第159話  飛ぶ草船:ウルマ



10月15日。


聖教国から皆を送って、9時半頃メルデスに帰るとクルムさんのバッグは全て出来ていた。どんなけやっとんねん。


に側板も底板も入って、しっかりとバッグの形になっている。20個間違いなく動作を確認すると言う。


アルムさんは昼まで寝ると部屋に行った。シズクは樹に帰ってるらしい。俺も色々とやることや考え事はあったがクルムさんの話に付き合った。



女子おなご好きのする袋は作らんのか?と言われた。


作る気満々ならお願いしようと思った。将来の女子おなごの為に!アルムさんがあれだけ欲しがったクルム印のブランドバッグ(笑)


クルムさんが家で暇なら丁度いい。


マジックバッグの口を測って合うバッグを買いに出た。

(口を測るのは縫い付けの為だけで空間付与したバッグは口の大きさは関係ない、アルの腕輪に口が無いのと同じ原理だ。折が有れば後述する)


クルムさんに北街(北ギルドの街区)を案内された。

食肉や素材採取のソロや鉄級6位の比率が高いので年齢層が低い。安めで派手な布やお洒落な巾着や布袋が多いのだ。


クルムさんはの布をここで探して作ったそうなので自由に選んで貰った。色彩感覚が独特で、アルムさんが魔獣皮のバッグを渡して頼んだ袋は房まで色とりどりの綺麗な巾着に出来上がっていた。


良さげな袋を選んでもらって、布や糸も買って行く。


帰りに北門から出て、マジックバッグの開錠を行った。今回の亡骸なきがらは8人だった。手早く大森林で墓を作って埋葬していく。マジックアイテムは年代物ランタン多数。例のごとく干からびた食料や薬、ミスリルや武具、貴金属、金貨が一杯貯まった。


シズクは木に住んでると言うので迎えると言う。そこら辺の木の前で祈るとすぐにシズクが出てきた。


そこは世界樹でしてくれ!折角植えたのに。


こうやって世界樹の御子に会えると


誰が思うかそんな事!

直に世界樹行っちゃった俺は悪くない!絶対悪くない!



クルムさんは昔、村の祈祷お婆々だったみたい。ハイランドの元老院が刷新した何百年も前に族長らと世界樹に招待された普通のエルフだ。身体強化と格闘術、短剣術、弓術は凄いが剣術や鎗術とかそんなに高くない。


まぁ、年齢的にも精神的にも出来上がった善良な人だから恩寵は全部Lv10にしてある。


帰り道に武器屋が有ったので、休み中の盗賊鹵獲の鉄の武具を出したら全部買って貰えた。やっぱ輸送分のお金が入って無いので1/5位の値段で全部売れた。


少ない量のうちに冒険者の聖地で売ると値が高い!やっぱり溜め込まずに地道に分別しないとダメだよ。



・・・・



露店でお昼を色々買って、アルムさんを起こして久々に4人でお昼にした。


クルムさんがダンジョンに入れないから3人でオークを毎日3頭捕ればすぐ魔鉄級5位になれると作戦をる。


え?と思うかもしれないが貴族が級を上げるには普通のやり方だ。ギルドに肉が入って実績とポイントが上がるだけ。そうして級を上げても武術試験で魔鉄級には上がれない名目だ。(貴族は忖度や身体強化持ってるから魔鉄5位や銅4位ぐらいは上がれるとは思う)


話をしてたらシズクも一緒にやると言う。


俺は昼からギルドで飛行する魔獣、飛行する物体についての記述を調べに行くので3人で狩りに行かせた。



・・・・



昼からギルドの資料室に向かった。


ギルドの資料庫(学校の図書館並み)で色々調べると700年ぐらい前から翼竜に乗った獣人、人の竜騎士団は確認されている。


体長15m~20mの火竜と呼ばれる翼竜は体内のメタンガスを元に帯電した牙で着火し魔力で増大させブレスとするとある。2本のかぎ爪。200kg以上あるオークもかぎ爪で吊れるのは翼膜の揚力を魔力増幅して飛翔するらしい。



