第113話  帝国の影



屋敷に帰ってアニーを引き連れ導師を訪ねた。

喜色満面な俺の顔みてメイドのメル(18歳)が引く。


「導師~!」

「なんじゃ?、良い事でも有ったか?」


まずい。これは齢の時と一緒だ、で終わる。


「これなんですけどね」何も無さげに言う。

「なんじゃ?年代物の剣じゃのう」


「神が知らせてくれました。精霊剣だそうです」

導師の目が点になった。


「これがか?この短剣と言うかちっさいのう」

「はい、蚤の市で売っておりました」

「・・・」途端に怪しげな目で見てー!

「幾らじゃった?」

「銀貨一枚です」


「・・・」鼻でフッと息を吐く。


「儂の所に銀貨一枚の物を持って来たのはお主が初めてじゃ」


「そんなぁ!」

「まぁ良い、得てして本物かもしれんでの」


「いかがです?分かります?」

「分かるも何も物語に出て来るぐらいしか知らぬわ」

「そのままじゃ抜けないんですよ」

「サビとるだけじゃ無いのか?」


「精霊剣なので抜いたとたん火が出るとかだと怖いので試せないのです。広くて安全な良い場所行けませんか」


「お!そういう事か、ふーむ・・・ロストの難民村、未開拓地の山近くはどうじゃ?雪も無いと思うが」


「そうですね、吹き曝しなので外套を着て行きましょう」


お互いに外套をインベントリから出して着る、バラライカも着けた。


跳んだ。


ちらつく雪が横に流れる。

風が強いと思った瞬間、導師が防御結界を張った。


「鞘持っても抜けないので、剣帯に吊ってみますね」

「おぉ、装備してみるという事か。なるほど」


模擬剣を外して、精霊剣を装備する。


小さいとは思ったが、子供用模擬剣より超小さい。


「ふっ!はっ!・・・」

「抜けんの(笑)」


「クリーン」粉が噴き出しまくる(笑)

「これは凄いの!酷い汚れじゃ」

「はっ!ふっ!やっ!」

「抜けんのぅ」


「・・・」どうやって抜くんだろ。


(精霊を剣に呼ぶですよ)

(え?)

(アル様の呼びたい精霊を呼ぶですよ)

(やってみるね。シェルありがとう!)

(えへへ)

「導師!知りました!」

「おぉ!知ったのか?」

「はい!、ちょっとやってみます」


「火よ!」精霊魔法の通りにイメージする。

「シャリーン!」抜けた!


火というより、もはやビームサーベルだ。というか火の剣てと思わずから抜いたイメージが出てしまった。


「おぉぉぉぉ!」導師もぶったまげてる(笑)


「物語の通りじゃ!よもや目にするとは」

「これ、精霊魔法使いしか使えませんね」

「残念じゃのう、振り回したいのう」子供か!


炎の中になんか芯見たいのがある。

炎を消す。乳白セラミック風5cm×28cmの片刃。

柄部分20cmと峰の厚さ6mmで鞘入り50cm。


「炎消すとこんな短い剣に(笑)」


導師が恐る恐る触れた後、よく見ている。


「アルよ、これは多分オリハルコンじゃぞ」

「あ!よく聞きますね(笑)」

「よく聞くのか!」

「!?・・・あっちでは」


「さすがに神の金属と言われる物じゃ。伝説の金属じゃ」


概念の妖精が寄るから概念じゃ無いよなぁコレ


ライトセーバー青をイメージして「火よ!」


「青ぅなったぞ!それも炎か」

「そうですね、火ですからファイアボールと一緒で明るく輝けば強力になります」


「このオリハルコンという刀身ですが、多分ですよ、精霊魔法使いの魔力を全ての精霊の好む魔力に変えて精霊集めてますね」


「おぉ、オリハルコンとはそのような・・・」


「分かりませんよ、私の精霊魔法と同じ事が出来る気がします」


「例えば、この様な・・・」


風下の防壁の無い方向へ向けて太陽の輝きで20m程伸ばす。


「おー!暖かいわい!」そっちかい!


