第5話  パイセンのターン



何日かして・・・


人畜無害のパイセンせんぱいから、実行犯に招待状が出された。まぁ出して無いが、口頭だ(笑)。


「先輩のお話しだけよ、来ないと損するぞ(笑)」

「はい・・・」

「放課後なここに来てくれ」

「・・・」

「みんな、神谷先輩の話は分かったよな?」

「・・・はい」


微笑みながら放課後の待ち合わせを伝えた。放課後には卒業間近の三年の護衛が二名来たが、体育館裏のひな壇かいだんでパーティーを開催。招待してない人が居るけど、自分達で連れてきたんだから俺は知らん。


「そんじゃ、おまえらコレな」

「何ですか、コレ?」

「見たら分かるよ!それぞれ別の件だから(笑)」


イジメの詳細レポートを、案件ごとに加害者へ渡した。主犯格の女生徒は、見事に八割ほど絡んでいるから案件レポートの分厚い束だ。


「よーく、見てくれよ? 違っていたら修正するから言ってくれ。間違ってないはずだ。自分が一番分かってる筈だな?」


皆がイジメレポートを食い入るように見ている。


時系列、責任を取る親と加害者の名簿、何をやり、被害品。イジメ中の発言を一言一句たがわぬレポートにして加害者に確認してもらう。


「何か違ってたら教えてくれ」


彼女の名前は匿名とした。誰に対する人権侵害や犯罪なのか本人達が一番知っている。最後には「真実を語る証人」として、俺の名前と学年とクラスまで一緒に入っている代物だ。配った後。各自がレポートを読むに任せ、目をつむって深呼吸。



・・・皆が渡されたレポートに食い入る中・・・


俺は目をつむりルーチンを始めた。


気合い入れろよ俺!今からお前がトップカーストのプライドを叩き折るんだ。地べたにつくばらないとこいつらは絶対解らない。痛い目に遭わないと絶対解らない。人の弱さを教えてやれ。悲しみを教えてやれ、われる痛み、喰われる怖さを叩き込め。思い知らせろ。お前がやるんだ。ヌルイ事するなよ。躊躇ちゅうちょするなよ。地獄に叩き落せ。苦しみを教えてやれ。めるとわれるぞ。絶対に逃がすな。お前が決めろ!お前が終わらせろ!心に刻んでやれ!こいつらが何をやっていたのか、あのフラッシュを思い出せ!あの子を思い出せ! 



ヨシ!準備完了。


タイムリミットは来てないのに、悪鬼が召喚されていた。


以後、ずっと人畜無害のパイセンのターン。


「これを拡散して大炎上させるから、異議があったら名誉棄損めいよきそんで訴えてくれ」


「え!ちょ、コレ!」

「嘘!・・・」

「マジかよ!」


皆が返事も出来ない程の衝撃を受け。連れて来られた先輩も後ろから覗き込んでその重大さを悟った。皆が驚き、レポートの犯罪記録を見るのに必死で声が出ないうちにたたみ掛ける。


「拡散したら高校生活どころか大学生活ぐらいまでは人生終わるからな。エゴサーチとかするだろ?あれ消えないし、出るとこに出たら被害者への賠償責任はあなたたちの親にあるからね」


誰もこっち見てない(笑) 見てくれー!


「そこにいる三年! こいつらを擁護ようごする立場だよな?一緒にイジメ賛同者で名前せるかどうすんだ?」


「俺は呼ばれて付いて来ただけだ・・・」

「そっちのは?」

「俺もそうだ、コレには関係ない」

「そんじゃ、文句ねぇんだな?」

「・・・」

「文句ねえなら黙っててくれ」


と言った所で三年二名を睥睨へいげいして一旦声を止める。


「スマホで録音してるようだから、色々な人に聞いてもらえる様にレポートを読むね。手伝ってあげるから自分達がしたことをしっかり録音しなよ? 良かったら実況するか?」


録音している三人に視線を合わせて言う。


「10月24日(火曜日) 午後16時20分。 増田、山居、野元の被害者に対する暴行、傷害、器物損壊、名誉棄損の案件! 三名は放課後の教室において・・・」


体育館を越えてグランドにも聞こえる程の大声でレポートを読み始める俺。


「慌てて録音やめなくていいのにぃ(笑)」


お前ら髪の毛抜けるほど震え上がらせてやるからな。


三年は転びそうになりながら逃げて行った。卒業にケチは付けたくないよなぁ。


「三年帰ったけどいいの?次はもっと一杯連れて来てもいいよ。皆で一緒に大炎上しよう。火元はあなた方だよ、飛び火するだけだから大丈夫」


頼みの三年が居なくなり、皆はこの状況を理解した。


「多分、名簿のみんなで話し合うでしょ? 話し合う内容も筒抜けだからね。」


これ見よがしにワイヤレスイヤホンを耳から見せる。(これ見せないと辻褄つじつまが合わない)


