第137話  初ダンジョン



5位の昇位試験に受かった。

お昼も食べずに、家に走って帰った!


ダンジョンに入れる、恩寵取得の修行が出来る。

アルムさんに早く報告したかった。


ほぼ最短で鉄級6位を駆け抜けた。


ほぼと言うのは、日曜日(光曜日)と雨の日は神聖国の布教に行っていたのだ。


狩りに行っても獲物が無い日もある。毎日森に出てもそんな日だってある。そう思えば布教も苦にならなかった。メルデスなら神聖国で冒険を思い描く必要はない。



ハァハァ息を吐きながら報告した。


「アルムさん!ダンジョン行ける!5位!」

「おめでとう。アル君!やったねぇ」

「はい!またよろしくお願いします」

「うん!でも隙だらけだよ」


投げられた。でも笑えた。


〇の付いてるカレンダーに花丸を付けた。わーい。


明日行くダンジョンは食料は出ない。ダンジョンも色々あるが横堀の魔穴は魔素で実体化する魔獣を倒すとドロップ品で皮や爪が出る。


ドロップ型のと呼ばれる現象。ある程度戦える様になったら一度それを見たかった。のだ。


そして真実の眼でその意味を知りたかった。


世の不思議を眼で視たかった、秘密を視たかった。

ダンジョンコアは破壊するとダンジョンが死ぬとか色々あると嫌なので壊したいとか思わない。



二人でお昼を食べてから色々話した。

アルのおしゃべりが止まらなかった。


ダンジョンのホラ話や怖い話も聞いた。伝承ではエルフが森に現れた時にはダンジョンに導かれる人間がすでにいたと言う。


ダンジョンの不思議を知る人間と協力してPTを組み、ダンジョンで凄いお宝を持ち帰ったエルフの族長の英雄譚も教わった。族長の家に代々受け継がれそのアイテムがあると言う。


話を聞いていて相当古い話なのが分かった。


アルムさんの武術の訳も聞いた。旦那さんの事も聞いた。20歳ごろに精霊魔法を一通り覚えてから急に心がザワザワして眠れず、日中はソワソワする事を親に相談して森に住めなくなった事を知った。


本能の縛りが抜けたことが解った。森で住めなくなる代わりに好奇心が強くなり、珍しいものや気になるものが増えて街でしか暮らせない事も知った。


森で生きて行けないエルフ。

短弓と剣だけ持った体一つのエルフの娘が20歳で街に出て、楽しそうな冒険者PTと会って仲間になったお話。


そのお陰で毎日退屈せずにダンジョンに潜って色々と教えて貰いながら恩寵を次々と増やした事。


アルムさんは、銀級3位冒険者だ。

そのPTにいた旦那さん。3人目の子供が出来ると夜泣きを始める頃(エルフの子供は1年程経つと森の中じゃ無いと不安になり夜に泣く)までにはエルフの村に子供を預けに行く。本能が外れた娘の子は村の親が育てる。


その頃にはお乳じゃ無くて普通の物食べるんだって、そういうの見てると大体夜泣きの時期が分かるらしいの。



子供が出来るまではダンジョンに行っていたが、子供が出来てからは行ってなかったそうだ。村への往復6か月程も経って帰ると旦那はPTごとダンジョンで行方不明だったという。


だから自分がいてもいなくても旦那は死んでいたと言う。それ以上は聞かなかった。



それは事実だけど、深刻にならないでね。


人の感覚の話じゃ無いからね?エルフだから。


約90年前から60年も前の話だからね。

最低でも60年前には旦那さんは死んでるからね。

うちの爺ちゃんが生まれた年に死んでるレベルよ。


逆にうちの爺ちゃんと同い年ぐらいの末っ子いるからね。それはすでに末っ子なのかどうかも怪しいレベルだ。


末爺だろ。


(3人の子持ちの)エルフが人間の24歳位の姿でキャイキャイ言ってるから騙されるけど実年齢はそうじゃないの。


まぁエルフではまだ若いからキャイキャイするらしい。恐ろしい事に小娘らしいのだ。(が小娘とバカにするらしい)


