第80話  兄と妹のごちそう


すれ違っていく人達を視て、スキルボードが無い人だけ仕事に合った恩寵を付けていく。うちの領も国も生きてる人が最低限食えないと人生で磨く事も出来ない。戦争の元が食糧や食料生産地で皆が困る世界なら食べる物だけは何とかしてやりたい。


すれ違う人達は、大体視界に入ってから10分~20分で行き合う。その間に恩寵付与は用意する。付与する恩寵を探すのが大変と思ったら、思うだけで出る事に気がついた。


通りがかる人は商人、護衛の冒険者、農民がほとんど、用事で遠方に行く旅人も多い。冒険者は採取依頼を受けるなら、ボードの有る無し関係なく採取Lv1を付けておく。冒険者の武力を上げるのは怖くてしない。



俺が秩序側なら俺に対応する混沌側もいると思うんだよ。俺の武力が上がると、混沌側の武力も上がる理論だ。


秩序側の冒険者の武力を上げると、混沌側の冒険者の武力も上がりそうで怖い。そう考えると秩序勢の武力を平均値で伸ばすと混沌勢の武力平均値も上がりそうで怖い。気にし過ぎかな?(笑)


注意するのに損は無いから、そんな三段論法的に思ってる。とりあえずは貧しい人達を食える様にして、盗賊や悪人に流れるのを防げば混沌勢力が少なくなるかな?と思う。


俺の武力を上げずに穏やかに生活する秩序衆を増やして平均値で混沌衆に勝つ! イヤ、そんな平均値で勝っても受験みたいにとか無いけどさ、気合いだよ。気合い。(笑)



俺が秩序なら敵は混沌。秩序と混沌は表裏一体。

秩序から混沌。混沌から秩序へ巡る事を流転。

天と地の神が言っていた。

俺がどっちになっても良いと言った。


流転は俺だけで十分だ!みんなが流転しない様に頑張る。


混沌衆の呼び方いいな。

見つけ次第に秩序衆にしてやる。


なんて思っていたら!


第一混沌衆発見!



見つけちゃったよ、混沌衆。わーい!

(喜んでいるから悪人に見えるのも玉にきず


向こうから荷馬車で来る冒険者二人。


視たらやってるやってる、こいつら割りの良い悪事を選んでやってる。架空投資が下火になったらオレオレに移る奴らと一緒だ。冒険者PTに潜って悪事。村に押し入って悪事、盗賊と組んで悪事、儲け話で人攫い。真面目に働くのを全面拒否してる。



まぁいいや。俺に視られたら最後だ。



「ぬしら魂の色がすすけてるぜ!貧乏旗本三男坊、天下の風来坊 徳田新助。俺がたたっ斬って成敗してやる!」と徳新になりきっている。


※(ぬしら~煤けてるぜ!は魂視てアドリブ入れてます)


やったるぜ!俺は!絶対!こいつらを!


武者震いでちょっと変。


スキル強奪は、その人にそのスキルが有る事を知らないといけない。触れながら発動とか条件が有る。俺は眼で視るから関係ない。しかも触らずに視界に入れて発動で盗る。


それは燦然さんぜんと光り輝く恩寵強奪スキルLv10 MAX!


めんどくさい時は全部いっぺんに盗れる上に範囲強奪も出来る。鬼だ、鬼の一品だ。マキシマムMAXIMUM。それは創世の神イチオシ、お勧めの逸品だ。(そんなこと言って無い)



ちゃーっちゃーちゃーちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃー!


戦闘BGMが鳴り響く、頭の中、高らかに、今。



  萌えろ!俺の異世界コスモ



ゴロツキの悪に使うスキル。全部盗ったったー!


盗るだけじゃ山賊みたいで悪いので農業Lv1付けてステータス封印した。以後農業以外スキルつかねぇよ。以後は国造りに励め!余の情けじゃ!嫌なら神に祈って解いて貰え。


前置き長いけど、視えてから10分も20分もあんだもん。行き合う時には俺の仕事はオワてるんよ。


すでにお前たちは死んでいる!