1800年前にウルと呼ばれる底に板を置いた草船に乗り、浮く乗り物ウルマを操り戦った部族の話があった。

中央大陸とあるが、何処の中央大陸か分からない。


ウルマの民で検索しても出て来ない。

部族が同化してしまったか併呑されたか、ウルマの技術そのものが飛行兵器だ。


調べて行くと、信憑性の高い記述があった。


国や大陸の記述は無いが、その国の滅び方はあっけなかった。


空から来襲する民に対して草船だからよく燃えたと書いてある。

その時飛んでいたのは2人乗りのウルマ、15の草船編隊。上空から矢を放ち、石を落す攻撃。


50~70m上空への火矢による迎撃と陣地の飛行場に並ぶウルマへの焼き討ちで撃退したとある。石を落す関係上高度を下げないとダメなのか、魔術紋か魔法使いの技術か能力かの問題が気になった。


まぁ間違いなくそれがあった。それで十分だった。



・・・・



ハウスに帰ると3人が得意満面だった。


シズクの指す方向へ行くとオークが木に逆さに吊られているらしい。そこへ行って血抜きをしてる間に次の逆さ吊りのオークをシズクに指示されるらしい。


午後からそんなでオーク3匹狩ったと言う。

それ、シズクが狩ってる気がするが・・・


確実に狩れると言うのでシズクも冒険者登録してきたんだって。

明日から3人で1日中、街のお使いクエストを受けまくると燃えていた。俺の明日はサントに小型船を注文しに行って来る。


アルムさんが今日の首尾を報告してる間にもクルムさんは料理を作ってくれている。



・・・・



朝起きると、応接でクルムさんが裁縫している。

一緒に行く?と誘おうと思ったが串焼きより裁縫か?と思い直してアルムさんと二人で走りに行った。


身体強化Lv10の人に「体力付けんかい!」とは言えない。

アルムさんが変なだけだ、俺とじゃれ合って走るのが楽しいらしいから・・・串焼きも理由かな?


身長も139cm。覚醒してから19cmも伸びたからテテテからテッテテになっている。タッタッタまでもう少しだ!(だいぶあります)



・・・・


サント海商国の造船所にレプトさんと来た。


小型船二隻作ってもらうと白金貨42枚と言われた。

一隻白金貨21枚だ(4億2千万)

世界樹の木で作った船ならその10倍以上の値と言われた。

船の艤装も何もない、魔動回路と船体と内装だけだ。世界樹で材料費無料、魔動回路と人件費と窓や帆と内装の材料費だけでそれという。


船って高過ぎ!


30m級の船を見たけど帆船そのまま(笑)

のある波を乗り切らなきゃだめだから舳先を頂点として細くないとスピードが出ない。船底に行くほど細くならないと波を切らない。結果、普通の帆船型になる。


帆をビリビリにして浮いたら空とぶ幽霊船だ(笑)

スケルトンの船長乗せたら恐怖の存在になるな。ダメだ!聖法騎士団が穢れの船と追って来る。



・・・・



ハムナイ国のタクサルさんの所へ行くまでの1週間でシズクとクルムさんの二人はペーパー級をクリアした。クエストボードに出ている掃除系は元より害虫駆除など一人4件の依頼をこなして、2人のラジオ体操カードに印鑑を集めて行くんだもん。依頼が無かったら東か北のギルドまで遠征してこなした。


鉄級6位になった翌日から三人はオークの吊し上げに行った。

あの三人冒険してねぇよ!肉屋してるよ(笑)



・・・・



1週間後。


レプトさんとハムナイ国のラムール商会へ跳んだ。


タクサルさんの顔を視てすぐに厄介ごとが分かった。


まぁ、厄介な事には知らぬ顔して商談に移る。新品武具セットなら銀貨60枚(武器20枚防具40枚)の6割の価格、銀貨36枚で売っていた。


戦争の無い平和な街の中古の武具なら半値までの価値らしいが戦争の場所では中古価格も値が跳ね上がると言う。今回は数が数だったので即売の形で安く抑えたので売れたと言う。



