第115話  浸食せよ


・帝国子爵一行と屋敷を隷属紋で支配する。

・獣人奴隷を逃がすまで帝国との交戦はしない。

・芋蔓式に奴隷組織を隷属して侵食していく。

・恩寵を取らず組織壊滅まで普通に仕事をさせる。

・裏に居るのが皇帝なら皇帝まで隷属する。


ザックリと決めた。


「とにかく、恩寵取らずに隷属するんだな?」

「はい、普通に仕事させながら安全圏を広げようと」

「帝国が神に支配されるとは聖教国も何も言えんの」

「戦争無くなっちまうな」

「平和で麦と暮らすのも良いかもですよ」

「俺はこっちの方が面白いんだが」

「気が合うのう。儂もじゃ、研究より面白いわ」

「アルと一緒だと退屈しねぇ(笑)」

「そうじゃの。儂が隠遁しとらんからの(笑)」


「そんじゃ2~3日分、何か食料買って来ます」

「オードに一番近い戦場に跳べばええの?」

「取り合えずそれで。方向は分る筈なので」


「アル、これを持って行け」


振り向きざまにマジックバッグ渡された。


受け取ってしまった・・・やられた!


屋台で山ほど買ってマジックバッグに詰め込んだ。

全員インベントリ持ちだ、3日分ぐらい買って師匠には壺も持たせないとな。・・・ダメだ遊びに行くんじゃない(笑)


3人の三日分すごい量だよ。二人共お貴族だから食後に果物欲しいかなと買ったらすごい量。27個のミカン攻め。屋台を狙い撃ちで回っても11時過ぎちゃった。


宿で物資をみんなで分けて、宿を出る。

宿もビックリだ。1部屋1時間半で小金貨1枚(20万円)


すぐにモルドの東門から出て少し遠くの林から跳んだ。


丘の上の高台から見下ろす位置にある林だ。

北西にミウム辺境伯領、領都がある。


コルアーノ王国地図

https://gyazo.com/7d7093f86f93ea24dfeb599efb26d4a3


導師はこの位置で帝国軍を待ち受けたんだな。

進行を阻むなら良い位置だ。


導師この交易路を先へ進んで行って下さい。


「見えるだけ進んで行くからの」

「はい」

「どんどん進んで下さい、交易路沿いならどこでも」


・・・


「近付いてます、次で様子を見ますので、少し交易路から外れて見て下さい」


・・・


「もう直ぐです、交易路からこの距離で進んで下さい」


・・・


「見えました、アレです」

「豪勢な一行じゃのう、騎士団が・・・10名か」

「今、麻痺掛けました」

「お、止まったの」

「俺、出番無かった(笑)」


隷属紋を刻みに近付きますね。

一気に発動できるが4人までだった(笑)

それでも多重視点Lv1様々だな。


馬車の脇まで行き、ドアを開けると皆ひっくり返っている。

ゾルタス子爵の髪の中、頭皮に親指大の紋を刻む。


「導師、こんな感じなら分かりませんよね」

「髪が禿げたら分かるぞ(笑)」


「全員、上唇の中に刻み直します(笑)」

「そこなら、まず分らんの」

「恩寵取らなくていいのか、危なくないか?」


「あ!盗賊に襲われた時のために恩寵は残します」

「ドミニオンが付いておったら大丈夫じゃろ?」

「はい、そう思いました(笑)」


「はい。他に注意点ありませんか」

「アルを子爵の子供にするように言えばいいかの」


「儂らは護衛として入るでの」

「妾の子とステータス改ざんしますか?」


「むむ、要人の傍なら看破があるのう。するか」

「名前ごと行きますよ?」


「ガンダルフと・・・変わった名じゃな」

「神の国の民の味方となる賢者の名を」

「おぉ!そうか!アル!ありがとう」

「俺はターミになってるが、これは?」


「師匠は申し訳ないんですが、子供を守る勇者の名なんです」


「おぉ!充分だ。それだけで光栄だ」


実際ほぼ不死身の怪物になってるしな。


「ガンダとターミは賢者と勇者なんです」

「「おぉ!」」


「子爵家の職業に変えましたが問題無いです?」


「ゾルタス子爵家 戦闘執事ってかっこいいな(笑)」

「全員が戦闘できる執事とメイドで子爵に付いてますね」


「儂はゾルタス子爵家 魔法教師じゃ(笑)」

「子爵が私と連れて歩くにはそんな感じかと(笑)」


「私、ゾルタス子爵家第二夫人アニー長男 アルベルトですからね」


「アル!妾じゃ無かったのかよ(笑)」

「お家騒動もついでに(笑)」

「隷属するなら妾も夫人も関係ないじゃろが(笑)」


「あ!そうか。まぁいいや(笑)」

「アニーが(笑)」

「アニー・ゾルタス。お母様になって貰いました(笑)」


「帝国甘く見過ぎじゃねぇのか(笑)」

「笑いも無いと(笑)」


「少し遅くなりますが、ここでゲッシュ(誓約)をしたいのですがよろしいですか?」


※ゲッシュ:隷属紋を刻んだ者が本人に魔力の声を聞かせることで隷属紋を発動させる。ドミニオンの隷属紋は心を支配する。本人が自分から思い込む。導師は最上級と言ったが、一般の隷属紋は心の中で反抗心が上がったり嫌がったりしながら隷属するので隷属紋としては格が落ちる。


