第141話 聖騎士叙爵
---ロスレーン家 応接---
導師!騎士取れました!
「おぉ、そうか、よかったのう」
「はい!」
「聖教国行きません?(笑)」
「アルム!聖教国行くが来るか?」
「行く行くー!」
「噴水前に美味しい露店のお店があるよ!」
「ほんと?楽しみー」
「行くぞ!」
聖教国大教会の聖堂内(関係者だけ入れる所)
3人で教義部に向かうと、アルを見て侍女さん達がお辞儀をしてくれる。
すでに顔パスになっている。
神聖国で布教の終わりに首都へ報告に寄ると重要な案件がある時は大司教達をタクシー代わりに聖教国に連れて来るのだ。
アルノール大司教を教義部に尋ねた。
「御子様!今日は?」
「こちらはアルムさんです」
「はじめまして、アルノールでございます」
「アルムです、ベント様の護衛をしてます」
「10月の褒章の件ですが聞いてます?」
「はい、教皇様と私共が決めた事なので」
「そうですか・・・ちょっとこれを」
魔法を4つぐらい見せる。
「な!これを何処で?」
「始祖様が使っておられました」
「なるほど、これが原初の魔法なのですな?」
「また研究してみます?」
俺は、腕輪がマジックバッグと知ってから関係者の編み方を全て視せてもらった。元々始祖が使うの視て覚えていたのだ。関係者の編み方はすべて進化型だった。
「いえ、それから発展した物なので分かっております」
「はい。ベント卿の事(神の使徒)お分かりですよね?」
「存じております」
「私の師匠に聖教国最新の魔法を見せて頂けませんか?」
「御子様が仰るのであれば。分かりました」
「秘儀なので教皇様にも伝えておきますね」
「そうして頂ければ」
「導師、マジックバッグの実演して頂けますよ」
「な!本当か。アル」
「見たがってましたよね(笑)」
「アルムさん、いつも持ってた袋をマジックバックにしてくれるよ。今も持ってるよね?」
俺のショルダーからカラフルな縞の魔獣皮で肩にたすきに出来る袋が出てきた。紐を引っ張ると口がすぼまる巾着タイプだ。最初に大森林に入った時に背中に回していた物だ。
「えー!ほんと!アルムのこれ?これがなる?」
「なると思うよ、大きさは分からないけど」
「わーい!本当なんだよね?ホントだよね!」
「アルノール大司教に渡してくれる?」
「うん! お願いします」
「お預かりしますね」
「それではベント卿こちらへ」
教義部の侍女さんに教皇様へ取次ぎをお願いした。
・・・・
教皇の間。
「御子様、今日はどうなされました?」
「教皇様、聖騎士の叙爵が欲しいのです」
「え?・・・どういう事です?」
「・・・・と言う訳で斥候が付いてしまい」
「おほほ、そういう訳ですな」
「騎士より聖騎士のジョブが上と聞きました」
「どれほど違うかは分かりませんな(笑)」
「お願いできませんか?」
「ふむ、聖法騎士団と聖教騎士団がありますぞ」
「どう違うのでしょう?」
「聖法騎士団は外の者、穢れと戦いますな」
「そっちがいいです」
「10月の褒章の話ではなく聖騎士の話とは(笑)」
「昼を食べたら聖法騎士団に参りましょうかな?」
「え?」
「聖法騎士団の祭壇で穢れと戦う意思を示すのです。御子様なら何も心配いりません」
「教義部にベント卿と武術の先生が来てますので、昼を聞いてきます」
「それなら、皆で食べるとしましょうかな?」
「聞いてきますね」
「侍女に行かせましょう」
「あ!今アルノール大司教にお願いして、ベント卿に聖教国の最新魔法を見せて頂いてますが良かったですよね?」
「ほっほっほ、研究熱心でいらっしゃる。10月に身内となる方です。何も問題ありませんな」
「ありがとうございます」
「お礼に、使えなくなったマジックバッグありましたら認証解除致しますが、その様な物有りますか?」
「ふむ、教皇の腕輪は術者が解除するので残っておりませんが拾得物や野盗関係の鹵獲品でも当たって見ましょうかな?」
「作っている訳では無いのですね?」
「700年程前に支援国の窮状を救うのに何個か作って各国の王に流した記録はありましたな(笑)」
「そんな事も?(笑)」
「マジックバッグも守れぬ者には災いに変わりますぞ」
「あ!攻撃魔法と一緒ですね」
「そうですな、国が持てば戦争に使われてしまう」
「それは私も思いました。なかなか難しいですね」
「国に売るなら小さいのに限るのです。王が持つに相応しい生地で小さく作る。その様な物は王が喜び手放しませんからな」
「あー!そんな感じですか、考えられてますね」
「安易に出してはダンジョン産も値崩れますからな」
「良く分かりました!」
次女が戻ってきた。
「用事が済み次第にこちらに来られるそうです」
