第135話  種族主義



ミウム辺境伯領:メルデス。

冒険者ギルドはこの街に3つある。


ロスレーン~辺境伯領 拡大地図

https://gyazo.com/c27d4f7568c15633a7990f3c1a0a7f23



東ギルド:ダンジョンに一番近い東門のギルドで1年前に出来た新しいギルド。魔鉄級5位以上の冒険者しかいない。ベテラン~中堅PTでのダンジョン探索組がほとんど。


周辺に魔道具などダンジョン関係を扱う店が多い。


1年前に帝国が神聖国になる事で帝国との緩衝地帯を神聖国と両分した結果、コルアーノの物になったダンジョン。

聖教国は認めた国と緩衝地帯を設けないため。神聖国になり次第に緩衝地帯は無くなった。



北東ギルド:山の稜線から麓までの傾斜地、大森林の魔獣、高山植物や森での採集、何でも屋の冒険者が好むギルド。周辺には食品からダンジョン消耗品まで幅広く扱う店が多い。


ここにもダンジョンがあるが初心者用と言われている。浅い階のモンスターがダンジョン初心者の練習に丁度良いのだ。



北ギルド:大森林専門の冒険者で魔獣のコロニーや可食植物などを狙う中堅PTから1匹物の魔獣狙いのソロ冒険者まで幅広い層に利用される鉄級6位冒険者が一番多いギルド。食材を扱う店が周囲に多い。



俺は北東ギルドを利用している。


北東ギルドの利用冒険者は約1万人。

3000~5000人が毎日利用している。ヘクトの街の冒険者が約300人の事を考えたらどれ程の規模か分かると思う。


メルデスの冒険者は3万人程で北東ギルドで1万人という感じ。誰もそんなこと調べないからわかんないんだよ。目分量だ(笑)


だからメルデスとランサンで約6万人程はいる筈だ。

最初はヘクト(ロスレーン領で冒険者が一番多い街)と比べて余りに凄くて驚いた。


驚いた結果。アルの習性で考察。あっちと比べて納得した。

あっちの自動車産業がこっちの冒険者産業と似てるのだ。


日本の自動車産業就労者が540万。人口一億2千万人とするとコルアーノは300万人。1/40で計算すると王国の冒険者産業就労者は13万5千人位いる事になる。


この辺境伯領で6万人の冒険者なら、その関連事業として素材関連、食料関連、冒険者ギルド、冒険者宿など入れたらコルアーノ王国のドル箱産業だ。


神聖国の鉱山採掘がドル箱で鉱山関係者に偏るのと一緒だ。

あっちの国は大山脈多くても大森林が接してないので食べ物が無く、それほど魔獣が増えないのだ、ダンジョンの素材系冒険者だけ。



メルデスは24時間冒険者ギルドが開いている。依頼が入り次第に張られるクエストボード。そりゃ不夜城、白夜城と言われるに決まってるよね。


昼夜関係なしのダンジョン。食事が終わってゆっくりとボードの依頼を見る冒険者が多い。見てる間に貼られるのも多いのだ。


同じ様に3交代制で獲物を捌く解体場も食肉工場って言うほどデカいのだ。あっちの世界の大漁港でセリやってる場所ぐらいは楽勝にある。


ね?冒険者の聖地でしょ? (へへん!とアルは得意顔)


俺はそんな所にいるんだよ。



・・・・



アルムさんと一緒にその日の依頼票を選んで大森林に狩りに行く。


アルムさんはその日の糧を捕る種族だけど、人間のシステムも理解してくれて俺の冒険者の階位を上げるための依頼を毎日一緒に先生しながらこなしてくれてる。


食肉になる獲物なら高い安いあるんだけど(こんな勉強する機会を逃してなる物かと)お願いして色々な物を狩った。売れない物まで狩った。<オイ!


