第153話  WiFi



世界樹のツインタワーからロスレーンに帰ってきた。


夕飯で家族にクルムさんとシズクを紹介した。


薬師、錬金術師でアルムさんのお姉さんという設定を皆が信じ込む。誰も思わん!お爺様の10倍以上生きてるなんて(笑)


シズクはエルフ村にある世界樹の御子と紹介した。誰も思わん!人間そのままの具現化してる大精霊なんて(笑)


うちの家族は生粋のコルアーノ王国人だ、3つも西にあるムストリウ王国自体知らん。聖教国にしょっちゅう行ってる俺が春画でやっと知った国だし、聖教国からでも西南に2つ目の国なのだ。



家族にもあの圧倒的な世界樹の姿を見せてやりたいと思った。



・・・・



世界樹を二本並べた翌日。



朝、クルムさんをメルデスの導師ハウスに置いて来た。今日は一日、荷物を並べてメルデス生活の準備をするそうだ。夕方迎えに来ると言ってベッドも置いてきた。


研究室の扉を開けて、クルムさんは机に大喜びした。

調薬、錬金術にピッタリの大きさで、使いやすく考えられた机を作った導師を褒めちぎっていた。


知る人ぞ知る机。 極めてるなぁ、あの人。



・・・・



交易路に有る街の開門村も今日で終わる。

商人の雨宿りよりも、開拓村の人達を優先したのよ。


そんな訳で、まだ作ってない開門村を作りに来ている。アルムさんが邪魔な木をスパスパ切って、門の守備隊に通達を渡して、聞いた行列の位置と人数分のハウスとガレージをポコポコ作る。


木を切るとシズクが顔をしかめるのでやりにくい。


邪魔にならない所に枝を植えて育ててやるとご機嫌になる。切った木が大分溜まってきた。捨てると顔しかめるだろうなぁ・・・


「よし!ギシレン完了」


「次はミリスに跳ぶよー」


言うと二人が駆け寄って来て手を繋ぐ。シズクは繋がなくても来れるみたいだけど。


都市持ち男爵家は一番最後にしたの。俺は死にかけだから足を向けたくないのだ。ハッキリ言って鬼門だ(笑) 


盗賊退治が広まってるとは夢にも思ってない。


守備隊に通達を渡し、開門状況を聞いて作っていく。

邪魔な木だけ切り、整地してポコポコ作る。植林する。やっぱ土魔法ⅡLv4って半端じゃねぇ、速攻で出来る。


ハウス、車庫、ハウス、車庫・・・


12時まで粘って、ミリスを終えた、一回ロスレーンに帰ってランチを頼む。


お昼を食べてからお茶をに庭の家を見に来た。家の中が資材の山になっていた。


「アル様!好きにやらせて頂いてます」

「あ!はい、外に作業場作りましょうか?」

「え?作業場?」

「仕事やり易くなると思いますよ」


家から10mほど離して15m×15mのキューブハウスを建てた。入り口は12mもあるハウスだ。窓穴とひさしも付けた。


家の入口近くまでアーケードも作っておいた。

馬車の車庫の大きい奴だ。


大きな資材だけキューブハウスに入れておいた。


「こりゃいいや!雨でも仕事が捗ります」

「はい、よろしくお願いします」


「領の木が沢山ありますが要りませんか?」


「材木商が貧民街の近くにいますがねぇ、木も乾燥してないとうちらじゃ使えませんや」


「あ!ありがとうね」


二人を置いて材木商に跳んだ。


「ありがとうとアル様が感謝をたまわるぜ」

「お貴族の子はやっぱすげぇなぁ」

「領主様の孫だしなぁ・・・」

「あんな魔法聞いたこともねぇ」

「門のアレもアル様だろ?」



・・・・・


材木商にやってきた。


「ごめん下さーい」

「お!どこの小僧さんかな?」


初めて言われる言葉でリアクションに困る。


「木を買ってもらいたいんです」

「え?」


「小僧さん、そこ大丈夫?転んじゃったかな?」


あ!お腹破れたままだ。自動着替えも善し悪しだな。寝巻から平服とか冒険服に着替えて気が付かなかった!2日ぐらい忘れてるよ。


誰も言ってくれないって・・・酷い!


「うん、転んじゃったの」

あ!いかん!この言葉はまずい。


「木をね!持って来たの。買ってくれない?」

「木って、棒の木じゃないよね?」


知っとるわい!そんな子供のガリガリ棒持って来んわ!


