第93話  やらないか



教会を出て、明日この街を出るので手早く走る。


やっておくことがあるのだ。

こんなしょうもない事、師匠や導師に言えない。

でもまぁ、ムカつくから一人でやる。


商売Lv1付けた時、芋屋のおばちゃんを視て偶々たまたま視えた。


チンピラが屋台に小遣いをせびりに来るのだ。


他にも?と思い、遠くの屋台見てもそいつら来て商品食ってやがる。地廻じまわり(縄張りのヤクザ)のシステムも視た。が!ちと許せなかったのでタカったチンピラのたまり場に行く。街を全体に視たらナビ状態だよ。


溜まってる奴らを視る、本当に下っ端だ。

こいつら遊ぶ金も無いのか、行く所もやることも無い。溜まって喋るだけだ、腹減って暇ならタカるわなぁ。


場所代取ってる親分の所行ってみる。

教会のある通りのまだ奥の街の4m程の壁沿い。まぁ貧民街だな。


(シェル?俺の考え分かってるよね)

(わかってますよ)


(シェルが何できるか分かんないけど、何かあったら助けてね)


(たすけるです)


3階建ての古めかしいレンガの建物。

怖いの居そうだな?と入って行った。1階に6人居た。悪人面はいるがピラニアな奴は流石にいない。


余りに小さいのが入って来て唖然としてる脇を2階に上がる。


我に返って2人が追っかけて来る。


「坊ちゃん、どこに行くんだい?」

「バルドーおじちゃんに会いに来た」

「ボスに?」誰の子供?と思ってる(笑)

俺の格好視て値踏みしてるよ。


「ボスってなに?」親分の事だよね。

「いいのいいの、バルドーおじちゃんね」

「うん、3階だよね」値踏みに受かったぜ(笑)

「知ってるならいいな、階段 気を付けてな」

「うん」


2階へ入ると、ここも5人居るな。

やっぱ俺を見て止まる。そのまま3階へ上がっていく。あれ?追っかけてこないよ。ボスの子供?とか聞いてる(笑)


3階に入って中の人達がやっぱ止まる。


模擬剣持った子供ってそういう扱いか?

この格好も便利なんだな(笑)


ずんずん奥に入ってボスの部屋にいきなり入った。


「ビックリしたな!なんだ?坊主、誰の子だ?」

「バルドーおじちゃんだよね?」

「おぉ、そうだが、何しに来た坊主?」


「文句を言いに来た」


「はぁ?文句?何の文句だ。お父さんに不満があるか」


「バルドーおじちゃんに不満があるんだよ」


「へ?俺?俺か?俺に何の不満があるんだ?(笑)」


「屋台から場所代取ってるよね?」


お!聞いたとたんに真面目になりやがった。


「取ってるな、それがどうした」威圧が出る


「なんで取ってるの?」

「場所代がいるからだ」


「うちに返してよ」

「へ?坊主を送ってくのか?」


「場所代を返してって言ってるの」

「おまえどこの屋台の子だ、ふてえやろうだ」


「ふてえのはバルドーおじちゃんだよ」


「なんで俺がふてえんだよ」

「場所代取っていじめてるからだよ」


「そういう決まりだ!それぐらい分かれ坊主」

「うちの土地で何でいじめる商売してんのさ」


「なにおう?何言ってんだ?」


「腐った商売するなって言ってんの」

「何言ってんだぁ?坊主どっから来た?」


「ロスレーン家だよ」カードを机に出す。


「はぁ?お坊ちゃんが何しに来てんだよ。一人で(笑)」


「文句言いに来てるって言ってるでしょ」


「何の文句言いに来てるんだ」

最初の質問に戻った(笑)


もういいや。子供の真似も大概だ。


「お前、何度も、何度も・・・」

手を握り締める。


こんな時は幼児語ギアを上げてもダメと学習した。


「・・・何々何々うっせえわ!」


バルドーを殴って壁まで吹っ飛ばす。


余りの音に子分が駆け込むが全部麻痺だ!


「子ども扱いしやがって」

子供だからしかたない。


「何々何々、子供か!話が進まねぇから黙ってろ!」


あのターン制が異世界にもやってきた!

当然アルのターンだ!


「お前屋台から場所代取って商売させてるよな?屋台は大事な客じゃねーのか?お前がいい加減な事してるから、若いチンピラが屋台の商品食ったり、小遣いせびりに来てるぞ。


場所代取った上に商品や小遣い渡さなきゃ脅すのか?

