第114話 帝国の影を追え
導師と明日の打ち合わせをした後、アニーを従えて部屋に向かって考えた。
奴隷・耐性。 隷属紋・耐性。 支配・耐性。
と色々検索して確かめた。今の精神耐性で全部跳ね返せる筈だ。
隷属紋刻まれても大丈夫なはずだ。
夕食後、導師に刻んで貰って確かめる。
同じ精神耐性を導師と師匠に付与しないと危ない。
刻まれたらとんでもない被害になる。
部屋に帰ると俺がぶら下げてるマジックバッグを見て、アニーが聞きたかった質問を食い気味で聞いてきた。
「その袋、ベント様に直してもらったのです?」
「そうそう!」
「馬車を降りたら、そのままアル様が向かう訳ですね」
「あはは、そうそう!」
アニーを指してご名答ポーズ。
「凄いです!マジックバッグを直せるなんて」
「絶対言っちゃダメだよ」
「ふふっ(笑)」
「どうしたの?」
「アル様が袋をサッと取って逃げたのが良く分かりました」
「お金払ったじゃん(笑)」
「あれは逃げたくなりますね(笑)」
「逃げたの分かる?分っちゃうよねぇ(笑)」
「分かると言うか、逃げましたからね(笑)」
「アニーが居るならちょうどいいな」
「何です?」
「このマジックバッグの柄が変えられないかなって」
「え?、そんなの・・・」
「この紐と表の布を交換なんだけど・・・」
「無理です!ダメです!出来ないです」
「簡単だって、交換するだけ!」
「ダメです、出来ないです!」
アニーが逃げ回るので、袋を持って追い回した。
まだ夕食まで2時間以上ある。
お爺様の所へ行ってジャネットを借りて来た。アニーはお爺様の所に置いてきた。固まってた(笑)
ジャネットに言っても逃げ腰だった。
大丈夫と言ってもなかなかウンと言わなかった。
甘えまくってウンと言わせた。
口が30cm×20cm×2cmで容量4㎥のマジックバッグ。
良く刑事さんが懐に拳銃を吊る感じで、袋が体の曲面にフィットする様に柔らかく作ってある。
バッグって言う程じゃ無いの。内部が拡張されているだけで厚みが全く無いの。バッグの底板とか無いから、というか作れないから、布のポーチのペランペランだよ。だから脇の下に吊れるの。
脇の下に吊るタイプのマジックバッグの紐が朽ちてる上に、いかにも貴族が持ちそうな柄だったのでジャネットと確かめながら色々やってみた。
紐の横に紐を付けても使えた。
袋の紐を糸を抜いて切り離しても使えた。
表の布を糸を抜きながら剥いでみても使えた。
袋の内側の布に付与されてるみたいだ。
ジャネットが糸の通った場所、抜いた場所を知っているので質素で丈夫な柔らかくて強い魔獣の皮を注文し、忠実に再現してもらう。やっぱ魔獣の皮を通す針と縫い糸も特注だそうである。
もう一個の手提げバッグも解体した。
口が36cm×30cm×2 容量2㎥こっちは一般的に誰でも持っていそうな魔獣の皮で質素なショルダーにして貰う。
ピッタリの箱バッグ作って内側に底板入れてから内側の袋を貼る感じかな。そんな偽装しないと布製の大判封筒のひも付きペラペラから大きい物(肉の塊とか)出たら変すぎでしょ?(笑)
バッグの縁沿いの革の太さが15cmのマチで、肩に掛かるベルトが6cmに幅が狭くなる様にベルトの革を切って貰う。バッグ外周から肩まで魔物の革の一本物でバックルで調節できる様に頼んだ。
第二弾の三千里バッグだ。どこに逃げようか。
全部ジャネットにお任せした。
ジャネットをお爺様の所へ送っていき。アニーを引き取って来た。ちょっと膨れてる。
「お爺様の所はどうだった?」
「普通でしたよ」
「アニー膨れてるじゃん」
「膨れてません」
「本当?」
「本当です」
「マジックバッグの修復が始まったらまたジャネットと交代お願いしても良いかな?」
「・・・」
