第168話  怪しく小さな薄い本




12月4日。


朝、三人に聞くと今日も狩りに行くと言う。ギルドポイントが溜まっても、服を買った分は稼ぐとやる気満々。


俺は昨日の日曜日光曜日休んだので布教に行くと伝えると、三人が昨日の薄い冊子が欲しいと言う。バレバレじゃねぇか!(笑)


布教に行って、素知らぬ顔で聖教国に知られずにを末端の教会から手に入れようと思っていたのだ。


そそくさと布教用の恩寵付けて支度した。


あれ?眼にスキルボードの数字の違和感が引っ掛かった。

No.2のスキルボードに神の使徒のジョブを作って幸運が89はおかしい、変だ!よくよく落ち着いて見ると、ボードNo.1の聖騎士の基礎数値がNo.2に乗ってた。ボードNo2に神の使徒作ったら、聖騎士分の+10と幸運+2が乗ったのだ。



アルベルト・ロスレーン 12歳 男

神々の御子        健康

職業 神の使徒   剛力の指輪(力:+15)

 

体力:75(85) 魔力:ー 力:53(78) 器用:371 生命:57(67) 敏捷:53(63) 知力:685 精神:706(716) 魅力:84 幸運:87(89)


気が付いて驚愕した。しばらくその意味を見つめていた。


表だろうが裏ボードだろうが基礎数値は俺に反映されてた。事態の大きさに驚いた。今までジョブをその都度付けてたから御子に変えた途端に基礎数値が落ちて、当たり前だから気が付かなかった。


ジョブの基礎数値は重複しないけど、裏ボードに斥候付けたら対応する恩寵効果はどのステータスボードにしても上がるって事だよ。慌てて魔術士③、治癒士④、斥候⑤の裏ボードを作った。


(裏①:聖騎士。体力+10、力+10、生命+10、敏捷+10、精神+10、幸運+2)

現在選択>(表②:神の使徒。数値の向上無し)

(裏③:魔術士。魔力+10、精神、知力+10)

(裏④:治癒士。魔力、精神、知力)

(裏⑤:斥候。知力、器用+10、敏捷、幸運)


体力:75(85) 魔力:-(-) 力:53(78) 器用:371(381) 生命:57(67) 敏捷:53(63) 知力:685(695) 精神:706(716) 魅力:84 幸運:87(89)


①聖騎士②神の使徒③魔術師④治癒士⑤斥候。これでジョブに対応した恩寵効果がアップされたはずだ。


魔術師と斥候の基礎数値の魔力+10、知力+10と器用も+10が加算された。魔力は何回見ても笑う。


俺・・・恩寵効果的にメチャ損してた?


これ、以後はどのジョブのステータスボードを選んでも全てのジョブの効果が重複する。もうボードを切り替えなくても良いって事じゃん。まぁ、神の使徒を見せたくない時は聖騎士にするけど・・・内容は一緒になる。もの凄い事だぞ。世の冒険者のジョブ分けどころか全てのジョブの恩寵効果が上がって、基礎数値も魔力以外は全部の数値が上がってる。



余りのポカに、なんか重要な事忘れて無いか?と考え込んだ。



「!」とんでもない約束忘れてた。



バーツ海神商会のレプトさんの所に跳んだ。


レプトさん視て事態を把握した。9人の豪商の冷暖房紋の問い合わせと、各会長のここ1週間の予定の擦り合わせを何度も何度もレプトさんが調整してた。


! 視て泣きたくなった。


「御子様!何処行ってたのよ?」


御子様がレプトを拝む。神に祈らぬ男が拝む。


「色々あって忘れてました。すみません」ぺこり。


「よし!許す。今日中にやるぞ!」

おとこや!本物のおとこがサントにおった!


