第84話 アルと21人の盗賊
昼休憩から3時間程したらミリアの街が見えて来た。
(元々開拓村はロスト-ミリアの交易路の途中だった)
人口6000人。小さな街だけど、交易路の街なので商業が盛んだ。来る途中、ミリアに近づくにつれて行き交う人もステータスボードの無い人は殆ど通らなかった。
ステータスボードを
・持っている=各種経験値が溜まる。職能が付き育つ。
・持ってない=各種経験値が溜まらず。職能が付かない。
・持ってないのに俺が職能を付与する=職能だけ育つ。
たぶん、こんな感じだと思う。そして職能恩寵は経験値やLvの上がり方から見てパッシブな分だけ魔力消費は超持久的消費なのでは?と推測してる。
あくまで考察だよ?
魔法攻撃系:魔力大 飛ばす 遠距離アクティブスキル。
物理攻撃系:魔力小 纏う 近距離アクティブスキル。
職能恩寵系: 極小 自然体 目前距離パッシブスキル。
魔法・物理、補助及び耐性系 魔力使用量 中~極小。
こんな感じに思ってる。
俺はステータスボード無しで、スキルLvが上がっていた。ステータスボード無かったから色々考察しても分かんなかった。そりゃこの世の誰も知らんわな。ステータスボード持ってなければスキルのLvすら分からない。あっちの俺と同じで職能Lvは育つはずだそういう事。
門まで着くとやっぱ税の関係で馬車とか止まってる。
物納させるとかそういう感じ?大雑把に目分量で少なすぎない?
あ!そういうことか。視て分かった!
単に街に入る入場料を取ってる。
お金で良いのに物納してるから遅くなってる(笑)
スゲー、そんな事初めて知った。
他領で仕入れた物を最初に領に入る時だけ税を取るんだよ。この街ではそんなの無いから入場料の入市税だな。
一人も馬車1台も大銅貨1枚(1000円)お金よりも物納だと護衛分も合わせて馬車の重さが減るとか、減った場所にまた仕入れてその分を商売で取り返すとか!金出さない商人パナイ。
みんな並んでもまったく怒って無い。金で払う方は全く混んでない。みんな
守備隊も税官吏も平民の武と文の官吏で代官に雇われてる。サービスもへったくれもない。街に入れてやる!だよ。嫌なら来るな。すげー世界だ。大丈夫か?うちの領は、イヤ回ってるんだよなコレ。キビシー!・・・換金し辛い半端な量の酒とかは税官吏がこれいいよと守備隊に置いて行くのね(笑)
まぁ、配分まで決まってやり過ぎないなら役得だよ、うん。
古くからある伝統は寛大にしないとな。
(アルはチョイ悪な伝統がすごく好き)
セミは今もやってんだろなぁ。俺も2年の時は無茶苦茶言ってたよな。皆あれで罵声スキルが育つしなぁ。マジ面白い伝統だったよなぁ(笑)
(2年の当番がセミ達に諦めさせようとクソミソな罵声を浴びせて心を折りに来る。例>根性無しのクソ共が生き残れると思いやがって、哀れな奴らだ!早く落ちて楽になれってんだよ!。その年に一番セミを落とした2年が撃墜王:罵声選手権覇者)
俺たちは貴族用の門から税も無く街に入る。
入った瞬間に俺を品定めする奴が検索に掛かる。盗賊野郎がいるぜ!商人の荷物の品定め要員、やるつもりだな。取りあえず覚えたぞ、
守備隊に聞いた貴族用の宿に馬を預けて部屋にご案内。ホエー!俺の部屋より豪華でメイドさん付いてるよ。コレ高いよ!大きな荷物を降ろして、師匠の部屋へ。
「盗賊がいました、やっつけます?」
「マジか!」男爵が段々プロになって行く。
「マジです、結構大きいみたいで21人いますね」
「そんなにか?大きいな」
「明日の隊商を襲うみたいです。門には3人いました」
「3人は?まだいるのか」
「いると思います、3人で襲う他の商人狙ってますから」
「ん?」
「明日出発の大きい隊商を狙って分配したら、それぞれが分かれるみたいで、別れた後にまた襲うみたいですね」
「そんな事まで分るのか?」
「知っちゃうんですよ」
「ベント卿に知らせて来る」
師匠は部屋を出て行くと導師を連れて部屋に来た。
「盗賊がおるとな?」
「はい21名います」
「多いの?どうするつもりじゃった?」
「外出るとめんどくさいので師匠と捕まえようかと」
「盗賊してないのにか?」
「はい」
「どう言って守備隊に突き出す」
「本人に盗賊と喋って貰います」
「は?」
「私が恩寵を乗せて導師に聞いて頂ければ喋ります」
「そんな恩寵があるのか?」
「私の手を孫の様に握って質問すれば喋ります」
「まさか弟子にそんな事をされようとは」
プライドが痛く傷ついたようだ。
苦悶の表情って酷くね? 俺も痛く傷ついたよ!
