思い出
伊丹玲斗②
※かなり暗い話になります、ご注意ください※
俺がネットゲームをしていた時代。
クラン『ヘヴン』を立ち上げて数か月が経った。
そんなうちのクランだが……気が付けば、所属人数が最大人数となっていた。
更には傘下のクランまで出来ているとの事だ。
俺が知らない間にどんどん大きくなったクランを少し複雑に思える。
それでも毎日俺と一緒に遊んでくれる固定メンバーが嬉しくて、毎日ネットゲームにのめり込んでいた。
それから更に数か月が経った。
固定メンバー以外の出入りは激しかったが、全てはリーダーが仕切ってくれてるから気にしなくていいとの事で、気にする事なく、俺は毎日固定メンバー達と楽しい時間を送っていた。
そんなとある日。
同じクランのメンバーの二人が、町の外れに行くのが目についた。
その日はたまたま狩りまで時間があって、俺は一人で町を散歩していたのだ。
何だろう……ものすごく気になる。
別にストーカーとか好きじゃないんだけど、俺は彼らの後ろを何気なく付いて行った。
奥には狭い場所に椅子が置いてあり、恐らくは裏路地のスクリーンショットを撮って遊ぶ場所だろう。
そこに二人が座った。
「はぁ、ヘヴンって、ほんとクソだね~」
「まだお前は新人だったもんな、そりゃ
「はぁ……お前はいいよな~直ぐにヘヴンの良さに気づいて、直ぐに入ったもんな」
「おう、知り合いのクソ弱キャラでレア武器持ったやつがいて、調べたらヘヴンで貰ったって噂があったからね。入ってから貰えるまでだいぶ待ったけど、今の俺ですらいいの貰えるぜ?」
「へぇー! いいなぁ」
「おう、ほらほら」
大きく赤い剣を取り出す。その剣からは炎が燃え盛っている。
「すげぇ! フレイムブレイド!?」
「おうよ! こんなのすら簡単に貰えるから頑張れよ」
「すげぇな! 夢あるわ!」
彼が見せているあの剣……うちの倉庫に既に五十本以上入っているはず……。
「これが下っ端の全員に行き渡るんだからな」
「ヘヴン、まじやべぇな!」
「上の奴らなんて、ディアブロソード持ってるやつもいたよ」
「は!? あれって実在している武器なの!?」
「おう、周りには言うなよ? どうやら、ディアブロソードはうちのクランにしか持ち主がいないらしい」
「まじか……あ~、あのハッカーの噂だろう?」
「おう、実際見た事あるんだけど、まじでやばかった」
「え? やっぱり、あの噂って本当の事なの?」
「ああ、どれを倒してもドロップがやばかった。あいつの事、運営が調べたらしいけど、白だったらしいぜ?」
「ひえーまじかよ…………どんなチートツールを使えば運営に見つからずあんなズルが出来るんだろう……羨ましいわ」
「だよなー、クランの上位陣のやつら……あれで荒稼ぎしているみたいだぜ?」
「は?
「そうそう、上位陣のやつらの中には仕事辞めてまでやってるやつもいるらしいよ。売れるくらいの在庫が確保出来るならそうした方がいいよなー儲かるしな」
「だな、俺も気に入られるように頑張ろうっと」
「ククク、あいつの所為でドロップ率も酷くなったしな~狩るだけ馬鹿馬鹿しいよ。ヘヴンで雑用してた方が儲かるわ」
「違いない。おかげで素材すらドロップ率酷いからな」
「全くだよー、これも全部『イタミ』様のおかげだな」
「ぎゃはは、違いない! 『イタミ』様に掛かればドロップなんて余裕だからな」
「間違っても『イタミ』様に声かけるなよ? 上位陣に弾かれるぞ?」
「おっ~こわっ~覚えておくよ。上位陣にいつも囲まれてチヤホヤされてるし、顔を合わせる事もないだろうよ」
「違いねぇ! 俺もたまに見かけるだけだしな」
彼らの話を食い入るように盗み聞きしてしまった。
最初はうちのクランの悪口かなと思っていたのに…………最後に出て来た名前…………。
それって…………。
「俺の……キャラ名じゃん……」
思わず、パソコンの前に声に出してしまった。
画面に映るのは、俺のキャラクターが映っていて、キャラの上にはキャラ名『イタミ』が見えていた。
彼らの話の内容を整理する。
その中には殆どが思い当たる節があった。
まずドロップ。
いつも固定メンバーと狩りに行くと、ドロップはわんさか落ちる。
それこそ、さっき見せていたフレイムブレイドなんて、拾おうと思えば一日数百本単位で拾える。なんせ、俺が狩れば、基本的に落ちるからだ。
さっき名前が出た『ディアブロソード』にも思い当たる節がある。
このゲーム内の最強ボスとして君臨しているディアブロ。
そいつを倒した時に落ちた武器だ。
あれを初めて見た時のメンバー達の喜びは凄かった。
だから……俺はメンバーと何度もディアブロを倒した。
ディアブロソードなんて……既に十本以上あるはず…………何なら俺の倉庫にも三本眠っているのに……。
俺は恐る恐る
俺がやっているネットゲームのRMTサイトまで見つけられた。
そこに映っていたのは…………
『ディアブロソード、オークション形式、三十万円からスタート、期間十日』
と書かれていた。
ページを開くと、そこには……多くの人で吊り上がっており、三十万円スタートから既に百万円を超えていた。
こ、こんな事が……こんな事が許されるのか!?
そして、俺は出品者の名前を見た。
『出品者、ハル』と書かれていた。
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