「今から先触れを出すから待っててくれ」

「先触れ要りません、その場で対応します」

「相手にも都合が・・・」

「御子にも都合が有るんです!」

「・・・をぃ!」


「アフターサービスの時間が無いんです」

「わかった!10軒だぞ!10軒!」

「分ってます、分かってます!」

「バーツ会長の所から行くぞ!」



・・・・


跳んだ。


「随分とお早いお着きですな御子様」

「その嫌味を何日目に言おうと思ったんです?(笑)」


「一週間ぐらい前かな(笑)」

「遅れてごめんなさい」ぺこり。


「忙しいの分ってますから大丈夫です(笑)」

「忘れちゃってただけです」


「忙しいから忘れるんですよ(笑)」

「レプトさん、終わりましたよ、次!」

「え?」

「えー!もう?」

「終わりました。次に行きます(笑)」

「ホントに?」

「何処か付いてなかったらまた呼んで!(笑)」


「言ってないで!次行きますよ・・・」


レプトさん持って跳んだ。


当主を視て一瞬で冷暖房紋を刻む。


次行きますよ・・・


当主が居なかったら執事長を視たら分かった。


最後がランドさんの別荘で入り江を見てきた。


40分で済んだ。


「ホントに全部終わったな(笑)」呆れ顔だ。

「ついでにお願いしていいですか?」

「?」


「家が出来たので、発注した魔導帆船の精巧な模型が欲しいのですが・・・魔力を込めると本当に動く奴」


「え?もしかして土産物で売ってる奴か?」

「はい、応接に飾りたいんです(笑)」

「あはは!あれが欲しいんだな!分かった、御子様も子供だな」


「普通、見たら欲しくなりますよ!笑ってないで!・・・私の発注した船の2つ分ですよ?分ってます?」


「分った分かった、造船所に言っておく」


「あれって造船所が作るのです?」

「な訳ないだろ!(笑)あれは土産物屋が作ってる」


「え?」


「注文船をそのまま作るなら造船所しか出来ないだろ?」

「あぁ、なるほど」


「これから布教があるので帰ります」

「すぐなのか?」

「はい。それではお願いしますねー」


布教に跳んだ。


「本当に忙しいんだな・・・」



・・・・


今日の布教は耕作可能地域だったので農業付与ばっかで良かった。鉱山なら採掘ばっかだし、商工業中心の街だと仕事が多様でめんどくさい(笑)


・・・・


お昼にドワーフの鍛冶屋に行ったら家紋が出来ていた。


「材料は出来てますよ」

と見せられたミスリルの糸を見てぶっ飛んだ。全部これで編み込むと言う。マジか!


ラフスケッチを見せて貰った。

プレート付きの服になっていた。手なんて手袋だ(笑)


手甲、肩、肘、腕、胸、横腹への強打はミスリルプレートで補強して力を逃がし、斬撃を受ける部位はミスリル編みで強靭さと伸縮性で力を逃がすと言う。


セーターをかぎ針で編む様に細編こまあみ、長編ながあみ、畝編うねあみと連続してミスリル糸で編んでいくのだ、一本の糸がエンボス的な凹凸で裕のある編み方で厚いのに伸縮性もある。

簡単に言えば鉄線で編んであるフェンスネットをミスリルで作り、二重で緻密に編んで立体的にした物だ。


ドワーフの国に凄い物がありそうで行ってみたい。


ラフスケッチ見てたらプレート一枚一枚の角が丸くなって無い。動きやすい様ラウンドフォルムにしてプレートも分割して小さくしていった。肘、膝、肩にプロテクター付きになっている。如何にも戦闘装備でので取った(笑)


なるべく服っぽくお願いした。胸当て部分は男性、女性形状にしてもらった。山が大きかろうが小さかろうが自動調節だからOKだ。これで大丈夫かな?まぁいいや、全部マジックバッグから出て来たミスリルのプレートメイルだからな。骨董品より最新のほうが強いだろ。


俺は鎧に着替えるのは一瞬で出来るけどみんなは無理だ。明日アルノール大司教の研究室に行ってお着替えセットの魔術紋を教えてもらおう。


結構アレコレ言ったので大壺8個差し入れてドワーフの機嫌を取った。取らなくても命令に大喜びで従うけど。



・・・・



布教を終えた最後の街の教会に寄る。


「喜捨の小冊子が欲しいのです」上目遣いで訴える。


「え?もらって無いのですか?」と不思議顔。

「いつも喜捨はしてるんですが、くれないんです」

「大司教様用のありませんか?」

「え?何々用とかあるのです?」

「これは、一般信者に分かり易く解いた冊子です」

「それで良いのですが・・・」

「大司教様は、革の装丁本をお持ちですよ」

「え?」

「御子様のはもっと立派かも?」

「・・・」


どうなっとんじゃーい!


聞いてないよ!

泣き事言ってないで首都に跳んだ。



ステレン教皇代理に聞いてみた。


「これですかな?」

とんでもない革の分厚い本が出て来た。


「見せてもらってもいいです?」

「御子様との会話ですよ?」

「え?」

「聖教国で御子様が帝国を聖教国に100年預けるとか、七大司教様と会議された時の御子様の語録ですな」


「え?・・・あの会話全部?」

「はい、御子様のお言葉は残さねばなりませんから」

「えーーーーー!」

「口伝だと尾ひれで改変されますからな」

「・・・」


見て行くと俺が冗談で言った事まで記されている。


付箋が付いていたので見た。



・家内仲良く、親と子を大切にしなさい。

・獣人・人には親切、仕事に熱心でありなさい。

・獣人・人を恨まずうらやまず罪を憎みなさい。

・腹を立てずに悪口言わず正直に生きなさい。

・笑顔の絶えない楽しい人生を歩みなさい。


帝国民の所に注釈が書いてある。

ミイルフ大司教教会部の元締めが御子様の許可を得て教義になった」


あ!何かある度に教義だの教会だの言ってたわ。



を見て行く。


「アルノール大司教が御子に訴えると、とすぐ改善された」


は全部そうだった。


質問した大司教に御子が答える部分だ。


風に注釈が付けられている(笑)



聖書が出来ていた。


信者怖ぇーよ!


そんなの作ってないでガラクタ片付けろよ!

あの発狂で叱り飛ばしたのを語録にしてたら殺してやる。


「泣きながら御子様にすがった」・・・書いてそうだ。


絶対コロス!


