第142話 雷撃の杖
獣人解放の森に囲まれた盆地に跳んだ。
アルムさんと(マジックバッグ認証解除の)ピクニックに来た。
獣人解放の盆地は今や聖地扱いだ。
大陸で語られる神聖国の無血建国物語は留まる事を知らなかった。無血で解放した立役者を周辺国は探した。
最初は
調べて分かった事が有った。
直前に聖女PTが帝都入りしていたのだ。
神聖国になってからも布教に回る筈の聖女が首都の教会から出てこない。布教に回らない。調べてみると聖女の魔眼は戦闘系と言う。
ユーノは当時神聖国唯一の聖女で首都を離れず仕事に明け暮れていたら吟遊詩人がユーノを謳い上げるまでになっていた。聖女が聖教国を率いるジャンヌダルクに謳われていたのだ。帝国に無血革命を起こしたヒーローに祭り上げられた。
英雄に祭り上げられ、語られるユーノ自身の心労もあった。春に他国の王族から聖女ユーノに
※魔眼を持つ御子、聖女は35歳の年季明けまでは結婚出来ない。その代わり結婚相手は周辺国の王族か高位の貴族である。
・・・
敷物をしいて9月の秋空の下、準備しているとアルムさんが奇声を上げ始める。
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
「何やってんですか?(笑)」
「この辺いそうなのよ」
森に何がいるのか視てみたが引っ掛からない。
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
なんかいるんだろ、放っておけ。
食べ物出して置いて行く。
串焼きを口で咥えながらマジックバッグを出していく。横に大きなホールを開けて準備は完了。
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
うるさいので串焼きとジュース持たせておく。
マジックバッグ一個目!の前に身代わりの珠を4つ付ける。
横のアルムさんに4つネックレスを掛けておく。
原始人がマニトゥになって串焼きとジュース持って奇声を放つ。
一個目開けてみた。2㎥。
死体は無い。よかった。でも干からびた食べ物とかエグイ。捨てる物と持ち帰る物に分けて行く。
視るとムストリウ王国って聞いた事無い国の王族だけど、聖教国の三つ先に有るな・・・。
金貨、剣、衣類、宝石、春画・・・
王家の秘密が出た! ※エロ本
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
二個目開けてみた。6㎥
ギャー!出たー!死体でた!ミイラいやー!速攻で精神耐性Lv10付けた。
ふう。
三人の遺体を掴み出すまでマジ根性が要った。
森に転移して穴に綺麗に埋めた。石碑に国名と名前だけ入れた。マジックバッグの持ち主だけ墓に出来ないという・・・あ!持ち物入れて石碑作ればいいか。仲間と一緒に眠れる。
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
まだあっちでやってる(笑)
敷物に戻って中身をクリーンしながら置いて行く。
3人の遺品にマジックアイテムが有った。全員王族だ。武具や防具もあった、三人のマジックバッグもあった。
マジックバッグが三つに増えた。
また知らない国の金貨だ、やっぱり王族だな。武具も防具も金掛かってるぞ。三男とか四男の扱いは冒険して来いみたいな感じなのか(笑)
金貨出てきても何処の国のか分かんないし。
あ!全部両替所に持って行くか?
どんどん認証解除していく。
知らない金貨が増えて行く。宝石は価値的に何処の国でも使えるな。あ!これって司祭の赴任先に送れば孤児院に回る。
入ってる物が画一的・・・
「あ!きたよ!」
「ん?」
「なんか空に白いのが、飛んで来てる」
ひばりの子?イヤひばりの子は飛ばないわ。
高い所飛んでて点だ。
「ヒョーゥ!ヒョーゥ!」
降りて来る!
降りてきたら20cm位のフクロウっぽい鳥だった。あの仮面みたいのじゃない鷹系の精悍な顔つきだ。
「この子エルフの使い魔だよ」
「え?使い魔?」
(聖獣・神獣・賢獣言うです)
(え?)
「聖獣なの?」
「うん、エルフの森を守ってくれるんだよ」
「え?」
(悪い心を見るですよ)
(悪い心?)
