第55話  絶対不変の法則




そして発表。



瀬尾と前日から首都まで行き合格発表を見に行った。


コートの内ポケットに薄いピンクのお守り。瀬尾も俺もお互いにやりきった笑顔だ。二人とも確信している。


でも・・・これ。とんでもない人がいる!(笑)


合格者が毎年3000人だからなぁ・・・。


マスコミやら大学の学生やらクラブの部員やらブラスバンドやら、である。人の波にまれるかと思ったら当事者の受験生の番号を見るスペースだけは結構空いている。


受験番号をそれぞれ見に行った。


受験番号があった。写メして家族に送る。


神谷 明 帝大 文科一類 合格!と打った。


万歳万歳やっている。

受かった人に体育会系のクラブが万歳万歳やってくれる。過激なクラブは取り押さえて胴上げやってる(笑)


瀬尾の方へ走った。


瀬尾も受験番号を写メしてる。


瀬尾健司 帝大 理科三類 瀬尾は合格に決まってる。


瀬尾に駆け寄って言いたかった。感謝の言葉を言いたかった。


俺は笑顔で瀬尾に言った。


「お前と2年の時に会わなければここに一緒に居なかった。お前を勉強の道の先生と思って見習ってきた。絶対王者のたゆまぬ努力を視せてくれてありがとう」


繰り返した。


「本当にお前のお陰だ。ありがとう!」


瀬尾は笑顔で小さく何度も頷いた。何も言わなかった。言わなかったが差し出した手を固く握ってくれた。これだ!男はこうだから惚れるんだよ。文化部も一緒だ。


「体が冷えて来たな。うどんぐらい奢るよ(笑)」

「受かったんだぞ!うどんなのか(笑)」


「おまえんち、帰ったら凄そうじゃねーか」

「なんだそれ?」

「すし職人やら、ステーキ店のシェフがいるんじゃね?」


「そんな訳無いだろ(笑)」

「おまえサラブレットだからなぁ(笑)」


「将来脱税で会ったら、なんとかしてやるからな」

「お前、いい加減にしろ!」

「今のうちいいもの食っとけよ」


瀬尾がヘッドロックしてきた(笑)


「貧乏人にたかったうどんの味を忘れんなよ」


瀬尾にウケた(笑)


天ぷらうどん食って帰った。

駅の立ち食いうどん。瀬尾は二度と食べないと思う。妙に美味いんだけどなぁ。


懐のピンクのお守りをどうやって内田に返すか考えた。帝大グッズと共に返そうと思った。俺がご利益りやくあったんだ、内田にもあるだろう。


帰って予備校に報告に行った。

ポスターの全員、みんなが受かった。

俺たちは夏以来、気合いが違ったからな。


廊下ですれ違った時に宮崎のハイタッチをかわしたら追いかけて来て背中をバーンと叩かれる程も気合い入っていた。


予備校で報告して、高校に報告に行く。


俺は静かに闘志を燃やす。ここがスタートだからだ。やっと長く険しい司法のスタートラインに立っただけだ。


一歩テミス様に近づいたんだ。




神谷 明 19歳



学部選択は2年目だから法学部には在籍していない。


2Kのアパートの壁に「明日にジャンプ」のポスターがある。このポスター以来、有名人である(笑)


ポスターは記念に5枚貰ってじいちゃん達に配った。


ポスター見て大喜びのじいちゃんが自動車学校のお金を全部出してくれた。合宿行って速攻で車の免許取ったら、宗彦さんは11年経った中古の車をお祝いに買ってくれた。


あの人車持ってないから片側二車線三車線の幹線道路に慣れてなくて怖いらしい。だから慣れるのに俺には乗りまくれという。


大学にいるうちにぶつけてこすって慣れろと言った。人以外はぶつけ放題、こすり放題だそうだ。11年経った車でもすごく綺麗なんだよ、絶対ぶつけたくない。装備も最上級でエアバッグも付いてる。名前にカスタムが付いてるからカスタムなんだろうと納得している。


ナビも更新切れになって6年だけど大体の場所が分かって便利だ、希望のその辺に行ける。DVDも再生できる。車検2年ついて12万の軽自動車。夏期講習の何分の一の車だ!2年も乗れるのが凄い事だ。車より任意保険の方が高い。


2回の車検が済んで4年経ったら新車を買ってくれるらしい。充分だ!次もカスタムにするぞ。


というか首都の駐車場代が凄い。うちの近くで月3000円とかなのにアパートの大家さんが10倍で安く貸してくれている。恐ろしい金額だ、4カ月分で俺の初めての愛車が買える・・・。


