第136話 冒険者5位武術試験
6月中旬。
3月の中旬から頑張った成果が表れた。
原始人でウホウホ狩って※3カ月で5位の受験資格のポイントに達したのだ。
※3か月の意味。
アルがオーク1匹狩るだけで魔鉄級5位PTより4~6倍速くポイントが貯まる。鉄級6位PTならポイント貯めるのに4~7年掛かる。最初の武術試験で16~19歳ともたつくのはそのせいだ。
底辺の鉄級6位PTはオークは倒せない、熊すら倒せない。12歳~15歳の中学生6人が剣持ったぐらいで倒せない。だから村が襲われて壊滅する。
ベテランで昇位試験間近の鉄級6位PTや魔鉄級5位PT4~6人ならオークは身体強化無しでも狩れる。そう!アルは鉄級6位で上のランクの獲物を一人で狩った。だから3か月。
中身が違う。
身体強化Lv3 剣術Lv2の6位冒険者など居ない。
・・・・
>「冒険者5位の武術試験を受けますか?」
ズラッっと並ぶ換金カウンターの一つで言われた。
買取依頼の受け渡し後にカウンターで換金するが、換金額に応じて税金を引かれギルドポイントに換算される。
クレジットポイントみたいなもんだ。
「受けたいです!」
「次の昇位試験は19日後の7月2日9時に北東ギルドの訓練場ですから、ここの訓練場になりますね。予約用紙に記入下さい」
アルベルト・ロスレーン。6位。12歳。得意武術:剣術
こんな感じでいいですか?
「え?お貴族でいらせられましたか」慌てるな(笑)
「貴族だとまずいですか?」
「そんなことありませんが・・・」
「が、が付いてますけど・・・」
「PTとかヘルプのメンバー募集も平民の方ですから」
※PTで荷物係を募集したり、足りないアタッカーや盾役をヘルプで募集して腕が良ければPT仲間になったりする。
「あ!」PTに誘われなくなっちゃう!
「昇位試験の呼び出しで身分が知れてしまいますので、PT活動の時に募集も求人も遠慮されてしまいます。名を明かすお貴族様はお供を連れて入られますし・・・あの、すみません」
アルベルト。6位。12歳。得意武術:剣術。
「あ!」 の後すぐに書いた。汚い字は健在だ。
「これならいいですよね?」
「身分で敬遠はされないかと思います」
「それじゃ、これで」
「はい、そうして頂けたら助かります。身分証はお貴族様のカードを使って頂けたら冒険者証は関係ないですし」
「それではよろしくお願いします」
「頑張って下さいね」
「アルムさん!やっと武術試験受けられる!」
大食堂でオレンジジュース飲んでるアルムさんに報告。
「7月2日9時にここのギルド!」
「頑張ったもんねぇ、アル君。」
「毎日獲物取って、蒸したり焼いたり美味しかったです」
原始人の日々が走馬灯の様によぎるが言えない。
「いつでもエルフの村で暮らせるよ」
「それはいいです!」速攻で被せる!
「えー?可愛い子いるよ、エルフの村」
「いえ・・・恩寵取るのが先です」
「固いよ!固いよアル君」
俺が固いだと!どこがやねん!恩寵は方便なんだよ!分かれ!可愛いのは分かるが森の原始人はノーサンキュー。
「凄く可愛い子選んであげるのに!」
「あー!はいはい、村とか行ったらね」
誰が村なんぞ行くか。カップルがイチャイチャ穴から芋虫追い出す姿が目に浮かぶ。
「アル君は分かって無いなぁ・・・」
「裏の空き地で少し模擬戦いいですか?」
「えー!帰ってきたところなのに?」
「帰りに
「いいの?」
「いいよ!アルムさん先生だから!」
「うん、先生!やったー!」
原始人はちょろい。
二人で帰りに小さいのを3個ずつ舐めて帰った。
「絶対、こんな甘いの森には無いからね!」
「ホントに?砂糖とかは?」
「花の蜜とか、蜂蜜?買って来たら砂糖有るよ」
「そりゃ、買って来たら
「これ、エルフに配ったら森から出て来るかも」
「ホント?危ないお菓子だな(笑)」
今度色んな味を買っておこう。子供のお土産だな。
