第31話 予備校カップル5対5
8月3日月曜日
乗車口のレーンで待っていると三保さんの立つドアが目の前に
滑り込んでくる。
止まるとドアの窓越しに手を小さく振ってくれる。
それだけで俺にはご褒美だ!わーい!
三保さんと電車で話し合う。
もう開き直ってドアに両手で壁ドン状態だ。両手を突っ張っているので、今日は俺の腰で三保さんをグイグイは無くなっている。というか一日一善!俺の後ろでスタンバイすんな。
でも異常に恥ずかしい。三保さんは俺の胸の中で縮こまっている。三保さんもドアの方を向くと格好が付かないのを気にしているのか俺と対面で縮こまる。
これ「彼氏に守ってもらっています」体制だよね?分っていてやっている感が。うんうん、解る。俺も女子とイチャイチャっぽいままごとで充分嬉しい。朝の一瞬だけど俺にもこういうのがあってマジ嬉しい。
三保さんの直上から話しかける。
「どう?女子は見に来る?」
「箕輪さんと橋本さんはお弁当をやめてワック来るって」
服部さんは合流が決定済みだったんだって。箕輪さん包囲網の協力者だ。
「そんじゃ、みんなで全部決められるね」
「うん」
とりあえず行動予定表とプールのパンフと配席表は持ってきた。
「こんな感じの予定で進めようと思うけど読んでみて。」
予定表と配席表を渡してから、壁ドンを突っ張って胸の中のスペースを開ける。
・・・・・・
「いいじゃない、分かりやすいよ」
「ワックの角の席取れたら十人で配席の通りに出来ると思う」
「いいと思うよ、顔と名前が分かるしね」
「そんじゃ揃ったら仕切るな?女子の仕切りはよろしく」
「もう仲良くなったからね、まかせて!」
「ワックの移動含めたら四十分以内に決めないとだから焦る」
「頑張って!」
・・・・・
講習の教室に入る。
宮崎さんは先週逃げたので、チラチラ俺を伺っている。
今まで話してないだろ?そんなに気にするなよ。一緒に息抜き出来るだろ?分んないだろうけどさ(笑) 宮崎さんを意識しないのが安心する早道だろうな。
そんなこんなでお昼になった。
秋本と俺と三保さん宮崎さんは同じ講習だからワックに移動。
十人が座れそうな角スペースをキープ。注文を取って座っていた。最初に瀬尾が合流、ついで箕輪さん、橋本さん。賢介。服部さん。波多野が合流。
手を振って、場所を教えた後注文させる。
「早速始めるよー」(以後ほとんど神谷の発言です)
「俺は、私大コースの
さすが女子、鞄からメモを用意している。
橋本さん、箕輪さんに(予定表後で写メで撮るからね)コソ
「今回の趣旨は、受験勉強の息抜きです。とりあえず今回はプールを企画してみました」
名簿と席順の一覧とプールのパンフ。予定表。男女の前に各2部を置く。県内地図を皆の中心に置く。表題に「受験勉強息抜き予定表」との親対策が施されている。
「さて、名簿と席順の通りさっそく紹介します。
俺の横が私大
その横が私大
その横が私大
その横が特待
「女子は・・・三保さんに振る。
私は私大コースの
横が私大
横が私大
横が難関
横が難関
「以上、席順の通りね。顔と名前が一致したかな?以上十名!プールで息抜きしましょう」
時間無いので早速説明に入る。
「プールは予備校から電車で四十分までの場所を二カ所選定しました。プールとアトラクション。水着でどちらもフリーパスです。二カ所のプールで家が近い人の多いプールを選定します。皆の家の場所もあるのでどちらのプールでも恨みっこなしね」
県内地図をテーブルの真ん中に広げて、予備校はここねと〇付ける。
プールは、ココとココ! 赤丸を書く。
「そんじゃ多数決スタート」 俺ココ!と家の地区に〇
三保さんに渡す。私ココ〇、順々に回していく・・・
「はい、プールは6:4でウォーターランドに決定です。各自ウォーターランド前の駅に9時30分に集合。9時32分にプール行きのバスが出るから注意してね(笑)」
(ウケたウケた)
「それで日程なんだけど、女子に決めてもらった方がいいかな?」
「それなんだけど、週間天気だと一応土日とも晴れなの。
昨日皆で話したんだけど今週の土曜日八月八日とかどう?」
「俺はいいよ?お前らは?」
男子もOKみたいだ。
「決定!八月八日土曜日、集合は
「行動予定表の不必要な部分消して・・・・と。みんなこれ写メして。プール内の予定もあるから。とりあえず、みんなでグループ作って情報共有しよう」
新しいクループ作って女子達を誘う。
「よし!これで全員共有できるね。行動予定表だけど、そんなでいいかな?一応まだ日があるうちに家に帰れるように作った。受験生だ、親が心配するからな。駅の待ち時間でおやつ食べられるようファミレスを予定ね」
「そこまでかな?みんな質疑応答とかない?土曜日でいいね?場所も良いね? (ヨシ!視ても納得してるな)はい!今から十人土曜日のチケット取ってみます」
「ちょっとまってね」
身を乗り出しスマホが見えるよう操作。
「取れますように・・・」OK取れた。
「一人六千八百円ね。男子は俺、女子は三保さんにお金渡してね。当日までにコンビニでチケット買っておく」
「ウォーターランドって行ったことある人いる?」
四人が手を上げた。
「遊ぶ時の貴重品って更衣室のロッカーしかないかな?」
「フードコートの広場に貴重品入れのロッカーがあるよ」
服部さん早い!