親父の宗彦さんはで元々の給料に乗船手当、危険手当てとかメチャクチャ付いて給料とんでもないらしい。夫婦揃ってとんでもない人たちだ。


そう言えば、予備校に呼ばれて体験談を5回ほど話しに行った。


各クラスで体験談を話して、受験の悩みを聞いてアドバイスを贈る。ポスターの中心にいるのが俺だから闘志を燃やしてクソ難しい問題聞いて来るチャレンジャーもいるが小指でチョン!だ。教える事はアレだけど、解く分には俺は瀬尾にも負けないぞ。


昇天させてやると逆に尊敬の眼差しで見てくれて気持ちよい。


まぁスキルだし!しかも5か月間の契約予備校生で詐欺臭い(笑)


ジャンプの10人が予備校の客寄せになった。


(あんまり言えないけど冬季集中講座とかあるし、全ての授業を受けられる5か月の特待なら授業料はとんでもない金額なので予備校は本当に俺に投資してくれていたのだ)


1回系列予備校に呼ばれて体験談を話しに行くと交通費とお弁当が出て日給3万円くれる。いいバイトだ、多分今年中は呼ばれるから話が来たら何処どこでも行くぞ!わーい!


瀬尾も打診はあるらしいが1回だけお礼がてらに行ったそうだ。さすがサラブレット!金なんか目じゃねぇよな(笑)


賢介と箕輪さんは春から恋人になった。

予備校から貰ったチケットで遊園地に行ったときには二人ともその気だったんじゃないかと思えていた。お互いの大学が近いしな。(賢介が近くの大学に行ったんだけど)


大学入学して落ち着いた時に、二人で初デートして告白したそうだ。難関ちゃんと恋人なんてを成し遂げた賢介に拍手だ(笑)


俺も三保さんもお互い大学が離れてるから割り切っていたと思う。二人とも離れがたい雰囲気もあったが妙な未練は断ち切った。何しろ大学受かっただけでお互いに何も成していないのだ。


薬学部ってやっぱ国家試験だろうし。俺だって何度も色んな国家試験に受からなきゃ検事なんてなれない。1年目だから法学部でもないし卵にもなってねぇよ(笑)


他の担当女子達も大学別々だから遠距離ではそう簡単にカップルは無理だと思う。あの時期にペアで遊べたのが奇跡だよ。10人集まって遊んでただけで予備校の先生に驚かれたのに(笑)


・・・・


神谷 明 20歳 大学2年目。今年から法学部に入った。


最高学府で法学を学ぶ明。


甲子園常連校で見た10年に一人の天才が二軍で力を付けた後、一軍に上がりテレビに映っていた。


明は彼にとても感謝していた。彼が明の分岐点に居たからだ。彼が居なかったら今の自分が無かったからである。応援すると共に、力を貰う存在になっていた。



そういえば1年遅れて首都に教祖内田が来た!(笑)


茶の湯水に受かったのだ。これを狙ってやがった!なにが自信が無いから言えないだ!狙ってるじゃねーか。講義が終わると茶の湯水から帝大まで地下鉄で4分だぞ!


何かにつけて会いに来たがる。最初はあのピンクのお守りの霊験を語りに来た。胡散臭うさんくさい教祖そのままだった。


アパートにも来る。来られたら先輩、先輩となし崩しである。マドレーヌとかシフォンケーキだとか色々差し入れ言い訳を作って来る。


本当に女子大生そのままである。夜になると手を引きずって地下鉄に押し込むバイバイだ。最近は切符も買おうとしないので俺が買って握らせる。170円はマドレーヌ代に丁度良い。


たまに三保さんに会いたい気もあるが杜の都は遠い。マジ良いとこ選んだよなぁ。環境とか最高の学び舎ぽい。


そんな日常。今日も復習のために机に向かっていた。

あの凄まじいスキルを使った怒涛どとうの勉強は大学に受かってからは全くない。やる必要が無いのだ。


いつもの通りの勉強法。判例や法解釈など授業を聞き

少し視ながら勉強すれば訳はなかった。

いつもの簡単な勉強だった。



そして、それは起こった。



ピコン「スキル:真理の眼を獲得しました」



思う間もなく勝手に始まった。

全てが分かった、世の理が明の中に流れ込む。


全ての生きとし生きるものが何で出来ているのか。


宇宙を含むすべての物質が何から出来ているのか。


真理をどれほど人が曲解し、都合の良い法を定めるのか。


何故そこにそれがあるのか。なぜその割合なのか。



宇宙のことわり絶対不変の法則。



あたかもパソコンのウインドウが無限に開かれていく様だった。ウインドウの向こうには一つ一つの世のことわり


何億、何十億、何百億、何千億のウインドウがあった。ドンドン開いて行く・・・




一瞬。世の理を覗いた明は即死した。





次回 56話 真理を司る者

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