16時頃まで一緒にお茶やお菓子を食べながら話をして、そのままダンジョンに必要な物を買いに行った。すでにメルデス来た時から3千里バッグを使ってもらっているので、お互いに必要な物を買って行った。


事故があってもお泊りOKな完全装備を整えた。

こんな時マジックバッグは反則だ。俺なんてインベントリまで有るからな、反則中の反則だ。


その夜はアルムさんとギルドで食事を取った。

寝るまで話をした。それしかしなかった。



覚醒した時、歩けなかった。

半年間は外が怖くて不安でしょうがなかった。

師匠と導師がいたからアルの道は開かれた。


開かれた道を自分の意思で歩けるのだ。



・・・・



翌日、いつもの型の鍛錬とランニング、模擬戦を終えて一息ついたら北東の城塞門に二人で向かう。


門を出てからは山に続く一本道だ。


通称で横掘の魔穴と言われるダンジョンに向かう。


色々なダンジョンの形式があるのを調べている。倒されると具象化が解ける形式、解けない形式。


一攫千金を狙うダンジョンは具象化が解けず、素材も剥ぎ取りが必要なダンジョンだ。攻略するのにクランを結成しキャンプを多段に組んで30~60人の冒険者が深層から素材を持ち帰る。


Sランク相当に当たるミスリル級1位冒険者は深層で竜系統の素材を狩って来る者が到達するランクだ。


俺?俺は何度も言うが魔鉄級5位のだ。


ダンジョンに続く山道を急ぎ足で登っていく。


俺の欲しい恩寵を取るにはここだ。

30階までの罠と30階にいる魔獣がお目当てだ。


・罠察知と罠解除。

未作動の罠の発見と解除を繰り返して恩寵が付いたり育つと聞いた。構造をハッキリ把握しないとダメらしい。


・気配察知。気配遮断。

30階のミッチスという魔獣を倒すと付くと聞いた。


耳を疑って何度も聞くと。気配遮断の技術がどうのこうのでは無く、気配遮断が付くと感じらしい。



アルムさんと2人で歩いてるだけで2人や3人のPTに誘われる。

見た目25歳?な感じの40歳の人も初級ダンジョンに居るので違和感もない。


ダンジョン手前に冒険者がPTへの合流を待ち合わせするお茶屋さんがある。ソロ冒険者がお茶を飲んで待ってる。なんか平和で笑える。


登ってきた道は一本道だが両脇の30m位に鍛冶屋(刃物研ぎ師)や一膳飯屋(露店)、武器屋(簡単なナイフや高くない剣を置いてる)お茶屋さんがごちゃごちゃ並ぶ姿はこんぴらさんの参道みたいになってた。



・・・・



はやる心に急き立てられる様に着いた。

凄い早足で登って来たからダンジョンを見たらなぜか照れる。


その前だけ広場になって守備隊の詰め所が建っている。ダンジョンへの入り口は守備隊が冒険者のタグを確認して入れてくれる。


実習ですと申告して名前を書いているのはギルドの研修所で魔鉄級5位の実習生だ。


列に並んでいる間に、変な恩寵を付けて無いか再度確認。素の自分で行かないとどんな恩寵が付くか分からない。眼も罠など見破るといけないので使えない。


希望の恩寵付くまでは細心の注意で頑張る。


気合いを入れておくぜ!おー!


アルベルト・ロスレーン 12歳 男

ロスレーン伯爵家 三男  健康

職業 戦士

体力:73(78) 魔力:- 力:50(55) 器用:367 生命:54(59) 敏捷:51(56) 知力:684 精神:702 魅力:84 幸運:87


スキル 自力で取った恩寵 

身体強化Lv3 格闘術Lv2 剣術Lv2 短剣術Lv2 槍術Lv1 盾術Lv1 馬術Lv2 投擲Lv3 虚言Lv2 算術Lv3 威圧Lv2 魔力眼Lv2 魔術紋Lv1 火魔法Lv2 光魔法Lv1 水魔法Lv2 無魔法Lv2 時間魔法Lv2 土魔法Lv2 風魔法Lv1 雷魔法Lv1 氷魔法Lv1 聖魔法Lv2 闇魔法Lv2 精霊魔法Lv3 魔法防御Lv1 物理防御Lv1 多重視点Lv6 空間魔法Lv1 並列思考Lv1 危機感知Lv1 真実の眼Lv10 真実の声Lv7 真実の魂Lv6 