「青くなった」
「アル様!」
キジ鍋食べて4時間で夕食になって腹パンパン。
・・・・
夕食後、お茶を済ませて導師の所へ行く。
入れ替わりにメルがアニーの待つ廊下のメイド待機部屋に行く。
「おぉ、アル。早かったの」
闇魔法のレベルが全然上がらないと言ったら普段使える闇魔法を教えてくれると言ったのだ。闇魔法は攻撃魔法主体で使わないから上がらないんだよ。ダンジョンに行ったらモンスターに闇魔法掛けまくってやる。
部屋に入ると机の上にマジックバッグが置いてある(笑)
意地でも触らないつもりだな。
俺は漢だ、逃げないぞ。逃げる所か追っていく。
「導師!」マジックバッグを指さして呼ぶ。
導師が目を逸らす。
「マジックバッグは高価です、不用心です。お仕舞下さい」
「それは、お主の物で高価じゃ。大切にせねばならんぞ」
「こんな高価な物は頂けません、骨董品で結構です」
「アル!骨董品とはなんじゃ(笑) 言うにも程があろうが!」
コントやりに来たんじゃ無いので手早く済ます。
「早く来たのは確かめるためです」
「何じゃ?」
「一度、私に隷属紋を刻み、効果を確かめて頂きたいのです」
「何じゃと・・・何か策が有るのか?」
「はい、多分私には効かないかと思いまして」
「そんな事が・・・」
「一度試して下さい。隷属紋と命令で効くかどうか」
「分った、そこに座れ」
手の甲にドミニオンの隷属紋が刻まれる。
「アルよ、立て!」
「・・・」ニヤリ、大正解!クリアした。
「アルよ、立て!」
「・・・」自分で隷属紋を消した。
「なんと!効かぬ、真に効かぬぞ」
「この隷属・支配耐性を導師と師匠にお付けします、以後魅了や闇の精神攻撃系も無効になります。導師と師匠だけは絶対に敵の手に落ちてはなりません」
「分った、済まぬ。明日の件はリードにも言うてある。リードを呼んで来てくれぬか」
ドアを開けて出ると廊下の待機室でメルとアニーが立つ。手を振って違う違うと座らせて師匠を呼びに行く。
飲んでた。
ワゴンのチーズクラッカーなツマミを鷲掴みにして食べながら誘ったらノーマの目が点だった。
師匠を誘って導師の所へ行く。
メル、アニー、ノーマが待機所で会って嬉しそう。
座って前にある机のマジックバッグを見て言う。
「老師、これは?」
「アルの「導師のです」ハモッて違う事言う。
「・・・」
師匠は空気を読んだ。野生の勘は飲んでも健在だ。
・・・・
師匠が導師に聞く。
「そんなに?隷属とはそこまで・・・本当ですか?」
導師が師匠に聞く。
「良いか?」
「はい?」考えず返事してる(笑)
「右手に隷属紋を刻んだ」
「立て」
師匠が立った。視ると導師に命令されて大喜びしてる(笑)
「座れ」
師匠が座った。俺がすかさず隷属紋を消した。
「ドミニオンの隷属紋じゃ。支配がわかったの?」
「老師に立てと言われ嬉しくて・・・」
「そうじゃ、心の底から言われた事をしたくなる」
「こんな最上級を使う魔術士はおらんと思うがな、隷属紋一本で食っとる奴は侮れんぞ。魔術紋Lv8以上もおるかもしれん」
「相手は帝国と分かったのですか?」
「儂とお主がドミニオンに掛からぬかアルが心配しておる」
「・・・」
「充分に留意するべきじゃろうな」
「大丈夫です、大丈夫です!」
導師と師匠に付与した。
精神耐性 Lv10 MAX SP275(防御強化>耐性)
導師が隷属紋を師匠に刻む。
「立て」師匠がニヤリとする。
俺が導師に刻む。
「笑え」導師がニヤリと出来ずに変な顔になる。
何か言われる前にすぐに隷属紋を消した。
「奴隷商対策はこれで良いですね?導師と師匠がやられたら、この国危ないですからね!また危ない事があったら教えて下さいね、本当に注意して下さいよ。」
「お主助けに来ぬつもりか(笑)」
