第61話 ラブレター
三保 恵様
突然のお便りすみません。
この手紙は、遊園地から帰った夜に書いています。
最後に乗った観覧車で言えなかった事。黙って待っていてくれた三保さんに伝えておきます。
短い間でしたが、ありがとうございました。
あなたのお陰で、受験に追われる日々が心踊る日々に変化しました。実は痴漢に遭われたあなたに会って運命を感じました。クラス決めの次の週。同じ教室の後ろにいたなんて(笑)
弁当を作ってくれた予備校の屋上。
プールで遊んだ楽しい1日。
花火大会の夜。
模試の打ち上げの遊園地。
二次試験前の勉強室の追い込み。
皆で最後のワックは忘れません。
そして今日、お別れの日曜日。
観覧車が地上に到着前、あなたは目を
あなたの息を感じた時、実は安心したのです。
あなたが一歩踏み出した事に安堵しました。
だから書いておきます。
あなたに会って毎日が楽しかった。
あなたに会う日ドキドキしました。
あなたと一緒で幸せを感じました。
予備校で出会えた事にとても感謝しています。
とりとめの無い事ばかりですみません。
実は神さまに会いました。
自分の魂を磨けと言われました。
魂を磨く事が真理への道だと言われました。
その神は審判の神テミス様です。
だから裁判所にあるテミス様を目指していたのです。
だから検事を目指していたのです。
神さまに会った。変ですよね。笑えますよね。
信じるか信じないかは自由です。
この手紙を読んでる事が証明になるでしょう。
ラノベで有りがちでしょ?
いつ召されるかわかりません。
会った時に召され無かっただけ儲け物です。
たぶん、突然神谷明の器は壊れます。
魂の入れ物が壊れます。魂の行き先は分かりますよね?
それは魂を磨き終えたら?何かの切っ掛けがあれば?
そのときは多分、テミス様の所に召されます。
だから言えなかった事を書いておきます。
望む言葉が言いたかった。
でも言えなかった。
静かに乗った一回転。
いつ消えてしまうか分からない俺が、これから杜の都で学ぶ三保さんを精神的に突き落とすような事になったらと思うと怖くて言えなかった。
いなくなった俺を知って、三保さんは自分を責めるでしょう。静かな観覧車で何も言わなかった事を後悔すると思いました。
責める必要はありません。あれが正解だったのです。
遅かれ早かれ神さまに召される事が薄々分かっていました。
だから正直に言います。
降りた後。手を繋がなかった理由を知って欲しかった。
もし検事になるまで召され無かった場合には会いに行こうと思っていました。会って彼氏がいるのか聞こうと思いました。
これを書いている今も、それまでは言うまいと思っています。出会った縁が奇跡と感じるなら、結ばれる縁もまた奇跡だと思えるからです。縁が引き寄せ奇跡は起こると信じます。
この手紙を読んでいるという事はそういう事です。
だから言っておきます。
あなたに伝えておきます。
あの観覧車のあなたを忘れません。
あの綺麗なあなたを忘れません。
あなたが好きでした。
向き合わないと逃げられませんよ。
向き合って乗り越え、より幸せにお過ごしください。
悲しむ必要はありません。テミス様の所で元気ですからね。神様は心が震えるほども輝く存在です。異世界!そういうことです。
召されるまで猶予を下さっている神様に感謝しています。言えなかった事を伝える時間が有る事を感謝しています。
好きだった人が、健やかに幸せになる事を祈っています。
お幸せに!
あなたに出会えた全ての奇跡に感謝を込めて。
神谷明 3月 9日 観覧車の夜に。
第一章 「完」
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第一章、
長らく読んで頂きありがとうございました。
皆さま無事にガンダーラへ着けたでしょうか?
最後まで我慢強く読まれた皆様、本当にご苦労様でした。それぞれの皆様に思うところが少しでも有れば幸いです。
このあとがきを読んで頂き感謝しております。
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