第163話  心の澱み



神聖国へ布教に行くと、ミスリル鉱山となったカルベール郡にてドワーフが愛想よく仕事を引き受け忙しいと聞いた。


ドワーフと聞いて思う所もあり、布教を終わらせ行ってみた。郡都にドワーフがいつのまにか沢山いた。しかもにこやかなドワーフがいっぱいだ。


間違いなく布教に巻き込まれている・・・


評判の良いドワーフの店を訪ねた。


8人程いるドワーフが全員布教され愛想がよい。

ヤバい。作って欲しい=命令となる。



マジックバッグから出てきた年代物のミスリルの鎧と聖騎士の鎧を見せて同じ物が作れるか聞いた。出来るし高性能にもなるとのこと。


しかし、プレートアーマーの時代は終わってると言われた。重装騎士は弓か魔術士を死守する固定砲台スタイル。現在では使われない戦術と言われた。


今はスピード重視で、魔法士と共に軽鎧のユニットで騎士が縦横無尽に戦うスタイルと丁寧に教えてくれた。お父様にも教えてもらってたわ。



なんか聖教国のフルプレート見て思い付いた俺の構想おわた。

聖騎士は穢れの盾だから後衛死守の重装固定砲台戦法だわな(笑)


ミスリルのフルプレートと盾に物理、魔法障壁を張れば身体強化の魔力込みでカチカチの前衛が出来上がると思ってた。俺がチキン過ぎてを築き上げていた。ミスリルで覆われる安心感がハンパ無いからな。


こないだと言うと、聖騎士鎧の魔法障壁の魔術紋が付いてたらミスリル自体が身体強化の魔力を纏うので全然大丈夫と言われた。



うーん。と考えた。


うちのPTオールアタッカーの縦横無尽の超攻撃特化。


マジックバッグから偶に出た16セットの骨董品的ミスリル鎧。貴重な物と売らなかったがPTスタイルも固定砲台と全然違うのを説明してプロに全部任せた。

年代も別々の古いミスリル鎧を原料にしてもらう。


神谷家の家紋を絵にかいた。丸に蔓柏つるかしわ。左胸に付けてパーティーのマークにしたい。


半年ほど掛かると言われたがお願いした。

(でも命令だった)



・・・・



夕食にハウスに帰ると今日は4匹狩ったそうだ。

一匹を3人で捌けば時間も変わらないとの事。


シズクがやっと名を貰えて精霊の存在意義を示す事が出来る。とエル様に聞いたのでシズクに振ってみた。


「僕の魔力で魔法使ってみる?」

「是非!アル様のお役に立ちます」

「食事後、海で使ってみる?」

「はい!」


姉妹も海に行きたいと言い、食べてる間からソワソワする。お茶も飲まずに海商国の海沿いから北へ向かって大陸をドンドン跳んだ。


調子に乗って北上したらかなり寒い!12月みたいだ(笑)

この辺人がいないから、ここにしよう。波が岩をヒタヒタ洗ってる海岸線。


エルフ姉妹が魔法で明るくして大喜びで石を海に投げている。

岩場へ行って二人でじゃれている(笑)

海藻見せあってナマコ掴んでる。それ食べられるけどな。


「魔力はどうやって渡すのかな?」

「言って頂けたら使わせてもらいます」


「そんじゃ、同じ事やってみてね」


2000m先に、水深45m程の海底から隆起させて行く。ゴゴゴゴと揺れながら海面の海が凄い流れを生んでいく。俺は海の中でも視えるので暗いの平気。すぐ土魔法ⅡLv5になった。


エルフ姉妹が岩場から逃げてきた。

「ハイランドの穴の逆?」

「そうそう(笑)」


どんどん隆起させて行く。土魔法ⅡLv6になった。

なかなかの島が出来た。のは良いが岩場に一発ドッパーンと波が来た。



「あの島を元に戻してもらおうかな?出来る?」 

「やります」

「危なくないのね?」

「うん、波だけ気を付けてね」

「分ったー!」もう二人で走ってる(笑)


