第117話  そこまで戯れて無い



お婆ちゃんの裁縫コミュニティーからの帰り道。


暗くなって来てたので歩きながら、美容術>容姿術を取った。Lv10だと誰もが振りかえったりすると怖いのでLv3程でリリーさんを磨いておく。


本人は急に寒い中に出たので顔がつっぱる位しか気が付いてないがつるつるになってる(笑)


容姿は変わらないようで目が離せない絶妙の感じに仕上がった。クリーンの粉を取るのにお風呂に入って驚くかも(笑)


・・・・


明日、オットーさんはお爺様に到着の使者を出すと言う。

グフフ。明日の夜辺りが修羅場だな。


導師にも甘露を分けに行く。


リードが忙しいなら儂だけが向かって子爵邸を覚えて来るが。と言ってくれたが、お爺様達の予定次第でお願いしますと答えておいた。子爵邸に入って全ての浸食が終わるまでは3人一緒じゃないとマジ怖い。


敵国の中だ、一粒でも綻びの種は漏らせない。

ゾルタス子爵邸に絶対安全圏を構築する。



・・・・



翌日、ゾルタス子爵邸に着いたのが夕方の6時ギリギリだ。馬丁、メイド、執事と会う者全てに隷属紋をしていった。俺を見て正妻のマリーヌが何か言う前に隷属した。子供も何もかも全部隷属した。約半数隷属してからお父様に全ての使用人を集める様に言う。


全部で44名がパーティーホールに集められる。

能力の限界を試してみる。多重視点で隷属していない使用人に奴隷門を上唇の中に刻んで行く。やっぱ慣れないせいで4人刻むのが精いっぱいだ。


並列思考をLv10で付けてみたら20名普通に刻める。ヨシ!もっと行けるぞ。


今回の旅に同行したお父様も含めて、お母様のアニーはここに来ない事。以後はマリーヌをお母様と呼ぶ事。ターミとガンダを紹介し戦闘執事と魔法の先生と改めて新規に刷り込む。使用人も今まで通り生活する事。普通に家族仲良く暮らして行けと誓約する。


やっと帝国での安全な拠点を手に入れた。

そのまま滑り込みセーフで自分の部屋に帰る。



・・・・・・



食事の時、師匠と導師がお爺様に呼ばれていた。


アニーが食事に行ってる間にベッドに倒れ込む。

追いこみ漁を見せて貰おうと思ったのだ。


ジャネット、お母様、お婆様、お爺様、お父様、導師が会議用の長い机にお爺様を中心に輪を描くように座る。


短辺の席のお爺様。その後ろにシュミッツが書類を携える。

お爺様の左にお婆様、お母様、ジャネット。お爺様の右にお父様、導師。


その対面の短辺にシュミッツに案内されて座る師匠。


証人喚問だ!(笑)