約9万5千セット。武具一式ワンセット銀貨9枚(9万円)輸送料銀貨17枚(17万円)合計26枚。取り扱い手数料でラムール商会はワンセット銀貨10枚(10万円)の儲けがあった。


うちの分銀貨26枚とラムール商会の分銀貨10枚を足して銀貨36枚。それがハムナイ国に売った武具ワンセットの金額だ。


レプトさんに渡される分のお金がこちら。

約9.5万セット×銀貨26枚=銀貨247万枚(247億円)

ラムール商会手数料がこちら。

約9.5万セット×銀貨10枚=銀貨95万枚(95億円)


実際の受け渡しは宝石なので俺は勘定出来ないが人の勘定してるのを視ると分かる、レプトさんに丸投げだ。

換金用魔石と軍用魔石、換金用宝石は全然わかんない。貨幣の金貨よりよっぽど高いのは分かる。金と宝石の相場も国で色々あるのにようやるわと感心する(笑)



宝石の受け渡しに1km先の岩盤の武器庫に向かった。

シートに被った木箱に積まれた換金用のパチンコ玉の様な宝石とレプトさんが個別に頼んだハムナイ国原産の希少なエメラルドの宝石があった。


レプトさんはそれを鑑定しニヤリと言った。

「本当に御子様のお陰だ!」


「それでまた商売を?(笑)」


「そうだよ、こんな国宝級は原産の国相手で、でかい商売じゃないと絶対出て来ないからな、ハムナイの話をした時からお目当てだったよ(笑)」


「さっすがー!」

「ラムール商会だけ儲けるのは不公平だからな(笑)」

「御子様、うちも儲かった!人員損失0は大きいぞ(笑)」


「さすがラムール翁の肝いりだ、これほどスムーズとはな」


「それではサインをお願いしようかな」

宝石の山をインベントリに入れた。



ここで狙っていたブツを出す。


「これでは、儲けられないですかね?」


「北の中央大陸の各国のミスリル剣です」

160振りを出す。皇帝の遺産とマジックバッグから出て来た奴だ。


「儲けられるに決まってるだろ!うちは武器屋だぞ!」

「武器屋さんならこれも?」


ゾンビたちが着けていた、クリーンした武具を出した。


「え?これ、ハムナイの武具じゃねーか」

「ゾンビが着てたのクリーンして綺麗にしておきました」

「・・・あの時の?」

「あの時の!」

「これ国軍兵の奴も混じってるぞ(笑)」


「あ!笑ってる!売れるんですね」

「売ってやるよ、売らせて頂きますよ(笑)」

「やったー!預けておきます」

「俺ばっか!御子様最高!」


視ると各国に番頭がいる、本拠地の番頭がタクサルさんだ。


「取引はレプトさんとですよ?」

「わかったわかった!」

レプトさんの名前を聞くと商人に戻った(笑)



「こんなのは売り先ありませんかね?」

歴代皇帝の王冠と貴族の貴金属だ。


「うーん・・・これは・・・」

「やっぱダメですね(笑)」

「売った事ねぇよ、こんなのどこで買うんだよ(笑)」

「そりゃ、自国の彫金士に頼むんだろうよ(笑)」

「商人長いが売ってる店を知らねぇよ(笑)」


価値がありそうで無いゴミに怒れてきた。


「値札付けて被って歩けば売れますよ」

タクサルさんに王冠を被せる。


レプトさんも護衛の人達も大笑いしてる。


「レプトさんも笑ってないで売って下さいよ」

とレプトさんにも被せる。


「やっぱりレプトさんも売り先知りません?」

「俺も知らねぇな」


「攻め滅ぼした国が自慢に持つんじゃねぇのか?」

「未来の商人の王様がそうやって被るんじゃ?(笑)」


二人共まんざらでは無い。


「うちの大将サントで王様だけど被ってないな(笑)」

「うちの会長も被って無いな(笑)」

護衛の人達が腹を抱えるので現地語だった、今気が付いた。


マジで売れないのか・・・そんならダメ元で分解するか。売れなかった貴金属は全部分解だ。二束三文でもゴミよりマシだ。


王冠を精霊魔法のイメージで分解してみた。

やっぱ地金とかは土の精霊かな?