そのまま「光よ!」と精霊呼ぶと、こっちがライトサーベルだ(笑)収束レーザーが1m程で切れてる。


「光は温かくないの」ボケか!どうツッコミ入れるんだ。


「剣を通して魔力を沢山精霊に渡してると思いますよ」


「そうじゃの!継続させとるからのう」

「属性が弱点のモンスターは沢山いるんです?」

「ダンジョンのやっかいな奴はみんな属性持ちじゃ」

「やったー!対策の剣が手に入ったー」


「待て!こんな物を易々と使うでないぞ。転移で逃げ回る事になるぞ。気を付けよ」


「そうですね、その通りですね」

「ありがとうございました。帰りましょう」

「そうじゃの」


跳んだ。


鍵を開けてドアから覗く。

アニーとメルがお菓子を摘まみながら止まる。


「アニーお茶を頼むよ」

「かしこまりました、アル様」


「導師!ありがとうございました」

「いやいや、良い物を見せて貰った」

「当分使わないので、これ研究します?」


「む!・・・儂は精霊魔法を使えんでのう。オリハルコンには興味は有るが、それだけじゃ。よいわ、気が変わったら見せて貰うやも知れん」


「はい、いつでも仰ってください」


「後ですね、これです」

「ん?・・・これはマジックバックか?」

「はい!金貨2枚(100万円)でした」

「なんと!」


「持ち主居なくて使えませんけどね」

「お主関係ないじゃろが(笑)」


「導師が認証紋の解除を教えてくれた方ですよ?」

「まぁの、御子なら安心して教えられるわい(笑)」


「魔法陣の方教えてくれたら作れるのにー!」


「さすがに儂も見たこと無いんじゃ、編み方が分からぬ限りその魔法陣は無理じゃ。ダンジョン産以外にマジックバックの魔法陣を秘匿しとったら儂が知りたいわい(笑)」


「ですよねー。マジックバッグが良く出るダンジョンとか怪しく無いです?紛れて売りに出すとかありそうです」


「そうじゃな、また時間が有ったら探ってみるか?」

「さすが導師!話が早い」


「(笑)アルよ!気を付けよ、マジックバッグは怖いぞ」


「え?」


「キャンディルの隣に片目の賢者がおる」

「え?片目の賢者です?」


「そうじゃ、片目は魔紋眼を持っておる、稀に聖女の様に恩寵では無く魔眼を直接持って生まれでる。異形の瞳になるでの、幼少より隠すのじゃ」


「あ!恩寵の魔術紋と同じ?」

「そうじゃ、マジックバッグの開錠も出来る」

「いるんですね・・・」


「少ないがの、秘匿されて知る者も少ない。その者が言っておった、そっとしておくべきもの。それがマジックバックだそうじゃ。色々開錠する過程で王家の秘密や貴族の恥を知り狙われたそうじゃ。


それは下手をすれば人の一生が詰まっておるでの。心せい。ある王家のマジックバッグを開けたら、王宮の妾がコレクションの様に入っておったそうだぞ。同じ魔術紋の恩寵を持つ者が開錠に失敗して一面が水に満たされてしもうた事もあったらしい」


「・・・」青ざめる。


「少々脅し過ぎたかの(笑) しかし、普通に死体が入っておっても不思議では無いぞ。持ち主の高貴な者が死ぬ時はお付きが先に死ぬからの。お付きの死体を入れて逃げながら持ち主も死に、使えぬマジックバッグが出回るのじゃ」


「・・・」余りにも当たり前な事だった。


「気を付けよ、マジックバッグはそういう物じゃ」


「気を付けよって、導師も一緒に見てくださいよ」

「イヤ、それは買って来たお主が見る物じゃろう」


「えー!中身に良い物有るかもですよ。魔道具とか!」


「あったら教えてくれ」

「えー!そんな事言わないで下さいよー」

「時間経過で腐りきった死体など見たくないわ」

「導師ー!」ゆさゆさ揺する。


揺すっていたらアニーがお茶を持って来た。


「アル様、何かお楽しそうですね」

「アルが怖がっておるのじゃ、アニーに付き合って貰え」


「何言ってんですか!そんなの出たらアニー気絶します」


「え?」アニーが頭を傾げる。

「いいのいいの!」アニーを応接に突っ込む。


「もう、怖いからここで開けます」

「アル!それはやめよ!この屋敷がどうなるかわからんぞ」


「失敗したらですよね?」


「だめじゃ!建物の中は絶対ダメじゃ」

「   」


「お主、人殺しになるやも知れんぞ」

「・・・」


アルは真っ青だ。


「しょうがないのう、儂らが回った盗人宿まで行くかの」


「導師~・・・」泣きそうになっている。


「ほんに、知らんと言うのは罪じゃのう」



跳んだ。



跳んだら酒盛りの盗賊の真ん中に出た!


「なんじゃー!」導師が叫ぶ!

「なんだー!」盗賊が叫ぶ!

「なんだー!じゃねーよ!」全員麻痺だ(笑)


10日で涌いてるのかよ!Gより酷ぇわ!クソ忙しいのに!