「うん、危ないかも(笑)」
「色も綺麗だよね」
「色で味も違うよね」
二人で並んで帰る。首元には腕輪でお着替えする様になってから革紐のチョーカーになったシェルが揺れている。
トップが天使をかたどったミスリル風だ。
・・・・
アルムさんと槍を持って対峙する。
アルは最近は槍を修めている。
片手剣だけの鍛錬以外に短剣を一回振っただけで剣術や格闘術が上がる場合もある。と師匠に聞いてから考察しながら他の恩寵を修めて来た。
現在の剣術2と身体強化3は考察のお陰なんだよ。
片手剣は刺突、槍も刺突。両手剣は薙ぎ払いと叩き付け、槍も薙ぎ払いと叩き付け。短剣術は取り回し、剣術の取り回し。格闘術は体捌き、どの武術にも乗る体捌き。短剣術の取り回しと相性が良い。
そうやって色んな武器のその部分が少しずつ片手剣に乗る。ある一定のしきい値を越えた時Lvが上がると踏んでいる。
何がどう関連するのか確かめながら体系立てて武術恩寵を育てるのを心がけたら皆が言う常識が分かってきた。
その長所を意識して模擬戦や実戦(魔獣戦)で使う事で経験値ぽい物が入る。そしてそれは他の恩寵の経験値を兼ねる。そんな気がする、そうやって剣術がLv2になったと思う。
両手剣と槍は叩き付けを兼ねてると探った。
真実の眼、真実の声、真実の魂も多分そうだ。
この武術の考察で当たりだと睨んでいる。
試験前。アルのステータスは今こうなっている。
アルベルト・ロスレーン 12歳 男
ロスレーン伯爵家 三男 健康
職業 ―
体力:73 魔力:ー 力:50 器用:367 生命:54 敏捷:51 知力:684 精神:702 魅力:84 幸運:87
スキル 自力で取った恩寵
身体強化Lv3 格闘術Lv2 剣術Lv2 短剣術Lv2 槍術Lv1 盾術Lv1 二刀術Lv1 馬術Lv2 投擲Lv3 算術Lv3 虚言Lv2 威圧Lv2 魔力眼Lv2 魔術紋Lv1 火魔法Lv2 光魔法Lv1 水魔法Lv2 無魔法Lv2 時間魔法Lv2 土魔法Lv2 風魔法Lv1 雷魔法Lv1 氷魔法Lv1 聖魔法Lv2 闇魔法Lv2 精霊魔法Lv3 魔法防御Lv1 物理防御Lv1 多重視点Lv6 空間魔法Lv1 並列思考Lv1 危機感知Lv1 精神耐性Lv2 真実の眼Lv10 真実の声Lv7 真実の魂Lv6
※インベントリLv10
インベントリは両替商のお金を返したときには神聖国の武具の預かり物が多くて取れなかった。
精神耐性はオークを解体しまくったらLv2になった。
短剣術を練習する上で短剣格闘を教えて貰い、その時に短剣やナイフ(刃渡り20~50cm)を右に持ったり左に持ったりスイッチして左右の攻撃に繋げる物がある。これに熟達して行くと二刀術が付く。アルはナイフ格闘中に二刀術が付いた。
アルは知っても知らなくてもやる事は一緒だからより合理的に考察を踏まえて確かめながらやっている。
片手剣、両手剣、鎗、短剣、円盾は山ほどある盗賊の鹵獲品の中から身体に合う小さな奴を師匠に選んでもらった。
冒険者になった成人から真剣だ。勿論模擬剣も持っている。好きな時に師匠の武器イメージで模擬戦出来る。
そんな訳で、毎日槍の鍛錬して言った。
「僕、槍で試験受けようかな?」ポロっと言った。
「え、槍の試験じゃないの?」アルムさんもビックリ。
「イヤ、毎日槍してたら好きになってきた(笑)」
「なによ、それ(笑)」
「アルムさんの鎗はシュッとしてカッコいいから」
「えへへ、そう?そう見える?」シュッシュ槍をしごく。しごくと槍はビョンビョンと喜ぶ。
「うん、僕もそうなってるなら槍も良いなって」
「それで試験は何で受けるのよ?」
「剣だけど」
「アル君!(笑)」
「だって槍術を上げる方が剣術上げる近道だから」
「何よ?それ」
「・・・こういう事」
「へー」なんか知らないっぽい。
「あんま気にしないでいいのかな?」
「わかんない」 でた得意技!