エルフがおやつ代わりの芋虫を巣穴から出す方法。

風の精霊で煙を操り獲物を手前に炙り出す方法。

獲物の足跡を辿って、一匹の獲物だけを狙う方法。

矢とかの上手な削り方と硬い木の選定方法。

偽装トラップに獲物を追い込む方法。

血抜きの間に何して遊ぶか決める方法。

蜂の巣の上手い落とし方と蜂の子の料理法

解体肉を包む瑞々しい適した葉とその選別法。

芋虫、サソリ、アリ、サナギ、ミミズの料理法。

魚の寄生虫の怖い奴と魚の餌になる虫のいる所。

毒のある川の蟹、森の蟹と美味しい蟹の選び方。

ツツガムシなど小さな要注意のダニ系毒性生物。

生物毒に効く解毒植物とその植生と薬効時期。

麻痺毒の煎じ方、解毒薬の調合法。

獲物の旬とその種類による捌き方と料理法。

皮の剥ぎ取りでナイフの入れ所と力の入れ所。

皮のなめし方となめしに使えるタンニン植物。

柔らかく上質な皮を作るおばばの知恵。

良く鳴る、骨や木のおもちゃの作り方。

蛭を傷口に当てて麻酔にし、治療する方法。

薬草の地下茎を・・・



・・・終わらねぇよ!原始人かよ!



冒険者から原始人になってるじゃねーか!


エルフは原始人!俺が認定証やるわ!

どんなけ森で暇人しとんねん!

本能で縛られんとやっとれんわ!


まぁ・・・勉強にはなった。



獲物を追う最中に見つけた美味しい芋虫のいる木。

忘れない様にしてる。


なかなかあのいないのよ。


まぁ・・・



芋虫のいる木を見つける俺の苦労は誰もわからないだろうな。




もうそんな感じで、すでに俺はグンマーだ。

原始人と一緒に日々進化している。


そんな事をポロっと言ったら怒られた。

※グンマー帝国に怒られた訳ではありません。

あそこは自分からを提出せよと潜入してねアピールしている。


アルム原始人さんに怒られたのだ。

今は森で糧の捕り方やってるけど村レベルなら反物織ったり、大工が居たり文明的な生活してるらしい。


言う時点で俺は鵜呑みにしてない。

妖精族とか言ってゴメン。原始人だわ。


そんな事言いながら隙を見せると襲われて叩きつけられ、どっちの木の実が食べたいかとやられ、投げられる日々で恩寵取得後も余念は無い。


鉄級6位じゃ大森林の常設依頼の食料(獣か魔獣の肉とキノコ、蜂蜜などの採集系)と薬草か希少な高山植物の依頼しかない。


人の欲しがる依頼しかない。<当たり前だ!