その席の配置に師匠の顔が強張る。


お爺様が何食わぬ顔で聞く。


「リードよ」

「はい」背筋を正して聞く姿勢はよいね。


「これを知っておるの?」


1枚目をシュミッツから受け取って聞く。


「え!それをどこで・・・」

「オーバン卿、覚えがあるの?」

「・・・あります」

「どうしてここにある?」

「さぁ、わかりません」

「神の祝福があったそうじゃ」

「ええっ!」


「アルが知ってしまったと持って来たのじゃ」

「えぇ!」


「アルに余計な物まで知らせよって、あれはまだ11歳だぞ」


「?」


「色んな店に行ってる事も知ってしまいおったぞ」

「え!」


「神の啓示を確かめたら、店に猫令嬢がおったわ」


「・・・」目を見開いて絶句している。


「アルも悩んでベント卿に聞きに行ったそうじゃ」

導師がうんうん頷いている。


「・・・」


「お主、貴族になっても傭兵根性が抜けておらん様じゃの」


脂汗を大量に流している・・・まな板のコイが。


「身を固めんからそうなっておる!」

「・・・」


「何か申し開きがあるか?そなたの親代わりとして聞こう」


「祝福とはその・・・」


「オットーの娘リリーの事か?そうじゃ、リリーとリード卿。そなたが神に祝福されたとアルが言っておる」


「本当に?」


「本当じゃ!お主、我が胸に聞いて見よ!違うのか?」


「・・・」


「私には祝福が無いのですが・・・」


「そこまでは知らん。神の御子が言うのじゃ間違いない」


「アルが私を嵌めようと・・・」ぐわー、さすが野生の勘。


「何を言っておる!いい加減にせよ!」

「・・・」


「お主、英雄が言い逃れなどと見苦しい!」


「今一度!今一度弁明の機会を」

「良い、申してみよ」


「アルと話をさせて頂きたいのですが」

「それほど御子の声を聞きたいか?」


「はい!」


「分かった、アルを呼ぼう。ジャネット」

「かしこまりました」


視ていてビックリ。


ギャー!呼ばれる!

どうしよう、どうしようと部屋をオロオロと走り回る。


跳ね起きて走り回る俺をアニーが見ている。


イヤ、困った時の直球低めインコース!差し込ませる!


ノックでジャネットが呼びに来た。


「ラルフ様がお呼びです」

「お爺様が?」とそ知らぬ顔をする。



追いこみ漁の現場にやってきた。

死中に活を拾う気だぞ師匠は。

俺が止めを刺す。追いこんだら叩くだけだ。



皆を見て驚く顔をする。


「これは?」


「アル、この件じゃ」紙をひらひら。

「あ!それですね」合点がいった顔をする。


「オーバン卿が御子の言葉を聞きたいそうじゃ」


「あ!はい、いいですよ」シレッと言う。


「アル、本当に俺はリリーさんとその・・・」

「神に祝福されてましたよ」被せて過去形で断言する。


「・・・」


「聞きたいのですよね?神の祝福を」

「そうなんだが・・・」


良く言った!運命が言わせてる気がする。


「神のお言葉、多分聞けますよ」


皆が目を剥いて驚く。


「アル!それは本当か!」


お爺様が叫ぶ。皆も騒然となる。おぉー!みたいな。


「折角ですから、関係の方を呼んで皆に聞いて貰うのは如何でしょうか?」


「?」


「神がもっと呼べと仰ってます」

「え?」


「導師、レンツ伯をお呼び下さい」

「む!分かった」その場で消える。


「シュミッツ、オットーさんとリリーさんをここへ」

「は!アル様」軍人の様だ。


皆が蒼白になって来ている。神が現れるのかと思っている。


「お茶を飲んで待ちましょうか?」

ジャネットが瞬時に立つ。シュミッツに負けてねぇ!


「師匠が固まっている」


神に祝福されてしまうとかネガティブに混乱している。


「お爺様がリリーさんをお呼びすると仰ってたので。今日とは知りませんでしたが・・・」嘘である。


虚言Lv1が付いてしまった。うろたえるアル。

消して領民の付与に使おうと気が付きホッ!とする。


視たらシュミッツが馬車で颯爽と出て行った。


30分程経ってレンツ伯が導師とやってきた。


「アル、神が儂を呼んでくれとるそうじゃの?」

「はい、レンツ様を立ち会わせろと」

「そうか!光栄な事じゃ、してこの会は?」

「オーバン卿を神が祝福する会です」

「なんと!立ち会えるのか」

「たぶん、そうなるかと」

「そうか、リード!儂も祝福しようぞ!」

「はい・・・ありがとうございます・・・」


程なくしてシュミッツがリリーさんとオットーさんを連れて入って来た。


全ての重要な証人が揃った。


生き証人の前で語って貰うぞ。

忘れている客観的事実を存分に語り気が付くと良い!


お婆様が遮音の魔法を掛ける。


お爺様が皆を紹介する。


皆がリリーさんの綺麗さにビックリする。

これは惚れるわ。と納得している。


師匠もリリーさん見て固まってる。それどうよ?