師匠がいるからだ。


師匠に言いつけてやる!(子供らしい素敵なワードだ)


「前から来る荷馬車を止めて下さい、袋に子供が二人さらわれてます」


言うと師匠も導師も驚いて聞き返してくる。


「なんじゃと?本当か!」

「アル、そんなの分かるのか?」

「子供が袋にいるのを知りました」


「知りましたってお前・・・分かった」

わしは援護に控えておく」


「二人いますが、何も恩寵は持ってないようです」


「よし!分かった!」


すれ違いざまに素手だよ。素手でいきなり馬から馬車に飛び掛かって師匠がぶっ飛ばして終わる。(無言でいきなり飛び掛かるって、少しは問答とか無いのかよ!俺を信じすぎだろ!それ危ないぞ)


導師も呆れている(笑)


正義は勝つ! 仮に正義じゃ無くても師匠なら勝つ!


袋から出された子は8歳と7歳の男の子と女の子の兄妹だった。漏らしたままで滅茶苦茶おびえてる。クリーンを掛けてやる。話せないので視ると次の街ロストとその次の街ミリアの間にある難民村落の子だった。


ロスレーン領では難民対策で街の外の土地を開拓して作物を作り税金を払える様になるとその土地を与えて領民にするという政策が有る。未来の領民なので衣食住の生きる分は最低限保証している。保証しないとうちの領も農地が増えない(笑)うちの領だけでは無いらしいけど、お父様の受け売りなのでそんな感じだ。


話が逸れたけど、荷馬車は師匠が御者をしている。スピードがガクッと落ちた。人攫ひとさらいは麻痺を掛けて縛り、荷台に子供達と放置だ。大も小も漏らせばよい。今日の街のロストで引き渡す前にクリーンだ。


荷馬車の中はろくなものが無いが少し野菜が有った。これも村から取って来てる。人攫いの向かう街の引き渡す奴もマークした。


反対方向だから帰って来てからだ。そんな事ばっかやってらんない。天下の風来坊じゃ無いんだから、暇じゃねえんだよ。視界に入って来るモノだけで十分だ。好意だからな。


(Time、Place、Occasionで都合良く忘れる学ある元帝大生)


ロストの街に近くになって乗馬も上手くなった。


余裕が出て脇見運転しても自動運転で前に付いてくから楽だ。多分寝てても他の馬に付いてくぞ。


ロストでは導師と別行動だって。子供達と泊って、どうせ通り道と明日送って行くらしい。本来は守備隊が預かって、村の近くに行く商人や商隊に連れってって貰うらしい。日本の警察じゃあるまいし、そうだよな。


師匠と導師が開拓村の話をしているが、多分街道の近くに行けば子供たちが勝手に分かるだろうと言っている。俺は何も分からないので、お任せの自動運転だ。


しかしまずった。難民て言うと差別とか考えちゃって開拓村って言っちゃったんだよ。税を払って無い事を知られると扱いが分からないからさ、ホントそういうのは冷たいのよ。しょうがないな。明日上手く難民村に誘導しよう。


開拓村の事を視たら、領主や代官の命を受けて開拓団の団長と共に移住して5年を目標に村を作って自給自足と税を治める様にするシステムみたいだ。5年間無税の上に援助もして貰うから、沢山収穫したいと頑張るのが人情だ。そんな開拓村を訪ねるらしい。


難民村とは違い、元々の領民だから手厚く開拓させるらしい。難民も元々何処かの領主の民でその領から国に税が出てるんだから国が何とかしないとダメだよな。ぷく。そういうシステムを作らないとみんな困るよな。


俺だってたまたま子爵家の三男だから余裕コイてるけど、俺だって紛争や戦争で何も無くなっちゃったら、マジでそういうのに助けて貰いたいもんな。食べる物も無いじゃ話になんない。


すれ違う人を視ながら付与して考え事。もう自動化される程慣れてきた。自動運転中の自動付与、産業革命だ(笑)すれ違う人が近くで、!と気が付いてビックリするのが面白い。俺を見てあからさまに微笑むのは面白くない。子供拷・・子供冒険者をなめんな。


