第13話  稀有な2トップ




「ごめん、泣いて帰っちゃった」


#「神谷さん!何言ったんですか?もう!勘弁してくださいよ~!」


#「神谷さーん!もう!ほんとにー!」


「門まで来たんだよ!そしたら大泣きして帰っちゃった」


「責任感じてたからなぁ、慰めてたんだけどなぁ」(嘘である)

俺は富田に聞こえるようにつぶやいた。



慌てて電話する富田。


#「電話に出てくれないじゃないですか!」


「マジゴメン・・・」しゅん


「ショック受けてたしな、時間置いた方がいいかもな?」



コンコンとノック。


お母さんが現れた。


俺と富田の深刻そうな顔を見て、首を傾げて言った。


「神谷君も一緒にご飯作ったから降りて来てね」


丁度シチュエーションお膳立てが出来たので頂くことにした。


俺は富田母に会った時、停学事件を詳細に話している。



夕飯を頂きながらお母さんの前で富田に言った。



「停学明けたら、お前から連絡取ってやれよ?」


「・・・」


答えない富田にお母さんが話を繋ぐ。


「連絡?なんの話なの?」


目の前に置かれた餌(停学と連絡ワード)にいぶかし気に食いつくお母さん。


「原因の襲われたお嬢さん、停学明けに連絡取れば?って」

富田がウメズ風に固まった。


「あら。知り合いだったの?」


気が付いた気が付いた!


「コイツの好きなですが、何か?」

(背後のギャー!の吹き出しと共に)ウメズを見ながら言った。


バッチコーイ!何でも母のあぎとに放り込むぞー!


「好きな子が襲われてるのを助けたの?」

お母さんの目を見てうんうんする。


「・・・」


「自分のせいで富田が停学になったのを気にしているんです」

上司には、まずは結論。そして説明である。


「・・・」


「元1年のクラスで一緒だったが助けてくれた。でも男の子は停学になった。優しい女の子なら気にするじゃないですか」


「・・・」


「あらぁ!そうなの?どうしましょう」


親方に大喜びで報告するのが視える。


ヨシ!Hit、Hit!大物が掛かった!この母と親方付いたら鉄板だ。



もう本丸と内堀だけで万全のいくさだけど、ついでに内堀も埋めてしまえ!



「富田は元気だから気にするなってさっき呼び出したんですけど、門をみたら急に泣いて帰っちゃったんです」


「・・・」



「あらぁ。へー、そうだったのー?」と息子を満更ではない顔でチラチラ見てる。


「・・・」



「まぁ、傷付いている様なので停学明けにこいつから連絡した方が良いんじゃないかと思うんですよね」


「今から電話じゃダメなの?」

「・・・」


「泣いて帰っちゃったから、出てくれないんです」


「あら!そうかぁー、そうねぇ・・・」



「四日で停学明けますよね。落ち付くまでそれぐらい開けるのが妥当ですよね?」


#「・・・電話掛けるのよね?」


富田を見るお母さん。じゃなくてそれ睨んでる、睨んでる。


「・・・」


「家へ連れてくるのよ?絶対よ!用意しておくからね」爆撃が始まった。


「・・・」


「だってお母さんだって見たいじゃない!あなたが助けた女の子」続く波状攻撃。


「・・・」


「その子もあなたを心配してるのよ?」攻撃には大義(土建屋には建前)が必要だ。さす母!


「・・・」



「何だよ!お前を心配して増田さん泣くほど気にしているのに」と後方支援。


「増田さんって言うのね?」


目と目で通じ合う~♪アイコンタクトが完成している。



「詳細は話しましたけど、秋穂ちゃん学校で襲われるほど綺麗なんです」母にパス。


「・・・」


「それじゃ、秋穂ちゃんに安心してもらわなくちゃね」母がドリブルからノールックパス。


「・・・」


「笑ってありがとうって言ってくれたら嬉しいですよね?」俺がミドルレンジへキラーパス。


「・・・」


「停学になってまで守ったお嬢さんだものね」合わせた母がドライブシュート。


「・・・orz」



ゴール!