「ふーむ、難しい問題じゃ、守備隊も少ないしのう」
「あ!襲わせてもいいかもです。恩寵を取れば!」
「お!あれか!それなら隊商の護衛でも守れるの」
「アル、隊商はどっち方面に向かう?」
「3人組の見ていた商人が向かう西、私たちと同じです」
「ミリスだな、分かった」
「でも襲う時に盗らないと恩寵無いの気が付きますよ」
「老師から同行を申し出ては?」
「儂と卿は顔を知られておるやもしれん」
「アル、一人で行けるか?」
「え!一人?」顔が青ざめる。
「大丈夫だ。子供は最後だから(笑)」何笑ってんだよ。
「最後って!最後って何ですか」最後なんだよね?
「最後だから大丈夫じゃ!(笑)」
「
「それなら。って釣られる訳ないじゃないですか!」
「ほぅ、釣られぬか(笑)」
「老師、子供ですから。お菓子じゃないと(笑)」
「儂とした事が抜かったのぅ(笑)」
#こいつら殺す!ふざけやがって!ぷく
「アル、今のお前なら恩寵無しの盗賊なら身体強化と格闘術もあるお前が上だ。いざとなったらお前も対応しろ。護衛に付く冒険者は手練れだ、恩寵無しにはやられないから大丈夫だ。お前は最後だしな」
「・・・」
「大丈夫だって!最後だし(笑)」バシ!
#「ワザと言ってますよね!」ぷく
導師は隊商に仔細を話さず。俺を次の街まで預かってくれるように頼みに行った。伯爵家の意向で。それ命令じゃん!
隠れ家二軒(盗賊団が逃げて分配する隠れ家)について話し合う。視えた道順と最寄りの風景などを師匠が書き写す。
晩に魔法強化>魔法耐性と物理強化>物理耐性の恩寵を付けた。魔法使いが盗賊に二人居る。
導師が帰って来た。隊商の速度は遅いので、交易路に点在する別方向の隠れ家を師匠と導師が襲う事になった。二人に襲われたら終わりだ。ターミネーターとガンダルフのコンビだぞ(笑)
翌日の朝早くに宿に獣人の冒険者二人が迎えに来た。
導師に手を引かれた孫とか勘違いすんじゃねぇ!
「立派な冒険者が来たぞ。すごく強そうだ!」
#殺す!貴様!俺!今!
「今日はよろしくお願いします」
渦巻く毒を見せずに目をキラキラさせる。
「この子をミリスまで頼むぞ」
お迎えで駄賃が銀貨2枚かよ!(2万円)
「わかりました、無事にお届けいたします」
導師の手から離れると、お姉さん冒険者が手を繋いでくれる。
下から見上げると胸当てが出っ張って顔が半分隠れてる。
視たら虎獣人だった。山がデカイ。怖くないよ。普通に優しそうでニコッとしてくれる。もう一人は狼獣人だ。やっぱ体がでかい。
手を引かれて隊商の集合場所に連れていかれた。
商隊長に挨拶される。
「
#お前も殺す!導師に縁の子供って聞いてるじゃねぇか。ふざけやがって!伯爵家にゴマ摺ってるつもりか!
そんな毒で吐き満たされた心を出さずに言う。
「うん、今日はお願いします」ぺこり
子爵家のメイドに通じる笑顔は商隊長に通じなかった。
周りを視ていて頭を抱えた。冒険者にあこがれる子供。冒険者たちの目が温かく、ウケが非常に良いのがまた癪に障る。
「こちらの馬車にお乗り下さい」
抱え上げられて、馬車に乗せてくれた。
馬車の中に貴族風の女の子がいた、13歳、商会長の孫だ。飴をくれた。
馬車の中で色々話しかけられる。
領地最後の岩塩の街ヘクト。そこのコーミス商会長の孫シヨン。
シヨンは生活魔法を習いに行って3年。この冬、実家のあるヘクトで過ごすらしい。
シレンの街に魔術士が開いた私塾があるみたいだな。平民で良家の子供を預かって色々教えてるみたいだ。でも魔法だけじゃ無くて算術や商売、交渉とかも教えられるなら大したもんだ。
シヨンは生活魔法の火、水、光の三つ覚えて来た。へへん!とライトの魔法を見せびらかしてくる。土と時間と無属性がまだだ。
隣の人がお母さんだ。有る事ない事色々喋る。突っ込まれるとわかんないで
お母さんがお尻が痛いでしょ?と言いながら俺を膝に誘導して乗せたがる。もう分かったから!俺だって空気ぐらい読むよ、そういうポジションは分ったよ。
模擬剣を皆がチラチラ見るので見せて爺ちゃんに買って貰ったと自慢しておく。(何所の爺ちゃんか言わない)子供は言葉が足らないのだ、仕方がない。
賢介と三保さんの漫談を否定した俺が漫談じゃ駄目だ!10歳になり切って演技した。それは入魂(20歳の)の演技だった筈だ。盗賊の混沌衆やったるまで、俺はこいつらを騙し切る!