「そうだぞ!アル、お前が助けに来い(笑)」
「そんなに簡単にやられるつもりなんですね?」
「・・・」
「助けに行くまで民が何人死ぬんですか!」
「・・・」二人は顔を見合わせた。
両手で二人に隷属紋を刻んだ。
「笑え」
二人はニヤリとした。
アルもニヤリとした。おでこの隷属紋を消した。
・・・・・
翌朝。
アニーに起されてお着替えの時に言った。
「今日は一日師匠と導師と鍛錬だから好きに過ごしていい」
「え?」
「あ!今からじゃないから(笑)いつもの9時の時間から師匠と導師と一緒に外で鍛錬するから馬で出る。で、そのまま一日ね。18時には帰ると思う」
「はい、アル様」
部屋の魔法ランプを煌々と灯して、無手の剣舞を行う。
昨日の暁4人衆、思い浮かべた同じシーンに対して色々な流しを応用して行く。昨日は初対面で無難で確実な流しばかりを選択していたのが分かった。
ガルスさんとハルトさんは俺を子供だと手加減してくれた。手加減してくれた太刀筋を見た瞬間に勝手に躱して勝手に足払いに繋がっていた。
その後は、受け流すのが精一杯だった。押されっぱなしだ。
流した後の返しは当たっている。理にかなった受けと返しなら当たるのだ。攻撃を怖がるな、師匠に当たらないからと怖がるな。あれだけ攻撃が当たると楽しいんだ。もっと楽しまないと伸びないぞ、楽しんで模擬戦出来なきゃ伸びないぞ。
アルの武術は一番楽しい時期に差し掛かった。
アニーと使用人食堂で食べた後、お茶を飲むのも惜しいと庭で剣を振り出した。
程なく集まる4人。ガルス、ハルト、レノア、ローレン。
ローレンさんが槍持って来た!わーい。
昨日剣筋は見せて貰ったからな、そう簡単には差し込まれないぞ。新しい俺を見せてやる。攻撃も頑張る。
9時になったら師匠が呼びに来た。
気が付いたら休憩無しに1時間半以上やっていた。
皆は演習場の模擬戦が始まるまで、ここで練習するという。
一旦馬で街の外へ跳んでから、馬ごと跳ぶ。
領都から見て東側は向かって右側に山脈が連なっている、山脈に沿って伸びる交易路の終端の街がモルドだ。
モルドの奴隷商人、レジン商会のモリスを視に行く。
店が開いてなくても視える筈だ。
領都を出てすぐの林から山脈の天辺近くに跳ぶ。
「耳が変に」
「高い山だとこうなるのう」
もう盗賊見つけちゃった・・・(笑)
「導師、盗賊いましたが先を急ぎますので後回しで」
「もうおったのか!昨日といい、どこにもおるのう」
「昨日も行ったのか(笑)」
馬の首の下から師匠が覗く。
「知らずに盗賊のど真ん中に(笑)」
「へー、そんなことあるのか(笑)」
「あそこの峰まで跳ぶぞ」
山脈の峰に開けた所がある。
「はーい」
4回目のジャンプでモルドを見下ろす峰に来た。
もう場所は特定した。黒だった。というか最初から黒だった。
「あそこの道がいいのう、誰も居らん」
「「はい!」」
5回目でモルド前に着いた。
モルドまで15分ほど掛かって門を抜けた。
街を抜けてレジン商会が視える位置に止まって視る。
「導師、師匠、面倒臭いかも知れません」
「なんじゃ?」
「1週間前に出ています。奴隷馬車」
「なんと!真か?」
「アル本当か?」
「貴族の大型馬車です2台、護衛あり、帝国。オードの手前」
「「何!」」
「まだ大丈夫です、宿で話を」
「あ奴は良いのか?」
「次は2週間後に商品が集まると知りました」
「クソが!」
「とにかく宿を」
3人で一部屋を借りお茶を出したメイドが引っ込んだら遮音の魔法ですぐ話し出す。
「略取された者はもう隷属紋が入っています。入った上で使用人の格好をして馬車に乗っています」
「今日の相手は帝国の子爵です。各地に帝国の貴族が交易の取り決めなどで領主を訪問した帰りに連れて帰っています。1回10人程。ヨレンソ侯爵領のルートの交易路にも奴隷商会が絡んでます」
