第112話  隠密司祭



マジックバッグを引ったくって逃げる。

金は払ったから知らん。


なんか逃げるついでに右手にアニー左手にビクトリオと手を繋いでしまっているが、まぁ仲の良い兄弟に見えるだろう。


俺は味を占めてしまった。


使えないマジックバッグを検索してしまった。


あった!ニヤリ。


冒険者ギルドの倉庫にある。

レーンの盗賊退治の合同クエストの遺留品で12年間そのままだ。まぁ解除できなきゃゴミだわなぁ。世直しに有効に活用させて頂こう。


冒険者ギルドの中に入ってギルドマスターを検索。3階の執務室にいる。受付まで行ってカードを出して面会を求める。すぐに対応してくれた。


ギルドマスターに冒険者に付いて質問した。

この街の冒険者の数などを聞いてる最中に視まくる。副ギルドマスターも見る。8年前と6年前に二人はマスターになってマジックバッグは当時の記録上あるだけで知らない(笑)


結構人員も流動してる上に記録と帳簿が凄くて見られんわな、12畳程の書類倉庫はパンパンだ。同じぐらいの管理倉庫もガラクタで山積み。その都度のギルドクエストで金に変わる物は全部換金して運転資金にしてる。大丈夫かよ!


執政官から出る掃除(馬糞系、下水系、井戸系。木の剪定)各種苦情の処理、害獣駆除ネズミ捕りの街の仕事。そりゃ冒険者も他領に逃げるわ。その代わり貧民を上手く使ってギルドが代行して上手く回してる。


ロスレーン領は山は有るけどモンスターも平野のど真ん中じゃ増えないわな、うちの冒険者ギルドが可哀そうになって来た。傭兵ギルドの登録が冒険者ランク4位以上ってのも分かる。この街じゃ無理だ。


あ!階位と同じで等級が1位2位3位って・・・ズーン。


そりゃ無いだろ!そもそもA~Zが無いのにSある訳ねーだろ!そういう文化としても許されないぞ!(誰に?)


無理矢理合わすなら

だ(笑)


えす。そんな言葉自体無い!俺はどうすればいいんだ。


1位冒険者=Sランク冒険者。なんか違うよ。

なんか騎士団長クラスみたいな気がするよ。Sランクがその辺の騎士団に居たらダメだよなぁ。


視たらドッグタグが!

ミスリル1位ゴールド2位シルバー3位4位魔鉄5位6位7位だった。


紙ってなんだよ!

視たらケツ割ってクエストから逃げるのが多いからハガキみたいな冒険者免許証みたいの持たせてた。


俺は後1年で登録出来る。紙から頑張る!

1番下から頑張って2位ぐらいまでには行きたいなぁ。


2位じゃ駄目なんだよ!異世界のそういうのが崩れる!


ドックタグにブロンズクラスとか別名がある。そう呼ぼう。聖闘士セイントみたいやな。


ミスリル級!夢のミスリル級!級も違和感ない。

変換して1級にしてみたら珠算ぽくて冷めた。


色々聞いたが、やっぱ貧民の最終的な受け皿が冒険者ギルドってのは間違ってなかった。実際街のクエストで食って行けるのだ。但し、汚れ仕事が多いので蔑まれて他の街に行くのも早いな。


その人が居ないと馬糞も片付かないのにな・・・


まぁ、マジックバッグは誰も知らない上に使えないわ12年放置だから有効活用するために内緒で貰った。代金代わりに街の日常を今後も支えてくれとお爺様の名前で金貨1枚(50万)置いて行った。


どんどん俺が汚れて行く気がしたが、義賊やっといて今更だと考え直す。綺麗ごとで回る世界じゃない。


近くまで来たのでスコッツ武具店を覗くとやっていた。剣帯をマジックバッグから出す振りをしてインベントリから出す。


装飾そのままにベルトを子供用に交換してもらう。

靴も今と同じ奴の1cm大き目を注文した。ミドルカットのバッシュ冒険靴だ。ナイフのギミックを聞くと、そういうのは王都にいる古くからある靴作りの考え方から自由になった職人が色々試行錯誤で作ってると聞いた。


俺の靴は熟練の靴作りの職人が作っていると分かった。なんかそれもかっこいい気がした。


美味い定食屋を聞くとアルベルト様が行く所じゃ無いと言われた。絡まれるのが怖くてやめた。冒険しない子供冒険者だ。行っても良いところを聞くと黄金の小麦亭(宿屋)で食べるなら良いという。


