第138話  均一なドロップ



通称:横堀の魔穴4F



安全地帯でお昼を食べようと4Fを走り抜けている。


グリーンフェザントがと大喜びで岩陰から飛び出る。二人も!と大喜びで斬りまくる。喜び組同士でミックスアップし過剰な喜び空間が辺りを支配する。



すでにアルムさんの頭の羽が6枚になっている。

大酋長へのキャリアを積んでいる。

本人も羽を揃えたいみたいで(次に生まれる喜び空間を)気配察知して進んでるように見える。


足音拾って追って来るグリーンフェザントを6匹倒しても2枚しか出ない。8枚になった。


安全地帯見つけて真夏に鍋の用意を出す。

ダンジョンは地中なので15度位しか無いのだ。昼食用の加熱調理品だ。出来ているのを温めて食べるシチュー。


レンガを3つ出して鍋を置き、下から魔法でゴー!と温める。

パカッと割って食べるマンゴスチン(旧帝国貴族の家をサント海商国に持って行った折に南洋の果物として売っていた)を出して用意。シチューが温まるまでお互いの作業をする。アルムさんはお茶の準備をしている。


「あと羽は何枚欲しいの?」

シチューにパンをなすり付けながら聞く。

「これで充分よ!羽飾りの作り方教えるね?」

いらんとは言えんかった。

アリア(妹:今年10歳)に羽一本の奴作ったら可愛いだろうな。


「そんじゃ次は5Fですね」さりげなく話を逸らす。

「このペースなら10F位まで行けそうだよね?」

「はい、よろしくお願いします」


初めて入ったダンジョンのペースでは無い。二人はアトラクション気分で実力のまま駆け抜けていた。


シチューとパンとマンゴスチンを食べてお茶を飲んで一服。


そしてを狩る。

階段下に着いたら羽が11枚になっていた。

大酋長への階段を上ったり5Fへの階段下ったり忙しい。



5F。

チャージラット。早くゴブリンとか出てこい。


イノシシの様で一回り小さいが飛び回る。尻尾に畳んだ毒針。かゆくなる毒針だがエルフ原始人の薬で大丈夫。

(魔法で治せ!)


斬撃耐性あるみたいで斬っても飛び回る。何回も刺突で仕留めてたら鎗術がLv2にあがった。わーい。


ドロップがかゆくなる毒針だったが、売れるらしい

認証やってサクサク進む。

捨て置くとアルムさんが拾う。


6Fの階段前でアルムさんが喜んだ!

「アル君!あったよ!」

「何かありました?」


「罠だよ!あそこ!わかるかな?」

「え!」

「ほら、よくみてごらんなさい」

「あ!ある!なんかある」


「でしょ?階段見てホッと駆け込むのを狙ってるわ」


「なーる!今ダンジョン悔しがってるかな?(笑)」

「悔しがってるかもね(笑)」


「ここ見てて」

「はい」


パキ!音がして床が抜ける。

6m×6mのどでかい床が観音開きで下に抜けた。

深さ4m。水だったり槍だったり下層への滑り台だったりするらしい。今回はただの落とし穴だけどPT全員が落ちる穴だ。


「ここのポッチが重みで凹むと穴が開くの」

「罠の仕組みごとダンジョンですね」


「この式の落とし穴は両脇に20cmぐらいの安全地帯が有るから壁に沿って抜けるか、そこを走るかすればいいわ」


「はい、わかりました」

「それじゃ通るわよ」<「はい」


幅6mと長さ6mの穴を脇の20cmを踏みながら走り抜け、最後は跳んで避ける。


チャージラットが来ると簡単に仕留めない。槍術が上がったので剣で突く前に盾で殴りまくって盾術の経験を少しでも稼ごうと涙ぐましい努力だ。



6F。

コボルド来た!