かがり火で浮かぶロストの外壁が見えてきた。

休憩挟んで20時。辺りは真っ暗だけどライトの魔法で関係ない。馬の疲れも癒しのヒールで関係ない。


門前に沢山の人が野営している。ここで野営と思ったら、門まで行くと貴族は普通に開けてくれるの!そんな話聞いてねぇよ。言ったら師匠に何の為の守備隊だと笑われたのでモンスターに備えるためと返したら、何処の話だと大笑おおわらわれた。


確かに徒党を組んで門を破りに襲ってくるようなモンスターの居る場所に街は作らないだろうけどさ・・・スタンピードとか来たら・・・分かってるよ。もういいよ。


夜明けの開門を待ってる人達視ながらボード無ければ付与してやってる。スタンピード来たらこの人達死ぬな。と思いながら。ってそれぐらい入れてやれよ!と変に混乱する(笑)



導師は多分伯爵家のカード。師匠は男爵家だろうな。傭兵ギルドカードじゃ通れないわな。俺は子爵家のカード。連れている人攫いを事情を話して引き取ってもらう。うは、人攫いって領民なら15年の鉱山送り(この領なら銅山か岩塩採掘)だってよ。難民だと軽いって・・・笑うわ。どんなけ酷いの難民。


やっぱ税を払うかって大きいな。刑を聞いたので慌てて人攫いのスキルを採掘に交換しておいた。国の為になれ。刑期明けても鉱夫だけどな。ステータス封印、これから鉱夫で真面目にがんばれと応援してバイバイ。



守備隊に宿を聞く。子供の件はOK、貴族が言えば守備隊も何も言えないよな。師匠と俺は導師の護衛として魔法ランプ煌びやかなホテル風の4階建ての宿に送って行く。その後子供達と宿に行ってその日の汚れを皆落とす。クリーン!子供たちがビックリ。


さっきの解って無かったのかよ(笑)(声出して無かったしな)ぴょんぴょん跳ばせて叩いて粉を落とさせる。そして癒すヒールで心地よさそう。喉が渇いたと井戸水をたらふく飲む。


一階の酒場で食事を頼んでも、誰も目を向けない。師匠の食べ方が歴戦の傭兵そのまま!大股ではすに足を開くからテーブルから膝がはみ出しまくる。隣に人が絶対座れない、足に当たると因縁付けられると思って誰も近くを通らない。


酒飲んで騒いでる喧噪などなんのその、親父ー!酒!である。誰も男爵と思うまい。傭兵過ぎてマジ勘弁してくれ。


そんな俺も子供冒険者だが・・・考えない様にして兄と妹の世話を焼いた。兄は畑の手伝い農業Lv1、妹はお母さんのお手伝いみたいだから将来も考えて農業Lv1と家事Lv1を付けておいた。


これの難しいのがステータスボード持ってない人に教える訳にいかない事。普段やってる事から恩寵(スキル)が伸びるように選んであげないと恩寵の持ち腐れになっちゃうんだよ。


「こぼさないように全部食べろよ」


お兄ちゃん(ロセ)は遠慮がちに嬉しそうに食べる。妹(ミニス)は目をキラキラさせてごった煮をスプーンで掬っている。

ごった煮とパンと水。これで御馳走なのだ。銅貨3枚(300円)のごちそうなのだ。


「大人一人分だぞ。ゆっくり食えよ」


あっちの世界の俺は・・・見ているだけで泣けて来る。


貧しくてもお父さんとお母さんの方が良いに決まってるよな。良かったな。運が良かったな。もうさらわれんなよ。気を付けろよ。もう覚えたからな、次も絶対助けてやるからな。


「これ美味いよな。二人共残さず食えよ」


美味いから大丈夫だ。俺が食べて美味いんだ、大丈夫だ!


さらいに視た。(人助けだ、売られた方が幸せだ)



「美味いな、美味いな」と声に出して打ち消した。




次回 81話  受け継ぐ永久機関

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                思預しよ

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