「ちょっと見てほしいんだけど」

「どれどれ?」外に出て来てくれる。

「こんな感じ」


大きいの出した。


「・・・」

「まだ枝とか払ってないんだけど」

「・・・」

「こんな感じでいっぱい」


ポコポコ出して山に積んでいく。


「待って待って待って!買う買う買う!」

「どこに置けばいい?」


全部仕舞う。


「番頭のライナです、こちらへどうぞ」

敬語になった(笑)


5分ほど離れた北門の近くに案内された。100m×200mほどの材木置き場と製材所があったが領にこんな場所が有るって初めて知った。


「こちらに積んで下さい」

「大きさは分けますか?」

「分けて頂けたら嬉しいです」


3つに分けてたがい違いに積んだ。

普通の木で大きくても直径60cm長さ15m位までだ。

それでも領の全体で300本にはなった。


「これ、開門村って分かるかな?門の先に雨宿りの建物を建てた時の邪魔だった木で種類も大きさも不揃いなんです。代金は領の執政官事務所に。契約書もライナさんの言い値で作ってアルに指示を受けたと言えば通りますから」


「え?アル様!アル様ですか?あの雨宿りの建物は手前も使わせて頂きました。凄い物をお作りになられましたね」


「役に立ったなら良かったです(笑)」


「あの様な物は何処にも無いと旅商人が申してました」


「そのうちに一人銅貨二枚とか取ると思いますよ」

「銅貨二枚!安すぎませんか?」

「領に交易に来る商人へのサービスですよ(笑)」

「感謝いたします」


「また、製材出来そうな木は持って来てもいいです?」


「喜んで買わせて頂きます」



・・・・



帰ったら、アルムさんとシズクが庭に座って家を見てた。グレープジュースを壺で出してやる。


「どうかした?」二人に壺を渡す。

「立派な家だねぇ」シズクの壺を冷やしてやる。

「立派になるといいねぇ」


内装四名、外装六名でやってるみたい。


外装の板が一枚一枚貼られて行く。張る前に湯気の出る何かを塗ってるので視たらだった。接着剤と出る。脂質で防水効果もあるみたい。手作業でも早かった、見ている間に一面出来ちゃった。板と板の合わせ目にもを塗って行く。


「アル様ー!」

「はーい!」


「このお屋敷は商人が好まれる色なんですが、アル様は貴族様なのでこの色を選びましたが如何ですか?」


に青系統の石の粉が混ぜられている。

あ!これ油性塗料なんだよ、すごい知恵だ!


「わー!綺麗!」

「綺麗な青!それでお願いします」


「屋根はそのままの色で雨と焼けに強い物にします」


「ありがとうございます」


皆で出したお菓子を摘まみながら見てると。窓枠を新しくした職人が届けに来たので、キューブハウスの方に置くように言った。両側から格子状にガラスを抑えているオリジナルの窓枠だった。高そう。


窓枠職人さんが何往復も運び込むのを見てたら、お茶ぐらい出したくなり家の前に休憩所とテーブル作ってグレープジュースとお菓子を置いて窓枠職人さんと大工さんに休憩してもらった。


メイドじゃ無くて俺が用意してるのに皆が固まっていた(笑)


15時までボーっと眺めてしまった。



・・・・



15時だよ。昼から休憩し過ぎ!


「アルムさん。中途半端な時間になっちゃった」

「ボーっとしてると早いよね(笑)」

「開拓村の村長の家行く?」

「行くー!」


実は90軒のモダンなレンガの家は各村に置き終わってた。引っ越しがあるから簡単に持ってこれない、急かす訳にもいかないから「早く移ってね」しか言えない。


家を置きに行って3日目に家を取って、ついでに恩寵漏れの人がいたら農業Lv1付ける。


3日経って引っ越しが終わってないとイライラするのは俺だけか?だって首都の目抜き通りの家だよ?平民なら羨ましい系の家だよ?執行書見せて置いたら、村長家族の目がハートなんだよ。


なんで3日経っても引っ越し出来てないの!

休み使って来てんのに!もう!


そんな感じだ。前回プリプリしながら帰って来た。


そこに行ってみる。



6日経って来た。

だからさぁ! やっぱやって無かった。


睨んで!と言うとバカを言う。


「今のベッドが部屋に合わな・・・」知るか。


執行書見せて強制執行した。

村長の農家をインベントリに入れて中身だけペッ!とレンガ作りのオシャレな家に置いてきた。



地図に刻んだバッテンの村長。眼にモノ見せてやる!