初めて見た!ふさふさの亜人だ。


グルルル、ワフワフ言ってる犬の亜人。切れば消える。やっぱなんかそういう意思で作られてる感じ。剣や槍まで消えて行く。受けても鉄感があるのに消えて行く。


各階層で綺麗にモンスターが住み分けてる。階段上がれば外に出られるのに。階段にも入って来ないなんて変過ぎだぞ。とダンジョンに物申したい。


3頭倒して小さな牙が出た。


認証階段に走り込んで魔力認証したら、階段の上まで追ってきた犬野郎と目があった。


なんか・・・と階段下の俺を見下してる。


お前を恐れて俺が逃げたってか?

そんで見下してるってか?


が階段上で仁王立ち。



「犬は犬小屋に行け」


身体強化全開。引き返して倒しに行く。

南斗獄屠拳なんとごくとけんで吹っ飛ばしキャイーン!言わせてやった。



7F。

ドリームイーター:鋭い爪の俊敏なサル。

魔爪根みたいな長い爪のサルで切り裂きに来る。

夢を切り裂くんだって。喋ってないでこっち見ろ!俺を切り裂きに来てるだろうが!アルムさん大丈夫か!


ドリームイーター4匹が爪出して飛び掛かって来る。

サルが繰り出す水鳥拳だ。

ドロップは木の実だったり、爪が出る。

こんなのPTどころかソロだって絶対儲からないよ。


負けそうになるとサルまで仲間を呼びやがる。

まぁそれも含めて、また来た、また来たとアルムさんとバカバカに斬りまくる。忙し過ぎ!バッシュの暇無くて怒れるわ。


ダンジョンが嫌いな人の気持ちが分かる。

一生懸命倒しても徒労に終わるのだ。動きまくって倒しまくって爪出たら銅貨2枚?(200円)とかだと嫌になると思う。


爪もほとんど出ない。



8F。

ゴブリンだ!わーい。


6匹PT。PTらしく石とかナイフの武器持ってるぞ。

石投げればいいのに、石で殴りに来る。


俺と同じぐらいの背だ、まだ鼻歌で蹴り飛ばす。

仲間も呼ぶ。仲間が来る頃にはどんどん階段に近付いて俺たちが迎え撃つ感じになる。あっと言う間に終わらせる。身体強化有るなら蹴り飛ばしても致命傷で30秒で消えて行くからマジ楽。


分かれ道に来た時にアルムさんがコッチと言う。

行ってみると足踏み式トラップ。咳き込み、目が痛く、刺激臭も出ると言う。浅い階に良くあるトラップらしい。よく見ると浮いて筋が付いている。


戦ってる最中に踏むと大変だな。

これ一つで初心者PTは苦戦しそうだ。

発見したら向こう側に罠の解除スイッチがあるらしい。


2m位をピョンと跳んで解除を教わる。



9F。

またゴブリン!8匹。急に増えた。


良い鍛錬だ、円盾でバッシュ、回し蹴りと自由自在に狩って行く。もうドロップ拾う事もしない。木の実や腐ったナイフ、持ってた石、鼻輪。マジ多くてめんどくさい。

敵が来たら来ただけ倒しながら階段へ進む。


ゴブリンバッシュを積極的にお見舞いして行く。

鍛錬に丁度良い。


それでも足を止めずに階段を目指して行くと着いちゃった。残念、ゴブリンとの鍛錬はここまで。認証終えたら10Fだ。


「アルムさんは大丈夫?」

「全然、大丈夫だよ」

「そんじゃ、行けるだけ進もうか?」

「うん、行っちゃおう」


10F。

ケーブリザード!

わーい。違う魔獣が出てもそれはそれで嬉しい。

何が出て来ても嬉しくて笑える。

そうさ!栗が転がっても笑える年頃だからな。あはは!