行ってみたら親父が元冒険者で、宿を買い取ってやってる本格派の冒険者宿だ。残念な事に護衛のベテラン冒険者が毎日入れ替わる。定宿に出来るランクの冒険者はこの街にいない。奥さんも元冒険者で酒飲んで騒ぐと木の分厚いお盆で殴られる(笑)


11歳16歳17歳の三人組で入ると、奥さんが不思議な顔をした。


「お昼のご飯お願いします」

「お昼は決まってるけど、みんなそれでいいのかい?」


「うん」

「坊ちゃんはメイドと執事を連れてるのかい」

「うん、アニーとビクトリオだよ」


アニーとビクトリオがお辞儀をする。


「ここは初めて来たんだよね?」

「うん、スコッツ武具店のおじちゃんに聞いた」

「まぁ、スコッツさんが」

「ここは安全だから、ここで食べなって」


「まぁまぁ!安全だからね!あの怖いおじさん見な」

「おじちゃん強そうだねぇ」

「おぅ!強いぞ!坊主も冒険者になるんだな」


「うん!」


「冒険者になったらここに泊りに来るんだぞ」

「わかったー!」


アニーとビクトリオが複雑な顔をしている。

そうだよ!泊りに来ねーよ。そんな、嘘言ったとかどんなけ頭固いんだお前らは。お世辞ぐらい言うだろ、普通。


普通の貴族は平民にお世辞を言わない。


ピリ辛トマトソ-スの野菜と鶏肉の入ったシチューにサラダとパンとミカンジュースが付いていた。視るとジュースはスコッツ武具店紹介サービスだ(笑) ランチのお代が一人銅貨6枚(600円)領都だから物価もちょい高いな。


アニーとビクトリオは粛々と食べている。不満はない様だが俺が少し不満だ。もっと陽気に喋りながら食べるとかしてほしい。二人共平服じゃ出られないのかな?制服じゃ楽しめないよな。


二人共、領主家の腕輪を持って制服でいる事が領内で一番安全と分かっている。領内の武官文官全てが味方の上、貴族が出て来たら終わりだ。あっちの平民のアルには及びもつかない事だった。


子爵家の人間も麻痺していた。

アルが5か月間外に出ず、毎日冒険者の格好で家の中に居るのでそれが普通に思えて刷り込まれていた。誰もそれを指摘しない。最初こそ朝の食事に平服に着替えろとアニーが言っていたが、最近は忘れている。


冒険者の格好は、もう制服の様に思われていた。


キャンディルへの旅に行くまでは、拳の練習だったので帯剣してなかったが帰って来てからは模擬剣吊って夕飯まで食べている。誰も何も言わない。言っても無駄と知っている。


アルはあっちのあるがまま、そのまま生きていた。


食べ終えて代金を支払い。席を立とうとすると若い冒険者が逃げ込んで来た。あるあるだった(笑)


ここの夫婦の息子の友達が逃げ込んだのだ。


冒険者同士の揉め事だった。


どうしようかと迷った。揉め事ぐらい自分で解決しないと、クエストも解決できないし、かと言って一度舐められてタカられたら簡単に抜け出せない。


迷った上で若い冒険者をよく視た。ありがちだけど、このまま行くと冒険者崩れの盗賊コースな奴らだった。


まぁ視ちゃったからいいか・・・と奥さんにお茶をお願いした。

3人分のお茶代をテーブルに置く。

ちょっと用事だと席を外して店を出る。


4人PTの冒険者を追う。ギルド行くつもりだ。


先回りして正面からブチ当たって吹っ飛ばし文句を言う。


「クソ冒険者が前見て歩け!」子供冒険者が言う。


4人はこっちに有りもしない瞬間湯沸かし器になった。


「てめぇ!今「パーン!」」一発ビンタ張る。

「ごめんなさいだろ!」


大通りの真ん中(両脇は露店)子供にビンタ食う冒険者。


トーマスが怒って蒸気出るみたいになった。


気が付いた、これ俺が絡んでるじゃん!やべー!冒険者に絡まれる前に絡んでた。逆テンプレだ!


苦笑しながら逃げた(笑)

追いつかれる様に逃げた。

貧民街の奥まで逃げた。


粗大ごみ捨て場まで逃げ込んで、捨ててある椅子や机でバリケード代わりに盾にした。


「ガキィー!舐めた真似しやがって」

17歳もガキだろ!