(悪いのは攻撃するです)
(あ!森を守るとか言ってたね)
(エルフが育てたら大切にしてる森守るかもです)
(そういうことか)
(言う事分かってますよ)
(喋れないよね?鳴いてたし)
(言えば分かるです)
(え?念話じゃなくて)
(喋ってる心を読んで分かるです)
(ホント賢獣なんだ!)
「それ、育てるの?」
「うん?名前つけて森に放すの」
「え?放すの?」
「エルフの森に放すの」
「?・・・」ま、いいや。
串焼きやるとモリモリ食べる。かわいい。みかんも食べる。なんでもアリやな。ジュースも水も美味しそうに飲む。
マジかわいい。
(シェルは食べ・・)
(顕現だけです)
(そうだよね)
(シェルもかわいいよ)
(ふつうです)
(天使の羽根生やしたときマジかわいかったよ)
(ほんとうです?)
(本当なの分かってる癖に!)
(えへへ)
・・・・
マジックバッグを開けて行く、6㎥。
死体が4体出てきた。オイオイ!死体袋か!森が墓場になってしまう。最初に石碑を作ったから流れでどんどん横に増えて行く。
出て来るものはやっぱ使ってた人の遺品で知らない国の金貨ばかり。武具や防具、野営の道具など代り映えしない。
いいんだって、マジックバッグなんて最低でも白金貨何十枚って代物なんだから使えないままでは勿体ないと思うのよ。この世界に元々あった物なら活用させてもらう。
イヤ、俺も作れるんだけど・・・倫理的にNG。
俺が作ったらダメと思うんだよね。
実は、すでにやっちまってる。
教皇の腕輪・・・拡張しちまった(笑)
それを見せられないから腕輪の変身も直してもらって無いの。今日みたいに少しずつアルノール大司教の隙を広げていつか直してもらおうと言う作戦だ。
教会が作った物ならいいよな?とか実験気分で固定している空間を思いっきり拡張したら15倍の30㎥位になって、時間経過も元の腕輪の1/15になった。
実験に魔法紋を使ってその意味も分かった。
・何もない空間を切り取る。
切り取った後の空間は勝手に埋まる。俺たちに見えている三次元部分は完全に埋まる。見えない部分の空間が切り取った分を埋めてしまうのだ。色々検索したら物理学用語で余剰次元と言うらしい。
・そして切り取った空間に流れている時間は、空間とセットになってしまう。切り取った空間を圧縮すれば時間経過が早くなる。膨張させれば時間経過が遅くなる。
・聖教国の始祖セリムが使っていたマジックバッグの魔法紋を腕輪で実践したら空間魔法Lv1が付いた。次元魔法では無かった。
・恩寵>次元魔法>インベントリなのに次元魔法が付かない。
・恩寵>次元魔法>転移もそうだ。
名前でLvが付く。スクロールや恩寵の玉同様に編込みもへったくれも無く使えるようになる。
転移の魔法など聞いたことも無いと導師が言っていた。インベントリとマジックバッグの違いも指摘していた。この世界ではその魔法自体が無いのだと思う。神の恩寵は恩寵なのでSPで取ればスクロールと同じ様に使える様になるのだと思う。
俺の考察だ。単に考えているだけだ。
この世界の多次元に存在する者にこだわりのある神の恩寵なのでは無いかと思っている。だからこの世には多次元の存在がいる可能性がある。
・・・・
話は逸れちゃったけど、マジックバッグ自体が反則級だ。ダンジョンで稀に見つかるから高値で取引され便利さだけに目が行って、魔力認証の事を知らない。
マジックバッグ持ってるから奪え。
未認証のマジックバッグなら王都のオークションしか手に入れる場所もない。悪党は奪うしか手に入れる方法は無い。
教皇様も言ってた通りなんだよ。守る力が無いとそういうの持つと災厄の元なんだもん。平民が金に換えようとするだけで危ない代物だ。
マジックバッグの魔法紋を知ったからって、安易に作れない。この世界を壊しちゃう。
あっちの知恵とか、無限に生み出すそういうのダメ。
郷に入れば郷に従えだよ。
・・・・
もう三十個も開けて同じ様な物ばかりで飽きてきた(笑)本当に何百年も前からの物が残りまくってる。武器も色々年代物だ。
また新しい物を開けて行く。