「謎の人物の仕業にしないと・・・」
「難しいのう」
「いっその事、裁きましょうか?」
「ん?」
「誘拐犯として、モルドの守備隊に捕まえさせます」
「帝国の貴族をか?」
「捕まえた直後に隷属紋を解く。とかダメです?」
「それも大問題じゃぞ。国と国じゃ簡単ではないぞ」
「大変ですよね」
「分かりました、主犯まで追って御子が裁きます」
「アル。多分主犯は皇帝じゃぞ」
「神の前ではただの人間です」
「はっ!アル、お前すげぇな!」
「少々考えさせてください」
「お二人に恩寵を付与しますね」
「何を付けるんじゃ」
「負けない恩寵です」
麻痺耐性 Lv10 MAX SP275 (防御強化>耐性)
毒耐性 Lv10 MAX SP275 (防御強化>耐性)
物理耐性 Lv10 MAX SP275 (防御強化>耐性)
魔法耐性 Lv10 MAX SP275 (防御強化>耐性)
自己再生 Lv10 MAX SP275 (防御強化>回復)
危機感知 Lv10 MAX SP275 (防御強化>感知)
状態異常耐性 Lv10 MAX SP275 (防御強化>耐性)
アルは自分の腕に傷を付けた。
血では無い半透明の赤い泡が出て瞬時に消えていく。
「魔法ではありません。多分腕が飛んでも生えてきます」
二人の目が点に。
「人間以外の生き物の神が恩寵をくれました」
言えるか!ウニュウニョしてる神だ(笑)
「毒も効かず、麻痺にも陥らず、全ての状態異常を跳ね除け物理無効とは行きませんが、物理はダメージほとんど通りません。魔法もダメージほとんど通りません。この恩寵ならお二人なら急場でも負けない筈」
二人が言葉を噛みしめた後に言う。
「危機感知だけは気を付けて下さい、待ち伏せか、追手か。本当に自分に対する危機が迫ってます。場所を変えるかして逃げて下さい。絶対的優位でも恩寵一個でやられます」
あ!念のために!
縮歩Lv10MAX 1m×45歩瞬間移動 追加SP245
(1m単位45歩まで複数回発動:再使用1分)
縮地Lv10MAX 45m 瞬間移動 追加SP245
(45mまでの発動:再使用1分)
魔爪根Lv10MAX 100cm 追加SP135
(爪から伸びる魔力の刃)
「アル、それ程の危険が有りそうなのか?」
「師匠の場合は一太刀で決まるかもしれません、危機感知に触れたら一気に45m逃げるのもアリです。相手も縮地持ちなら怖いと思いませんか?私が恩寵を奪ってから戦えば良いのです。ダメなら一旦縮地で45m逃げて、縮歩で相手に一気に45m跳んで一撃で決めるとか戦術も考えて下さい」
「導師も師匠もお導きの奇跡を御承知ですが言っておきます。お二人が秩序の使徒となった時、混沌の使徒も同じ様に力を付けていると思われます。何も秩序側の使徒だけに奇跡は起こっていないと私は考えています。
どうか世を混沌に導く者達に負けないで下さい。ロセとミニスが攫われた奇跡、それを知る奇跡、そしてここに居る奇跡。因果は巡っています、お二人と同等の相手と出会う奇跡も用意されてる可能性があるのでご注意ください」
「3人が加護を持った神の使徒です。神の代わりに裁きましょう」
「まずは馬車を。全員御子に隷属させます。ご心配なく」
「アル、良いのじゃな?責任が伴うぞ」
「私を使徒とした全ての神が責任を持ちます。この世界で好きなように生きて来いと最高神様のお墨付きを頂いております」
「そうじゃな、神が付いておるの(笑)」
「俺も付いてるが忘れてたよ(笑)」
「リード!(笑)」
次回 115話 浸食せよ
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