「かまわん、オードに入る前が良かろう」

「落ち度があってもダメだからな」

「はい、全員紋を刻んでゲッシュしてから麻痺取ります」


略取された者達をここから帰したり、面倒も見れないのでそのままの隷属紋で奴隷商会の帝国内経路に乗ってもらう。


ドミニオンの隷属紋は主人が心の支配者となる。皆の前で俺はゾルタス子爵の第二妃アニー様の子で、子爵が一番可愛がっている存在と教える。


物語の様に聞かせる。

帝国内の妾の子が可愛くて今回の任務に同行した。ゾルタス子爵をお父様と呼ぶ。ターミとガンダは最近側近として呼んだ。いつも側から離そうとしない。宿の部屋も一緒に取る。


お付きのメイド3人は、元々の仕事に加えてターミとガンダにも付く。隷属紋を刻まれたメイドの格好の少女5人と執事の格好をした少年2名はそのまま付き従う様に戦闘執事に言わす。


アル>導師>ターミ>子爵の順で命令を聞くよう宣言。

御者と護衛には敵対する者は殺さず拘束するように言う。

それ以外の仕事は今まで通りに生活させておく。


執事とメイドに用意をさせて食事後にオードへ出発した。



オードに着いたのは15時半だった。

お父様は色々帝国の事を聞くと、上機嫌で教えてくれる。子供らしい事を聞くと、すごく喜んでくれる。


一番上級の部屋を2つ取る。4部屋付きだ。

他の執事、メイドは階下の使用人用の部屋に入れた。


ゾルタスお父様が執事にオードの奴隷商キャノール商会と連絡を取るように言う。


視えている。

ここでヨレンソ侯爵領側の交易路で連れて来た略取者の馬車を連れて行く。その都度馬車の数や編成が違う。難民や流民、貧民の子なんて誰も探さんわなぁ。で終わりだ。


「知りました」

「お!そうか」

「聞かせてくれ」


「聖教国の奴隷制度に反対の大貴族が獣人を略取して自領の金鉱へ送っています。帝国の上層部も容認して賄賂取ってますね。今でも獣人部落を襲って獣人奴隷を集めてます。これ・・・1000年以上前から続いてます。ですが聖教国が入ってから下火になって今は6万人ぐらい3カ所にいます。聖教国の密偵を消してますね」


「そこまでか、簡単に変われん訳じゃの」

「お父さん、そうだよね?」


「そうだぞ、アルベルトはお父さんの仕事をちゃんと理解しているな。将来が楽しみだ」


「師匠が嬉しそうな、悲しそうな変な顔する」


「子供たちは、獣人奴隷の世話係ですね」


「金鉱持ってる大貴族は帝国議会を左右できる議長です。議長の公爵領はそのまま戦闘国家みたいになってます。邸内敷地に6000人の傭兵の宿舎も有ります。領都15万人は自警団作って街の獣人狩りに行くほど差別してますね」


「それ、どうすんだよ(笑)」

「どうしましょう(笑)」

「そこまで奴隷文化が染みついておるのか」

「まぁ、みんな奴隷好きみたいですから全員奴隷にします」


「アル!(笑)」

「神の奴隷じゃ。喜ぶじゃろうの(笑)」


「議長程では無いにしても、同じような領があと6つほどありますね。獣人奴隷には走らず聖教国ルールの奴隷賛成派を襲ったり、聖教国寄りの領主を殺害してます。議会で逆らうと嫌がらせや脅迫してますね」


「帝国とは、そこまで腐っておるのか」


「いや、なかなか難しいみたいです。中立派が利権に付いて私欲を満たす感じでしょうか。穏健派が豊かな土地を手に入れてやり直そうと戦争を主導し、失敗し力を落としています」