金貨もコルアーノなら嬉しいけどそんなの出てこない。多分滅んだ国とかあるとおもう。
そんな中。電撃の杖が出て来た。
イヤ、雷撃の杖だ。魔力を込めると攻撃する。魔法書もある。けど読めない。視れる(笑)
知恵の指輪が出てきた。ミスリルで紋が刻んである。
やったぜ!嵌めると知力が5上がった。テンションは下がった。その名に嘘は言って無いからな。いらん!外した。
やっぱ
器用の指輪もあった、器用+5上がる。いらん!ショボイ。
剛力の指輪も有った、期待せずに嵌めたら力+15上がった。
うおー!当たりじゃないのか? なんか凄い気がする。ヤッター!魔道具と巡り合った!(全部魔道具だ)
多分、良い指輪とか腕輪とかは本人がしてたんだよ。
魔術士の持ち物だから剛力は要らなかったんだと思う。
てか、そういうショボイ魔道具ばっかだ。700年前の袋で知らん国だ。聞いたことも無い。
見てると時間食うのでどんどん開けて行く。どんなにこの世は金持ちいるんだ。金貨ばっか入れやがって、俺を驚かす物入れておけ。
てか、ちょっと眠くなってきた。
朝からダンジョンで猛り狂ったからなぁ・・・
~~~~
「アル君、起きて!」
「ん?」
「もう16時半だよ、ベント様が待ってるかも?」
「あ!え?16時半!」
「まずいまずい!」
ちらかった武器防具をマジックバッグにザラザラと掻き込む。開いたマジックバッグも全部入れる。ジュースをちょっと冷やして全部飲む。敷物取ってホールを埋めて・・・
「その子連れて行くんだよね?」
「ククルって名前にしたよ」
「ククル!よろしくね!」
指で5cmぐらいの頭を撫でる。
「跳ぶよ!」
「うん」
・・・・
教義部に跳ぶと導師はアルノール大司教と石板を前に喋ったままだった。聖教国の教授と賢者じゃ話題も尽きないよな(笑)
財務部に行ってロッテン大司教を訪ねた。
「ありがとうございました。無事でした」
「それはよかった、何か良いものはございましたか?」
「金貨と武具ですが知らない金貨ばかりで、こんなのです」
少し離れた机に、違う金貨ごと山ほど並べた。
「使える国が有れば、そこの司祭様に送れないです?」
「どれどれ・・・古い国がございますな」
「宝石がこんな感じです」
「けっこうありましたな」
「これとこれは宝石じゃ無いですな」
「え?」
「属性石ですな、大きさ次第で宝石より高価ですぞ」
「あ!それで!換金用の大きさって事ですね」
「それで混じってたのですか?」
「はい、この様な皮袋に一緒に入ってました」
皮袋を取り出す。
「なるほど!この大きさは杖の属性石になりますよ」
「杖どころか実力がまだです(笑)」
「御子様なら名目だけでも持たれたら?」
御子様は名目だけ説が浮上した。
「うーんと、武具とか防具は要ります?」
「うーん、冒険者ギルドとかじゃないと」
「こんな雷撃の杖とかありますよ!」
「攻撃魔法は不浄ですからな」
顔をしかめられる。
不浄って!異端より酷くね?そんなもん使い様だろがよ! 思っても言えない。始祖の狂信者怖い。
「武器や防具は換金出来ますよ?」
「聖教国が討伐した噂を出されると」
「あー、使うとかは?」
「聖教国は優秀な装備が揃っております」
マジ・・・遠回しだった。またゴミが貯まる(笑)
「マジックバッグももらってよろしいのです?」
「それはもうどうぞ、年代の研究など終わっております」
「聖教国は使われないのです?」
「聖教国にはあります。個人で持つと危ない物です」
「そこまでです?」
「聖教国は攻撃魔法がありませんでな、聖騎士しか守れないのです。持てば司祭に災いが訪れます。国外で任務行動を行う時に聖法騎士団の上級司祭が持つぐらいですな」
「私も必ず司祭は守りますからね」
「見ましたとも!御子様が聖騎士なら安心です」
「金貨と宝石は全部置いていきます、無くなった国のは鋳潰せばいいのですよね?聖教国の教えにお使いください」
「わかりました、御子様の仰る通りに」
さすが財務部の大司教、白金貨超えていくお金でもタダの硬貨にしか思って無いわ、国家財政預かるってすごいな(笑)