休憩になる。
お母さんがシヨンに手を繋いで離さない様にキツク言うから何を言ってもダメと手を放してくんない。しょうがないよ!シヨンに見えない様にションする。
休憩の度に盗賊団を視るが居ない。来ない。俺が慣れてないから?俺が気が小さいから?気にしすぎてマジ落ち着かない。
シヨンは自分のおしっこの時は手を放して見せてくんない。イヤ見たくねぇよ!それだけ俺には理不尽なんだよ!暇なので目を盗み、かまどをポコポコ作って時間潰し。
そして野営になった。
シヨンと手を繋いで色々と野営を見て回る。
冒険者が剣を抜いて、掛かって来い。とか稽古をするか。と言われるがシヨンお姉ちゃんに抱き付いて笑われておいた。我ながら渾身の演技だ。混沌衆、混沌衆とアロマテラピー的な呪文を唱える。
・・・・
朝になっても来ないんですが!おーい!ここにいますよ。美味しそうな隊商はここですよー!
荷馬車6台でマジ遅いが、ミリスへの行程は3日だ。
来るなら昼、中間地点と思い直してシミュレートし直す。俺なら矢で冒険者から狙う。戦力を削いでから降伏勧告だ。それが一番効率がいい。矢と魔法で先頭の馬車さえ止めたら21人で好きに出来る。
矢も盾もたまらず。休憩時間に商隊長に
わーい、運転席だぞ!(という振りだ!)
少し行くと斥候が違う角度で3人居た。全部奪っておく。
来るぞ、来るぞ!気を引き締めろ!抜かるなよ。
野球ならミットをバシバシ叩くがそんな物は無い。
難しいのが恩寵を奪っても剣や矢は飛んでくる事だ。当たれば怪我で済まない可能性がある。盗賊の先制攻撃の後に襲って来る恩寵無しの剣を振り回す奴らに対処する。初めての実戦で上手く対処出来るのか?それで悩む。考えてしまうのだ。
もう、いざとなったら大魔神になるしかねぇ。
ケツは捲くったぜ!じゃないや、腹は
小高いポコッとした山を迂回する右カーブ。15m程上にポツポツ現れる野郎ども。おぉ、おぉ、ゾロゾロ来たぞ!弓も構えてる。
恩寵Lv4有ると200mも必中かよ!心にツッコミが入る。パネェなと言ってる間に弓術も奪うというか範囲強奪で全部盗る。
魔法使い視えた、無力化OK!矢が8人。眼がフル稼働するのは何年ぶりだ(笑) 今はこんなに視えるんだと感心しながら全員恩寵無し。俺も暇じゃ無いけど全員に採掘付与して封印した。
次は矢だ。矢だぞ、抜かるなよ!
矢を放った!矢が来た!来たぞ!
イケ!8本の矢の狙いを視てるからその先に魔法障壁(物理)を張る。おし!防いだ、と思ったらもう2射目来る!速攻で目標予定場所に魔法障壁(物理)で防ぐ。※以後物理障壁
1射目で気が付いた奴らが、魔法使いがいると注意を促してる。
なるほど!1射目でバレても2射目までは奇襲が有効な訳ね。勉強させてくれてありがとう。
アッチの魔法使いは魔法が出なくてマジ焦ってる(笑) もうお前ら採掘しか付いてねーよ。うけけけけ!
きたきた!降りて来た!来た!来たよ!剣持って来た!
うぉーーー!めっちゃ怖ぇー!本気丸出しだ。
殺す気満々・・・マジか!それしか考えてねぇ。
もう物騒過ぎて笑う!斧まで持って血まみれバイキングか!むさい髭面のおっさん達が殺気満々で剣振り上げて走って来るんだぞ。マジ怖い、ちびるわ!
