第二章 異世界見聞編

第62話  人の世界



転生したと思ったらまた白い世界だった。


明よ、よく来たの。

ここが人を司る者の世界じゃ。

今までの創世の神々の世界とは違うがここも概念の世界じゃ。


不意に心の中に吹き出しもカギカッコもない思念が流れ込んでくる。やっぱりここも精神世界?


創世の神々は司るテリトリーが大分大きくてのう。人というものを余り分かっておらぬ。しかしな、お主の辿たどって来た道を見て喜んでおった。人の神としてその様な者が創世の神々に注目され嬉しかった。


話を大人しく聞いていたら、だいぶ神様が人臭くて好きになった。人の神様はこうでなくちゃ!


嬉しいことを考えてくれるのぅ。


あ!全部分かっちゃうのか。テンプレだよ(笑)


そうじゃの、テンプレじゃの(笑)


まずはわしたちの世界に来てもらったのは訳がある。

お主の転生する世界の話じゃ。

希望するイメージに沿った世界を選んでおいた。

しかし何分にも初めてのこちらの世界じゃ。


案内として御使みつかいを付けておく。


現世の司る神達も紹介しておこう。


わしの名前は人族を司るネロ。 

人族の間では創造主と呼ばれておるネロじゃ。


創造主  ネロ 人の世界を司る。

豊穣の神 デフローネ 豊穣、狩猟、繁栄を司る。

戦いの神 ネフロー  戦い、武術、生死を司る。

審判の神 ウルシュ 審判、道徳、善悪を司る。

慈愛の神 アローシェ 慈愛、 調和、美を司る。

学芸の神 ユグ 学芸、知恵、技巧を司る。


お主の転生する世界の人神ひとがみはこの6神が司っておる。わしは他の世界(星)の人族も司っているのでな、創造主は儂で変わらないが他の世界では細事を司る神は違っている。


さすが人の神様。人、みんなの味方だ。わーい!


そうじゃろ、そうじゃろ、そうなんじゃ!


あ! 考えちゃダメだ(笑)


本当に嬉しいことを思ってくれるの。


儂も嬉しいがの。

審判の神、ウルシュはお主に会えて感激しておるぞ。


複数形になったらカギカッコで分かり易くなった。


ウルシュ「はい!真理と秩序と混沌の神に繋がる末席、人の世の審判を司るウルシュです。遥か彼方に御座おわす方の加護を授かる御子に会えて感激しています」


ネフロー「ウルシュ!お主だけではない!創世の神々の加護を持つ御子だ、我らが彼方に続く道だ。我らが守るべき御子なのだ」


デフロ―ネ「そうですねぇ、天と地の神の加護など初めて見ます」


アローシェ「あなたを覗かせて頂きました。気に入りました」


ユグ「うむ、善く研鑽していた。見事でした」



不意に分かった、俺のイメージ一つで男神にも女神にもなりうる存在。まさしく概念の世界の神だった。名前が女神ぽくても男神のしゃべり方とか思ったら男の言葉に変わっていく。それはイメージ一つで心に沁みたり声になったり、声になったらカギカッコさえも出てしまう、既存の人の常識が通用しない世界だ。


男神より女神が良いので全員女神のイメージをした。創造主ネロ様はもうイメージがお爺さんになってしまった。


また心に沁みて来る。


俺に対する神の御心が沁みて来る。


輪廻の旅を経る魂を我らが転生させるなどとは思いも寄らなかったのぅ。創世の神たちの寵愛を受けた御子じゃ、我らが責任もって現世に送り届けねばならん。


こやつの魂に合った器量の子がよいの。


今まさに生をえんとする者がよい。


善性で素直で感謝を持つ魂をさとし、えんとして失う前世の記憶を明に貰うのじゃ。赤子に転生では記憶が残れば辛かろう。初めての世を知るのに10歳ぐらいから始めるがよかろう。おごらずはげみ、親の情深く見守る者の子としよう。


10歳の器の火が消えんとする者が57人おる。ふむ、親も良いな、国も安定しておる。体は弱いが治る。この子が良い。


もうすぐにも魂が器から離れるぞ。皆で見守れ、儂が諭す。器から離れ次第にネフローが生を与え明の魂を転生させよ。概念より器に入り次第、儂が善性の者の記憶を与え治癒する。


アローシェ。顕現けんげんするぞ、準備をせよ!