「攻めて来たのが穏健派かよ」


「いえ、オードのそれは穏健派が国内工作で皇帝を動かして各領主もまとまって攻めて来てますね」


「逆らうと消されるし政治の腐敗をどうしようもないと諦めてますね、必死で国内の穏健派閥の力を付けて中立派を抱き込もうとした」


「あまり詳細な事は分かりません。中に入らないとダメです」


「なかなか根が深いのう・・・」


メイドのノックで会話が止まる。


「キャノール商会長がお見えになりました」


師匠と導師が目配せで護衛の位置に立つ。導師は自分の杖まで出して小道具にしてる。俺はお父様に模擬剣で戯れる格好だ。


通せとお父様が言う。


「アルよ後ろで遊んでなさい、お父さんは大事な話だ」


「キャノール、座ってくれ」


導師が遮音の魔法をこれ見よがしに杖を振って掛ける。


「子爵様、そのお子様は?」

「俺の子だ、可愛いだろう」

「え?」


「妾を第二夫人とした、その長男だ」

「それはそれは、おめでとうございます」

「うむ」


「アル、挨拶しなさい」

「はい、お父様」


「アルベルト・ゾルタスです。はじめまして」

「キャノール商会長のキャノールでございます」


そのまま口の中に隷属紋を刻む。


「そのまま仕事を続けよ」


「かしこまりました」


「今回の馬車は大型2台、13名帝国に生活魔法を学びに来たコルアーノの平民を装っています。いつもの通りに隷属紋をお願い致します」

「ふむ、分かった、ラッソーを呼べ」メイドに言う。


戦闘執事がやってきた。こいつは魔術紋Lv6だ。


「ラッソー、仕事だ。会長と一緒に大人しくさせて来い」


「かしこまりました、13名だと私一人だと無理なのでゼムも連れて行きます。今日8人、出発前に5人隷属紋を刻みます」


「うむ。キャノール。朝9時に東門に寄せておけ」

「子爵様、よろしくお願い致します」

「良い」お父様が頷く。



「お父様、お仕事ご苦労様です」

「何、家族のために頑張らねばな」

「それではいつもの通りにお過ごしください」

「ターミとガンダをお貸し下さい。食事は結構です。朝にはお部屋に帰ってきますね」

「うむ」



・・・・・



「これ以上動きは無い筈なので、一端帰りましょう」



18時に導師の部屋に帰って来た。

馬はまた使うので置いてきた。


「まずは6万人の奴隷たちです」

「そんな奴隷、どうする?」

「助けずに進む訳にはいかないです。助けます」


「どうするのだ?6万の難民などどうしようもないぞ、男爵領の領民程もいるではないか」

「男爵領程の農地が有ったら一時でも避難出来るのですが」

「ある訳無いじゃろが(笑)」


「相当広くないと目立ちますよね?」

「取り合えず移す場所すらコルアーノには無いと思うぞ」


「都市に入れたら、どこの領都も潰れかねないですよね」


「6万の難民じゃぞ、王都でも傾くわい」


「一時避難なら、オードの戦場跡なら6万行けますかね?」


「帝国2.4万対王国1.6万で対峙したから行けそうだな」


「え?1か所ですか?そこ勝てたんですか?」

「勝ったんだよ!ラルフ様とアラン様もそこだ(笑)」


「脱出が決まったら、一端そこに逃げましょうか」

「6万がか?」

「導師の転移が有ります」

「6万跳べるのか?」

「1領の奴隷なら2万程なので3回に分けて(笑)」


「良かったわい!それ程も跳べるなら安心じゃ。最悪6万の奴隷を守って帝国の国境線を突破かと思ったぞ(笑)」


「老師!それも剛毅ですな(笑)」

「2人で守れればじゃ!守れるか!無理筋じゃ(笑)」


「でも帝国の管理では無さそうでホッとしました。国ごとやってたらどこまでも追手が掛かりそうですし、奴隷の口封じで皆殺しに来るのも考えられます」


「帝国がやってたら血眼になって追って来るじゃろな」


「お父様の知る限りでは帝国は直接手を出さず、甘い汁を吸う帝国上層部と2公爵1侯爵の3大貴族がやってるとのことです」


「アル、ここお前の家(笑)」

「お父様はアラン卿だのう(笑)」

「そんなの分かればいいんですよ(笑)」

「人攫いとアラン卿を一緒にお父様は酷いぞ!」

「アルじゃでの、こやつ余り気にせんのじゃ(笑)」

「横に逸れてますよ!」


「獣人奴隷は聖教国に連れて行きましょうか?」

「アル。聖教国が傾くぞ(笑)」


「獣人に偏見なく、帝国を危惧して諜報まで送ってる聖教国が一番だと思うのですがダメですかね?」


「それでは教皇を動かすしかないの」

「それでは、それで!」



「おほん!(笑)」

「ぷっ(笑)」

「え?」


「御子は強いのう」

「御子の前では人間ですからな」

「私も人間です!」





次回 116話 帝国潜入 

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