第三章 異世界冒険編
第134話 冒険者の聖地
12歳の4月。
俺はミウム辺境伯領のメルデスにいる。
ここはコルアーノ王国一番の冒険者の聖地だ。
メルデスは別名、白夜城:辺境伯領の城塞都市。
この土地の基本情報はこんな感じ。
冒険者ギルドの資料室の受け売りだが許してくれ。
モンスター。魔獣は魔素(マナ)の高い所で育った動物の変異体と言われる。生まれた変異体が群れを作り、コロニーが生まれる。魔獣同士の血の濃さが一定を越えると上位魔獣が生まれる。
どの様な場所に居るのか。
大山脈に住む場合。魔獣も生存競争が過酷で住むのが大変。雪が多くて土地も険しく捕食する餌も少なくて増えられない。
魔素の多い大山脈に魔獣が生まれ、大森林が接する所に数多く生息する。大森林は住みやすく餌も豊富で集落も作りやすく、繁殖して増えやすいのだ。
俺のいるメルデスの街は、白夜城の別名がある。24時間眠らない街の意味だ。この街は魔獣の生活圏を大森林に押し留めるミウム辺境伯の砦:城砦都市で出来ている。
石組みの
モンスターが多い領なので耕作地も限られている。その分魔獣素材をコルアーノ中に届ける原産地だ。
魔獣の皮や骨や食肉。魔術的効果の素材が日夜狩られ、ダンジョンから持ち帰られ高額で取引されて行く街。偶に上位個体が出没すると指名依頼で高名なパーティーが依頼を受ける。上位個体の皮など凄い値段で売れる素材だ。
まぁ、ここは真面目に狩ってたら食える街で儲かる街なのだ。儲けないと中立派最大武力を誇る辺境伯領を維持できないよ。貴族は大変だ。
もう一つランサンと言う街も辺境伯領にあるがそっちは不夜城と言われている。俺がここを選んだのは質の高い冒険者がいるという噂のメルデスと言う街を選んだからだ。
ミウム辺境伯領、周辺地図
https://gyazo.com/c27d4f7568c15633a7990f3c1a0a7f23
俺は12歳になり次第に神聖国の冒険者ギルドで登録した。紙の証明書のペーパー級冒険者が受ける細かいお使いや汚れ仕事を空いた時間に真面目にやったんだ。
神聖国の布教の合間に30個の依頼をやって、一個上の鉄級に4か月でなったよ!毎日じゃないけど少しずつ冒険者もやってたんだ。
ロスレーンで冒険者にならなかったのは俺を貴族と知ってる人がいるからだ。あそこの街で馬糞や煙突の掃除なんて出来ないよ。
神聖国の冒険者ギルドで色々教えて貰った。悪い事をしない冒険者達だからすごく丁寧に教えて貰った。とても居心地が良かった。
鉄級の次の魔鉄級は武術の試験が有るけど一般の冒険者はここでもたつくらしい。受かるのが16~19歳位と知って冒険者として出遅れて無いと安心した。
真っ当にPTに入って依頼票の仕事や魔物討伐をこなすと魔鉄級に上がるのはその年齢みたいなの。真っ当じゃない俺みたいに生活の心配もなく好きなだけ武術鍛錬するのとは違うわな。
ミスリル級>ゴールド級>シルバー級>ブロンズ級>マジックアイアン級(魔鉄級)>アイアン級(鉄級)>ペーパー級に分かれる冒険者ギルド・・・
・・・あぁ!そうだよ!俺は6位冒険者だよ。
夢を壊さない様にそう言ってんだよ。分かってよ(笑)
世の中はそういうもんだろ?長い物には巻かれなきゃダメなの!
・・・まぁ鉄級6位取って、それからここに来た。
なぜ来たか。
3月中旬に鉄級6位のプレートになって嬉しくて(それまでハガキの様な冒険者証明書だった)導師に夢を語ったからだ。
導師にあの恩寵効果は是非欲しい、この恩寵効果はこっちの恩寵に乗る筈なんです。と将来の夢を語ったら言われたのだ。
「今からせい!」
「え?神聖国の布教(最近はそう言っている)が終わらないとそんな暇無いですよ」
「大きい街は回ったんじゃろ?」
「はい、小さい街はまだですが」
「アル、お主は御子かも知れんがまだ子供じゃ、弟子になってから見ておっても働き過ぎじゃ。お主、新年こそ民衆が街に出ると付与と布教でロスレーンで過ごしておらんではないか。
国はそんな早急に1年2年で作る物では無い。そんなに焦らず地道に努力すればよいのじゃ。だからやりたいことを優先せよ、お主が知るのと同じ事ぞ。
お主が恩寵を欲しいなら神聖国をも捨てて取らねばならぬ、御子が危険に晒されてなんとする、お主は害されてはならぬ」
「でも、恩寵を覚える先生から探さないとダメなんですよ。今すぐには出来ないです」
「・・・ちょっとまっとれ」導師が消えた。
聖教国で覚えたミニチョレス(あっちの8弦のギターで形はマンドリンで音はバンジョー)を弾きながら待つ。
表現できない!