富田母と息子の先輩という稀有な2トップにより、ブルドーザーのパワーで内堀が埋められていった。


土建屋の母は親方にも負けぬ力強さだった。


夕食後、富田母が箱を見せに来た。

「貰い物なんだけどデザートに出しちゃうね?」と桐箱のマンゴーが出てきた。


冷えてないでしょうに。と思ったらクリスタルのボウルにクラッシュアイス漬けになって一口大に切られたマンゴーが出てきた。ゼネコンパナイ!俺はコンビニのマンゴーパフェしか食べたこと無かったので、情報料の味しかしなかった。



富田は頭を抱えて本丸で籠城した。停学三日目の夜であった。



俺の出来る限りの贖罪しょくざいは終わった。



自分が描いた絵のお陰で、富田が停学なのは嫌だと思った。



「絵を描いた責任」「薬の効き過ぎの責任」「二人に起こった事の責任」3つの責任の罪悪感からやっと解放された。




正義を振りかざした俺はザマぁを食った。



~~~~



その時、増田を一言一言が染み込む様に諭していた。


「あいつの好きは、あの地獄の中で本物に変わったんだ。俺が全員に土下座させた。富田としては男として恥ずかしい姿をお前には見せたく無かっただろうが、やらなきゃあの地獄は終わらなかった。お前を破滅から守るのに精一杯だったんだ」



「ましてやクラスであんな土下座の後だ、お互いに好きとか嫌いとかの気分にはなれないだろうさ。でもな?あいつは後悔してねぇぞ。今回の停学だって当然と思ってる。俺が責任を取って教えてやる・・・それはお前の為だからだ」



「あいつはそういうことは言わねぇけど、分ってやってくれよ」



「俺が土下座させたことでお前たちは変な方向へ行っちまった。やったことは後悔してない。だがそれだけは、ホントすまん」



「富田は今回の停学で三つ目の条件を達成したと思わないか?」


「みんなも守り、当然お前も守っていた。今度は停学付きでお前を守った」



増田がハッと気付く。



「あいつは約束を守った。あいつは許された。あいつは自由だ。許されたあいつに俺も誠意を見せなきゃな?」



「イジメの前からお前たちは両想いだったんだよ」



「でもイジメなければ、あいつの好きは本物にならなかった」


「あいつはお前を地獄の破滅から守り抜いたんだ」




「増田?」



「誠意を込めて許しを乞う事が出来たんだ、あの頃に戻れるな?」



「誰だって間違うんだよ。失敗して気が付くんだ。後悔して、そしてもう一度やり直すんだ」



「やり直せること、もう知ってるよな?」


「おまえ、あの成績だ。頭良いよな?」



泣いて逃げる増田の心はグチャグチャだった。



心が押しつぶされそうになっていた。



その優しさに。




ゴールデンウィークがもう始まる。






次回 第14話 増田Side 涙の色

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お知らせ。


読者の皆さま、読んで頂きありがとうございます。朝、ランキング通知が来まして今週の現代ファンタジー部門、初回410位→229位になってました。(4日で約半分?)上がるのは嬉しいのですが、上位の方々の凝った設定と冒険を見るとスキルボードも出てこないラノベ(泣)が本当にファンタジー部門で良いのかと恥じ入っております。


今回で神谷君の贖罪がやっと終わりました。


本日から2話投稿に致します。内容は濃いのでご安心下さい。

(毎日3話は(文章の下手さは除外して)意味が読者に伝わるのかを考え過ぎて読み直し時間が大変なことになってます)



この話、キリも付きましたので(Sideストーリーはありますが)ここまで読んで下さった読者様にお願いです。


応援ポチ、星も付けて頂けたら嬉しいです。お願い致します。


私にポチをしてくれた。それはとても励みになるのです。


よろしくお願い致します。

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