「帰ってきた所、悪いが財務部のロッテン大司教とアルノール大司教を昼に誘って来てくれ、侍女長に6人で会食すると」
「かしこまりました」
・・・・
教皇の部屋の会議室にて会食だった。
すごく美味しいけど品数少なく会食にしては質素だったが俺には丁度良かった。
「ベント卿、神聖国が出来た折に御子様から暴食の罪について聞きましてな、教皇以下美味しく食べられ、残すような華美な食事を控えております。ご承知下さるとありがたい」
「教皇様、聖職者足ればこそのお言葉だと拝聴致します」
会食が終わり、お茶を頂きながら話が弾む。
「二人の大司教に聞きたいのだが、聖教国の盗賊などから鹵獲したマジックバッグはどうしておる?」
ロッテン大司教が言う。
「何世代も前から倉庫に積んでありますな」
アルノール大司教も言う。
「事故に繋がりますのでダンジョン産は触れませんぞ」
「御子が認証の開錠を申し出てくれたのだ」
「え?御子様が?」
「出来るかどうか分かりませんが、10月の褒章の件も聞きましたので少しでも財政に貢献しようと思いまして・・・」
「御子様、財政はあり得ない程潤っております。神聖国などは聖教国よりも生み出す財産が多く、民に還元されております」
「そうですぞ、財政窮乏の折にはその様な話も出ますが危険過ぎますぞ」
導師がそれみろという顔で俺を見る。
「それではやってみましょうかね?」シレッという。
「まずは、昼から叙爵が先ですぞ」
「「え?」」
「御子殿が聖法騎士団の叙爵を受けられる」
「10月に大司教になられる方が聖騎士になるのですか?」
「前例は無いが御子様が望まれるのだ」
「同席してもよろしいでしょうか?」
「私もお願いいたします」
「それでは皆で参りましょうかな」
・・・・
聖法騎士団の駐屯宿舎は馬車で30分ほどの演習場にあった。先触れが有った様で聖騎士が整列して教皇様を迎える。
結局7大司教がイベントを見届けに来ている。
あ!この中の大司教の誰か担当いるかな?
「あの、治癒士の認定は何処で行うのでしょうか?」
「え?」
「ディバイン、ピューリファイ、ヒールですよね?」
「あ!それでしたら教会部ですな」
「ミイルフ大司教に見せたらいいです?」
「それでは見せて頂きましょうかな(笑)」
「御子様、美しい魔法でした。教会部で治癒士の証を発行いたします、街で治療の際には提示ください」
そっか!教会の飯のタネだから見せないとな。
「ありがとうございます、錬金術を持って無いので聖教国が頼りでした(笑)」
「なるほど、考えましたな(笑)」
教会を模した詰め所でスイムル騎士団長が笑顔で迎えてくれた。
第一陣から第三陣の奴隷解放に関わった時、聖都の聖教騎士団と聖法騎士団は周辺警護で教皇と7大司教の周りに詰めていたのだ。
聖騎士軍団を連れた奴隷解放を目の当たりにしている。
てか、俺の秘密もクソも聖教国とズブズブだ。
「御子様は聖法騎士団の叙任をお望みだとか」
「はい、聖騎士の職業が戦士の一番上と聞きました」
「これは嬉しい事を仰って下さる、光栄です」
「いきなり来て聖法騎士団の叙爵などすみません」
「御子様が仰るのであれば問題はございません」
「うーん。やっぱり御子だから叙爵じゃ無理が過ぎますよね?スイムル団長、実力を見て頂けませんか?私はすでに騎士の叙任は受けております」
「御子様・・・失礼ですが今はお幾つでしょうか?」
「12歳ですが」
「それで聖魔法が認められたら聖騎士が?」
「そうです」
「あははは、こちらこそ失礼いたしました、我が聖法騎士団に憧れてと言うのではないのですな(笑)」
子供が聖法騎士団入りたいと駄々をこねてると思ってた(笑)
子供だけど。
「聖法騎士団は対穢れの軍隊とお聞きしました、私もそうなりたいと願うのです、是非剣の実力を見て下さい」
「御子様の剣術拝見させて頂きます、一度外で見ましょう」
副隊長にジュシュを連れて来いと言っている。
「今から参るのはジュシュと言う16歳で叙爵された最年少の聖騎士10位の者です」
「あの・・・中堅ぐらいの方が良いのですが」
「え?」
「あ!いいです、すみませんでした」
「・・・おい、レブンとカッツも呼んで来い」
導師とアルムさんが面白そうだねと笑って、大司教や教皇も余り模擬戦を見ないために楽しそうに待っている。
え!これって天覧試合じゃないのか。
あの遺恨を残すという名物のテンプレ。最近見ないか。
「ジョシュ参りました!」
「ジョシュ、御子様と模擬戦を行ってくれ」
「え!私が御子様と・・・」
俺を知っとるんかい!有名人か!笑うわ。
当たっちゃったらどうすんですか。
騎士の叙爵を受けてると言うぞ。
それは御子様だからではないですか?