シュミッツが導師の横にオットーさんとリリーさんを案内して椅子を引く。


二人は唯一の平民でかしこまりながら着座する。


「実は私も祝福を知っただけなので何も知りません」


皆が神妙な顔で聞いてくれる。


「神は本人に言わせろと仰ってます」


皆が師匠を見る。


「オーバン卿、あなたはリリーさんが困った話を聞いた時に何か思ったそうですね?神に向かって仰いなさい」


いきなり師匠が語り出す。


「こんな綺麗な娘が妾など許せないと思いました。俺が貰えば幸せにしてやるのにと思いました。そのような伯爵の悪だくみを打ち砕き自由にすると思いました。修めた武を神に見せる時が来たと思いました」


オットーさんとリリーさんが気付いた。ぐはっ!自爆だった。


お婆様とお母様とジャネットが身を乗り出す。


はっと師匠が我に返る。


「な!俺は何を!・・・」うろたえまくる。


「娘は自由になりました。そしてあなたは何をリリーさんに聞きましたか、神に仰いなさい」


「住所と決まった人はいないのかと聞きました」


「この手紙を貰いましたね?」

「はい、貰いました」


お婆様、お母様、ジャネットが絶対聞き逃さぬと耳を出して前傾姿勢になってる。


「次に会ったた時リリーさんに、何をしようと思いましたか」


「買い物を口実に外へ誘おうと思っていました」


気分は迷探偵だ!推理しない迷探偵だ。


もう逃げられないぞ、引導を渡してやる。


語るが良い!


「オーバン卿、湯浴み着のリリーさんに何かしましたか」


「戯れました」


おぉー! と皆の目が点になる。

お婆様、お母様、ジャネットの眼が輝く。


リリーさんの頭から湯気が出た。


まぁこの年の人達は誰でも戯れてるしな。

ちょっと弁解を聞いておこう。


ハッと気が付く師匠は慌てまくって言う。

身振り手振りで言いまくる。


「そこまで戯れてはおりません!天地神明に誓ってそこまでは!そこまで戯れて無いのです!」泣きそうだ。


オットーさんも力説されても困るよねぇ。


戯れていたのは事実だった。


言えば言うほど泥沼に沈む師匠。


「本人に語って頂きました。私が知った時には祝福をどの神が行うか決めておられましたよ」


「リリーさん、神の前です。お受けしますか?」

「はい。勿体ないお言葉を頂きました」

「オットーさん如何ですか?」

「何も言う事はございません」


お二人のお気持ちはわかりました。


教会の祈りのポーズを繰り出す。


皆に証人になってもらう。

そして神の祝福の言い争いに終止符を打つ。


「神々の皆様!婚礼は婚礼、今は今で祝福をお見せ下さってもよろしいかと思いますが如何でしょうか?」


「な!」

「え!」


「どうしました?神の祝福はありましたか?」


皆が二人を注視する


リリーさんが言う。


「デフローネ様の加護がステータスボードに現れました」


師匠も現れてますよね?


「はい、現れました」スキルで自白させて無いよ。


「繁栄の神の祝福ですね」


「神の祝福おめでとうございます」


拍手をすると皆から鳴りやまない拍手が続いた。


お爺様が言った。


「商会長、子爵家子女として嫁に出す。王家男爵の嫁なら相応しかろう」


オットーさんは何も言えずに何度も頷いた。


俺の師匠だ!全力で幸せになってもらうぞ!


レンツ様も導師も加護が与えられる瞬間を目にして興奮している


そしてレンツ様が興奮しながら言った。


「任官しておらずとも王家の棒給取り男爵の婚礼じゃ。リードを推したハルバス公に伝えねばの!」

※ハルバス公爵(王の実弟)王家派閥の長である。


その夜、師匠はリリーさんと遅くまで語りあった。これまでの自分、今の自分、二人で歩む未来。神の使徒としての今の自分を語った。気兼ねなく語れるリリーさんも使徒になったのだ。



レンツ伯とお爺様とオットーさん。シュミッツとジャネットは行事の予定表を広げ、これからの段取りを話し合った。1月下旬に王都に向かう予定を踏まえて綿密に打ち合わせを行った。

祝いを誰から先に耳に入れるのか、そういうものが大事な世界である。


以後は貴族修行でこの家に暮らすと言う。


リリーさんが俺の姉になる。





次回 118話 どの名もアルベルト 

----------------


この物語を読みに来てくれてありがとうございます。


読者様にお願い致します。


応援ポチ。☆も頂けたら嬉しいです。


ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。


一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。


                思預しよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る