(土の精霊でしたよ)

(やっぱりね)

ミスリル、金、宝石、銀、布に分かれた。


「これなら売れます?」

「なにやった?御子様」

「法術ですが・・・」

「売れるよ、普通に売れるよ(笑)」


ミスリルのネックレスから王冠まで全部出して倉庫で分離した。


金の塊、ミスリルの塊、銀の塊、胴の塊、色々な宝石に分解できた。重いから金の像と思ったら銅に金メッキだった。


「こうなっちまったらレプトの商売だな」

「御子様、この山を納めてくれ、買わせてもらう」

「ヤッター!わーい」


「皇帝の資産もへったくれもねぇな、原料になっちまった」

「御子様はドライなんだよ(笑)」

「売れなければゴミですからね」

「御子様、それは商人のセリフだぜ!(笑)」

「商人のセリフで間違いないな(笑)」


タクサルさんが目利きしてくれた。普通のミスリル剣と業物のミスリル剣を分けてくれたのだ。短剣にナイフ、片手剣、両手剣、総ミスリルの槍、ミスリルの斧、ミスリルの弓とかも珍しいそうだ。業物を作れる名の通ったドワーフの鍛冶屋は気難しいので作るのが大変と言う。


30程の武器は売るには惜しいので持って置けと返された。


ラムール商会の事務室で新たな商談に入る。

ヨーグルトドリンクを皆の分冷やしてあげる。


「すみません、お代わりを」

「お!言ったじゃねぇか!」

「え?」

「来てお代わりと言ったら、お土産渡すんだとよ」

「はい、お代わりね。それとお土産」横に壺も置く。


お代わりと壺に入ったヨーグルトドリングをもらった。

アルムさんもクルムさんもシズクも喜ぶ!わーい。


「ありがとうございます!」



・・・・


「御子様、ラムール会長が御子様を呼んでるんだよ」

あ!来た。


「いいですよ」付きあってられるか、断って終わりだ。


「話が終わったら、美味い飯を食わすから話だけでも聞いてやってくれ」


「わかりました」

「そんじゃ、レプトさんも一緒に良いですか?」

「あぁ、御子様のお付きだからな(笑)」



・・・・



ラムール会長の所へ跳んだ。


厳重な警護を潜り抜けてラムール会長の待つ応接に辿り着く。


視た瞬間に違う問題だった。



深刻な問題だった。俺を陥れる罠。


ラムール会長の次男家族の誘拐だった。



「御子殿、ワザワザお呼び立てして済まぬ」

「私のせいで迷惑をお掛けしたようで済みません」


「!」


「今、神から神託がありました」


「会長はどのような結末をお望みですか?」

「結末とは?」

「実行犯の処罰、黒幕の処罰、王の処罰」

「・・・」会長の顔が歪む。


「御子様、一体?」


「会長は苦境に立たされています、私の軽率な人助けの為に」


「え?」


「会長、私は宗教国の御子です。神のお言葉も聞けます。その3つのどれを選ばれても罪は罰せられ、皆が幸せになります」


「それでは会長の考える選択肢を追加しましょう」

「その話を持ち込んだ人間を全て罰します」

「罰するとは?」


「御子が神の代わりに天罰を下します」

「・・・」


「驚かないでください。戦争で人は死にます。神はそれを認めています」


皆が驚く。


「神が戦争を止めたことがありますか?」

「・・・」

「そういうことです」


「どうしようもない運命に巻き込まれて死ぬ。それはある意味天命だからです。それは抗えぬ混沌と申します。ラムール会長が抗えぬと言うなら御子が抗いましょう。神の使徒が人の混沌に負ける筈ございません。お頼り下さい」


「御子様、お願いいたします」


「分かりました、天罰はむごい物です。ラムール会長とお二人もここでお待ち下さい」


「御子様お一人で参られるのですか?」


「まさか(笑) 護衛を連れて行きますよ」




次回 160話  な!ななな!無礼な!

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               思預しよ

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