良く鳴る骨のおもちゃを買い取りしてくれない。

無償で配った孤児院の子供達も珍妙な顔をしていた。


色々な経験を積むために山脈の稜線まで昇ったりして変わった採取依頼も受けた。


雑談もした。


「エルフの村が大きくなると獲物無くならない?」

「獲物が少なくなったら村が半分に分かれるのよ」

「新しい森を探すの?」

「そうよ」

「獣人も増えるとそうなの?」

「そうよ、増えたら森に食べ物が無くなるじゃない」

「・・・」

「どうしたの?」

「自分の生まれた森を出ちゃうんだよね?」

「だって森より先に食べ物無いじゃないの」

「そうなんだけど(笑)」

「そうよ、へんなアル君」


「ここの大森林みたいな森探すの?」

「ここは特に危ないよ!(笑)」

「あ!あるにはあるけど、まぁいいわ」

「ん。あるの!危ないのに?」


「変なエルフや変なドワーフもいるのよ」

「変な?」

「いいのよ。あいつらは普通じゃ無いから」


「その辺にある森じゃ無いよね?」

「そうよ、西へ行くと大きい森がたくさんあるのよ」


「コルアーノは大きいの無いの?」

「平地の大森林なら少しあるわね」

「獣人もそういう森に村を作るんでしょ?」

「そうね、大きい森なら場所を決めたりするわよ」

「仲良くしてるんだね」


「そうよ(笑)仲良くしないのは人間だけよ」

「え?」

「増えると他に攻めて行くのは人間だけよ」

「人間だけなの?」


「うん、人間は増えたら場所が必要でしょ?」

「まぁ、増えたらそうだけど・・・」

「人間は多いから攻めないと行く場所が無いのよ」

「行く場所・・・国に囲まれてる事?」


「それで土地が欲しくて森の村を襲って奪うのよ」

「え!エルフも襲われる?人と仲良くないの?」


「エルフは精霊魔法があるじゃない。エルフに手を出して逃げ帰らない人間はいないわ(笑)」


「人だけがそんなに増えるんだね、エルフも獣人もみんな一緒に増えたらいいのにね?」


「人は年柄年中じゃない」

「え?」

「獣人やエルフは決まった時しか発情しないのよ」

「!」

「?」

「僕子供なのに!何てこと教えるんですか!」

明はかなり知っている。相当知っている。カマトトぶっている。


「え?体の事を子供に教えないと困るじゃない」

「!」頭を金槌で叩かれた。


「どうしたの?」


「いいえ、アルムさんに良い事教えてもらったなって!」

「そうでしょ!良い事でしょ!ふふっ」

「はい!」



などと話しながらも追跡のオークを一匹捕った。


死ぬと魂の後光が消えるから俺に死んだ振りは効かない。


首をはねたオークを精霊魔法で急速に冷やす。

血が凍らない様に10度位まで一気に冷やす。血が腐らない様にだ。温度次第で細菌が爆発的に増えて血が腐る。


両足にロープを掛けて太い枝にピンと両足が立つほど引っ張って木に結ぶ。オークの身体の真下をホールで掘って逆さ吊りの完成。後はちょいちょい冷やすだけ。



血抜きの間は開けた所でアルムさんと鍛錬する。

アルムさんと模擬剣で打ち合ってやられまくる。


元々教える気が無い。遊び感覚で絶対負けないと子供に容赦なく掛かって来る。手加減しながらキャー!とか大喜びで避けながら打ち据えられる。格闘技も投げられまくる。


やられ過ぎてマジ凹む。


模擬戦に入り込んで気が付くと血が止まっている。


皮を剝いで、魔石を最初に取る。


高く売れる部位と安い部位に分けて行く。

綺麗な肉にしたら仕舞っていく。

一塊約10㎏の肉を葉に包んでしまって行く。



こちらの世界の植物の葉は朴葉や桐の葉よりデカいのがある。見つけたら先に取ってクリーンで綺麗にして水で洗っておくと瑞々しいままで包むのに見栄えが良いのだ。


そこがアルが日本人だった証拠かもしれない。

アルムさんが驚いて褒めてくれるほど綺麗に包む。

スーパーで売られた瑞々しい肉こそが売り物なのだ。


アルのインベントリに仕舞って行く。最後に豚コマが多かったので分けて包んで仕舞う。


冒険者ギルドに大体同じ時間にやってくるアル。

買取カウンターに綺麗に包んだ肉の塊を置いていく。

オークの肉の単価でアルの肉は一番高かった。


脂身や肉が残って勿体ないのは持って帰って料理する。

魔石は貯めている。


一匹200kg~250kgを捕ると80kg~100kgの可食肉。約大銀貨1枚(10万円~12万円)

10kg×8~10個を持って帰る。


※アルが捌いた肉は最上級で買取り額に上乗せが有る。



6人パーティーで2体解体して一人1日銀貨3枚(3万円)かな。一人で約25kg背負う。


身体強化持ってなくても背負うぐらいは持てる。


鉄級6位のPTでも一人当たりの稼ぎは大きい。

高い冒険者宿でも食費込みで4泊まれる。

5宿なら6日分だ。

6日のうちまた獲物を取れば貯金も増える。


魔鉄級5位になるとクランやPT単位で家を借りて自炊で安く浮かせて互助会みたいな生活する冒険者がメルデスにはいる。ただ魔鉄級5位ぐらいは男女とも思春期だ、色々揉める話も聞く。