(壁のバルドーを蹴る)


お前の商売は、場所代取った上に商品食わせて貰って小金をせびりに行く商売か?   


屋台はなぁ、バルドーよ。お前に金を払って安心して商売してるんだ。お前を信用して安心してる奴を、金を貰ったお前がいじめるのか? って聞いてんだよ!


(掴み上げて殴る)


お前の商売はお客も商売なのか?客をいたぶる商売なのか?そんな腐った商売するなら街から叩き出すぞ。そんなゴミは領内にいらん。おまえら全部掃除するぞ。


全部お前のが悪いからこうなってんだ!親が責任持たなくてどうする。子供には悪さしないしつけと仕事と小遣い与えなきゃダメだろ?どうなんだ?


(パンパン往復ビンタ)


こんな小さな町だ。おまえらが消えても、他のバカが湧くからこれぐらいで許してやる。場所代も許してやる、その代わり屋台を見守るぐらいしてやれ。取るだけ取ってそのままじゃ貴族よりタチ悪いぞ。


(暴力振るう貴族が言う)


お前はロスレーン領にいる。パーヌの街にいる。うちの名を汚すような事したらまた来るぞ。逃げるんじゃねぇぞ、やる事やれって言ってんだ」


「客を泣かすような商売するな」

(胸倉を引き寄せて、殴る真似をする)


「貴族は怖いよなぁ。来て欲しくないよな?」

46歳のおっさん引き寄せ子供が目を合わせに行く。


「今日は尻叩いただけで許してやる」尻は叩いてない。

2回殴って1回蹴って顔2回張っただけだ。


引き寄せた襟首掴んだままバルドーを座らせた。

「ヒール」怪我を直してやる。



「金を貰って守らないお前が悪かっただけだ」


「若いのも暇で金がねぇんだ、屋台で場所代貰ってんなら若い衆に掃除させて小遣いやりゃいいだろ。その小遣いで屋台の食い物買うだろうよ。食い物タカったり、金せびったりさせるなよ」


「文句は言ったぞ。バルドー」


「そんじゃ、達者でやれ」



子供冒険者は帰って行った。


2階と1階の人達に手を振って帰って行った。


だいぶ暗くなって来てる、急いで帰ろ。


地廻りの事務所出て、アルは全力で強化回して帰った。


丁度闇に呑まれる前に紅の灯亭に着いた。

夕食まで、あと一時間ちょいか、先に湯に入るかな。

メイドさんにお風呂をお願いした。


(シェルはそのままでいたら綺麗にして貰えるからね)

(はいです)


「変わったお召し物ですね」


「ポンチョって言います、羽織ると暖かくていいですよ」


「はい、手触りも良くてよろしいですね」


(シェル褒められてるねぇ)

(もっとフワフワにもなるですよ)


(もっと寒くなったらお願いね)

(はいです)


(そっか、厚めでゴワッとしたのイメージしたからな)

(ですよ)


やっぱスポーンと脱いで湯浴み着を着るメイドさん(笑)

こんなんでいいのか?子供だけのサービス?


俺を脱がすときはめっちゃ丁寧だしな。

良く温まった、服にクリーンを当てながら着替えさせてくれる。シェルも掛けられてる(笑)


一回部屋に入ってメイドがお茶を煎れてる最中。


(シェルこういうのになれる)

(こうですね)ネックウォーマーが出来た。

メイドに聞いてみる。


「こういう物作れますか?」

メイドが来てネックウォーマーを良く見ている。


「こうやって使います」

頭から被って上下の紐を締める。


「温かいですよ、やってみてください」


「そうそう、被ってから髪を出して」

「温かいですねぇ」


「作れそうです?」


「裁縫スキル持ってるメイドが居ますので連れてきます」


「あ!それならオーバン男爵のお付きのメイドさんを一緒に連れてこられませんか?アルベルトが卿のメイドを呼んでいるとお伝え下さい」


「少々お待ちください、聞いて参ります」


10分程して3人のメイドが集まった。


「これを見て貰えますか?」

「こうやって使います」見本を見せる。


「お二人共やってみてください」


「とても温かいです」

物を次に渡して目線で促す。


「はい、温かいです」


「何かこの様な素材で同じ物を作れないですか?これから寒くなってきます、領民に教えてやりたいのです。あなたのご実家はこの街の商会と聞いておりますがお父様とお会いできませんか?」