そんな俺も両替商の一件でお金は預かったけど、王家の直轄地や公爵の領地の搾取分なんてマジ床が抜ける程の金貨。王国中のお金を預かって分かったのだ。
あんまり沢山あってもゴミに見えるんだよ。国家規模のお金あっても個人じゃ使えない、重くて出す事も出来ない、人に見せる訳にもいかない、インベントリにずっとあるゴミ。
小金貨1枚(20万円)とか使いやすいお金が一番いいよ。平民の家族が1か月も暮らせるんだ。
「ロッテン大司教、ありがとうございました」
「御子様、ありがとうございました」
・・・・
実は・・・
あの大量の両替商から義賊したお金を返還して、インベントリを消せなかった理由は今の会話にある。
聖教国って正直、お金欲しがってないの。そして換金が面倒で武器防具に関わりたくないの。
そのような聖教国を踏まえた上で、神聖国は色々とダメ。
神聖国で布教すると、その土地の獣人排斥傭兵団や獣人排斥冒険者達がみんな鉱山に行って、ほぼ壊滅しちゃう。
壊滅して武装解除した武器とか防具とか財産とかは国庫に行く。最初の半年は神聖国の財務部も受け取ってくれていた。
皇帝や大貴族の豪邸が売れ出して変わった。
俺が武装解除した武具や財産を渡すと露骨に嫌な顔する。国と民の財産と言ってもダメ。
海商国に売った邸宅にあった馬車だけで20台とか、財務部は置き場所に困ったのだ。
売却する邸宅の私物は回収しないとダメでしょ?
邸宅の倉庫や金庫に甲冑や絵画やミスリル剣、クローゼットの宝石、絹のローブや貴族服。要するに大貴族の宝物部分が屋敷から出てきた。金貨宝石ならまだ良い。ガラクタに困った。
入れ物売っちゃったから、入れる所が無い。余りにも大貴族の宝物?が多すぎて神聖国がパンクした。
どれぐらい凄いかと言うと、老朽化した執政官宿舎4F×2を潰して中に貴族邸のガラクタを詰め込んだぐらいだ。
そして神聖国に武具が余る。
他国は神聖国に攻めてこない。全ての郡が司祭が頂点だから内戦起きない。武具売れない、そもそも使う人は皆鉱山。
パンクして嫌な顔するから持って行けない。財務部が武装解除の武器防具受け取ってくれない。
俺のインベントリの中、ガラクタまみれ。多分400トンとか。4万人×10kg換算でそうなる。
財務部は建国の3月から7か月分持ってるから1000トン以上あると思う。最初の貴族のお抱え傭兵団だけで14000人。最初の9か月は大都市ばかり布教したから傭兵ギルド冒険者ギルドで10万はいると思う。武装解除で一人10kgで済んでるとは思えない。コルアーノ王国のミウム辺境伯領だけで冒険者6万人なんだから。
財務部が俺を見るとビクッとする。(笑)
聖教国のロッテン大司教見たでしょ?金貨や宝石ならまぁ受け取るかみたいな。武具は換金するのが面倒で嫌なの。
マジで動き出さないとダメだと焦ってる。俺のインベントリも悲鳴を上げているのだ。
布教に行く度に膨れ上がる負の遺産。噴火口に帝国の負の遺産を投げ込む日がきっと来る。
・・・・
教義部へ行くと、導師はしばらく滞在してアルノール大司教と研究する事になっていた(笑)
「アル、日曜日は当分アルムと二人で行け」マジか!
「え!」
「アルムがいたら大丈夫じゃ」
「ハウスはどうします?」
「いいわ、お主が使っておれ」本気だわ・・・
「アルノール大司教、うちの師匠をお願いいたします」
笑って頷いてくれる。
「子ども扱いするでないわ」
「うちの子が泣いたらこれで泣き止みますから」
大壺三個置いた。大壺一個をアルノール大司教に渡した。導師がニッコリした。
「アルムさん、行こうか?」
「うん」
「クルルおとなしいねぇ」つい指で触ってしまう。
「跳ぶよ」
「うん」
次回 143話 ごみ屋敷
------------------
この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
読者様にお願い致します。
応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。
ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます