第104話 団長飛び起きる!
12月30日(この世界の年末)
ミリア-ロスト-ロスレーン。
この区間の盗賊駆除が終わり、ロスレーンへ帰る前にやっておきたいことがあった。
第12開拓区(難民村)を見に行ったのだ。
難民村の周りの領民開拓村には手当たり次第に恩寵付与した。来年の豊作を確定させたかったからだ。そうすれば近くの開拓村と難民村が仲良く出来るかなって思ったんだよ。
ロセとミニスの窮状は救うつもりではあったけど付け焼刃的な発想の視点が狭くて歪だった。馬車を維持する事さえ無理と言われて大丈夫になるようにした。それが周りの村と
だから2か月ぶりに見に来たんだよ。
第12開拓区 イメージ画像
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昼前なのに意外と開拓村の馬車が行き来する。
恩寵無い人は付与していく。
成長促進の具合を見に来てる?
やっぱマズイかなぁ、問題出てたら近隣の村も成長促進に来るように導師に言ってみよう。
第12開拓区へ入り村長に会う。
話を聞いたらやっぱロストの代官も用水路を視察し、手紙や馬車の証文を確かめに来たみたい。代官が領民村に経緯を説明した事で賢者の行った用水路や野菜の御業に平伏し納得したそうだ。
その折に賢者様の野菜を代官と執政官に献上。他の領民開拓村もおすそ分けしたら領民と難民の区別なく付き合い出したって。
今では採れる賢者の野菜を他の開拓村と交換して、お互いに交流が生まれてるらしい。わーい。
そういう事なら、他の開拓村は付与だけでいいや。
冬さえ越したら作物や小麦、大麦が採れるはず。少し安心した。
隠遁の賢者の名前は凄い。野菜になっても許される。ブランド野菜じゃねーか、羨ましい。霊験あらたかぽい(笑)
子供冒険者の名前も何とかならんかね。何でも許されるけど生温かいんだよ。でも最近ド叱られる事も多いな。でも良かった!何も知らない俺がやらかしちゃったと思ってた。
ロセとミニスに会いに行った。
「アル兄ちゃーん」と寒い中も風の子で二人が走って来る。
お父さんとお母さんが家の前でお辞儀してくれる。
みんなでザルに入ってる野菜剥いてたんだ(笑)
朝採って来た野菜のシチューと昨日焼いたパンが今日のお昼なんだってさ。そこの豆は?と聞いたら他の村で交換したんだって。
俺を誘うな。食い扶持が減るじゃねーか。
食えればなんだっていいさ!家族で毎日食べてるんだな。
馬も寒い中関係なく外で普通に草食べてるわ。
野菜も採れるからあと塩だけだよな。
自分が動いて、結果が出るってメチャ気分いいな。最高だ!
導師と師匠の所に帰って出発だ。
「アル、良い事をしたのう」
「皆の顔が明るいよな」
「はい!嬉しいです」
「皆食べておるみたいだのう」導師も嬉しそう。
「食い物の心配しないってのが大きいだろうな」
師匠も満足そうだ。
やっぱ、難民村に肩入れし過ぎると調整が大変だな。今回は偶々上手く行っただけだ、上手く行って無かったら導師を巻き込んでまた成長促進だったわ。夜に来ないといけなかった(笑)
その辺も考えて、分かってないとやっちゃダメだな。
もう12月が終わる。ロスレーンに帰ろう。
・・・・・・
ロスト手前の人気のない小さな林から、ロスレーンまで3時間の場所へ導師が跳んでくれた。最初に昼を取った河原の横にある林だ。ロスレーンの近くは平地で目立つから跳べないのよ。
まぁ、あと3時間だ。と行き交う人に恩寵付与。相も変わらず付けまくる。
門で先触れをお願いして、お茶を飲んでから我が家に凱旋した。毎週凱旋してたけど公式発表は今日だ!(笑)
ロスレーンに帰ったら、家族も微妙な笑顔。
1週間に一回会議してたんだから今更か。
お母様だけが違っている・・・求められている。
表面上2か月振りに帰って来たから、使用人の前でいつもの10倍お母様に抱き付いた。だって使用人で知ってるのはシュミッツとジャネットだけだもの、親子が微妙によそよそしいのもダメだ。お母様は自分からやりたいからいいの。抱き付いとけばいいの。