同じ様に島が沈んでいく。

俺より早かった!島の在った所に大渦が逆巻く。


「シズク!すごいぞ!」


「次はこれだ」

海にアースウォールを海底から建てて行く、土台1000mを固めて、10mの厚みで海面までどんどん伸ばして行く。海面上5mまで伸ばして止める。土魔法ⅡLv7


「同じものを横に繋げてくれる?」


「はい」



シズクの方が壁建てるの早い(笑)


2000m×10m×50mの壁が出来た。


「ありがとう、だいぶ魔力は使ったの?」

「信じられない程使いましたよ(笑)」

「シズクの魔力で出来るかな?」

「あの壁を二つまでなら」

「それなら1000m×5m×50mなら8つ?」

「はい」


「そんじゃ崩してもらおうか?」

シズクにも言いながら半分ずつ壁を崩し始めた。

全部元に戻したときには土魔法ⅡLv8だった。


「シズク魔法制御が凄く上手いんだね」

「制御と言うか直接具象化してるので(笑)」

「あぁ!言ってたねぇ(笑)」


「終わったのー?」

アルムさん達が帰ってきた。


頷いて話を続ける。


「充分!シズク、戦争を止めるならこの壁作っちゃえ」

「分かりました!」

「作った後はシズクは木に逃げていいからね(笑)」

「はい(笑)」


シズクは俺が何も言わなくても分かっている。


「とにかく緊急の場合は考えるより先に作っちまえ」

「はい」

「作った後は僕が何とかする」



「アル君、戦争止めるの?(笑)」

「アル、大丈夫か?」


「ううん、目の前で兵が雪崩れ込む様な戦争も有るかも知れないでしょ?シズクが何が出来るか知っておきたいの」



少し時間があるので俺も魔法制御(魔力制御)を練習する。


用水路を作り石の硬度にまで固めてみた。

「これは時間が掛かるなぁ、練習あるのみか」


今度は石のブロックを作ってみた。大質量の土を石にするのは時間が掛かる。


「シズクも作ってみ」とにかく魔力を使わせてやる。


シズクも石のブロックを作っていく。


エルフ姉妹が1mの石のサイコロを触っている。

あ!身体強化で転がした(笑) そこまで軽いか?


「あ!もう20時過ぎたね、帰ろうか」


石を全部砂に変えて行く。土魔法ⅡLv9になった。



みんなと遊んでいて思う所があった。


こうやっている最中にも困ってる人はいる。自分で抗わずに、俺に投げられるとめんどくさい。言われた通り動くのは命令で使われるみたいで嫌だ。そんなのはやらされてるみたいで嫌なんだよ。


人の執着や思い込みや面子メンツ、欲に踊る勝手な都合。理不尽な願いに心がよどんですごくモヤモヤする。



そうだよ。何で俺が!って思って嫌だけど・・・


詰まるところ心配しちゃうんだよ。


暗い海を見ながら思った。



帰り際にクソ!と呟き、雷を一発海に落とした。



・・・・



皆をハウスに送って、一人でハムナイ国に跳んだ。ポロムスの民が戦場から帰って1か月以上経つ。


領主の対応を見に行った。


そういう言い訳だよ!(俺は誰に言い訳してんだ)


領主には隷属紋が付いたままだ。

領主の対応を見て安心した。森深い耕作しにくい土地から、豊かな領の保有地を割いて褒美を渡し安堵していた。


そのまま目当ての物を強奪する。


ダイロン公国に慰謝料にする物が欲しかった。


領地の特産を検索すると領地でサファイアが出るらしい。サファイアで検索すると金品と一緒に保管してあった。


コレか?と視た、かなり大きいサファイアだ。

手間賃に貰うぞ。これであんたの心配も無くなって安心して寝られるんだからな、俺との取引だよ。


ダイロン公国って強いのな、視て良く分かったわ。ハムナイと全面的に戦ってるこの国も一目置いていた。


かなり大きいサファイアだけれど、個人ならともかく国対国じゃ対価にゃ弱いよなぁ・・・。


領主からサファイアの情報を抜き取った。

宝石は山岳地帯の露天掘りから採掘していた、最上級のサファイアの情報を持って鉱山から最大の鉱石一点強奪を試みる。


初めて挑戦のに力も入る。


やってみたら無理だった。要件がファジーすぎてダメ。

変に強奪するとゴミまるけになるから注意してる。


サファイア原石・1m・塊・強奪!>無い。


無いものは来ないわな(笑)