師匠と導師と先生のお陰で2年で付けた恩寵だ。


右手と左手に盗賊から奪った手ごろで小さめ片手剣と円盾。冒険者の列が進み、俺とアルムさんの番がやって来た。


名前を書いてダンジョンに入った。



・・・・



全然じゃ無かった。


掘るなんて及びもつかない大きさだ。


なんか原初の洞窟?どでかい。


通称:ダンジョン。



洞窟入って30m左に送迎門ゲートと言われる部屋がある。送迎門ゲートの部屋の正面は祭壇だ。


祭壇の手前に直径4m程のサークルが2つ描かれる。

サークルの中心に青の台座と赤の台座があり直径30cmのクリスタル球が台座の爪に固定されている。


簡単に言うと赤が進む、青が戻る。


祭壇は各層10階層にあるボス部屋にもある。

各階層の階段下には認証石板と青クリスタル球がある。例えば8Fの攻略認証は9Fへ下りる階段下に石板と青のクリスタルがある。


探索して認証している者は1F送迎門の赤のクリスタル球に触れて行きたい階を念ずると青の台座のサークルに飛ばされる。


これだけ覚えれば充分。


各階層の階段下に認証用石板と青のクリスタル。。

10階層ごとのボス部屋に赤、青のクリスタル。



なんやねんソレ?



この世の人間は騙せても、俺は騙されんぞ!


聖教国の始祖の時代2700年前から世界中に在るのだ。


階層メモリー機能と転移装置付き人工建造物だ。


どこにツッコミ入れたらいいんだ!



取り合えずでいいや。


誰が作っとんねん!バシ!



正直言って、こんな胡散臭いダンジョンを眼で調べたくてしょうがないのだが、この世界の人達がダンジョンを利用して恩寵を得て、それを育てて能力アップしている。何を隠そう俺もそうだ。ケチを付けるつもりは無い。


変に暴いて恩寵取得に害になるといけないから目をつむる。狙いは気配察知、気配遮断、罠察知、罠解除だ。



アルムさんが普通に言うのだ。

「それならダンジョンで鍛錬するのが早いね」

エルフが知識で知っている事実。


上記4恩寵が無いと冒険が始まらない程の基礎の恩寵と思っている。だからダンジョン行ける様に頑張ったのだ。(危機感知と並列思考も最低限の基礎と思って取った)


怪しすぎるダンジョンを調べるにしても圧倒的に俺の経験が足りない。まだ子供でショボ過ぎて疑問を語る資格が無い。


だから頑張る!



1F。

ケーブスネーク 弱毒性の麻痺毒を持つ。

何度か噛まれるとヤバイらしいが2~3回なら大した事ないらしい。噛まれても原始人の塗り薬と飲み薬がある。


ダンジョンの中は真っ暗ではない、かといって明るくもない。薄暮って感じだ。道幅は6m程もある。素掘りの岩穴風で黒光りでテラテラ光ってる。ダンジョンの内部も色々あるらしいがギルドの資料室の通りだった。


俺はダンジョン初めてだから蛇しか出ない1階を抜けて行く。蛇も岩の凹凸に隠れて黒光りの中に潜む。


蛇を多重視点で見てファイアを指から放ってマイクロミサイルポッドぽくやれそうか?