「わかんないの?」
「うん」この人考えが浮かばない時、わかんないと言う。適当に合わせない。種族の掟だろうか?
「色々考えてるのがバカらしくなってきた」
「楽しかったらいいじゃない」
「もう!そんでいいよ(笑) 槍楽しいし」
18日槍を使いまくったが上がらなかった。
もうすぐだと思うのになぁ。
剣術Lv3にしてへへんと合格する夢が潰えた。
明日は試験だ。明日は円盾付けて剣術で受かる!
・・・・・
翌日朝。
アルムさんと串焼き屋へのランニングを終えて少し模擬戦。
食事を取ったら余裕を持って試験場に行く。
8時半に北東ギルドの横に併設の訓練場に行く。
ウヒョー!グランド立派。ってたった30人かよ!
この広さで少なすぎるだろ。
周りのお兄さんたちに話を聞いてみると、毎日違う級の武術試験をしてるらしいが魔鉄級5位試験は北ギルド、北東ギルド、東ギルドの回り持ちで毎日午前中に1回あるらしい。
え!俺って19日も予約で待ったって事は、単純570人の5位試験待ちが居たのかよ。
メルデスで3万人冒険者いるならその位はいるか。
皆にお前何歳だ何歳だと聞かれまくる。
年齢的に異色な上に背が9歳並みで小さすぎる。
12歳と答えると驚かれ、呆れて、笑われてヨシだ。
分かる人はギルドポイントを貯めたの分かってる。
見た目じゃ無いよ実力だよ?お兄ちゃん達!心で言う。
9時からの武術試験。
二人の試験教官が来た。
横に申し込み資料を持ったギルドのお姉さんもいる。
魔法使いの受験者4人は教官と遠くに離れて行った。
「申込書の順番通りに名前呼ぶから俺と立合だ。俺は片手剣だが槍でも何でも遠慮しないで全力を出せ。」
教官が模擬剣持って立つと順に名前が呼ばれて行く。
受験者と立ち会って、お前はここを直せ、あそこが悪いと剣筋を実演しながら手取り足取り注意を受けて落されて行く。
5人受かってアルは14番目だった。
俺の番が来て、身体強化を全開。構えを取って軽く2~3回打ち合ったら合格貰って合格者の木の縁台に向かったらブーイングが起こった。
そうなるわな。ちみっこだしな。
教官が笑って言った。
「文句あるなら、この坊主に勝ったら合格でもいいぞ」
何言ってくれてんだ!アホ教官!
落ちた奴らが、やる気満々じゃねぇか。
「アルベルト、悪いな。皆納得しないみたいだ」
「僕が相手するんですか?」
「おう、手加減してやれよ」
「えー!知りませんからね?」
落ちた皆が自分が行くと揉めている。
「アンバス!5回受けてるお前が行け」
教官が資料を見ながら誰かに言う。
「見ろ!俺だろうが」とすごく大きな(20歳)が出てきた。
「アルベルト、手加減してやれ。あいつ今日で5回目だ。試験教官も直す所教えてる筈なんだがな。6回目はお前が教えてやってくれ」
「何言ってんですか?知りませんよ!」
「俺がこんなガキに負けると思ってんですか?」
「アルベルトは合格だ、負ける訳が無いだろう」
「そんじゃ、俺が勝って合格しますね」
「出来たらな(笑)」
「悪いとこ直さねぇから落ち続けてるんだ、子供のお前にやられたら反省するさ、教えてやれ」
(アルは成人だが見た目がアレなので皆が子供扱い)
反省の言葉にアルが反応した。
「そこまで言うなら・・・わかりました」
なんか分かっちゃった。
俺がこのアンバスって奴の前に立ち塞がる役なんだ。
あぁ、そうなんだ!そうなんだよ。
なるほどなぁ、そうやって因果は巡るんだな。
甲子園常連校で見た10年に1人の天才の役だった。
アルは優しくなってしまった。
その役に徹しようと思ったのだ。
アンバスが反省して自分で立ち上がる試練を請け負った。
立ち上がった時、こいつは強くなる。
明は違う道に立ち上がって進学校に受かった。
「お兄ちゃんさぁ!教官が言っても分からないよね?」
「?」
「悪いとこ直さなきゃ受からないよ?」
「このガキが!」
「子供にやられて反省するしかないよね?」
振り下ろしの剣を避けて、模擬剣を鞘に仕舞う。逃げるふりして盾を合格者の座る縁台に大事に置いて格闘術で相手する。
初夏の
それは2年前に視た師匠の姿だった。
「何の真似だ?ガキ!」
「剣も楯も要らない」
「なんだとー!」
「そんなに怒っても当たらないよ?」