90cmが1個来た。上級品かどうか分かんない。

80cmが1個来た。これで比べたらいいや。


視たら80cmの方が価値が高かった。



・・・・



21時半。

ダイロン公国宰相はまだ起きていた。


教皇セットに着替えて執務室に音もなく姿を現した。


「ヒロウズ宰相閣下ですね」


突然声を掛けられ、アビー・ヒロウズ宰相は相手を見て驚いた。

間違いなく王族だった。


血色の良い彫りの深い顔に、王冠の乗る髪の繊細さと美しい金色の光。右手に杓を持ち、体には高貴なローブ、足も見慣れぬ靴を履く小さな子供。


左手で唇に指を当てて「シー」と言う子供がいた。その左手に2本の魔道具と思われる指輪もある。



「ヒロウズ宰相閣下、縁あって拾った物を届けに参りました」


「高貴なお方が夜分に何用ですかな?」

アルは一歩も動かずその場で左の手の平を見せる。


「この様な物を拾った者がおりました」

「な!なぜそれが!」

「拾った者から取り返してまいりました」


「・・・」宰相は金銭の要求と思った。


「お返しいたします」

机に近付き宰相の広げた書類の上にそっと置く。


「え!」


「指輪を隠した者から慰謝料を頂いて参りました」


執務室の中央にサファイアの原石の塊を置く。第二公女が捕まった時の金品や武具も並べて行く。


「アドワ王国も知らぬ物を返せと言うのも無茶です」

宰相が開いている書類を指す。


「その様な物で争うのは愚の骨頂。国が傾きますよ」


サファイアの原石を覆う岩石の禿げた所に光魔法を照射すると石の内部からまばゆい紺色の光が乱反射して表面に跳ね返ってくる。


「・・・」


「所詮は人が決めた価値。人が決めた国宝です。人が決めた価値に振り回されて神から与えられた命、幸せに過ごす民を苦しめてはなりません、それはただの石ですよ」


「見て下さい、美しい宝石も元はこの様な石です。手間暇かけて磨かれてやっと生まれ変わります」


「まるであなたの様です。若い時、あなたを嘲笑あざわらった学友がいましたね。己を磨いて登ったなら分かる筈。絶えず努力したあなたなら分る筈」


「あなたもバカらしいと知ってるじゃないですか」


宰相はブルッと身震いした。


「指輪の返還と共に原産地最大のサファイアの原石を慰謝料として当事者からと大公に示せば国の威も保てるでしょう」


「神はいつも見てますよ。あなたの信念に掛けて国を良くして下さい」


「あなた様は?」


「それでは」それには答えず手を振りながら消えた。


執務室に残された物は存在感を放っていた。



・・・・



公女は国を抜け出し、お忍びで戦争国を歩き、物珍しくキョロキョロと街を見て回り密偵として捕らえられた。侍女は捕まらず公国に走った。


外交手段で帰れる筈だった。

単に自国から逃げただけだ、国に知られたら連れ戻される。


持ち物から他国の貴族と領主には思われていた。

そして密入国で内情を探る密偵と思われた。


ある日、牢から脱獄して居なくなった。専門家を呼び、持ち物を鑑定すると指輪が魔道具なのが分かった。


ダイロン公国の第二公女を証明する指輪。アルの持つ指輪に希少な宝石が付いた代物しろものだった。


公女が成人の16歳に賜る宝石は国宝。認定した国宝を姫の輿道具として持たす国の威信だった。ダイロンの国宝が輿入れした国の宝として直系に受け継がれていくのだ。


3週間後、侍女は国に帰って報告したが、その時には公女が帰って来ていた。輿道具になる筈の指輪は取られたまま・・・。


国に問い合わせても否定する。


ダイロン公国の公女を牢に入れて逃げられた。元々鑑定で持ち物を調べなければ分からなかったのだ。そんな事は知らない事とした。領主も恐れそんな事実はないと国に隠ぺいしていた。