前方から扇状に押し包むようにわらわら来る。
冒険者たちも焦ってる。倍以上?こっち10人しか居ないもん。
しかーし、援護の新さんがいるぞ!新さんに任せろ!用意は万端に整ってる。絶対に抜かるなよ!
おりゃー!と出した扇状の物理障壁に全員がゴーン!とぶつかって弾き飛ばされる。
2名気絶、麻痺付けとく。
2/3の飛ばされた盗賊の前にまた物理障壁を作っておく。
7人だけを先行させて弱麻痺でこっちの冒険者にぶつける。
恩寵あれば勝てるだろ。よし身体強化もグルグルしてるな、これで楽勝の筈!よしよし!そんでいい、そんでいい!イケイケ!魔法使い視ると後ろで逃げようとしてるので麻痺攻撃。
足止めした盗賊が来ようとしたら麻痺攻撃でまた転ばす。
冒険者が対応した盗賊7人が徐々に
逃げようか戸惑う奴は麻痺を付ける、眼が優秀で良かった。
Lv10万歳!キャッチャーポジションなら慣れたもんだ。
視える!視えるぞ!
ヨシ次お前行け・・・次はお前だ!
順番だ次!
ヨシヨシ次だ!まだ早いか?もう一回、転がっとけ!
冒険者の戦い見て分かる。師匠が別格過ぎ(笑)
なんか麻痺のON-OFFを多人数に掛けてたらオーケストラの指揮とか、太鼓のリズムゲー感覚に似てるなとか思ったりして。
次の7人捌けたな・・・と
思ったりしてる間に、5人程になり降参してきた(笑) 恩寵無しの盗賊って冒険者相手だと話にならないわ。
無傷で制圧だよ冒険者偉い!視えるぜ。
Full Combo Perfect!Excellent!
俺の眼も冒険者を讃えてるな。子供冒険者も鼻が高いぜ!
実は。
余りの凄まじいリアルに体が震えて止まらない。気分だけが高揚して余計な事を喋りそうだ。手や足が震える中、冷静に周りを見てみる。
冒険者も不思議がるが疑われてない。俺の方を誰も見ない。
大丈夫そうだ、気が付かれてない。
ホッ!と一息ついた。
目をキラキラさせて虎獣人の女の人にぴょんぴょんしながら抱き付いて凄い凄い!と連呼して冒険者たちを褒め称えておいた。
盗賊達には賞金も付いている者が居るとかで次の街ミリスに連れて行こうか冒険者も悩んでいた。
頭目は誰だろうと視て、その中に戦争から逃げ回って居着いたオード戦役の帝国兵も居た。流浪の旅だった。お前も戦争の被害者だな。お疲れさん、楽になれたな。
盗賊の件が煮え切らないので助け舟を出した。盗賊が現れる前に馬車とか馬が見えた気がしたと場所を教えたのだ。視たんだから嘘じゃねぇよ。
程なくして盗賊の馬と馬車が鹵獲されて、隊商に加わった。自分たちが用意した馬車で運ばれる盗賊。部分麻痺で転がっている。
馬や馬車、馬具、武具、賞金も含めて冒険者で頭割りになるらしい。
ホクホクだな、皆ニコニコと嬉しそう。
冒険者も馬移動になったので少し早くなった。
盗賊のリーダーを視たとき、冒険者に金を渡して隊商のスケジュールと積荷を聞いていた。違う領地にある盗賊の隠れ家もマークした。行くことがあったら潰してやる。
お昼の休憩の時秘密を暴露した。
あの人がさっき捕まえた盗賊と喋ってた。と冒険者のリーダーに言いつけておいた。既に恩寵は盗ってある。
リーダーが聞いてもシラを切ってるので言ってやった。
「後で逃がすって言ってたよねぇ?」大嘘である。
「そんなこと言ってねぇ!小僧、何抜かす」
「おじちゃん盗賊に何か教えたよね?」
「よくぞ見破った!出立日と積荷を教えた!」
大見得を切った!芝居がかった奴だった。
ハッ!とした冒険者は
「違う違う!冗談だ!」と打ち消すが
「おじちゃん盗賊団と打合せしてた?」上目遣いで聞く。
「おぅ!俺は盗賊団と打合せしてたぜ!」
子供の冗談に付き合ってる感はあるが・・・
仲間はキツネ目で「アウト!」と
昼休憩が終わるとおじちゃんは盗賊と転がってた。
子供のあどけない可愛さに口が滑ったのであろう。
魅力84の可愛さにコロリだ。
次回 85話 僕とお姉ちゃん
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この物語を読みに来てくれてありがとうございます。
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ポチをしてくれる事。それはとても励みになるのです。
一期一会に感謝をこめて。よろしくお願い致します。
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