第75話  スキル付与




リード師匠が来て早3か月が経った。

アルの目覚めから7か月が過ぎていた。


演習場へは朝の9時に師匠が一人で行く。


視終えたのだ。



俺は午前中に魔法の鍛錬。週に一度はアニーと街に出る。


午後、13時半より17時半まで師匠との組手である。拳と拳の攻撃と受け。俺が師匠の拳を視て受ける、角度、高さ、速さを瞬時に見て今まで体に叩き込んで来た受けと流しの型でさばいていく。


捌く際には接触部位への身体強化を用いた魔力の集中が求められる。と言っても、この受けはここに。この流しはそこに。受けと流しの集中部位はセットで覚えている。


毎日やればやる程に捌きが早くなって目も慣れる。そう、視てなくても大体読める様になって来ているのだ。眼で視ると、その拳の攻撃から何種の攻撃変化まで見えるから捌け過ぎて面白くない。


決まった公式を決まった問題に当てめる様なのだ。


世の中の人は、眼なんて使わずに追う事をアルは充分に解っている。眼など使わず野球を追ったのだから。眼は補助で十分だった。技を解析して軌道を何度もモーションするには眼は非常に便利だった。覚えた以上、眼など無しで対処を学ぶ。あくまで眼は非常時のブーストだ。


そして魔力眼。組手状態で師匠の魔力を追うと解るのだ。師匠は魔力の理論知らなくても使(笑)


脳筋が実践で体得する凄まじさを怖く感じる、目の前の人がそうなのだ。師匠に聞いても気が付いてない。してたりするのだ。恐るべき脳筋だよ!本当に恐ろしい。


何も知らなくても追えば手に入れだった。


普通じゃない事も分かるが、脳筋の例として貴重だ(笑)




導師との魔法の訓練も夕食後に継続している。


午前中と晩の時間は導師を真似て魔力を自在に操る訓練。


門を少しずつ開けて行くのだ。俺は魔力の動きや決まった編み方でしか発動しない魔法を一発で見抜く。お陰で細やかな矯正や注意を授けることが出来ると導師に喜ばれている。


普通の弟子は発動するのが精いっぱいだったり魔力制御が未熟で教えられないらしい。(魔力眼と真実の眼の併用のお陰です)


イメージは逆に俺が導師に教えることがある。

炎の温度だ、午前中にファイアボールの魔力でどれ程熱量を上げられるのか検証したのだ。


導師が俺のファイアボールが見たいと言うので最大の熱量をイメージしてみたのだ。そのもの太陽をイメージして圧縮してみたのだ。真っ白な輝きの目もくらむようなファイアボールが出来た。その代わり点の様なファイアボールだ。石に針の穴を一直線に開ける程の収束された熱量。どこまで地面に潜っていったか分からない(笑)


魔力が発動して現象となるならと、回転をイメージしてみたら変化球が出せる。導師のあごが外れる程驚かした。フォーク、カーブ、シュート、高速スライダー。キャッチャーとしての視点でテレビのプロが投げる芸術的軌道を見てるのだ。物理的な回転じゃ無くてイメージだから自由自在。



射程距離の話で分かった事だ、石を投げると重力で放物線を描く。どうも人間はそういう物を見てイメージするらしい。ある一定距離を過ぎるとお辞儀するとか、狙いが不安定となるとか聞いたので導師に確かめたのだ。


物理現象は魔力にも?と疑問に思ったら直進する。イメージで直進するならと回転がこうだからカーブするとイメージで曲がる。


そのから操れるらしい。

指からミサイルとかレーザー出てるのを知ってると同じだ。


ちなみに直進させてもその熱量を発現した魔力が切れると霧散する。


アニーとトレーニングした時のボール。石を包んで布で巻いたボールで実際に変化球を見せた後、石板に原理を描いて回転と空気の関係をレクチャーすると導師も自由自在に変化球を発動できるようになったのだ。凄い喜び様だった!!と十回は言った。



その日から三日間。導師は何かにつけてアルよ、アルよと研究の内容を相談した。かなりの考察の発展と発展させる選択肢の多様性に気が付き、若き頃の心が弾む魔法の研究を思い出していた。


余りに俺に構うのでお爺様が妬いた程だった。




そして、十月初旬。導師は決断した。



元々は不思議な手紙の秘密を知りたいと来た導師。長逗留など考えていなかった。マジックバッグに入れて来た研究素材や資料に目途が付いてしまい。キャンディル領にある自宅から新たに資料や研究材料をロスレーンに持って来たいと言い出したのだ。


こちらに移って研究しながらアルを教えたいと思ったのだ。キャンディルに雪が降る前に着きたい。往復二か月の旅である。



お爺様は当然喜んだ。賢者がキャンディル伯爵領より、研究材料を持ってロスレーンに移ると言うのだ。


費用は子爵家で持つと言ったが、ベント導師は断った。アルと一緒の方が研究がはかどるのである。それは飽くなき知識欲の行動である。己の知識欲にこの領地の税を使えないと言う。



話はトントン拍子に進み、日程の話し合いが進んだ。(ロスレーンの交易路は騎士団が護衛するなど)