クランはダンジョンの深層の獲物を持って帰るのに組む20~60人のPTの集団だ。ポーターや中間キャンプを維持するのに組織するのだ。


でも冒険者はいつ死ぬかも分からないって、遊んで使っちゃう人も結構いる。稼いだら酒場で飲むだけ飲んで財布が寂しくなると働こうってソロのおじさんも多い。


おれは庶民が飲んでる葡萄酒の薄めた奴?葡萄酒の発酵前の奴?葡萄ジュースに慣れて最近そればかりだ。エールとか苦くてダメだ。


導師が飲み終わった酒壺にジュース買ってバッグに持ってる。


ギルドがやってる冒険者の研修所の人達が大食堂に居る。

1年単位で魔鉄級5位を銅級4位で通用する冒険者に育成する予備校だ。


実習でパーティー組んでダンジョン入って恩寵取得まで学ぶらしい。もちろんギルドの教官が監督する。

宿舎と食費は戦利品の上がりでタダなんだけどな。

審査が厳しい。ポイント的に俺は無理。


研修所の試算したら1年のダンジョンの上がり(ドロップ品含む)で金貨4枚(200万円)稼いだとしても宿泊費と食費と座学やダンジョン付き添いの教官代が要るだろうから、相当な額は領主やギルドが負担してる様に思った。


育成すれば冒険者の危険も減るし、領もギルドも潤う。ロスレーンのギルドと余りにも冒険者の待遇が違うから可哀想になる。

もしやロスレーンの冒険者ギルドは左遷先かと疑う。


研修所を卒業すると銅級4位がもらえる。


研修所の最初の難関がギルドポイントなんだよ。銅級4位の試験受ける資格を持つ者しか申請できない。それだけ稼ぐ実績を持って申請し、研修で2~3年足踏みしても上で通用する恩寵を獲得するのが狙いだからな。

レノアさんがこれで底力付けた制度でもある。



講習で教官に教えて貰えるなら、他所のギルドで魔鉄級5位になっていきなりダンジョン入るより安全。この街で上に行くなら基準を満たして研修だな。


19~23歳の(魔鉄級5位でも少数のエリートである)お兄ちゃんお姉ちゃんが楽しそうにやっている。ちょっと予備校を思い出して羨ましい。


俺は鉄級6位でダンジョンはダメだから横目で見ている。


俺はアルムさんの付き添いでギルドの中では羨ましがられているし、になっている(笑)


とりあえず基本の恩寵欲しくて修行だし。その土台をクリアしない事には怖くて世の中渡れない。俺は数奇な運命で魂の事とか分かっちゃったからな。知らないならやっぱ異世界で無鉄砲に暴れると思うけどさぁ・・・知った限りはねぇ?


長く生きて、出来るだけ磨いて頑張ってみたいじゃん。



そうそう!冒険者ギルドでねぇ。

アルムさん綺麗だからナンパが来るの。

アルムさんも慣れてて無視してるんだけど、肩や腰に触った瞬間に手を添えて吹っ飛ばす。


半歩踏み出して力を生みだし身体強化で何倍にも変換してそのエネルギーを的確に渡してるだけ。


体重乗せて重心低く体当たり。それ位のエネルギーを触れた掌からドン!と渡された人は自分で飛んでいく。手を当てられた所は多分青タンか陥没しそうなエネルギーだ。


それを見た俺は格闘技にハマり山でも剣を持ちながら空いた手で抜き手したり、飛んで二段蹴りして、カンフー剣戟家みたいな変な武術の創始者となった。


俺が「あちゃー!」「あちゃ!あちゃ!」と繰り出す拳にアルムさんが大ウケして「もっとやって!」と

でもオークにアタタタやっても効かない。


200kg越えに33kgが拳で最大強化の腹パンやってもたまにバランス崩して尻モチがやっとだよ。お相撲さんより大きいんだよ。無理に決まってる。肉が分厚くて打撃に強いの。オークは切るか突くかしないとダメなの。



6月中旬。

そんなこんなで鉄級6位のポイント数はクリアした。


「冒険者5位の武術試験を受けますか?」


ズラッっと並ぶ換金カウンターの一つで言われたのだ。





次回 136話 冒険者5位武術試験

----------------

この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


               思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る