みんながギョッ!とした顔で、お互いの顔を見つめあう。


あ!さっきの大声で4~5人こっちをのぞきに来てるよ。

ひな壇のやつらに俺がイジメられてるように見えるだろうなぁ。こっち来るなよ?


「一人ずつ、自分のレポートを熟読してね。真実なのは本人が一番わかってる筈。人生終わらすか、無かった事に出来るのかはおまえら次第だからよく話し合ってね」


「あーぁ、返事が無いなぁ・・・」



「・・・お前たちの返答次第じゃレポートの発表会があるから、精々誠意を見せてよね?」



ひと際、声を大きくして断言しておく。


「それだけの事して反省しない奴とかなぁ!レポートに異議があったら教師や警察や弁護士、親連れて来てもいいぞ。誰が来たって一緒、あなた方がしてきた事実を正確に伝えるだけだからね」


親にあることない事を言っている奴を見る。


脅迫きょうはくされてるから、お父さん助けて!とか言えば来てくれるんじゃないの?」


お父さん大好きな共犯女を見る。


「連れてきた人の前であなた方が演じている子供の皮を一人一人いで上げるから。そして大炎上と行きましょう」


両手を広げ高らかに宣言する。


「まぁ、出るとこ出たら子供のふりは出来ないよね。みんな可哀そうに、こいつ(指す)に踊らされて大変だねぇ。でもねぇ、みんな大喜びではしゃいでいたからさぁ、共犯だし犯罪は一緒だよね?」


一人一人の目を見て言い聞かせて行く。のどがゴクリと言うほどに緊張して声も出ない。


「次の誠意の話し合いは、君達が呼び出してね。今いる全員が揃ってないとダメよ。休んで逃げられると思っちゃダメよ、逃げたら兄弟姉妹や親の所にお邪魔するから」


粘着質の言い回しで恐怖を誘い、下種げすきわみの笑みを披露する。


「逃げたら同じレポートの人は連帯でさらすから、逃げたやつを恨んでね。俺の名前も一緒に出るけどまぁそれはいいや、ご一緒するよ」


悪戯いたずらっけを出して追い込む。


「一つ言っておく」


恐ろしい声音こわねで、一縷いちるの希望をっておく。


「優しい言葉だからってめんなよ。教師だろうと警察だろうと弁護士だろうと親だろうと全員返り討ちにするからよぉ。全部さらけ出してオレも一緒に大炎上してやるから、やるなら上等だ、掛かってこい!」


どんどん追い詰めていく。教室にぶっこんで学校巻き込む大騒動を考えたら穏便おんびんすぎて笑える。自分から厄介な事に首を突っ込んだ。身がすくむ様なあの黒い悪意を狩るにはへし折るのを戸惑とまどうと失敗する。まぁ最悪、恐喝者としてえる覚悟だ。



「そんじゃ、そういうことで!」


と、体育館裏のひな壇かいだん黄昏たそがれている後輩たちに向けて、ダルそうに手を上げた。


振り返って一言。


「あ!呼び出しさぁ、俺も待つのは嫌だから三日過ぎたら一日経つごとに罰ゲームにするわ」


自分たちがはやし立てて無理矢理むりやりやらせてきた「罰ゲーム」大好きだろうからさぁ。



家に帰るまでの間、手が震えて止まらなかった。

集団をネタで恐喝なんてやった事ないんだよ。しょうがないだろ。


スマホのボイスレコーダーから、間違いなく伝えるべきことを言っているのを確認する。


やつらの心象イメージをくまなく思い出す。


ヨシ。ここまでは主導権を握れてる。思惑通りに進んでる。抜けは無い筈だ。



さて、反省するかな? おまえら視させてもらうよ。




次回6話 ノリツッコミはお約束

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