盗賊12人、女4人居た。


16人そのまま天幕包んでヘクトにぶっ跳んだ!


オスモさんに突き出して、寒い中で即日裁判。正月の3日だぞ!執政官も1/3体制なのに気の毒過ぎて中壺を2個置いて来る。攫われた女もめんどくさいので、金渡して頼んでおいた。


「お主の酒の使い方は良いのう、学ばせてもらった」


ガンダルフが今更なに学んでんだ。と思ったが引き籠りの賢者なら仕方ないと思い直す。



また跳んだ。


さっきのまんまだ、囲炉裏に鍋が煮えている。


「アル!転移の場所に何かあると場所がずれる」

「え?」そうなのね。なんか熱が入ってるな。


「転移じゃ!囲炉裏の前に転移のマークしたが、盗賊がいてムニュッとこう、場所がずれたのじゃ!」


「へー、そうなんですね、すごいですね」


なんか興奮して語ってるが煮えてる鍋が気になった。寒かったので摘まんでみたら美味かった。


「コレ!貴族が何をしておるか!」

「コレ美味いです!導師も」と椀についで渡す

「美味そうじゃの」と受け取る。

「一仕事したので休憩しましょう」小壺を出す。

「そうじゃのぅ」


・・・・


「あの攫われた女が料理の恩寵持ってたのかも?」

「うむ、よく出汁が染みて美味い鍋じゃの」


視たがキジ鍋だ、初めて食べるが美味い。


「キジを鍋の底で皮ごと焼いてから作ってますね、キジの油で出汁取ってる感じなのかな?」


「ほう!分かるのか」2壺入ってる。

「キジが手に入ったら作れます!」

「それはよい!」


盗賊が飲んでた盗品ワインが小樽(20L)で3樽あったのでクリーンとピューリファイを掛けてインベントリに入れた。置いてある盗品から防具から武器やら荷馬車も2台、全部入れて盗人宿を綺麗にしておいた。立つ鳥跡を濁さず。後は馬も・・・



じゃねぇよ、マジックバッグだ。


一枚目は金貨2枚で買った奴だ。

口が30cm×20cm×2cmポシェット型でわきの下に入れる系のマジックバッグでその派手で豪華な色から見て、高貴な人の携帯品だ。


「導師が脅すから震えるじゃないですか」

「何も嘘を言っておらぬ、本当の事じゃ」


ドアを全部開けて、魔術紋Lv10で登録前の認証紋に改変する。魔法陣の発動用の紋に向かって魔法撃って定着させるのと一緒。定着前の紋に改変する。認証紋なのでそれを書いた者と同等かそれ以上の緻密さで認証紋を上書きするので魔力の底力も無いと開錠に失敗する。