模擬剣でも子供なら泣きますよ?
俺の方チラチラ見ながら小声で喋りやがって・・・
手前ぇら聞こえてるんだよ!
子供相手じゃそうなるな・・・
二人とも教皇の前で御子を泣かしたくないとか思いやがって。その優しさにどう対処していいのかわかんない(笑)
バカにしてくれと思う俺は変なのか?
とりあえず16歳なら両手剣で様子を見るか。
マジックバッグから両手剣の模擬剣を出す。とスイムル団長とジョシュが気が付いた。平均的に4~5kgはある両手剣。それが遠心力付きで振られるとどうなるか。身体強化無いと大人でも振れないからだ。
ジョシュがその気になった。模擬片手剣と大盾(本物:聖騎士は盾職専門で後衛が回復兼対穢れのアタッカー)を掴む。
演習場で正対する。
俺は半年ぐらい振って無かった馴染の両手剣を構えて合図を待つ。ジョシュは盾職の基本防御で俺を伺う。
俺から攻撃した。
袈裟切りに盾を合わされるが重さで潰しに行く。盾を潰すと相手の体勢が崩れ沈むのだ。ジョシュはセオリー通り盾の端で力を受け逃がしてダメージ食わない様に大盾を移動する。
甘いわ!食らえ!直撃!
移動する盾のセンターグリップ目掛けて剣筋を瞬時に修正する。センターグリップに直撃させて力をすべてジョシュの腕に吸収させる。
小さな子供の体から繰り出す身体強化Lv3の潰し!
超驚くジョシュの顔が面白い。
驚いてばかりで手が止まってるぞ。ともう一回!もう一回!と一切力を逃がさずバーンバーンと大盾の中心に力を渡す。
さすが片手剣では来ない。盾で防戦一方だ。
どんどん回転が上がるぞ!
連撃で何度か叩き込んだらもう駄目だった。刃が無く峰の様になった模擬剣の重量とスピードで生まれた力がそのまま叩き付けられる。盾を持つ手の表に正確に叩きつける。
力を渡されて、手がしびれて盾がヘロヘロになるのだ。
一端剣を引き元の位置に戻る。
「よろしいでしょうか?」
「拝見しました、ご要望の技量を持つレブンとカッツも参っております」
「次は私共とお願い致します」
「はい、お願いします」
今度は少しゆがんだ丸盾と片手剣を装備した。盾はちっちゃいけど同じ盾持ち聖騎士装備同士だ。
「カッツと申します。光栄です!」
「あ!御子です」こんでいいのか?
二人開始戦に立つ。
一般聖騎士でも舐めるなよ? 視たら剣術、盾術Lv5~6はうちの副団長クラス以上はあるぞ。流石聖都の聖騎士団だ、中堅がハンパない技量。ここは聖教国の聖都だ、王国の宮廷騎士団と一緒だもんな、それ位の技量はあるわな。
俺は視終わってる。大丈夫だ、舐めずに行け。
開始早々カッツさんが盾で突っ込んでくる。
いきなりバッシュはいいね!
そう簡単に喰らうか。避けた俺に盾の枠が飛んでくる。キタキター!これこれー!懐かしい日々よ、万歳ー! アホか俺は!
視えるんだよ!
軌道が、対処法が、動きが!ワクワクすっぞー!
迫る盾の枠をクルッと90度外に回した盾で肘受け、半身のカッツさんの脇に片手剣をお見舞いする。
「ほう!」とスイムル団長。
「御子様、実力は分かりました」
「団長、御子様と是非手合わせを・・・」
レブンさんが言ってくれる。
「あ!レブンさんもやりましょう」
団長さんが苦笑する。
レブンさんは盾無しで来たので俺も盾無しにする。
メッチャ楽しみだ。
よし視せてもらおう。
無難に二人で応戦しあう。
さすが聖騎士真っ直ぐな剣だ。
正統派には正統派の剣で正しく受けて行く。
あぁ、面白い!最高だ!楽しい!