「怒って振り下ろしてどうすんの?」
左から袈裟懸けに振り下ろす剣の内側に入って剣を持つ手に右手を軽く添えて流す。流した後に裏拳で右頬を撫でる。止まった体に左の腹パン。軽くくの字にしてそのまま下がる。
「わかった?」
信じられない顔をしている。
「まぁ、ホントにやられないと分からないよね?」
「教官、こんな感じですか?」
「おう、ダメージ無いしな。そんな感じだ」
「だって。 稽古つけてあげるからね」
手の平でチョイチョイやって煽る。
メタクソに模擬剣を振り回してくるがまったく掠りもしない。
前にも出られない。アルが避けて顎だの首だの胸だの張り手でピタピタ触って崩しながら押しているのだ。(体格差の違いは身体強化で補っている)
アルが打撃を打たないのでアンバスは暴れ放題。
進んで攻撃すると戻って、また進んで攻撃して戻る。
ヒットしそうな剣筋だけ手に触れて軌道をずらす。
優しく張り手でピトピト押されて戻る。
腕を掴まれ引かれお互いの場所を入れ替えるだけ。
そう。リードが模擬戦で見せた無刀での模擬戦だ。
自分の場所を1歩ほどしか動かず捌いていく。
受験者達はその技術に舌を巻いた、教官さえも。
「お兄ちゃん。言われた事を直さないと何回試験受けてもダメだよ」
「今まで体の大きさで凄んだら相手は引いたと思うけどそんなのモンスターに通用しないからね?殺されて終わるよ?」
「当たらないでしょ?直す気無いなら鉄級6位で我慢しないとダンジョンで死ぬよ?」
「お兄ちゃんが分からないと、他の人も騒ぐから分かってよ」
「合格したら死ぬよ?合格で終わりじゃ無いよ。合格したらダンジョンでモンスターと戦うんだ。負けると死ぬんだよ?」
アンバスはハァハァと息荒くへたり込んだ。
「あ!分かってくれたんだ!ありがとう」
観客を見回して「他の人もやる?」
落ちた人達はブンブン首を振った。
合格者の縁台に座って他の人の試験を見て終了した。
魔鉄級5位のプレートをもらった。
一緒にジョブの受付をされた。戦士、回復士、治癒士、魔法士、魔術士、斥候の希望を聞かれたのだ。
ジョブを付けてくれるらしいが、申告するだけだった。ジョブの取得条件の恩寵が足りなくても良いと言う。
魔鉄級5位のプレートで各ジョブをお願いすると驚かれた。戦士要件である馬術、剣術か鎗術か短剣術、身体強化、格闘術を持った12歳なんて聞いたこと無いという。
へへん!と鼻が高くなった。
師匠のお陰だ。
ジョブ担当者がタグに各ジョブの魔術刻印を入れて行くと戦士、魔法士、魔術士、回復士が付いた。
呪文も恩寵の確認も何も無かった。
普通は恩寵取得前になりたい職業のジョブを申請して刻印をもらい、その足りない恩寵が付いた時に自動的にジョブが付くと言う。
俺の場合は、申請した途端にジョブ取得要件を満たして各ジョブが付いたらしい。斥候と治癒士は恩寵要件満たしてなくて付かなかった。
戦士を付けたら基礎数値が+5上がった。
職業 戦士
体力:73(78) 魔力:- 力:50(55) 器用:367 生命:54(59) 敏捷:51(56) 知力:684 精神:702 魅力:84 幸運:87
魔術士を付けたら基礎数値が+10上がった。
職業 魔術士
体力:73 魔力:-(-) 力:50 器用:367 生命:54 敏捷:51 知力:684(694) 精神:702(712) 魅力:84 幸運:87
下位職と上位職があった。 魔法士+5<魔術士+10だ。
魔力にワロタ。
テミス様の魔力に+10。クリーンの粉以下だ(笑)
次回 137話 初ダンジョン
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この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
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一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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