を見せたのが間違いだった。


俺が仏心を出すと裏切られるのかも知れない。


農家取ろうとしたら「それだけは、お許しを!」って言うからレンガの家返してもらった。


泣くほど愛着あるならもっと先(6日前)に言え!お貴族だって執行書を盾に鬼みたいな事せんわ。良かれと思ってやってるのに泣かれたら凹むわ!



また行ったら変な問題だった。



村長と次期村長の譲り合いで6日経っても終わってない。執行書見せて現村長の家を取った。中身をペッ!っと新しい家に置く。


「執行書には村長の家を交換するとある。この家は村長の家である。村長が変わった時には代官に届け出て家を交換する事」と大岡裁きで帰ってきた。



90軒のうちバッテン12軒は強制執行した。


開拓村もさぁ、最初は数に限りがあるから真面目に探したら時間掛かるし悩むから、何も気にせず地図上に書かれている出来たばかりの開拓村に行って足りない分の家を置いて来る。


これで終了!

大雑把な親切すぎて、怒って強制執行する御子。


俺、心が狭すぎて御子の資格ないかも知れない。そんな時に秋本の心にならないとダメなのに・・・



18時。


「アル君、お休み取るって全然休んでないよ」


「うん。でも開門村とか元から考えてた事だから出来て嬉しいんだよ。神聖国の事で思ってた計画と1年以上も遅れすぎてるの(笑)」


「そんな前から考えてたの?」

「うん」


「あ!盗賊いた!(笑)」

「え?」

「あっち!」


あっち見るが60km先なので見える訳ない。


「跳ぶよ」


言うとアルムさんとシズクが自動的に俺を掴む。


「もう麻痺させたから、この洞窟に8人いるよ」

「盗賊?」

「うん、引きずり出しに行こう」


またつまらぬ物を鹵獲してしまった。シートに包んでヘクトに跳ぶ。


「アル様!」

「オスモさん!」

「いつもの持って来ました」

「(笑)」

「罪状やりますか?(笑)」

「イヤ、いいです。無期以外今まで無いですし(笑)」

「いいの?(笑)」

「盗賊ですよね?」

「はい」

「そう書くだけです(笑)」

「それでは、お願いします」

「は!」


「アル君、何?無期って」

「一生鉱山で働く事だね」

「そうなの?」

「そうだよ、大体盗賊はそんなもん」

「えー!」

「だって、人に迷惑かけてんだもん」


19時近い!ヤバイもうご飯だ。


そのままクルムさん拾って家に帰ってきた。


「クルムさんってコルアーノは初めてでしょ?」

「初めてですわね」お!