・・・・


その日、コルアーノ王国の子爵家当主ラルフ・ロスレーン。その妻ルシアナ・ロスレーン。次期当主アラン・ロスレーン。妻エレーヌ・ロスレーンの寝室に神が顕現けんげんした。


顕現したのは慈愛の神アローシェ。


「ラルフ・ロスレーン、目覚めなさい」


ラルフは瞬時に目覚め、神との対面を果たす。


「私は慈愛の神アローシェ。ラルフ、よく聞きなさい」


寝ている正面に立つアローシェは輝くばかりの女神だった。夢を見ていると思った。信じられなかった。


「そなたの孫は神々に選ばれました。」


ラルフは驚いた。孫が天に召されると思った。お許しください。お許しください、と思っても声にならなかった。


「あなたの善性は知っています。しかし運命からは逃れることは出来ません。受け入れなさい、あなたの孫は神々に選ばれました。神々の寵愛ちょうあいを受けし御子をロスレーン家に預けます。解りましたね。しかと伝えましたよ。努々ゆめゆめ口外する事なかれ。あなたの妻ルシアナ。息子アランとエレーヌにも伝えます」


同じことがルシアナ、アランとエレーヌに起こった。

夫婦で寝室同じなのにだった。



朝。魔力循環の業病で死の淵にあった孫が覚醒した。


  

ロスレーン家3男 アルベルト・ロスレーンが覚醒した。


明はアルベルトの記憶を持って転生していた。

そして、元の世界の記憶も失っていなかった。


転生前にネロ様に教えられたのだ。まかり間違って記憶を失ってしまった場合、数多あまたの神の恩寵を持った俺が暴走し世の破滅を招く可能性がある事。その為の方策として、アルベルトの魂が召され失われる善性の記憶を授けることで事。


創世の神はテリトリーが大き過ぎ、転生した人の世が滅ぼうが消えようが他でまた生まれるからソレもアリじゃね?ぐらいにしか思って無い事を俺に伝えたのだ。人を司る神(ネロ様)にはたまったもんじゃない。俺もそう思う。大雑把すぎだ。



召されるアルベルトの魂はそれを受け入れ、御子に親孝行を望んだ事を伝えた。


明はこれからアルベルトとして生きる上で親孝行を誓った。



目が覚めて最初に行ったのは、周りの状況確認だった。



俺はロスレーン家3男 アルベルト・ロスレーン。名前は母方のルーミール伯爵家のお爺ちゃんに貰った名だ。


この部屋はアルベルトの部屋、言葉はOK、文字も習ってた。アルベルトの歳は10歳。専属メイドはアニー16歳、親はアランとエレーヌ お爺ちゃんはロスレーン家の当主ラルフ・ロスレーン。お婆ちゃんはルシアナ・ロスレーン


お兄様はグレンツ18歳。兄様はヒルスン16歳 お姉様がモニカ14歳。3人は王都の貴族学院へ行っている。妹がアリア7歳。それぞれに専属メイドがハウスメイドの中から選ばれている。メイド長はジャネット。家宰(執事長)はシュミッツ。


治癒魔法の先生はランザフ先生。寝込んでから3年程は診て貰っている。看護婦さんはリザベートさん。治癒術師とその見習い治癒術師だ。


今は3月末の春、四季はあるけど夏は湿気が少ないので夜も過ごしやすい。冬はやっぱり雪も降るが豪雪ではないので交易もある。時間は24時間、月は30日 年は360日。

賤貨(10円)半銅貨(50円)銅貨(100円)大銅貨(1000円)半銀貨(5000円)銀貨(1万円)大銀貨(10万円)小金貨(20万円)金貨(50万円)大金貨(200万円)白金貨(2000万円)


ちょっと通貨単位が違うな・・・分かり辛い。

まぁ検索掛ければ分かるしな、大丈夫だ。


ここはコルアーノ王国のロスレーン子爵領。領都ロスレーンの1番街にある子爵邸だ。


文化は王国で貴族社会。騎士団もある。法もマナーもある。国同士のルールある領地紛争や戦争あり。レンガ作りのお屋敷や商会もある。建物的には4階ぐらいぽいな。辺境の部族から獣人も社会に参加。遠くには獣人の国もある。何分なにぶんアルベルトの記憶頼りなので覚束おぼつかない。