「ふう・・・死体無かったです」

「よかったのう」


面倒臭いので一旦インベントリに入れ替える。


「これだけですね」

「良いものが入っておるの」


盗人宿の座敷一杯に広げてみる。


「ミスリルの両手剣と片手剣じゃぞ」

「そうなんですね、師匠の剣と一緒ですねぇ」

「これを見よ、ナレスの金貨じゃ」

「あっちの国の偉い人のですね」

「換金用の手ごろな宝石も持っておるな」

「あ!これって換金用なんだ(笑)」

「そうじゃ、金より宝石の価値が高い国もあるでの」

「頭良くなりました!」

「よかったのう(笑)」頭撫でられる。

「ナレスの王族じゃの」

「そうなんですね」

「入っている物が王族クラスの良い品ばかりじゃ」

「そんなに良い物が?」

「これも特別な腕輪じゃ。身分を示す物じゃろうな、この衣類も全て絹じゃぞ」

「王族は確かですね」

「マジックアイテムは身に付けるで見当たらんの」

「あ!言われてみたらそうですね(笑)」


中身からなら持ち主がどんな人か追える。持ち主で検索しても転売による転売で、思念が薄くて読めない。王族は王族でも公爵系の四男の持ち物だ。4㎥もあって充分だ。


一旦全部しまう。


「もう一つ開錠してみますね」

「なんじゃ?」

「二つ手に入れたんです」

「なんと!2つとも知ったのか?」

「そうです」

「・・・」


2つ目のバッグも定着前の紋に改変する。

こっちは普通の手提げバッグで使い辛い。

あっちでおばあちゃんが持ってそうな手提げだ。

口が36cm×30cm×2cmで容量2㎥だ、これだって充分過ぎる。


「こっちも死体無かったです」

「見たかったみたいじゃな(笑)」

「絶対見たくないですよ!(笑)」


一旦インベントリに入れなおす。

「これだけ入ってました」

全部座敷に出す。


「お!これは帝国の物じゃ」

「その剣とかですか?」


「独特じゃでの、これは暗器の投擲具じゃ、毒は無いか」


「この壺が毒です、麻痺毒ですが中身ないです」

「解除薬も、この筒ですが中身は無いです」

「ナイフもミスリルじゃの、紋章が入っておる」

「あ!この袋、全部金貨です。かなりありますね」

「これは聖教国が入る前の奴隷用の首輪じゃぞ」

「え。それです?」


「剣の装飾も武骨だが洗練されておる、現場上がりの指揮官でマジックバッグとは上の者でなければ与えられまい。皇帝の影じゃの」



導師、正解。この国がまだ豪族時代に各地に散らばり、知識人を拉致して帝国の礎にしてきた将軍様だ。金で帝国に来る者は金貨で釣ってた。


「これ奴隷の首輪です?」つまんでみる。


「これ、この留め金と受け金が合わさると魔法陣になるじゃろ?隷属紋になったら声でも何でも魔力を通せばよいのじゃ」


「あ!そうなってますね」

「後は本人の魔力で隷属紋が精神を縛る」

「隷属紋です?」

「今はのう、体に刻む」

「え?・・・」

「聖教国が、動物の様に首輪を嵌めるのを禁止した」

「よいわ、これはとても危険じゃでの。手を出せ」

「これがその時代の帝国の隷属紋じゃ」


俺の手に刻んで見せてくれる。すぐに消す。


「この紋は危ないぞ、精神まで完全に隷属せぬ。本人が望まぬことを命令した分だけ不満が溜まる。過去聖教国が入り、帝国が奴隷解放した時にこれで大惨事になった。以後は使われておらん筈じゃ」


「今の隷属紋は不満が出ぬように精神支配が改善されておる。この隷属紋の筈じゃ」

また刻んで見せてくれる。


「見たの?」


「10cm程で帝国は刻んでおる、刻まれたら最後じゃ。聖教国のルールでは左肩甲骨へ刻む」

震えが来た・・・これは危険だ。


「お主は、刻まれたら命令前に魔術紋で解除せよ」

「消してみよ」・・・消すのは簡単だった。


「普通の術者じゃ解けぬでの、解除するなとは命令すらされぬ筈じゃ、隙を見て解除し逆に命令者に付けてやれ」

「紋を刻んだ者のでも紋が発動する」


「やってみよ」<「え?」<「構わぬ」

「やらねば分からぬ」<「・・・」


「良し!そうじゃ」

すぐに紋を消す。

自分を練習台に俺に教えるこの人は・・・


「次の隷属紋はこれじゃ、儂が知る限り最上級の隷属紋じゃ。誓約(ゲッシュ)をそのまま思い込む。ドミニオンの隷属紋:支配の隷属紋じゃ、編みが細かいぞ!魔力眼で注視せよ」


「見たの?やってみよ」

「よし!それでよい」

すぐに消した。


「これは、ドミニオンを付けた者に誓約を聞かすと、それを思い込む。完全支配じゃ、誓約を守り喜んで隷属する。アルが刻まれ誓約で儂をお父様と呼べとゲッシュ(誓約)すると、アルは死ぬまで儂をお父様と思い込む。それ以外は普通の人間じゃ」


「普通なのですか?」


「普通じゃ、お父様と呼ぶ以外の誓約をしなければ一生お父様と呼んで普通の生活というか普通に生きて死んで行く」


「え?奴隷なのに?(笑)」

「奴隷としてお父様と信じ込むだけじゃ(笑)」


「アルムさんに、私は子供とゲッシュしたら。子供になるのですか?(笑)」


「そうじゃ、一生アルムはお主を子供と思い込んで育ててくれるぞ、それ以外は普通じゃ(笑)」


「えー!(笑)」


「エルフの子が人間なら、周りが変と思いませんか?」


「思うじゃろうな?しかしアルムは子供と信じ込むから、周りに何を言われても聞こうとせんぞ(笑)」


「そんな!(笑)」


「隷属紋を解くか、子供では無いと宣言すれば元に戻るぞ」


「あ、そっか!元に戻らなくなるかと(笑)」

「解くか言い直さねば、一生元に戻らんぞ(笑)」

「怖いですね。ドミニオンの隷属紋」


「だから最強じゃ、ドミニオンの隷属紋は完全支配じゃ」


「今の帝国の隷属紋は不満は出ぬが、やらされたことは分かっておるじゃろうな。自分が悪い事をした代償に奴隷になっている事を分かっておると思うぞ」


「それなら罪が明けても納得しますね」

「そうじゃ、隷属紋で縛るだけじゃからな」


「このマジックバッグの時代は奴隷狩りそのままですね」


「そうじゃの。帝国は元々が獣人を奴隷狩りで連れて来て働かせるのが普通だった国じゃ、それが当たり前の国だったのじゃ。聖教国が今の様に変えた。まだ獣人差別までは変わっておらん」