分厚い革の装丁本はさすがに恥ずかしいので小さく薄い冊子を4冊もらってきた。信者がなるほど!と納得する分かりやすい神の講釈と人生の生き方や、過ごし方が抜き出されている。


七つの大悪と善。

社会悪に付いても記されている。


自画自賛じゃ無いが、銀貨三枚なら正直安いと思った。



・・・・



少しの時間でも造船所に見に行く。

もう日の入りで手仕舞も終わり三、四人しかいない。


二カ月近くで竜骨に横に伸びるあばら骨が出来ていた。


視ると竜骨で船の荷重を支えて、あばら骨に新たに付けた副竜骨に足を付けて陸地でも倒れないように支える構造だった。太い副竜骨が入る事で格子構造の間隔が狭くなり強度はあるはずだ。


船底の外板に脚付けたら強度無いもんなぁ。自重支えられんわ。

でも脚が無いと池や川や海しか降りれないしな。意外と無茶振りしてたなぁ(笑)


「あ!御子様」

製材を運んでいた製材所の職長に覚えられていた。


「こんにちはー!」

「この船を見に参られたのです?」

「はい、この船の大工さんはどなたでしょう?」

「ミールって船大工が棟梁ですね」


「バラストって言う石の重りを積むと聞いたんですが、積む日を知りたいんです」


「そういう事なら・・・おーい!」

棟梁の部下の人が教えてくれた。


「船底の外板が張られてからバラスト石を入れますので・・・予定だと一カ月後位になりますかね」


「重りを入れたら、床板を張って、部屋を作る感じです?」


「そんな感じになりますねぇ、マストを立ててから装飾や艤装なので四、五カ月は掛かりますよ」


「バラスト石に魔法を掛けたいとミールさんにお伝え下さい。隣の船もです」


「はい、伝えておきます」


・・・・


ハウスに着くころには宵闇が降りていた。


家に入ると甘くいい匂い。


で何か焼いている。

四、五回転させて焦げ目を付けたら、外してホットケーキミックスのドロドロ見たいのを調の上で掛けている。


まさしくバームクーヘンだ!(笑)


直径5cm程の真っ直ぐな木に作って回している。


「何それ?」

「バ    え?あるのか?この世界に有るのか?

「 ニー焼き」ドテ。


「え!バニー焼き?」


気になって勝手に眼が発動しちゃう(笑)


ウサギ獣人の村祭りに必須の甘いお菓子らしい。同じ森を共有する獣人やエルフは森の会議をする時に各種族のお菓子をお互いに振舞うのでエルフも知っている。エルフは精霊魔法でアイスクリームみたいに獣人にも定番のお菓子があるみたい。明日の試験の合格祝いに振舞うらしい。


「昨日バニーマン見たら食べたくなったの」

「ヤギ乳の人にバターと卵も売って貰ったのよ!」

「ここの人はお貴族様みたいだね(笑)」

「アルムがうるさいから高いけど買ったのよ!(笑)」


「クルム姉が作り方知ってるんだもん!」

「甘いの食べ過ぎだよ(笑)」

「今日は食べないわよ!明日合格してからね」

「はーい」


「アルムはアイスクリーム作っておきなさいよ」

「分かってるわよ!楽しみー!」


シズクは黙ってかまどでクルクル回している。


この世界の人は卵を生で食べない。大体炒り卵にして食べるのだ。慌てて浄化した。


ウサギ獣人とエルフは食べてるのか?

そう思ったら火であぶってるから良いのか?と納得。


「明日の試験は9時から?」

「そうですよ」

「僕の時はお昼前に終わったからお昼は家だよね?」

「お昼は合格祝いだから私が用意するわね」

あ!お昼からパーティーなんだ。


「僕は朝からお昼まで聖教国に行ってくるね?」

「うん、わかったー」


「あ!渡すの忘れてた!」


「合格したジョブ申請でクルムさんは治癒士や錬金術師のジョブが付く筈だから、これはポーションケースだよ。こういうの使うんでしょ?」


「街にはこんな格好いいのがあるのね(笑)」

「知らなかった?」

「ちょっと待ってて・・・」

マジ凄いの持って来た。マニトウの世界だ。


「エルフのMPポーションはこんな感じ」


角の中身を削って木で栓。持ってる感じは細い人参だ。

骨のお皿に軟膏が入って蓋もピッチリ締まるように骨が加工されている。多分、頭蓋骨だ。そんな軟膏使いたくない。


原始人なの忘れてた。


応急処置で出されたら原始人PTとバレてしまう。

いや、皆怖がって飲まずに逃げて行く筈だ。


「骨だと嵩張るから、PTはこっちを使ってね」

「アル、ありがとう!」


クルムさんが剣帯のベルトにケースを吊った。シザーバッグ風の良い感じでお洒落だ!


「似合う似合う!すごくお洒落だね!」

「そう?ふふっ!」

「都会のお洒落な錬金術師のお姉さんだよ!」


ポーズを決めるクルムさんを褒めておいた。




次回 169話  えい!えい!

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               思預しよ

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