8弦ギターで形はマンドリン音はバンジョー(笑)
普通のチョレスはギターのボディの1.5倍(反響箱がでかい)ほどあって俺が抱えられない。ミニチョレスは携帯用で乗合馬車で吟遊詩人が弾く大きさだがバンジョーと変わらない。元のチョレスがいかに大きいか分かるだろう(笑)
神聖国の大司教を聖教国へ連れて行くと待ってる時間がある。待ってる間に教会をウロウロしてたら聖教会楽団が演奏していた。
多彩な音色が綺麗で聞き入ってたら声を掛けられた。
教会部のミイルフ大司教の下に楽団の奏者がいるので、腕輪に入ってる曲を教えてもらっているのだ。だから誰でも知ってる教会の歌しか弾けないの。
・・・導師マジ遅いんだけど。
先生に当てが有るのか?まさかレノアさん?
全然帰って来ないよ。
お爺様と大喧嘩とかしてないだろうな。
2時間程して・・・
眼の前に導師とアルムさんが現れた。
「アルムさん!」
「アル君久しぶりだね!」
「連れて来てやったぞ、お主の先生じゃ」
「先生だけど精霊魔法以外も出来るの?」
「アルム、言われとるぞ(笑)」
「アル君、精霊魔法だけじゃないよ!(笑)」
握手の手を掴んだ途端に投げられて息が止まる。
「ぐ!」
起きようとしたら両耳とこめかみの間を剣がすり抜ける。
「髪が長い様だから切ったよ(笑)」
「アル、どうじゃ?」
「・・・」呆然として声が出ない。
「アルム先生に教えて下さいは?」
「アルム先生教えて下さい」
「うん!またアル君といっしょだね!」
アルムさんの部屋が2Fの大きい部屋になった。
導師がインベントリに入れて来た荷物を出していく。
荷物多い!移住すんのか!(笑) 武器の種類が多い。
初めて知ったがアルムさんは武術の前衛職だった。
しかも銀級3位の冒険者なんだって。
導師が元宮廷魔導師なのに精霊魔法使いの護衛は変だよな。
王都の武術大会で良い成績だったアルムさんを導師が護衛で雇ってそのままキャンディルに連れて来たそうだ。
まぁ、初日はアルムさんに色々聞いてのんびりしてた。
日曜日(光曜日)と雨の日は布教で回る事になった。
翌日の布教が終わった夕方に行きたい街を聞かれたので、質の高い冒険者の技術が盗めそうなメルデスを希望した。
ミウム辺境伯領のメルデス。皆で晩に跳んだ。
そしてスラムのゴミ捨て場へ行く。
導師が貧民街のゴミや廃棄物の山をインベントリに片づけた空き地に豪邸2F農家を置いた。違和感が半端ねぇ・・・
最近のロスレーンやキャンディル。導師が貧民街の廃屋や粗大ごみを回収して更地にしてるんだって。大山脈に大穴掘って埋めて来るらしい。確かにプラスチック無いから分解されよるわ。
貧民街に住んでみると、余りに異様な農家で怖がって誰も近づかない。周りの広い空き地も今は鍛錬場。誰もゴミを捨てに来ない。守備隊が家を不思議に思って見に来ても導師の名前で恐縮して事後承諾だった。
「儂か?ベント・キャンディルムじゃが分かるか?」
「は!?・・・ははー。失礼いたしました!」
「ちょっと貧民街のゴミ捨て場を借りたでの、ミウム伯には儂から願いを書いておこう、御苦労じゃな」
「は!承知いたしました!」
ダンジョンの研究でここに寄ったと承認された(笑)
元宮廷魔導師キャンディルム伯爵(4位)は伊達じゃ無い。
まぁ、それはいい・・・そんな事はいい。
翌日から凄いトレーニングだったんだよ。起きた瞬間に投げ飛ばされる、寝てても夜中に襲撃に来る。毎日1本!というか6本も7本も旗が上がるほど襲われる。
俺も眼の検索をOFFにするのを慣れて無かったら意味のないトレーニングになっていたとゾっとした。
(神聖国の件で新しく何か視て知ると過労死するのと、布教の終わった神聖国には悪人が居ないので、この頃というかギルド登録してから布教以外は視るのをやめていた)
息が止まる程も叩き付けられる。
何でエルフが華奢な体で格闘Lv8やねん!