1.5m位の4足のトカゲ。

体長、一本角に弱毒、毒消し必須だけど食らわない。

噛み付きと突進による体当たりだけ。また鍛錬が始まった(笑)

受けてはバッシュ受けてはバッシュで斬って行く。


小さいトカゲが大量に突進して来るので大喜びで迎え撃つ。


これいいわ!技を出して深めるのに丁度いい。斬っても湧いてダンジョン資源も?無くならないしな。ホクホクしながらバッシュを繰り出して斬って行く。


ハイペースで走り抜け16時前に10Fの部屋に来た。エリアボス部屋みたいのがある、祭壇があるのだ。入ると居た。ゴブリン10匹に上位個体赤だ。


「そのままやっちゃうよ?」

「はい、早く先に進みましょう」

「よーし!」


瞬殺だった上にドロップ品すら無い。

祭壇にアイテム出るとお宝らしいが当然出ない。

部屋の祭壇前にある赤い球触って11Fに転移。



11F。

大きな芋虫だった。

緑色キャタピーだ!まぁそんな感じ。

モスラーヴァ:打撃攻撃と毒の触覚。触角を落として斬撃有効。


「やっとモンスターらしいのが来た(笑)」

「これ絹落すからね!」

「ほんと?」

「ホントホント!」


狩って狩って芋虫を探し回り。欲ってやつはホント人を狂わすよな(笑)