アルも焦った、二か月も魔法の習得や助言が無くなる。少しの期間でこれだけの事を毎日教わる事が出来たのだ。アルは悩んだ末に決断した。


導師に、師匠と一緒にキャンディル領まで付いて行って良いかと夕食時にお爺様とお父様の前で尋ねたのである。


導師は「それも良いの、鍛錬を見てやれぬ二か月は大きいの」と快諾してくれた。


リードもそろそろ実践で襲ってくる魔物を殺させようと思っていたので事前に快諾していた。


お爺様もお父様も困惑、お母様は大反対、お婆様は沈黙、アリアは二か月だよね?と肯定。


導師と師匠が一緒の旅で、騎士団の護衛は無くなった。


俺は夕食後、お爺様に呼ばれて執務室に入る。


お父様が先に居た。


「来たか。アルよ聞きなさい」


「本来、嫡子(家を継ぐはずの長男)には継承一位の魔術印を施した紋章指輪が与えられる、アランのしておる指輪を見よ」


お父様が見やすい様に左手を見せてくれる。


「アル、これは先日来た紋章指輪じゃ」

お父様と同じような紋章指輪である。


「演習場で継承順位破棄の時に頼んだ物じゃ」


「継承一位の魔術紋は刻んでおらぬ、それはアランの代になった時にグレンツ(18歳:アルがお兄様と呼ぶ長男)が持つ物だからだ。わかるの?」


「はい、当然だと思います」


「この指輪に刻んであるのはのう。アルベルト・ロスレーンの事はロスレーン子爵家が責任を持つという魔術印じゃ」


「儂・ルシアナ・アラン・エレーヌでお主を支えると宣言した。お主がいずれ人の世を学ぶときが来ると思い用意した物じゃ」


「まだ四、五年先とは思っておったが、旅立つと言うなら何が有るか分からぬ。早すぎる気はするが持たせておく。付けて見なさい」


「付けました」左手薬指に付けるが緩い。

「発光するまで、魔力を込めよ」


「はい」魔力が満たされるように込めて行くと一瞬光って指にジャストフィット。


「それで良いの、マジックバッグと同じに本人の魔力登録じゃ、自分の目に指輪をかざして魔力を込めて見なさい」


目に文言が出る。


「そうじゃ、確認できたの?継承順位は出ぬが、その様にアルベルト・ロスレーンについてコルアーノ王国のロスレーン家が保証するという証が出る」


「魔力を込めて相手の目に見える様にかざせば良い、カードとは違い確実な身分証明じゃ、大事な時に相手に見せるが良い」


「ありがとうございます」


「ここまで早いとは思いもしなかったが何かあれば身の証を立て、必ずこの領地に帰って来い。少なくてもこの国であればどこの貴族でも保護してくれるであろう。王都コルアノーブルであれば貴族院にロスレーン家の執政官がおる。何かあれば頼れ」


俺はお爺様とお父様を交互に見た。


「気を付けて行くのじゃ」

「はい!ありがとうございます」


夜に導師と師匠に部屋に来てもらった。


導師と師匠に秘密を打ち明けた。


取得可能スキルを見せた。

そして、目の前でスキルを取得して見せた。


インベントリLv1  1㎥ SP5

インベントリLv2 10㎥ SP10

インベントリLv3 100㎥ SP15

インベントリLv4 1000㎥ SP20

インベントリLv5 2000㎥ SP25

転移    Lv1 100m SP5

転移    Lv2 1000m SP10


インベントリ:触れた物を異次元収納に取り込む。

転移:視界の中、知っている場所に瞬間移動する。


恩寵付与Lv1 では渡せなかった。SP5

恩寵付与Lv2 でも渡せなかった。SP10

恩寵付与Lv3 でも渡せなかった。SP15

恩寵付与Lv4 でも渡せなかった。SP20

恩寵付与Lv5 だと渡せた    SP25


導師にインベントリLv5と転移Lv2付与した。


「このスキルで多分家ごと持って来られます。お好きな研究が出来るようにこのスキルを差し上げます。私が持っていても楽に溺れてしまいますが導師ならばこのような物に溺れずに有効に使えるでしょう。


私を導くだけでなく、この国を導く導師です。易々やすやすと失うわけには参りません。絶対に後れを取らぬよう命だけはお守りください」


※アルは導師の家をあっちの一戸建てぐらいにしか思ってない。


師匠にも付与した。


アルが選びに選んだ師匠用の必殺技。


縮歩Lv3 1m×1歩>5歩>10歩瞬間移動 SP30

    (1m単位10歩まで複数回発動)

縮地Lv3 1m>5m>10m 瞬間移動   SP30

    (1.5.10mまでの発動)

魔爪根Lv3 10cm>20cm>30cm     SP30

      (爪から伸びる魔力の刃)

インベントリLv2   10㎥        SP15



「師匠も失われてはいけない方です。師匠の様な達人が持ってこのスキルは生きます。私はこの様なスキルを持つと力に溺れます。師匠ならばスキルに溺れる事も無いでしょう。導師と参る二か月間、何が有るとも分かりません。是非ご自分も周りもこの国もお守り下さい。


これは先程見た通り、神からの贈り物です。私からの贈り物ではありません」



リード師匠もベント導師も自身のステータスボードに付いた凄まじいスキルを目の当たりにして動けなかった。


リード師匠が聞こうとした雰囲気をベント導師が止めた。


「見たじゃろう、アルのステータスボードを。こ奴はまさしく神の御子じゃ、聞いてはならぬ。こ奴が話す言葉が神の言葉じゃ。あるがままに受け止めるのじゃ」


「さて、リード卿。ここまで弟子に言われてしもうたら、簡単に死ねなくなったの(笑)」


「アルよ、このインベントリで家が持てると申したの?」


「家の大きさにもよりますが」


「よい、あちらの家は使用人や護衛もおるでの。キャンディルでは研究の資料だけ持って来よう。出立する前に家をロスレーン卿へ頼んで行けば良い。ここに出来上がる新しい丈夫な家を持ち歩こうではないか。わはは」


「それも良いですね。以後は旅の間は宿もいりません」


「おぉ!それはいいの。旅の間も研究が出来るわ(笑)」


「二か月の旅路で、新しい恩寵の技を磨きましょう」


3人は楽し気にキャンディルへの旅に思いを馳せた。





次回 76話  置き土産

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               思預しよ


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