお話。
「精霊のおらぬ世にその話も面白いのう」
「話は知っていても、元まで知りませんでした」
「儂もアルの知る物語で知っただけじゃ(笑)」
鞘に付いた根付の球。
魔法のランプがそれだった。
次回 172話 闇が本業
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