というかアルムお前何年生きてんだよ!(※※※歳)
そんな恩寵反則だろ!武術大会とか笑うわ!Lv7か8しか持ってねぇよ。導師の護衛パネェわ。
聞いた。暇だったから大会に出たらしい。
街のエルフ女はマジ危ないとその時知った。
そのトレーニングはギルドで常設依頼の食肉を捕りながら行われた。俺の欲しい恩寵はダンジョンに入らないと効率的に取れないと言う。
気配察知や気配遮断、罠感知、罠解除である。
雨の日と日曜日(光曜日)だけは神聖国へ行って布教だ。それ以外はギルドポイントを貯めるために大森林で狩りの日々。ブッシュマンと呼んでくれ。
並列思考に体は使わなかった。脳トレだったんだよ。
即決即断で物事を決める訓練。
人は何かを思うときにこれだからこうなってああなってと考えた上で結論を出して物事を決める。大体3~5段階ぐらい比較検討して結論になるらしい。遅く決めても早く決めてもその比較検討は変わらないんだって。
そんな決まった思考回路を即決即断に慣らして行くと、即断する頭の裏では比較検討してる状態になるんだって。
結果、表と裏で処理を同時に進める。それが並列思考の始まり。
何でもかんでもその鍛錬だった。果物のデザート、スモモとミカンどっちが良い?から今日は何して過ごす?からどっちの店に行く?問われたら即答しないと投げられる(笑)
あの優しかったアルムさんは何処行った。
(今も優しい)
約2か月で危機感知と並列思考の恩寵を手に入れた。
危機感知は空気の張り詰めを読むと言うか知る第六感だな。
俺の場合はムズムズしないで空気が変わる。Lvが上がると変わるかもしんない。
恩寵を取得した後もアルムさんと森の狩りと鍛錬を続けた。
冒険者の級を上げないとダメだったのだ。
魔鉄級5位の武術試験を受けるクエストポイントが貯まらない。狩りは晴れたら続く、投げられながら続く。
5月末。
お爺様が4月の叙爵式で伯爵(2位)になったと聞いた。
ナニソレと目が点になった。
導師があっちに帰ったら届いた祝いの品で部屋が凄い事になっていたと笑って教えてくれた。
お爺様に近づくと危ないと危機感知した(笑)
絶対帰らない。
暇が有るなら神聖国行かないと布教が終わらないのだ。導師がロスレーン伯のタクシー要員で毎日通う様になった。
夏前に一回導師、師匠と一緒にヘクトとモルドの囚人に布教して恩寵取って来た。隷属紋の有効性と神聖国の実情を導師と一緒にお爺様に説いたのだ。
布教すると看守がいなくても自立罪人になる。自分で街に岩塩を納めてお金を渡すと街で物資を買って自分で帰って行くのだ。
鉱山勤務の浮いた文官、武官の人員が大きくなる伯爵家の陣容を支えた。それ以外は家に顔を見せなかった(笑)
魔鉄級5位にならないとダンジョンに入れない。
ダンジョンに入れないと罠察知、罠解除、気配察知、気配遮断が合理的に取れないそうなのだ。
アルムさんと山に入り依頼票をこなしながら技術を学ぶ。
冒険者の技術的にアルムさんは凄かった。
森で狩猟して過ごすエルフと言う部族なのだ。
エルフは獲物を狩ると、とにかく精霊魔法で冷やす。
冷やさないと数時間で血が腐って腐敗臭がするからだ。
人の冒険者が血抜きするのはその腐敗臭で血生臭くて美味しくないし、肉の価値が落ちるからだ。
エルフは森の部族。俺は血抜きの意味すら知らなかった。
アルムさんが獲物の生き血をゴクゴク飲む。
美味しいと言って飲む。飲む肉だと言う。
誰がこんな光景を想像するのか・・・ショック過ぎ。
生き血って大丈夫かよ!と検索を久しぶりに使ったらあっちの世界も普通に生き血(新鮮な血)を食品にしてた。ソーセージ、パンケーキ、スープ、シチューの材料。
ガーン!生き血料理まったく知らなかった。
新鮮な獲物の血は飲めるんだよ。おいしいよ!
畑にもお肉あるし、血もお肉なんだよ。(アルが変)
師匠知識(人の冒険者知識)を塗り替えて行くアルムさん。
獲物は四季で体が変化する旬に捕る。
食べるためだけに狩りをするエルフは無駄に殺さない。
余計に捕ると自然を狂わせ森が死に、自らの食を絶つのだ。だからなるべく殺さない。美味しい物を選んで採ったり、獲物を殺すのも時期を見る。
それは・・・
人が物質に惑わされるのを否定する様な在り様だった。
その日生きて行く分の糧を得る。
森と寄り添うエルフの本能でそうだという。
聞くと神の理そのものだ。全ての生き物の摂理だ。
殺されたオークの魂が俺の眼の前で召されて行く。生き物の摂理を終えて他の生き物の命を繋ぐために召されて行く。
あっちの世界で聞いた。
ドワーフとエルフは妖精族との言葉。
精霊魔法も使う。本当なのかもしれない・・・
次回 135話 種族主義
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