第16話  G.Wに一人図書館




G.Wが始まった。



みんなが浮かれるゴールデンウィーク。俺も浮かれて沈んで図書館だ。


富田と増田の事も気になったが、やれるべきことは全部やったので放置である。


あと二日?で富田が出所だと思う。二人のその後は視ていない、神が思しおぼしめす通りだ。



しかし二年生の初っ端から恋バナとはうらやましい限りである。



俺がそういう事を知ったのは一年生の終わりの三学期だった。なんか男女でカップルが多いなぁとイチャ付く姿を漠然ばくぜんと眺めていたが、どうも俺は何も知らずにヤラカシテいたらしい。



無理もない、俺は中学三年まで野球バカだったのだから。



一年は二泊三日のオリエンテーションから始まって、最後に延々と歩く強歩祭きょうほさいがあるのだが、オリエンテーションで好みの、好みの男をキープ。学校生活を通じ性格や趣味を加味し、カップリングをチェンジして微調整。



クラス行事の体育祭、文化祭を経てお互いに気持ちを深め合って最後の強歩祭きょうほさいで決める。みたいな? 男女ともお互いが気になる年齢である。


勝利と玉砕の叫び。周りがイチャイチャ、キャッキャウフフとかしましい。



二年生になると皆が焦りを感じだす。二年生の場合は遠泳までが知り合うタイムリミット。体育祭で孔雀のように魅せ、文化祭で互いに作り上げ、高めあって後夜祭のフォークダンスで決めないと高校恋愛は脱落とか言われる。



俺?聞くなよ。ゴールデンウィークに一人で図書館だよ。



俺はな、盛大に勘違いしていた男だぜ。もうそっち方面の希望もクソもねぇよ。俺は勘違い野郎のモブなんだよ。ほっといてくれ。



何しているって?図書館で何すんだよ?決まっているだろ。



図書館の中でイチャ付くカップル見ているんだよ。


図書館で刺激を受けようとしたら違う刺激を受けている。



こいつらマジ天才!恋愛のファンタジスタ!


行きの待ち合わせ、帰りの送り狼、お金使わないし親は機嫌よく昼食代を奮発する。学生カップルにとってデートを兼ねて、休み明けの試験対策にこれ以上の場所があろうか。イヤ無い!



色々と勉強させてくれる図書館よありがとう!

余計なお世話だ無駄知識。




ぶっちゃけG.W明けの模試や中間テストの勉強だよ。

と言っても問題集をどんどん解いていくだけ。



学校の成績も勿論だが、志望大学の門を広くするには偏差値もキモなのだ。


志望はまだ決まってない。


このスキルを有効に使いながら、神の怒りに触れないとか考えると、カウンセラー・自衛官・検事とか思うんだよね。細かく言えば探偵とか保険の事故調査員?色々とあるけれど、社会と仕事を俺は知らないから漠然とし過ぎなんだよ。



地味とか言うなよ。戦闘系スキルじゃ無いんだよ。


ひのきの棒で死ぬから、そんな悪と戦うヒーローみたいの無理なんだよ。社会のルールに沿って、それを守りながらスキルで貢献って地味になるの!



だってさぁ、政治家の悪事を敢然かんぜんと暴くとか最初はあこがれたけど、絶対裏の組織に消されるよ。


実は自衛官って自衛隊内部にいたら異能組織も手を出しにくいかな?とかの消極案からだ。


自衛隊なら国の為に諜報とかそういう分野で貢献する。相手国の兵器とか視ただけで設計図まで辿り着けるし、相手を視たら極秘情報も抜ける。


ただ、人の争いにこの能力を使うのも違うかなとも思う。



検事は、流れてくる事件を視ればいい。冤罪とか無くせるし、疑獄事件は証拠まで一直線に踏み込める。自分勝手な正義に振り回わされずに、担当の事件だけ粛々と裁くのがとても良い。


真実を視て、そのまま法で決められた通りに裁く。

スキルなら出来る簡単なお仕事です。


カウンセラーっていうのは、二日ほど前の富田の件があったからだ。増田のイメージを視て間違った迷路からこっちだよと手を差し伸べて連れてくる様な感じ。うん、美化しすぎだな。


言い訳して逃げるイメージを言葉で打ちのめして向き合わせる。負のイメージで落ち込み過ぎたら、正のイメージを与えて持ち上げる。投げかける言葉に反応して良いにつけ悪いにつけ本人固有のイメージが何度も作成される。