周りの状況や呼び方、名前を確認していると専属メイドのアニーがノックと共に部屋に入って来た。俺が起きているのを確認すると大慌てで「アル様が!」と出て行った。


ちょっとした間をおいて、父様母様が揃って登場した。


あぁ、記憶の通りの人達だ。


駆け寄って顔を良く見て撫でられ、抱きしめられた。


「まさか、まさか、本当に」二人とも泣いている。

「アローシェ様が!アローシェ様が!」


母様がうわ言のようにつぶやく。


父様にも抱きしめられた。

遅れて来たじいちゃんとばあちゃんも泣いていた。

皆に抱きしめられる。爺ちゃんも神様神様言ってる。


専属メイドのアニーもメイド長のジャネットも泣いていた。なんていい家に生まれたんだ。みんなが泣いてくれている。アルベルトのために泣いてくれている・・・


俺も貰い泣きしていた。

アルベルトは俺なのに。


家宰(執事長)のシュミッツは事態を見てすぐ従僕に言い、馬車でランザフ先生を呼びに行かせた。


俺はアルと呼ばれている。呼びやすくていいや(笑)


元の世界のチャリの名前だけど覚えやすくていい。


高校入学祝にと言い出せなかったな。てかチャリの情報まだ視えんのかよ!この世界と関係ねぇぞ。ネット通販で69800円そうそうコレコレ!5段変速。メンテナンスフリーのベルトドライブ搭載・・・仕様見てどうする!


この世界は次元とか宇宙とか違うって言ってたぞ。


実は今。

アニーにアル様、アル様と呼ばれて寝巻の着替えをされている。ランザフ先生に一晩寝た寝巻で診て貰うのはご法度らしい。


扉がノックされ、メイドのマーガレット(16歳)がアリア(7歳)を連れて来た。


俺がお着換えしているのを見て、「アルベルトお兄様!」と口調はシッカリしてるがトトトッと走ってベッドの脇まで来てくれる。


「お元気になられたのですね!」

「アリア、だいぶ良くなったみたいだ」


俺の手を掴んで喜んでくれる。


「アリアが摘んでくれるイーゼの花のお陰だ」

イーゼの花は安息と安らぎを与えるお見舞いの花だ。


「今日も明日もマーガレットと一緒に摘んで来ます!」

「ありがとう!アリアとマーガレットのお陰で良くなった」


アリアの顔を両手で挟んで目を覗き込んで言う。

俺が元気になった事に興奮してアリアの顔が上気する。


「はい、お兄様がお元気になって良かったです」


マーガレットが目に涙を溜めている。


「マーガレットも毎日ありがとう」

「アル様、もったいないお言葉を・・・」泣いちゃった。



ランザフ先生に診てもらう。

長らくクソ黙ってるランザフ先生が口を開いた。


「神の奇跡としか言えません。魔力の流れを見るだけで正常だと分かる。3年近くは寝ていましたから歩く練習から始めましょうか。次の往診は一週間後に伺うようにします」


「明日から補助具を持たせてリザベートを通わせますので少しずつ歩く練習をして行きましょう。それとアニーさんは明日リザベートの行う介助の仕方を覚えて下さいね。」


神様が転生させてくれたんだ。

もう診る必要無いだろうけど先生がいなかったらアルはもっと早く召されていたことは記憶にある。アルに生まれ変われたのは先生のお陰だ。感謝しよう。


俺はこの世界で生きて行く。アルベルトとして生きて行く。生ある限り磨いて生き抜こうと思う。



アルベルトの魂は天に召された。魂が融合して子供に引っ張られるとかのは一切無い。アルベルトの記憶を持ったあっちの明がそのまま転生しているのだ。


転生しアルベルト・ロスレーンと名前は変わった。


アルベルトの魂は、ありのままの明だ。



明100%だ。



ありのままの明を異世界に見せつけるのだ。





次回 63話  ステータスボード

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              思預しよ




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