全ての攻撃が出尽くしたみたいなので最短の返しで沈めた。
「最高に面白かったです!」
「御子様!ありがとうございました!」
お互いに握手をするとギャラリーから拍手が起こった。
「皆も御子様の叙爵に納得したようですな」
拍手しながら教皇様が頷いてくれてる。わーい。
これで、御子様特権で叙爵とは言われまい。
てかさ、メルデスの不合格者と違い過ぎるだろ。
こんなに心から御子様って思われるなら模擬戦しなくて良かった。というか心の底からジェントルマンで聖騎士の事を見なおしたわ。心の教育が違うわ。
辛い鍛錬も神さまのためとか思ってるもの。御膳試合で遺恨テンプレと思う俺が汚すぎて恥ずかしい。
外道トラップ思い付くだけあるわ。
・・・・
聖法騎士団の祭壇で教皇様より叙爵を受けた。
※プロテク(物理防御力アップ)以上の魔法も治癒士の試験で見せたので求められなかった。
騎士から聖騎士にジョブチェンジすると精神が10幸運が2上がった。やっぱ騎士より聖騎士のが上だった。
職業 聖騎士(+10:幸運+2)
体力:74(84) 魔力:ー 力:51(61) 器用:368 生命:55(65) 敏捷:52(62) 知力:684 精神:702(712) 魅力:84 幸運:87(89)
聖騎士に叙任されたら聖法騎士団のプレートメイルと大盾を教皇様から賜った。俺が小さいのでブーツも含めて全て合う物が無い。アルノール大司教が褒章の10月までに
身も心も甲冑まで聖教国に染められている。
聖法騎士団は白地に青系の盾と鎧と兜にブーツで外征して民に安堵をもたらす。聖教騎士団は白地に赤で国内を治める。
盾には光り輝く教皇の腕輪がレリーフに浮かび、何処の国でも聖騎士だ!と盾で主張し子供の憧れになる。
が!他国にはあまりいない。
武力を誇る存在じゃないのだ。
他国には首都と聖女PTしか居ないらしい。
帝国の教会。4人はあの国の聖騎士全員だた。
・・・・
財務庫の倉庫へロッテン司教と行く。
さすがその秘密を知る聖教国。
7大司教すべてがその危険性を説いた(笑)
御子が開錠やると言うと逃げて行った。
余りにも導師と同じ対応で笑う。
お貴族は危うきに近寄らないわ。
だってあの人たち作ろうと思えば作れるもの。
俺だってそうだけど。
マジックバックだけじゃないけど凄い量。
山積みだ。もったいない。売ろうとは思わないけど中身とかどうなんだと思う。お金が入ってたら民の教育とか孤児院とかさ。
まぁ神聖国で採掘する金塊ほどじゃないけど。
何百年もそのままなので全部くれると言う(笑)
人のいるところでやるなという。
導師もアルノール大司教に付いて昼から新魔法と新しい魔術紋の話があるとあからさまに逃げていった。
腐った死体が出たらどうすんだ!
良く考えたら帝国の一件はマジックバッグからだ。
変な物出たらホールで隠ぺいだ。
もうあんなもの知りたくない。
横に原始人が巾着のマジックバッグを抱えている。
俺のバッグと自分の袋を入れ替えやがった。
「アルムさん、それよかったねぇ」
「もう最高!こんなのお貴族様だよ!」
「いっぱい入りそう?」
「いっぱい入る。大サービスしてもらったよ」
「大サービスなの?」
「うん、聖教国では作らないんだって」
「そう言ってたねぇ。じゃなくって容量は?」
「たくさんだよ、台所ぐらいかな?」
容量わからんのか(笑)まぁいいや。
台所って2m×2.5m×5m位?=25㎥なら超大きいな。
「アルムさんピクニック行こうか?」
「行く!」即答だった。
「おやつを一杯買って行こう」
「うん」
外に出ると秋風だった。残暑のコルアーノより秋だった。聖教国は異国。国を二つも跨ぐほど遠くだった。
毎週神聖国に跳びながら季節も飛ぶ転移が恐ろしい。
この魔法は普通じゃ無いわ。
噴水前の露店で串焼き買った、みかん買った。パンケーキ買った。ジュースも壺に詰めた。
「跳ぶよ」と手を繋ぐ。
「アル君も跳べるんだね」
「導師の弟子だもん」
跳んだ!
次回 142話 雷撃の杖
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この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
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一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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