指輪の返還を求めるがその様な事実はないと国が言う。

国が知らないのだ、当たり前だ。


しかし侍女が見ている、公女もお付きの従士もどこの領主に捕まったか知っている。取り戻さないと恥になるのだ。汚名になるのだ。・・・バカらしい。


誰も悪くない。皆が事実を適正に判断してる。


大公は不思議な力を持つ俺と協力して取り戻してこいと厳命する。俺はこんなコソ泥みたいな真似を絶対見られたくない。わがまま公女と取り巻きを引きずって余計な泥沼にハマるだけだ。


そんな石一つに恥だ汚名だと謁見の間で騒いで娘を出すバカ親の言う事なんか聞きたくなかった。ぶん殴ってやりたかった。


公と私で見せる顔が違い過ぎだ!そんなに家族全員で心配するなら出すな!クソバカ野郎共が、笑うわ。それで俺がケツを拭く(笑)


恥ずかしいお稽古を見せる無礼な公女が悪い。


牢の中に手を差し伸べた俺が一番悪い。


何もしなかったら外交手段で帰れたのかも知れなかった。



俺は密偵として捕まった公女をその場で知って逃がしただけ。

親も子も喜ぶ姿が見たかっただけ。


次男家族が助かった時のラムール会長の顔だけでいいのに。



俺が一番悪いから、ケツを拭く。



・・・・



22時に帰るとクルムさんが裁縫していた。


「頑張るねぇ」

「終わったのか?」

「うん?」

「あの娘の事か」

「・・・」

「上手く行ったのか」

「行ったかもしんない」



「いいもの上げようか?」

「なにかしら?」裁縫の手が止まった。

「ハイエルフのシロップのレシピ」


「これね」B5判4ページみたいの出す。


「!」目が見開く。

「あの蜜はハイエルフの秘伝か?」

「うん、重要機密だった(笑)」


「あと、パンケーキのレシピ」


「!」

「これね」B5判を差し出す。

「両方とも世界樹が無いと作れないからね」


「場所分ってるよね?(笑)」

震える様にブンブン頷く。


「あとねぇ、これとこれとこれ」

B5判の束を出して行く。


「それはなに?」

「エリクサー始めハイエルフの秘薬の作り方」

「なにー!」目が10cm程飛び出た!(笑)

「静かに!」口に指を当ててシー!

「・・・」


「アル、どうやって盗んできた?」

「盗んでないよ、埋める前にもらったんだよ」

「内緒でもらったんじゃろ?」


「うん(笑)」

「・・・」


「大丈夫だって!エル様も知ってるよ(笑)」

「本当か?嘘じゃなかろうの?」

「うん、知ってるって!ほら聞こえない?」

「・・・」耳を澄ますが嘘だった。

「神様は何でも知ってるから大丈夫!」


「僕11月29日で13歳なの。パンケーキお願いね」


「それクルムさんしか持って無いからね、無くしたらエルフの宝が無くなっちゃうよ」


クルムさんはレポートの束を胸に抱いた。


ハイエルフの秘伝はエルフに託された。

世界樹を持つ者しか作れない。



・・・・



朝、パンの海苔巻のりまきが出てきた。


「・・・」

「シズクもメイプルシロップ掛けて食べている」

「昨日海で取ったのよ」

「え?」

「岩に赤黒いの付いてたでしょ?」


あ!ライトの精霊魔法使ってたな。


「海は初めて行ったけどすぐわかったわ」

「海辺のエルフの食べ物よ」


海の野菜みたいな?視たら岩海苔いわのりと出る。


パンの柔らかい所が千切られて海苔巻きになって切られてメイプルシロップで召し上がる。少しの塩と磯の香りで美味しいのがウケる。


アルムさんが叫ぶ。

「もう!このシロップがあればもう何もいらない!」


「あ!」


「・・・これこれ」皆が注目(笑)


インベントリから壺を出す

小壺で冷やして飲んでみる・・・大丈夫だった。


インベントリは時間経たないけど菌が死んで変質とか怖かった。時間経たないから死ぬ時間も無いのか?死ななきゃ入らないよな、貧民寝てたら建物取れなかったしな。


小壺に汲んで皆に冷やして渡す

「!」

「!」

「おいしーい!」

「ホント美味しいよね」

「シロップと腐乳があれば何もいらない(笑)」

「分ればよろしい(笑)」


思わず一気に飲んじゃったシズクとクルムさんが涙目なのでもう一壺出した。初めて飲んだらそうなるよね。分かる。



シズクの手に昨日の晩の巾着があった。


俺はこの人たちが大好きだ。



・・・・



巾着もらってシズクが上機嫌。


大森林に入る前から吊っていた。

容赦なかった。鬼だった。


北東の門からダッシュ!大森林で4匹血抜き。


今日の豚バラは全部貰って教会の孤児に持って行く。ちゃんと収益がある教会は持って行かない。ロスレーン領ではパーヌとシレンの教会が苦しい。


ロスレーンの教会?儲かってウハウハよ。炊き出しまで定期開催する偽教会だ。聖騎士で大司教の俺が偽教会に顔など出せん。


また、解体終わってお昼をギルドで頼んでもらってシレンの教会に飛ぶ。肉を渡して小金貨2枚喜捨して帰る。

もうお坊ちゃんとバレてるし。


そのまま、パーヌの教会へ飛ぶ。肉を渡して、小金貨2枚喜捨して帰る。どっちも新しい孤児は増えてない。

酒屋でありったけの大壺、中壺、小壺を仕入れる。パーヌへ来る理由の一つだ。


ロセとミニスの開拓村に跳ぶ。

この村は赤丸急上昇の優良な村だ、4年目でまだ税の優遇期間

中なので、色々収穫を売って村の荷馬車や鳥やヤギを飼うようになっている。


ロセの家に行くと大きくなったミニスもいる。

お昼前でかまどに火をくべている。


「おーい!」

「あ!アル兄ちゃん!」

「アル兄ちゃんだ!」

「昼前だからな、肉持って来たぞ、鍋に入れちまえ」

「うん、ありがとう!」

「食べ切れないだろうから村で分けてやれ」

2匹分で20kgのバラ肉だ。

「はーい、ごはん食べたら配って来る」

「ここの木の枝折れたのか?」

「俺が乗ったら折れちゃった(笑)」

「夏暑かったろー(笑)」

「裏の日陰で薪割りしたから大丈夫(笑)」

「俺も昼だから行くな」

「うん、ありがとう!」



・・・・



ギルドに行くと、なんか妙な雰囲気。シズクがPTに囲まれて喋っている。視るとシズクがPTに誘われている。えー!マジで?


頭を下げて断り、机に戻って俺の手を取った。と思ったら俺の手でバイバイしやがった!(笑)


俺がPTに襲われたらどうすんだ!

可愛く笑うから、まぁ許す。


俺、PT誘われた事無いのに!とても優秀なのに!

・・・優秀を見せて無い。誰も知らないわ。



お昼食べたら3人はショッピングなんだって。

食堂のカウンターで小壺を出しながらバイバイした。



・・・・



葡萄ジュースが少ないので食堂で補充して行く。

ギルドのおばちゃんが目を剥くほど小壺を出して行く。どんなけ師匠と導師が飲んだかって話だよ。俺が飲んだ訳じゃねぇよ。


入れ終わったら中壺を出して行く。

ミカンジュースも買ってくれない?と言うので大壺も並べて行った。



そんな中、机で獣人のお姉さんとPTの言い争いが始まった。プレートに毛が入ったとか獣人は汚いとか因縁付けられてる。


お姉さんが席を立つと追いかけた男が肩を掴む。詫びもねぇのかよとヘラヘラ笑ってる。


二人の小競り合いが始まった。


すぐにお姉さんに付いた(笑)


下心無いよ!先に言っておくからね!(誰に?)

だって視えてんだもん、獣人差別の心が。


「お姉さん、大丈夫?」

「危ないわよ、下がってなさい」


豹の獣人。前衛も斥候もこなす前衛オールラウンダー。尻尾がとても長い。


「大丈夫、一応魔鉄級5位」

「身を守れるなら参加しなさい」


「何だよ?子供連れてんのか?」

「ううん、バカの相手は子供で充分だから(笑)」

「なんだとぉー!」


机のPT5人が立ち上がる。わーい!揉め事だ!揉め事だ!初めて見た!やっとテンプレが来た!

(お迎えに行っている事に気が付いてない)


恩寵は・・・やめとこか。

シェルも居るし。

(はいです!)


「あれ?抜かないの?(笑)」

「子供に抜いてどうすんだよ(笑)」

「そんじゃ遠慮なく!」


飛び込んで腹パン。くの字になった頭と服掴んで机の上に投げてやる。派手に飛んで行って机の皿から何からぶちまける。


「子供がやったぞ!」周りが叫ぶ。


飛んでった奴が食べ物まみれで赤鬼だ。


お姉ちゃんに二人行ったので一人を足払いで転ばす。

お姉ちゃんはそのまま格闘術で戦ってる。


赤鬼が掴みかかって来たのでそのまま一本背負いでビッターンと食べ残し入れに叩き付ける。


「あんたやるじゃなーい!(笑)」一瞬顔向けてニヤリ!


「このガキ!ぶギャ!ギャ!」


トレイ置き場の木のトレイが崩れかけたのを直し、そのままトレイ三枚重ねの往復ビンタでKO!


4人来たー!わーい。良く視ろよ!一発も貰うなよ。


拳の攻撃を躱す、逸らす、受ける、流す。合間に重いのを一発入れて行く。身体強化Lv5だと受けてもびくともしない。


なんかPTvs俺になって来てる(笑)

命のやり取りじゃ無いって面白いな!食堂のギャラリーも沸く。無手だと暴れ放題になるんだな。最高!


大食堂のギャラリーの歓声が凄いので〆て行く。


迫る拳を外に払ってカウンターで顎に掌底、意識を刈り取る。

脳が揺れた瞬間に棒立ちでくず折れる。



子供の小回り、とんでもない回転の回し蹴りで吹っ飛ばす。俺に生まれた力を全部相手に渡す。これもある意味刃筋と一緒。腕が陥没して飛んで行く。アルムさんの力の渡し方を勉強させてもらった。



殴りかかる奴の手を掴んでお姉ちゃんの相手に横から投げ渡す。

相手の重心に間違いなく渡す。


相手はいきなり真横から運動エネルギーの塊を渡されて堪らず絡んで飛んで行く。


二人が起き上がるところを助走を付けてドロップキック。

残った一人にお姉ちゃんが走り込んで腹パンで終わった。


誰も剣を抜いてこなかったな。最低限のマナーっぽいな、俺もギルドで剣抜くのはやめよ!凄く気持ちいい暴れ方が出来た。


「あんた!奢るわよ!」お姉ちゃんの出した手にパーン!

「僕、アルです」興奮冷めやらぬ観衆の中で自己紹介。

「あたしジェルニス!」

「グレープジュースで!」

「了解!」


言いながら、絡んだ奴らにヒールを掛けて立たせて行く。

転がり散らばった椅子を直しながら6人全員治してクリーンしてやった。


「お前、無茶苦茶しやがるなぁ(笑)」

回し蹴り飛ばした冒険者が人懐っこく笑いながら言う。


「スカッ!としました(笑)」


たまったもんじゃねぇ、もう絡まねえよう言っとくよ(笑)」


「またやりましょう!(笑)」

「お前も大概たいがいだな!(笑)」



お姉さんの所に獣人が集まっていた。

人の子供が助けに入ったのでいつもと勝手が違って見物に回ったの知ってる。劣勢なら皆が参加するつもりだった。


お姉さんの所に行くと、他の獣人達が勝者はお前だ!と子供の手を掴んで大食堂の天井に向かって高々と上げてくれた(笑)

グレープジュースが3杯も机に乗って、めでたく俺も獣人PTに誘われた。回復士として・・・実戦の実力見せたのに!



色々悩んだ心の澱みが抜けていた。



司祭やシスター、孤児のありがとう。ロセとミニスのありがとう。ジェルニスさんの獣人仲間の奢りのジュースが胸につかえたモヤッとボールを流してくれたのかもしれない。





次回 163話  最高の祝い

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