「今から父に使いを出してみます」


「会えるのなら食事が済み次第で構いませんのでお願いします」


「作るのは簡単に出来るかと思います」


「作る素材はなにかご存じですか?」


「ウサギかキツネの毛皮を裏返しても宜しいですし、表にも使えばお貴族様に宜しいかと」


「あ!それなら帽子も良いですねぇ」


「何かその様な、作るに柔らかな物はありますか?」

「ウサギ皮の枕カバーなら」


「え!そんな物があるの?」

聞いた事無いぞ(笑)


「少々お待ちください」


メイドが4枚ほど枕カバーを持って来た!衝撃的だった。

メチャフワフワ!白、茶、グレー、黒とウサギの個体差で色が全部違う。白がメッチャ綺麗!黒も光沢あってマジ上等な感じ。この枕カバーそのまま大人でも被れるかな?



「ちょっと待っててね」

「はい」


慌てて師匠の部屋に行く。部屋に入ると師匠に枕カバーを被ってくれとせがむ。師匠でもちょっと大きいな。内側に毛を折って被って見たらちょうどいい(笑) お礼を言ってまた部屋に帰る。


「これって、お願いしたら宿泊代で貰えませんか?」


「主人に聞いてきます」

すぐに帰って来た。


「構わないそうです」


「それでは、この枕カバーをですねぇ、こうやって内側に折って、こうやって縫って、紐を上下に。切り詰めなくていいです。大きいと口まで隠れますから、こんな感じに。冬でも温かいですよ」


「明日までに3枚作れますか?出来たら4枚全部」

「これなら裁縫スキル無くても一人一枚で縫えます」

「それではお礼は弾みますのでお願いします」


「出来たらこの部屋でやって頂けたら嬉しいのですが、部屋も開いてますし。その分のメイドさんの給金もご主人に宿代に付ける様にお願いします。用意次第にここで始めて貰っても構いません」


「んーと。そろそろ食事ですね、参りましょうか」


食事の部屋に入る。

師匠にシェルのネックウオーマーを被って貰う。


「冬温かそうでしょ?」

「温かいな!それでか、毛皮で作るのか?」

「そうです、導師もやってみてください」

「こうじゃの?ふむ、温かくて冬に良いの」


「これをこの街の特産にしようと思いまして」

「ほう、なぜじゃ?」


「この街から初心者の冒険者が増えてまいります。この地は林も多く西には森があり、うさぎは見込めるかと。そしてこの街は交易路で必ず商人が通ります。冬に暖かく重くなく嵩張らず喜ばれるなら、売れると思いました。


この街を大きくするために、特産品ならと思いました。西には岩塩の街ヘクト、東には隊商の大休止の街ミリス、この街だけが特産も無く人口が少ないのです」


「良いの、良い考えじゃ」

「俺も良いと思うな、これは皆が欲しがるぞ」


「初心の冒険者もうさぎの値が上がればそれで魔獣を狩らなくても危険も無く食えると思うのです」


「そうじゃな、誰も損はせんな、この様な物も無いしのう」


「明日までに師匠と導師の分を頼んでおきました」


「おぅ、そうか!かたじけないの」

「アル、ありがとう」



食事後三人がアルの部屋で頭周りの採寸をメイドにして貰っていると師匠付きのメイドが「オットー商会長が参られました」と告げる。


客間に案内というか、師匠と導師が応接間で採寸してる横を通り個室に案内する。メイドの娘さんも入って貰った。すぐにお茶の用意をしてくれる。


「私はオットー商会のオットーと申します」

「私はアルベルト・ロスレーン。領主ラルフ・ロスレーンの孫です」


「オットーさんはこの街で大きな商会をお持ちだとか?」


「はい、大きくは有りませんが、この街と他領の交易で手広くやらせて頂いております。何分なにぶんにも器が小さい街なので商店も余り無く、手前の商会以外めぼしい商会も無いだけでございます」


「見て欲しい物はこれです」

シェルのネックウオーマーを見せる。


「この様に使います」と実演する。

「試してみてください」


「これは温かいですな」

「今、隣で採寸してうさぎの毛皮で作ってます」


「これから冬が来ます、これをこの街の特産にしたら如何でしょうか?」


「隊商が寒い中交易路を通る。売れると思いませんか?」


「売れるでしょうな?温かいのを実感して買って行く」


「私の案は、最初は貴族用から、貴族用で売って皆の知る冬の防寒着として定着させる。稼いだお金を使って布製を町民や農民に安価で作りだす。獣人の方は寒さの度合いが分らないので要望が有れば考える。女性用、男性用の大小二種類を作る体制を整えて、オットーさんの思う金額で人を雇い、うさぎ毛皮を仕入れて、製造から販売までやってみませんか?」