と考えるだけで楽しんでおく。


アルムさんも俺も当分は物理攻撃のみで冒険する。

アルムさんが言うにはモンスターの注意点や実際の動きの勉強のために一度剣で倒しておくそうだ。


伊達に大森林で3か月もオークを狩っていた訳じゃ無い。

本来なら4~6人PTで狩る獲物をアルは一人で狩る。


ドロップも小さな毒の牙で落ちたら壺に入れておく。

一個やっと出ても銅貨1枚とかじゃないのか?(笑)

まぁ小銭は大事だからな。

10匹殺して1個ぐらいだ。でも楽しくてしょうがない。


ゆっくりと消える蛇を観察して気が付いた。

師匠の魔爪根のと一緒だった。ダンジョンに居る魔獣の神の恩寵?とか考えて笑えた。


休憩場所っぽい岩穴の部屋も覗いてみた。


色々見て回った後で近くの階段に向かった。俺はギルドで構造とモンスターを散々調べている。


降りる階段下にある石板に触れるとその階が認証される。アルムさんも確認でと教えてくれる。帰りたければ横にある台座の青球で帰れる。



2F。


見た目は爪のある大きなカエルのノチスだ。爪で張り付いて舌をピンと伸ばして血を吸いに来る。蚊が大きなカエルになって抱き付いて来ると思ってくれ、どこでも引っ付きに来る。


3Fに降りる階段目指してノチスを倒して行くと、ドロップが出た。爪だ。アルムさんによると矢じりに使うらしい。


先の方で音がする。PTだ!初めてのPT見つけた。俺たちと同じく初めてのダンジョン攻略だな。2Fだし。


視たらお上りさんPT。魔鉄級5位になってこっち来てた。


「通りまーす」

「気を付けてー」

壁の隅を通り抜ける。


通りまーす。と 気を付けてー。のマナーの通りにみんなが言ってくれるのが気持ちいい。



3Fへの階段に着いてアルムさんとジュースを飲む。

2Fで爪が4個出た。感触的にこないだ抜けた乳歯位の固さはありそう、矢じり用にアルムさんに渡す。ノチスの爪は細い100円ライターって感じだ。



3Fに降りる。

石板に触って魔力認証。


3Fでスライム出た!わーい!

丸くない、重力に負けている。

横にだらけて1/3の頭の半円球のその辺がスライムだ。


核ってあるん?とよく見たら反応してピュ!と酸を飛ばしてくる。これ、人の出す二酸化炭素とかに反応するのと一緒だ。


アルムさんが少し色の違う所に剣を突き入れグリグリ回すと消えて行った。俺もグリグリして消して剣をクリーンしておく。


3Fのスライムめんどくさい。

天井の岩の隙間にも居て、斜め横や斜め上で感知するとピュ!と酸を吐いて落ちて来るのだ。

酸が怖くておっかなびっくりで歩みが遅いと感知されるみたいで、相手にせずに全速で駆け抜けて行く。スライムが落ちて来た時には10m程先を進む(笑)


二人で笑いながら4Fの階段まで駆け抜ける。


二人の原始人は4Fに着いた。



4Fはキジ!

2羽いる。

キジ鍋美味かったなぁ。キャンディルか盗賊宿以来の懐かしの味。じゃねぇよ!感傷してどうすんだ。


戦闘鳥の二つ名:グリーンフェザントだ。(まんまだ)


尻尾の先まで2m。

毛を逆立てて闘鶏の様に鋭いくちばしで突っつき、カギ爪で蹴って来る!トサカが膨らんで大きく揺れる。二羽が変幻自在に走り回って飛び蹴りだ。メチャ重い蹴りで早い!本気で怒ってるわ。あ!こんな異世界で実戦中に意味を知ってしまった。


あれ?あっちのキジってトサカあったっけ?

有るみたいだけど、こいつ地球の雄鶏よりトサカがデカい。ピンピンのボヨンボヨンだ。


などと考えながら左手の盾で蹴りを流す。爪で掴まれたらそのまま肉を毟られる。動きが分かったらズバッと真っ二つに切って消す。


あ!一匹目で羽が出た!綺麗な羽だ。

大銅貨一枚ってとこ?(1000円)※ハズレ120円!



矢羽根とかに使うと言いながらエルムさんが尖った耳の後ろに紐で縛った。一本の羽が立つ。



原始人>ネイティブアメリカンに進化した。






次回 138話  均一なドロップ

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