第79話 子供冒険者
ロスレーンの守備隊に挨拶して門を出る。
ずっと彼方まで道が続いてる、街の周りの穀倉地帯だ。刈り入れは終わってるけど牧歌的なのどかな道だ。
畑を作ってるのは多分点在してる村の人達だな。アレがお父様の言っていた難民、移民の村かなぁ。まだ近いから普通の村かなぁ。あっちの世界と大違いで空気が澄んで遠くまで見渡せる。空気が美味く感じる。
本当に外に出るまで長かったようで短かった。あっという間に過ぎた7か月。やっと普通に外へ出られる様になった。目覚めた時点で普通じゃ無かったしな。ノストリーヌに揺られて異世界に来た実感を噛み締める。
噛み締めながらもすれ違う人に恩寵を付与していく。もう冬だから、来年から沢山収穫できるといいね。街の近くにある村から野菜を運ぶ農民たちに思う。
思ってたら、師匠に聞かれた。
「アル、荷物が多いな?」
「はい、冒険者の旅支度をスコッツ武具店で揃えました」
「アルはそういうのが好きか?」
「そういうのが好きとは?」
「冒険者とか傭兵の世界だな」
「これってちゃんと冒険者になれてます?」
「立派な冒険者だな。誰が見ても冒険者だ。子供冒険者(笑)」
「これ!茶化すでない(笑)」
「子供は余計です」
「丁度良いから言っておく、儂が子供を連れておると弟子を取ったと騒ぎとなる、アルはリード卿の弟子として。リード卿は儂の護衛として同行という形にしよう」
「なるほど、賢者の弟子では問題がありますな」
「わかりました、その様にします」
「そうじゃの。魔法もキャンディルでは使わぬように」
「魔法の恩寵は消しておきます」
「「え!?」」
「休憩の時にでもお見せしますね」
「うむ、今見たいのう・・・ま、良いか」
「アル、冒険者の恰好はいいが、その模擬剣はなんとかならんのか?それは平民の子供冒険者だぞ(笑)」
「これ!言ってやるでない(笑) 可愛いではないか」
「お前、領主の孫だぞ。それで出す子爵もすごい(笑)」
「子爵も可愛くて言えなかったのじゃ」
「師匠も導師も酷い!真剣に用意したのに」
「分かるよ、真剣な子供冒険者なのは(笑)」
「子供は真剣に真似るでの(笑)」
「そうやって思わせるのが、この策なのです」
「策と来たか!これは恐れ入ったわ」
「休憩の時、腰を抜かしても知りませんからね!」
「わかった、腰を抜かす準備をしておくよ(笑)」
「もういいです」ぷく。
子爵邸ではアル様アル様と言われメイドが付き従う。守備隊も騎士団もアル様と大人扱いで喋って貰えてたので自分は立派な大人のつもりだった。
中身は20歳の大人である。成人式も終わって一人暮らしのアパートで1年半も暮らしてた大人だった。子供じゃ無いのだ。内心では毒も吐くし、批判もするし、お前ら何やってんだと叱ろうとする。子供なのに(笑)
本人は体が小さいだけだと思っている。あちらでは小学4年生の歳には放任主義の極致で自分で舵を取っていた男が貴族の子になればしょうがない。予備校呼ばれて飯付3万円で何処でも行くと喜ぶ男がいきなりスイートルーム60連泊と言われる。頭は柔軟でもさすがに付いて行けない。
まだ自分を可愛い盛りの子供と認識していない。中身と外見が
二時間も進むともう穀倉地帯を抜け野菜畑も多くなった。それでもポツポツと複数の農家がある。林や森に寄り添うように立っている。程無く進むと斜めに横切る川に出た。
「少々早いが馬に水をやるかの」
「それでは、昼休憩にしますか」
「お尻がもう痛くなってます」
「それだけは尻の皮が剥けないと治らんの」
「ほんとですか?お尻の皮が・・・」マジかよ!