師匠は追い込み漁の罠の中とも知らず2か月ぶりのロスレーンを満喫している。副団長達が1時間程で子爵邸に帰って来ることを知らされて嬉しそうだ。
アニーが何か言いたそうにメイドの列に埋もれている。何も言わなくていいよ、分かってる。当然の報酬だ。
ノストリーヌを従者頭のモース(32歳)に返した。アンドロ(26歳)、ビクトリオ(17歳)も導師と師匠の馬を預かっている。最後に3頭を癒して喜ばしておく。
お出迎えの後は、報告の儀だ。
週一で報告してる上に、表で出迎えてるから良いじゃねーかと思うが儀礼は貴族の嗜みとかシュミッツが言いそうなので、文句を言わずにお爺様の執務室へ報告に赴く。
報告済みを報告するのか?と心で毒を吐いておいた。
調子に乗ってすみません。
俺の報告は秘密会議の件と全然違った。
往復に掛かるロスレーン領地の街の話を多数聞かれた。
途中で気が付いて、お爺様とお父様に全然使わなかった旅費を渡そうとしたら、渡したお金はもういい。と言われてしまった。メチャクチャ余ってるんだけど・・・
金貨8枚小金貨37枚小銭多数(1140万円)以上(笑)
ここ1週間でロスレーンより西の盗賊は駆逐した事、ヘクトの岩塩坑に180人程の罪人を送った事、受け取ったロスレーン家御用商人の証をオットー商会へ渡した事、バラライカは順調に商人たちに売れている事を伝えた。
報告の儀が終わると、料理長が俺の好きな物を夕食に作ると言われて困った。あれば何でも食べる人なので当然グルメじゃない。自慢じゃ無いが1年ワックで大丈夫。と言うぐらい安定的な美味しさならそれで満足してしまう。
ファレオフィッシュを説明してみようかと思った瞬間、面倒なのでやめた。俺はその位のグルメだ。
考えた末に塩コショウで食べる柔らかいステーキを注文した。難民村の食卓を思って、どうなんだ?と思ったが、村人が師匠の獲物を嬉しそうに受けとってたから、ちゃんと肉食ってるじゃん!とツッコミを入れて、俺だって肉は食いたいぞ!と遠慮なく注文した。
お貴族様の晩餐を飾るグルメは、実はそれ位しか俺のレシピに浮かばなかった。面倒臭いのでワサビは探さない。以後も探す気は無い。作る気も無い。俺は体育会系なんだよ。細やかな事は苦手なの。
夕食まで3時間程有ったので、久々に温かい部屋の中でぶっ倒れる程も剣の鍛錬をした。アニーが途中で覗きに来て基地外の様に模擬剣を振り回すのを見て逃げて行った。俺が模擬剣を振り回すの初めて見るから怖いわな。
・・・・・・・
その頃、リードは副団長達と挨拶を交わした後、お互いの近況を語り、いつしか酒を交わしていた。
ガルス「団長よ、神託ってのは進んでんのかよ?」
リード「進んでるな、毎日進んでるな」
ハルト「どれぐらい進んでんだよ、俺達の予定も有るしよ」
レノア「あんたの予定なんて初めて聞いたよ(笑)」
ローレン「あとどのくらいなんだ?」
リード「わからん。今のままなら傭兵団に戻れん」
ハルト「え?なんだよ!それ」
ガルス「団長が言うならそうなんだろうよ」
レノア「リード、ちょっと待ってよ。それ本当なの?」
リード「傭兵団で戦う以上の価値があった5カ月だ」
ローレン「公爵様に何て言うんだ」
リード「なにも言いやしない、今まで通りだ」
ガルス「戦争になったら行くんだな?」
リード「行く、それが盟約だ。そう手紙にも書いた」
ハルト「そんじゃ、戻れんと言うのは」
リード「戦争以外は、ここにいると言う事だな」
レノア「こことは?子爵邸の事?」
リード「そうだ、俺の加護の事をお前たちは知ってるな」
皆が頷く。
リード「俺の加護と同じくと思うが、隠遁の賢者と言われるベント卿がこの子爵邸を中心に活動される事にもなった」
皆の顔が真剣になって行く。
リード「この国は変わるぞ、神に選ばれて多分そういう縁の者が集まって来るかもしれん。戦争。あの戦争自体も変わるかもしれん」
リード「俺も神にここに呼ばれた、その意味が分かるか」
皆が首を振る。
リード「お前達、模擬戦やったか?どうだった?」