「それって、どんな感じの大きさ?」
あぁ提案しようとしてたのね。感謝。
「スマホと財布とバスタオルが入るこんなぐらいの」
(視えて理解したけど、皆に説明しないとな)
「個人用だねぇ。それってパーカーとかも入りそうかな?」
「それぐらいなら入ると思うよ」
「水に入って寒くなるかも、Tシャツもいいかもね」
「お金とか要る?」
「百円要るけど開けると戻って来るやつだよ」
「それスーパー銭湯の靴ロッカーみたいの?」
「それそれ!そんな感じ!(笑)」
服部さんもかわいい系の笑顔だな。
「みんな聞いた?それぐらいのポーチを持っていけば貴重品の心配なくなる。入園者全員分のロッカーは無い筈。着替えたら十人分取りに行こうってことで着替えたらフードコートのロッカー集合ね」
「ベースキャンプはフードコート辺りかなぁ?」
皆がウォーターランドのパンフレットで確認している。
「ロッカーに全員集まったら、6:4のペア作るからね。
時間交代でチェンジするペアだからね(笑)」
「仲良くなるのは大歓迎、大いに息抜きして下さい。イチャイチャは阻止します!よろしいですね?」
「後半年で受験!親心を感謝しなさい(みんな笑っている)
本当は、模試悪かったら皆の親に殺されるからです。
俺たちは他の受験生に差を付けるために予備校に来てます。親はそのお金を出してくれています。それに結果で答えましょう。全員で偏差値上げましょう!」
皆の顔が引き締まる
「俺が殺されないように(笑)」 賢介がコケる。
「瀬尾は特待だから野放しで。道草食っても許します(笑)」
瀬尾が仰け反る。
「みんなが仲良くなれば予備校も楽しくなるからね。息抜きがメインだからワイワイやれば何でもいいです」
「まぁ、一回遊んで楽しかったらお盆のお祭りで花火。
最後の模試終わったあとは遊園地行こう!」
「受験生でも夏の三大イベント目指そうぜ!」
「各自予定もあるだろうからいつ抜けてもいいからね。息抜きしたい奴は予備校にゴロゴロ転がっているからそいつらに譲ってやるつもりで大丈夫。穴は埋めるから」
「とりあえず詳しい紹介ね。
瀬尾と宮崎さんは俺の二年生の時のクラスメート。瀬尾は級長で宮崎さんと俺は文化祭の実行委員で一緒だった。隣の賢介は同じ学校でクラスは別。俺の中学の野球部で鉄壁のセカンドだった。そこの波多野はシニアリーグでライバルだったピッチャー。凄い球投げるぞ。秋本は俺の講習クラスの中心的存在。秋本と波多野は同じ学校ね。俺の自慢のツレね。こいつらは俺を自慢してないけど、まぁお前らイケメンだから許す(笑)」
続いて三保さんが女子を紹介し、皆が喋りだした。
一気に喋ってばかりでセットに手を付けてない。
慌ててパクついた。
そして誰が誰に好感を持ったのか視て確認した。
なるほどねぇ、皆が息抜き出来るようにペアは考慮する。賢介の為に箕輪さんをスルーしてくれる分は返すよ。
そして気が付く、女子の服装が余所行きであることを。あ!三保さんの言うとおりだ、顔合わせもイベントにしている。俺ダメだ、普段着だよ。(また一つ栄養にした明だった。)
ワックから帰った女子達は予備校のお手洗いに集合した。情報の擦り合わせである。
・・・
橋本「神谷君、守田君、波多野君スポーツ男子そのまま」
服部「イケメンと聞いてたけど満腹だった」
箕輪「あれはすでにご当地ユニットだよ(笑)」
宮崎「秋本君はうちの講習で
三保「クラスに居るかってレベルだよね?」
服部「あれだけ揃うと
宮崎「クラスで一緒だったけどやっぱ別格だったよ」
三保「二人と一緒のクラスって羨ましい」
箕輪「文化部系と運動部系が揃ったクラス!」
橋本「みんな背が高いよね?」
服部「守田君179cmだって言ってたよ」
三保「神谷君が177cmだって」
宮崎「あれさぁ、みんな175cm位は有ると思うよ」
服部「守田君で他の人の身長が目立たないよね?(笑)」
三保「瀬尾君入学式からずっと学年一番だって」
服部「そうそう、二つ名が絶対王者だって」
橋本「凄すぎ。春から特待生でいるって何!(笑)」
・・・
明は知らない。
その日、女子による夜のドラフト会議が開催されることを。
次回 第32話 夜のドラフト会議
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