何度もリフレインさせることで本人自身が気が付かなかった事や目を背けたい事象に向き合わせる。外部による説得ではなく本人による説得。自身に気付かせる。精神誘導みたいなものだ。


あいつは泣いたけど富田に気がついた。大丈夫。

向き合った筈、逃げずに済むと思う。

そのうちに笑えるようになるさ。


富田母も同じ、初対面こそ警戒していたが、親として知りたい事や心配も視えたので存分に教えて安心させてあげたのだ。先輩だもの。食事の時は悪乗りだったが後悔はして無い。先輩だもの。



俺は能力者だぞ、異能のスキルを持っているの。変な事してるに決まっているだろ。


と言う事で検事>カウンセラー>自衛官みたいな。


ただ、検事なら文系になるし、カウンセラーなら理系なんだよ。

カウンセラーも友達なら介入出来るけど他人に介入するには医者にならないと、モグリの精神科医みたいな需要は無いし。


自衛隊は特務工作とかの部署が有るのかさえ分かんない。

入っても武術とか武器の使用法とか戦術とかの訓練がメインでスキル使える部署に行けるかも心配で調べて無いんだよね。


文系と理系、選択肢を広げるためにギリギリまで二刀流で勉強。


せめて身体強化ぐらいのスキルあれば進路も広がるのに・・・



そういえば、今も問題解くついでに変な事をしている。


「監視」とか「スキル」とか「敵意」で検索掛けて周りを視ている。


実は暇があると検索するけど、この半年引っかからない。そういう人はいない。


いや、スキルは結構引っ掛かるというか、その病気ちゅうに系のイメージが視えちゃうから、そういう人はいるんだけど。異能者の意味でのそういう人はいない。


まだタイムリミットまで来てない。だれもスキルは持ってない。


と言うのも、能力者を見つけたら異能集団の結社とかあるかもしれないし実際に能力とか開発とかスキル持ちとして色々知りたいのだ。ステータスの開け方が分かるかもしんない。



攻撃能力とか魔法能力とか持っている善良な人なら同盟組むとかさぁ。同盟の信用調査的な意味では、たぶん俺は最適能力。邪悪なにおいがほのかにしただけで俺は視えるぞ。


他にも能力者がいるのか、マジそれが知りたい。


視たら一問解いて。また視て一問。また一問と見せかけて視る。フェイントも織り交ぜ確認を怠らない。


このやり方は凄く自然。机に向かって問題を解く、終わると一服で周りをキョロキョロ。さて、やるかと机に向かってまた一問。



六時間程も問題を解いて帰る。



帰り道に何か引っ掛かった。


え?俺を見てるヤツがいる。二人だ。誰だ?あ!わかった。

三屋と田口。二人とも俺に気が付いている。と思って視たら一緒に内田が居た。


っていうか二人とも俺と内田をそういう風に思っているのか。


三人とも勉強室に居たのか。(俺は第一図書室)同じ駅に向かってたのね。



俺は三人の前60m程に居るので追視で見ている。



「内田を俺に会わせようか」ってコソコソしてる。そういうのやめて、恥ずかしい!勝手に敵討ってイジメ終わらせた被害者と会うとかメチャ恥ずかしい。俺が内田に片思いしているとか何情報だよ。



あ、写真か!内田の写真。マジ止めて!写真を汚すとか・・・俺は内田の写真抱いてベッドで転げまわったりしてない。いやー!やめてー!冤罪えんざい過ぎる。三屋てめー!性癖が皆一緒とかかんがえんな!


片思いだから内田の写真を欲しがった。違う!冤罪だ!スキル持った検事呼んで来い。俺が必要になってどうすんだ!お前らの汚い邪推じゃなくて無償の愛で助けたとか無いのか。


見返り無く助ける事は無いらしい。


見返りは可愛い佳代ちゃんの写真だそうだ。あほか!バカどもが勝手にやってろ!



こっちに来そうな雰囲気なので焦った。


厄介やっかいごとのにおいしかしないので駅の雑踏ざっとうに隠れた。



キョロキョロと俺を探す三人を見てどくいた。



いい加減にしろ。誰だって道に迷ってる子がいたら教えてあげるでしょ?困っていたら助けてあげようと思うでしょ?そんな感じなのに。


HEROヒーローは謎だからHEROヒーローなんだよ。身バレのときは死ぬんだよ。




神谷は知らなかった、この邂逅かいこうが白い世界へつながる一歩だったことを、そして大司教との戦いの序章だったことを。


この時、内田と会っていたら、未来は変わっていたかもしれない。それ程の分岐点だった。





次回 17話 白い世界・・・今かよ!

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