ALL「・・・」
リード「勝てたのか?(笑)」
ハルト「そこまで負けてねぇ!レノアはコテンパンだ(笑)」
レノアに蹴られてハルトが転がって行く。
リード「(笑)そういう事だ、他とは違うだろう?」
リード「俺が居なかった2カ月でな、キャンディル領に盗賊は一人も居なくなったぞ。多分凍死や餓死も無くなった筈だ」
ALL ごくりと息をのむ。
リード「神の力を俺は思い知った。呼ばれた俺の力を余す事無く神に捧げる事が出来ているんだ。小競り合いに出かけるのとは訳が違う5カ月だった」
ガルス「暁と俺たちはどうすればいい?」
リード「好きにすればいいさ、戦争になったらまた戦うだけだ」
ローレン「紛争とかには出ないんだな?戦争だな?」
リード「そうだ、戦争だ。紛争なんて小さい事もう出来ない」
ハルト「面白そうじゃねぇか、俺たちじゃダメか?」
リード「昨日まで一日10~30人盗賊ぶちのめしてきた」
ALL「・・・」
リード「神が何所にいるのか教えに来るんだよ(笑)」
ガルス「本当なのか?その・・・一人でか?」
リード「ベント卿も一緒だがな。ぶちのめすのは一人だ」
ハルト「おいおい!本当ぽいじゃねーか」
リード「本当だからな」
ローレン「騎士団の討伐みたいだな」
レノア「そんじゃ賞金とか報酬ガッポリかい?」
リード「神の啓示って言ってるだろ、報酬なんか無ぇよ」
ALL「・・・」
ガルス「それ、どうやって食っていくんだよ」
リード「俺に弟子が出来たんだ(笑)」
ハルト「なにぃ?弟子ぃ~?お前がか?」
リード「神託で弟子を持った。子爵が弟子の授業料をくれるし、王都からも男爵の給金は出てる。盗賊位は退治してやるさ」
ハルト「俺たちじゃ手伝えねぇのか。一緒は無理か?」
ガルス「ハルト、リンドかフィリップに勝ってから言え(笑)」(第三騎士団副団長・第一騎士団副団長)
レノア「負け癖が付いてんだ。無理だね!」
ハルト「お前ほどぶざまじゃねぇよ!」
レノアに蹴られて椅子ごと転がった。
ガルス「俺たちはどうするかなぁ・・・」
レノア「マルクが中州から帰ってから考えりゃ良いじゃない」
ローレン「先週着いた頃だぞ、1月後半かな?」
ハルト「すぐ終わってたらな、まだなら2月以降だぞ」
レノア「あたしはここ居心地いいからさ、まだここにいる」
ガルス「ここは屋敷が暖かいからな、安宿は泊れないな」
ローレン「居心地は良いが、ここに慣れるのは怖いな」
レノア「あんた、怖いなら震える外で頑張って来な!」
ハルト「そういうこったぜ!マルク来るまで俺は腕を磨く!」
リード「マルクだけで行ってるのか?」
ガルス「そうだぞ?」
リード「4000も連れてか?」
ALL「あ!」
ハルト「今なぁ、1000になっちゃった」
リード「 ・・・ 」
ガルス「わかる!団長!お前の気持ちはわかる!」
リード#「てめえら何やりやがった!」
ALL「・・・」
ローレン「真の暁を決めたんだよ」
ハルト「真の暁って言ってな・・・
・・・それで1000だ!」
ハルトが壁まで飛んでった!館が揺れた。
リードがキレた!
「手前ぇら、副団だろうが!自分の部下1000をよくも・・・」
リードの口が震えて言葉にならない。
残る3人がリードの震える口とピクる頬から目が離せない。
レノア「あたしは違うじゃん!関係ないじゃん?」
リード「レノアてめぇ、じゃ何でここにいる?」
レノア「・・・」
レノアもくの字で飛んでった。館が揺れた。
4人はこの年一番で最後の激烈な稽古を付けてもらった。レンガ作りの屋敷が何度も震えた。
ラルフがアルを皆に紹介しようとした夕食。4人は鍛錬による体調不良とメイドに伝え現れなかった。
アルのリクエストの柔らかいステーキを食べずに、晩に麦のおかゆを少し食べたようだ。
深夜。
魔法ランプを消したリードはベッドから飛び起きた!
バラライカ@3000どうすんだ!
次回 105話 アルVSハルト
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