「・・・」


「そう深く考えるな。未開の部族や国も多いのじゃ。そんな者達をまとめるには、奴隷禁止では受け入れられん。聖教国もそれぐらい分かっておる」


「噂じゃがの、帝国は今でもやっておると思う」

「え?、その・・・獣人奴隷ですか」

「うむ、噂しか無いがの」

「私が行けば「よい!」」


「お主でも流石に荷が重いわ。帝国の闇じゃ、深いぞ」


「この国の人攫いに遭う何割は帝国に行く。見つからんのじゃ、国内におらんと思われとる」


「あ!」

「何ぞ知ってしもうたのか」


「違います、第12開拓区のロセとミニスが届けられる筈だった商人を知ってしまっているのです」


「なんじゃと!」


「モルドの奴隷商人、レジン商会のモリス。キャンディルと反対方向なのでロスレーンに帰って東に盗賊を追ってからと思っていました」


「ふむ、そうか。聞いてしもうたら取り合えず明日行くか?」


「見るだけで結構です、何かあれば分かるでしょう」


すべてインベントリに仕舞い、跳んだ。


鹵獲した馬を屋敷まで運んでもらった。

厩舎の馬丁に良い馬なら飼ってもいい。他は売って来いと言い付けた。


・・・・


導師の部屋に帰ると、カギを開けてちろっと覗く。

アニーとメル2時間以上喋ってんのかよ。すごい。


「アニーお茶を頼む」

「かしこまりました、アル様」


「導師これを」

「ん?」

「導師のマジックバッグありがとうございました」

「良いわ」<「え?」

「弟子に形見でくれてやったと思っておるでな」

「いけません」バッグを差し出す。


「形見なら、導師の杖を!」


「なんじゃとぉ!あれはキャンディル家の至宝ぞ!兄上が、当主が本当の持ち主じゃったが儂が魔法の世界に来たでな、兄上から儂が賜った杖じゃ。800年は経っておる品ぞ!」


導師を見つめてうんうん頷く。


「あれはダメじゃ!」

立て掛けた杖を見る。


「何を見ておる!」

「杖を」

「あれはダメじゃ!」


うんうんしながらマジックバッグを導師の前に置く。


「お前は意味を分かっておらぬ。あの杖の意味を!」


うんうん頷く。マジックバッグを導師の方へ寄せる。


アニーがお茶を煎れに入って来た。

妙な雰囲気に頭を傾げながらお茶を煎れる。

なんか鼻をすんすんさせている。


あ! 慌てて導師と俺にクリーンを掛けた。セーフ!

導師も気が付いた。キジ鍋と酒の匂いがお互いに付いていた。


アニーが出て行ったので交渉再開となった。


「導師のインベントリに今度は家が入るので、大きくしないと使いずらいですよね?」


「おぉ!そうじゃの」

それを杖を見ながら聞く。


「む!あれはダメじゃぞ!」

「取り合えずあの家20m×15m×6m位でした?」

杖を見ながら言う。


「18m×14m×7mじゃの」


インベントリLv1  1㎥   SP5

インベントリLv2  10㎥  SP10

インベントリLv3  100㎥  SP15

インベントリLv4 1000㎥  SP20

インベントリLv5  2000㎥  SP25

----------------

インベントリLv6  4000㎥  SP30 ↓

インベントリLv7  8000㎥  SP35

         追加SP SP65


「これで、インベントリは4倍になりましたよ」

「作ってる家が4軒入りますね」

「おぉ!そうか。済まぬの」

導師がステータスボードを確認してる間に杖を見に行く。


「こら!アル!杖に触るでない!何を撫でておる!」


聞いた時には、杖を持ってファイティングポーズしていた。


「アル!何をしておる!杖を返せー!」



アニーとメルはお茶を飲んで、部屋から聞こえて来る叫びを心地良く聞いていた。仲良くベント様とアル様が戯れる声が響いて来る。



「ダメじゃー!」

ドドドドド

「こらー!」

ダダダダダ

「アルー!」

ドド・・・ダダダ

「返せー!」



ほら、あんなに楽しそうに・・・





次回 114話 帝国の影を追え   

----------------


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