「私の所がですか?」


「はい、オットーさんの商会が全部やってみませんか? 私は領民が増えて皆が食べて行ける領地を作りたいだけです」


ノックと共に採寸していた師匠と導師が入って来た。机の椅子に座るが気にせずそのまま続ける。


「高価な毛皮は無理でしょうが、布製を作る様になったらでいいです。12歳になって仕事が無い子供達に縫わせてやりたいと思っています、孤児院や農村の子が給金を持って農村に帰れるようにして貰いたいのです。当然それを教える人材も必要でしょう。そういうもの一切をお任せいたしますから、この案を差し出しますので受けていただけませんか?」


「そんな、勿体ないお言葉を」


「オットーさんが娘さんをこの宿に入れられる程のメイドに教育された手腕を見込んで領の子供達も自分で生きられるようにして頂きたいのです」


「は!そこまで言われるのであればお受けいたします」


「それなら、まず近隣のうさぎの毛皮を安いうちに買い集めましょう。元の毛皮が無いと作れないですからね。冬はもうすぐですよ」



大金貨50枚(1億円)金貨200枚(1億円)小金貨56枚(1120万)を机に出す。


「こ!これは!」


「ロスレーン家御用商会の証も出しましょう」


「キャンディル家も出そうかの、領民にも欲しいでの」

「うちの傭兵団も貰おう。ハルバス領にも送ってくれ」


※御用商会はその領内の街に入る入領税が無くなる上に貴族門で街に入れる。自領に入る時に他領からの積荷の税を払ったら領内の街を何往復してもフリーパス。


「ありがとうございます!ありがとうございます!」



「それでですね、街の義賊の噂をお聞きですか?」

「はい聞きました、あれは本当でしょうか?」


すかさず導師が遮音の魔法を無詠唱で掛ける。


「本当でしょうね。義賊が私の所に参りました」


「え?」


「このような物を持って」


借金奴隷の奴隷債権魔術証文の束を出す。


「本来の借金の何倍も利息を払い、それでも抗えずに借金奴隷として鉱山に送られたものを助けて欲しいと私の所に参りました」


「なんと!」

「打ち首覚悟で参りました」


「出された証文は真に酷い物でした。一生働いても返すどころか借金は増える一方の証文でした」


「その者は嘘を言っていなかった」


「これを見てください」

「オットー商会の魔術証文です」


目が点になっている。


「オットーさんの商会も借りてましたね。最後に受けたマルベリス家納入資材の大量キャンセルはそう言う事です。受けた損害はマルベリスの両替商が被ってくれましたよ(笑)」


「その金貨はあなたが受けた損害です。白金貨だと使い難いでしょうから小さくしておきました」


「搾取されたお金でオットー商会は出直しましょう」


「義賊から預かりました。確かにお返し致しましたよ」


「・・・」


「領主家が持っては税の二重取りになってしまいます。義賊に感謝すると良いでしょう。その者は借金奴隷解放の頼みのみ。一銭も手を付けず私の所へ訴え出た。打ち首の代わりに領主家が持つヘクトの岩塩鉱山の借金奴隷開放を願い出た」


「私は一存で義賊を許しました。ロスレーンの領民を私心無く救おうとする行為を許しました」


「もちろん借金奴隷も助けます」


「これから同じ様に苦しむ領民を助けねばなりません」


「これからオットー商会も領を盛り立てて頂きたい」


「お約束を言っておきますね」


「この部屋で聞いたことは一切の口外を禁ずる」


「はい・・・」


「そんじゃ、うさぎの話をしましょうか(笑)」


娘さん泣いてるよ。


ちがうよ! 午後義賊に呼び出されてねぇよ教会で昼飯食って運動しただけだ(笑)



・・・・・


「まずは最高級の毛皮を使ってですね・・・

「傷があれば表は布地にして中だけ・・・

「貴族用は表も裏も傷の無い・・・


「雪が降る前に冒険者に捕ってもらわ・・・

「それなら猟師も良い稼ぎに・・・

「冬の雪うさぎの白はそれはもう綺麗な・・・

「冬にもうさぎで稼げるのですね?

「冒険者ギルドでうさぎやらないかと・・・





次回 94話  真の暁  

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