滅茶苦茶に倒してやっと6個の絹糸球が出たよ。



12Fの階段を目指す。

「アル君!罠あった!」

「そっち?」

「これこれ!踏むと前の人が落ちる系だから下の階に落ちちゃうかな?(笑)」


「落ちて死なないの?」

「こんな浅い階のトラップって即死少ないよ」

「何で?すぐ即死でいいのにね?」怖い会話だ。

「弱いのは栄養にならないって聞いたけどね(笑)」

「え?そういうのあるん?」

「アル君を育てて美味しくなったら食べるの」

「(笑)」

「これは落ちても滑り台でどこかに落ちるんだよ」

「ここよく見て。先頭の人が踏むよ、はい踏んだ」

アルムさんが踏んだ。薄い傾斜が逆になった。

「今度は後衛の人がもう一回踏むよ、はい踏んだ」

踏んだ先の1m先から5m位が落とし穴になった。


「こんなのあるんだ!(笑)」

「おもしろいよねぇ、前の人だけ下行っちゃう(笑)」


「アルムさん面白がって僕落とさないでよ?」

「ちょっと私でもそこまでしないかな・・・」

「考えないでよ!(笑)」


などと言っていたら曲がり角の向こうからモスラーヴァが来た。

絹糸球は8個になった。



12F。

スマッシュボア:突進攻撃。

普通は前衛が盾で止めて、皆で突き殺す。


円盾で受けて一撃で仕留める。

最高速になる前に飛び込んで盾で受ける。

アルムさんはヒラリヒラリと避けて刺突で仕留めた。


牙一個ドロップ。


認証終わらせて休憩所で休憩。ミカンジュースとクッキーを食べる。


「ダンジョンって儲かりそうな物出ませんね」

「皮は狼の毛皮からかなぁ」

「ダンジョンのはタンニン植物とか要らないよね(笑)」


「刀傷とか矢傷を気にしなくていいもんね(笑)」

「あ!それも傷無しの均一なんです?」

「ドロップは全部一緒だよ?」


「全部一緒なんだ・・・」俺は騙されんぞ。


「夕飯はギルドで買い取りの間に食べます?」

「ん?別にいいよ」


「そんじゃ、あと一階だけ行きましょう!」


階段まで走り抜ける。



階段下の12Fの認証受けて、少し明日の練習。



13F。

床から生えてるアースワームだった。

たまに鉄鉱石を落とす。大きくて重い。


金額知りたいので持って帰る。

8匹で4個出たのでドロップは良いみたい。


この階も全然行ける!わーい。


元の階段下に戻る。


階段下に青い基台のクリスタルがある。

1日で12Fまでクリア出来たし充分満足だ。

罠を三つ覚えた。そのうち恩寵付くだろう。


ダンジョンの1F送迎門のサークルに転移する。

もう19時過ぎ。


ここは白夜城、24時間街が動いてる。


「アルムさん これ夏は大森林 冬がダンジョンだよねぇ」

「そういう冒険者多いよ(笑)」


「やっぱりなぁ、僕は大森林の方がいいな」

「くじ引きみたいだよね?ダンジョン(笑)」


「うん、8匹倒して何も無いじゃガッカリ(笑)」

「でもね、鍛錬と思えばいいのよ」


「うん!僕もそう思った!」

「アル君、上げたいの分かるけど盾で叩き過ぎ(笑)」


「痒くなるネズミを片手剣で突いたら槍術上がったの。盾術も上げようと張り切っちゃった」

「そうなのね、槍頑張ってたもんね」

「うん」


行きはもどかしかったが、帰りは下りだから?スッと山を降りてメルデス城塞の北東門を抜けた。


ギルドに着いて買取カウンターにバラバラと戦利品を出す。

買取担当者が笑ってる。


「全部買い取ってもらえますか?」

「蛇の牙は一個賎貨2枚でもいい?」(20円)

「幾らか分かんないから全部持って来たの(笑)」


「そうね(笑)1Fから13Fまで頑張ったねぇ」

「はい、ダンジョンてくじですね(笑)」


「30F以上の奥へ連れてってもらわないとね」

「はい!初めてなので1Fずつやって行きます」


「ドロップアイテムの買取はそこの壁に書いてあるから重いの持って疲れる事無いよ」ギルド嬢が鉄鉱石見せて言う


「ありがとうございます」

「数が多いから30分ほど待っててね」


「はい、大食堂でご飯食べてます」

「それじゃ、食べたら換金カウンター行くといいよ」

買取Noの換金証をくれた。


「はい」ゴミの山が無くなってホッとした。

ただでさえインベントリがゴミ倉庫なのだ。



・・・・・



ギルドの大食堂が凄い混み様だった。

大森林だと17時には帰って来てたから知らなかった。


規模は大手メーカーの社員食堂だ。

皆がPTで居るって事は宿の食事は頼んでないのかな?蜂蜜酒飲んでる人やエール(ビール)の人も居る。シュワシュワするけど夏は温くてすぐ消える。


アルムさんがディナーセットの札を渡してくれた。


「あそこの3番カウンターだからね」

「うん、ありがとう」

「蛇の牙ねぇ、1個、賎貨2枚だって(笑)」

「あはは、1階じゃそんなもんよ」


グレープジュースを精霊魔法で冷やしながら言う。


「あれだけ拾ったドロップが幾らか楽しみです」

「絹糸は結構いいと思うけどね」

「あ!出来たみたい!行きましょう」

「うん」


「143番の人、はい。次144番の人ーはい。次145番の人ー」


30セット程のディナーセットが次々と手に渡る。


「やっぱギルドの夕飯は多いねぇ」

アルがいつも食べる量の2倍あった。


「みんな体力勝負だからよね」

周りの獣人マッチョマンを見てしまう。


「食べられるかな・・・」


「残してくれたら私が食べるわ、勿体ない」

「うん、お願い」


もうダメと言う位食べても余った。


・・・・・


清算金額 衝撃の銀貨3枚と大銅貨2枚賎貨7枚。

3万2千70円。(グリーンフェザントの羽11枚除く)

一人頭1万6千円だった。


二人。大森林でオークを一頭6時間で銀貨10枚(10万円)

発見、追跡、戦闘、下処理、解体含む。


二人。ダンジョンで山ほど狩って10時間。3万2千円。

罠のある中、剣振り回して走る戦闘含む。


ギルドポイント1/3以下・・・

生活冒険者なら断然大森林だった。






次回 139話  30Fへ走れ!

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