「助けてー!」とテーブル周りを逃げ回る。


「逃げられると思ってんのか?」悪人面で笑ってる。

「助けてー!」大喜びで追ってくる奴。

「そっち回れ」18歳がリーダーだな。

「よしよし囲んだぞ、もう逃げられねぇ」


「誰かー助けてー!」もっと貧民街の人集めよう。

貧民街に子供の叫びがこだまする。


「おい、もう逃げられねぇぞ」


逝っちゃってる系のリーダー。ニタニタしやがって。


「お前がな!」パンチ1発、足払いで一回転。一人目


「な!」

「なじゃねーよ!」腹パンから足払い。


顔からゴミ山に突っ込む。二人目


2人が剣を抜いた。視るとやっぱ殺す気かよ!(笑)


模擬剣を取る振りして釘バットの模擬剣を出す。

模擬剣で片手剣を真っ二つに切る。

正面から殴って吹っ飛ばす。三人目。


剣持ってあわあわしてる17歳の剣を撫でて切る。落ちた切先を見てる顔がゆがむほど殴って投げ飛ばす。


ゴミの山に飛んで行く。四人目。


よく視させてもらった、やっぱダメダメ系だわ。


「おい!寝てんじゃねぇ」ボコボコにする。

「ごみクズども!よく聞け」蹴りまくる。


「お前らみたいなのが盗賊になると俺は思うんだがその辺どうだ?」


殴りながら言う


「答えねぇなら殺すぞ!」

「はい」

「はいじゃねーよ!盗賊になるんだろ?お前らは」

「なりません」


「今盗賊みたいなことしてるじゃねーか」

「してません」

「そう言うと思ったよ」殴る、殴る、殴る。


「同業の冒険者襲ってるじゃねーか」

「盗賊だよな?」

「・・・」バコバコのボコボコだ。


襲ってんの分かってんのに黙ってやがる。


「やっぱ死ね!」蹴りまくる。

「すみません、すみません」

「すみませんで済んだら守備隊要らねぇなぁ」


ガンガン殴る蹴る


「お許しくださいお許しください」

「お前ら許してきたのか?」

「・・・」


「だよなぁ。俺が許すと思ってるのか?」


「許されねぇんだよ」


「この世はなぁ、自分のやって来た事がそのまま自分に跳ね返ってくるんだよ。そんな事も知らねぇからこうなってる」


「わかるな?」殴る蹴る。


「お前、色んな人にこうやって来たよな?」

「・・・」


「返事が出来ないって事はそうなんだよ」


「だから許さねぇ」殴ってたら虫の息になって来た。


「ヒール。あ!治っちゃった」


「さぁ、やり直しだ!」また始める。


「お前たちがやって来た分、俺がお前たちにやってやるからな」


「知らねぇだろ?悪人はみんなこうなるからな」


「神様が見ててなぁ、お返しに来るんだよ」


「お前たちが曲がってる分、真っ直ぐにしなきゃな」


バカバカ殴る。四人一緒に蹴り飛ばす。


ヒール!「また治っちゃったなぁ」


「また始めようか、返事も無いからつまんねぇな」


ガンガン殴る、蹴る。


「他の街でも悪事やってみな、俺が行くからよ」

ゴミ山の上を、蹴ると転がっていく。


「俺が来るのを楽しみに悪事しなよ」

殴りながら言う、蹴りながら言う。笑いながら言う。


全員の心が折れた。二度と悪事はしないと神に誓いやがった。


「神様が今、許してくれるってさ。四人共分かってくれて嬉しいよ、俺も疲れるしな。真面目にやれば俺も行かなくて済むしな。神様はどこでも見てるぞ。神様舐めるとこうなるぞ」


残った二人の剣を目の前で模擬剣釘バットで切った。


「人を殺してなくてギリギリ助かったな」

「ヒール」


もうこれ以上脅し文句が出ねぇよ。

三回も教会のヒール使っちゃった。(笑)

ギャラリー21人。信者獲得しても貧民街じゃなぁ。



あ!アニーとビクトリオ!

慌てて走って帰った。



帰りに蚤の市寄ったら、魔道具の店が無かった。

視たら金貨2枚手に入れて慌てて俺と一緒で逃げていた(笑)


絵本を教会に持って行き、受付の守備隊員に小壺を2個置いて屋敷に帰った。




精霊剣とマジックバッグ×二個。わーい!





次回 113話 帝国の影   

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                思預しよ

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