「コルアーノのお金無いでしょ?」

「持って無いですわ」

「アルムさんよりお姉ちゃんぽい!」

「えー!」お前、えー!と言う資格ないぞ。


「バッグをこれだけ直せばお金になるけどどう?」

「どこを直すのよ、綺麗じゃない」

「華美な布をはいで、他の布か皮で作るの」


「作らなくても好みのバッグに貼り付けたらどうなの」


「さすがお婆々!」


「こりゃ!アル!」

「あ!間違えた、アルムさんが悪い!」

「なんでアルムなの!」

「アルムさんがお婆々お婆々と言うから!」

「アル!」

「ごめんなさい」ぺこり。


言い訳して逃げてしまった。


食事を呼びに来たアニーが場の雰囲気見て首を傾げた。


食事の後、散歩に行こうとメルデスの東ギルド近辺のお店を回った。東のダンジョンで一発当てた冒険者用に貴金属や服飾の店が多いのだ。


さすがにネオンは無いが、夜にこれだけの店が開いてるなんて領は何処にもない。クルムさんもビックリしてる。


「すごいわね!人間は恐ろしいわい」

チャンポンになってる。


「すごいでしょ!」エルフが鼻高々なのはどうだ。


「シズクはそれ、服も自分だよね?」

「はい、そうです」

「変えようとしたら変えられるんだよね?」

すぐに貴族のようなドレスになった。


「そんじゃいいや、気に入った服覚えたらいいよ」

「はい」笑ってもらうだけで元気出るな。



クルムさんに、マジックバッグにする時はの板と底板を作らないと中身が無いからペッチャンコになると教えながらカバンを見て回った。


魔獣の皮は針と糸が特注らしいのでクルムさんが持ってる物で縫えるカバンを20個チョイスした。革に合った色の糸も買った。


いかにも冒険者が持ちそうな革カバンやポーチだ。


一緒に両替商でナレス金貨50枚と帝国金貨50枚を交換した。


大体コルアーノ金貨80枚(4000万円)になったのでクルムさんに5枚(250万円)渡しておく。

クルムさんは金貨を2枚以上持つのは初めてと目を見張った。


「村と違って物々交換とか無いから気を付けてね」

「・・・」

「アル君?アルムの村バカにしてる?」


「イヤ、あの村ってお金、もしかして要る?」

「要る! 時もある」


「あ!苦しそうに言ってる!ほら見ろー!(笑)」

「アル君!(笑)」


「分かってるって!芋虫で交換でしょ?」

「それならお金より交換できるかも?」

「アルム!また余計な事をアルに!」



東門から出て開けた所に行った。


そこらじゅうの木にライトの魔法陣を付けたら花見みたいだ。身代わりの珠を皆に4重に首に掛けた。


買った20個のカバンやポーチと合った口の大きさのマジックバッグをセレクトして解除した。


高貴な人の遺体が6体出てきた。

女子が3人立ち会ってミイラ死体が出ても悲鳴上げない。


穴に並べて埋めて行く。空の墓所には本人の大事にしていた本やアクセサリを入れた。土魔法で出身地と名前を刻んでいく。


「アルよ、御子はそんな事も知るのだな」


クルムさんが寂しげにポツリと言った。


「これは悲しい作業じゃないです。この人の器が最後まで頑張って生きた証を作ってます。中の人達はもう生まれ変わって今を生きてる人もいますよ」


「我らの名前と一緒なのだな」

「そうです!一緒です」だいぶ一緒じゃない。ノリだ。


アルは遺品を浄財として使わせてもらうと決めていた。家族旅行もそうだ、その遺品で皆が笑えることに使えば財産が生かされると思っている。


20袋開けた、出てきた宝石、属性石、金貨、貴金属、武具と4月から貯めてたオークの魔石と一緒に買取に出した。


ミスリル剣は一振りならいざ知らず、高価すぎて買って貰えないので武具と一緒に持っておく。

1か月後にタクサルさんに引き取らせる(笑)


やっぱ貴金属と金貨は買って貰えなかった。

伯爵家の指輪を見せたらすごく丁寧に教えてくれたのだ。


・貴金属に付いてる宝石は大きさの見た目じゃ無くて、傷の面を爪側にしてあるので鑑定しにくい。


・彫金した金属は高価でも鋳潰すと金や銀を数パーセント失ってしまうらしい。


・全部ばらして貴金属と宝石に分けて流通させると手間が掛かるので捨て値以下になり貴族様が怒る。


・基本的に王族の冠の売買を聞いたことが無い。没落した冠は災いの元と職人が逃げる。


どうすんだよ!俺が破壊して宝石とミスリルと金に分けるのか?めんどくさすぎて死ぬわ。歴代皇帝の冠なんてどうすんだ。皇帝の屋敷の手すりに貼り付けに行ってやろうか。


買い取りは金額が大きく後日受け取りになった。


クルムさんはこっちの家に道具が有るのでバッグを作りながら寝ると言うのでメルデスに置いてきた。



・・・・



寝る時ベッドで良い事考えた。


世界樹の盆栽である。

鉢植えを持ち歩けば植えなくても良い?と思い付いた。


小壺に3cmちょろっと芽吹いた世界樹一本。

令子さんが台所の棚に植えたネギか!と一人ウケた。


シズクに見せたら大喜びで可愛がる。

クルムさんが小壺を包み込む可愛い肩掛けカバンを作ってくれた。


「そこら中に世界樹植えなくて大丈夫?」

聞くと大丈夫という。



シズクはいつも小壺を持って歩くようになった。

肌身離さず持っている。



世界樹が側にあれば小さくても力が増す。何で増すのか気になっていた。魔力が訳でもないからだ。



クルムさんとシズクを紹介に行った師匠の家で、小壺を窓際に置いてリリーさんとお菓子を買いに行ったのでビックリした。力が増す効果範囲内だから置いてったのか?色々視ても分かんない。不思議でしょうがない(笑)


携帯小壺のWiFiか!どんな力が高速通信しとんねん!


乙女の秘密みたいだったらイヤだから聞けない。こういう疑問はいつもすぐ教えてくれるシェルが黙る。おれの危機感知は鋭くなってる筈だ。


皆が何も思わないのが不思議でしょうがない。


俺だけ変だろ!と思うのは違う出身だからだろう。





次回 154話  新解釈

----------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る