「尻の皮が3回剝けると一人前の傭兵だぞ、頑張って剥けよ」
「私はヒールで癒します。痛いんです」
「大人冒険者になれないぞ(笑)」
「また!もう!」
河原まで馬でゆっくり下りて行く。
「アル、馬に塩を出しといてくれ」
馬を下りながら師匠が言う。
「はい、わかりました」
背のバックパックからお昼と渡されたサンドイッチと塩を出して馬達に舐めさせる、川まで連れて行き水を飲ませる。後は勝手にその辺の草を食べてる。あっちの世界で馬なんて見て無いから初めてでガン見だよ(笑)
サンドイッチ食べてても馬が逃げないかと気になる。答えは逃げない!マジ逃げない。普通に近くに居る。馬も人の近くが安心なんだよ。怖がりだから後ろから近ずくと驚いて蹴られるぐらいだからね。
「アルよ、魔法の恩寵を消すって言ったの。出来るのか?」
「考えるだけで出来ますよ、出しますね」
「ほうほう!そんな職業見た事無いが面白いの」
「間違いなく弟子なので。変ですか?」
「儂も見た事無いが、ステータスに嘘は無いから大丈夫じゃろ」
アルベルト・ロスレーン 10歳 男
ロスレーン子爵家三男 健康
職業 リード・オーバン男爵の弟子
体力:58 魔力:ー 力:36 器用:336 生命:45 敏捷:31 知力:640 精神:664 魅力:83 幸運:87
スキル
身体強化Lv1 格闘術Lv1
師匠も寄って来て驚く。
「アル、身体強化Lv1って!自由に変えられるのか?」
「自由です。これでいいですかね?大丈夫ですよね」
「ベント卿が言うんだ大丈夫さ」
「消しても魔法は使えるのじゃな?」
「はい、問題ありません」
「ふーむ・・・」
「話は変わるが、孤児院のシスターやりおったな」
「何の事でした?」
「
「あ!アル、演習場もやっただろ!(笑)」
「え?何でした?」
「お前、可哀想に。騎士団の連中見てただろ!」
「騎士団もやりおったのか(笑)」
「知りませんよ!努力の
「何が努力の賜物じゃ!」
目からレーザーは何魔法だ。
「ええと・・・すみません。分かりました?」
「「お前しかおらんじゃろ(だろ)!」」
「まさか騎士団があそこまでなるとは・・・」
「なるわ!俺だってオード戦役からもう6年で身体強化1しか上がらないんだぞ。帰ったら俺が騎士団に付け狙われるぞ!位階が上がった奴らマジ模擬戦に死ぬ気で来るんだぞ(笑)」
マジの使い方が合ってる。いつの間に!
「まぁ、うちの領が強くなると王国も強くなるんで・・・回復魔法士が三人増えたら領も国も強くなりますし、孤児に恩寵を与えたら領が富んで、しいては国が富みます」
「「・・・」」
「?」
「ふむ、そこまで考えておるか。良い良い」
「攻撃魔法は伝えるで無いぞ」
「そんな怖いの教えませんよ。剣術付けたのが間違ったら剥奪してきますから大丈夫です」
「剥奪とな?」
「はい、こんな感じに」師匠の魔爪根と導師の転移を奪った。
「ステータス見てください」
「え!」
「なくなっとるぞ!儂の転移がー!」
「俺の!俺の魔爪根がー!」
「はい、お返しします。大事にお使い下さいね」
「「コクコク」」
二人の
「そうじゃ!アル。来るとき言うとった策とは何じゃ?」
「あ!そうだな、何かあるのか?」
「ふっふっふ!とうとう聞いてしまいましたね」
「何なんだ(笑)」
「見て本当に大丈夫なんですか?準備できてますか(笑)」
「おぅ、大丈夫じゃわ」
「大丈夫だ」
「それでは行きますよ。それ!」
普通に出て来る釘バット。
「なんじゃ!どうやって出した!
「アル、それは何だ?拷問の道具か?」
拷問の道具って・・・
「これは。こう、よっと!」
模擬剣と寸部違わぬ形になった。
「「なに?」」
「行きますよー!それー!」ぽーい。
川に投げ捨てた。
「 」
二人は唖然と飛んでった模擬剣の方を見てる。
「どこ見てるんですか?」
もう俺の手には模擬剣がある。
「なんじゃそれは!」
「今、投げ捨てたじゃねーか!」
「それっと!」ぽーい。草むらに投げた。
「どこ見てるんです?」もう持ってる(笑)
「・・・」
「それはもしや、神器なのか?」
「あ!そうかもです。神様が作ってくれました」
「作ってくれま・・・マジか!」マジを使いこなす男爵。
本気で練習してやがったな38歳のくせに。鍛錬の鬼だな。
「なんと・・・神器を見るとは」
「 」師匠が剣を凝視してる。
「こんなのはどうです?」日本刀にしてみた。
「恐ろしい剣だな、自由自在か?」
「神の世界と同じに出来てますので自由自在の筈です」
「だから、よっと!」ぽーい。日本刀を投げ捨てる。
「こんな感じで現れます」手に今度はバットが現れる。
「コレ、概念ですから
「人前は駄目ですから、
「いや、出しても良いんじゃよ。その
「俺が見てもそれは怖いと思う。出さない方がいいな」
「え?私1年以上振ってたんですが・・・」
「神の所でか?」
「え?あ、あぁそうです」嘘だった。
「神の・・・子供拷問官」
師匠がブルッ!っと身震いした。
俺はテンションがダダ下がりになった。
初めて呼ばれ、ぽーいと捨てられる神器も可哀そうだった。過剰な恩寵も神器もアルには使う気のない道具だ。7か月が過ぎて初めて呼び出す様な奴なのだ。どうでも良い事は放置。中身は変わってない。
後で聞くと傭兵は金で集められ、紛争する土地に
休憩が終わり馬達を集め、癒すヒールを掛けてやると大喜びする。ぶるるん、ひひん!と喜んでマジ可愛すぎる。
神器よりノストリーヌだった。雫はジュウシマツを飼っていたが明は動物飼った事無かった。
次回 80話 兄と妹のごちそう
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