第23話 彼氏の運
盗賊ギルドの討伐から数日後。
盗賊達は全員王都に連行されて行った。
俺達は盗賊ギルドの壊滅に一役買ったという事で、後日報奨金を貰える事となっていた。
それと、丁度盗賊ギルドを壊滅した時点で、
- スキル『彼女』のレベルが上昇しました。-
- スキル『ステータス共有』を獲得しました。-
のアナウンスが流れていた。
◇
「さて、新しいスキルの『ステータス共有』なんだけど、いまのところ、スキルを使ってみようとしても使えなかった」
テーブルを囲んで、俺とクロエ、イリヤ、セリナの四人でティータイム中である。
ティータイム中だけど、新しいスキルの事を聞かれたのだ。
「名前的に『ステータス共有』という事だし……クロエちゃんに『ステータス』はあまり必要なさそうね?」
「そうね~、クロエちゃんの『ステータス』が上がっても使い道がないものね……」
二人も一緒に悩んでくれている。
「ん~、でも不思議な事に、上がっているステータスがあるんだよね……」
「え? 本当に? どのステータスが上がっているの?」
「えっと……、運が上がってる」
「「運??」」
「そう、元々運だけ高いんだけど、不思議と運がもう一段階上がっているんだよね……」
勿論、クロエも不思議そうにしている。
「そう言えば、ペインくんってどれくらい『運』が高いの? 多分、めちゃくちゃ高そうだけど……」
「え? 確かに『運』だけは高いかな? 一応、ステータスアップで――――」
イリヤとセリナが息を呑んだ。
「最大になったよ」
「「最大???」」
二人が首を傾げる。
「うん。元々
……。
……。
……。
二人の顔がポカーンしている。
数秒してイリヤが正気に戻った。
「やっぱりペインくんって、『運』がやたら高かったのね」
どうやらイリヤには思い当たる節があったみたい。
「以前稽古してみて、全ての木剣が一撃で偶々
「へ? なんであれで『運』が高いって分かるの?」
「ふふっ、『運』のステータスってね、特別なステータスなのよ。生まれながら数値が決まっていて上下させる方法はないの。唯一出来るのは『運』を上げてくれる装備を身に着ける方法しかないんだけど…………『運』ってそもそも低い数値と高い数値でまるで別物なの。ペインくんがトリプルだったって事は……全ての攻撃が『クリティカルヒット』していたに違いないわ」
へ?
クリティカルヒット?
なにそれ……?
ネットゲーム時代には確かに、クリティカルヒットという概念が存在していた。
相手の防御力を無視して、高いダメージを与えられる。
ただ、クリティカルヒットが出る確率はどう頑張っても四割までしかならなかった。
この世界のクリティカルヒットはなりやすいとかかな?
「私が知っている範囲で、今まで『運』が高くてAまでしか聞いた事ないの。Aですら……とんでもない『運』の良さだったと伝わっているわよ?」
「『運』の良さか~確かに言われてみれば……パンチ数発でゴブリンを倒していたな? 俺の才能平凡だし、レベル1だったしな」
「え!? 平凡のレベル1で? ゴブリンを?」
イリヤが驚く。
「私……一応才能持ちだけど……ゴブリンを素手では倒せる自信ないかな……」
というか、セリナも才能持ちだったのか!
あれだけ回復魔法とか使えるしな~。
「あれ? でも『運』が上がってる?」
「なんで『運』だけ上がってるのか、分からないんだよね」
クロエも不思議そうに首を傾げている。
「クロエちゃんって『運』を上げる要素ないのかな? 装備とか……」
「『運』を上げる要素?」
……。
……。
……。
「あ!」【あ!】
クロエと同時に声が出た。
「ペンダント!」【ペンダント!】
クロエと目が合ってその場で立ち上がった。
そして、クロエが首にかけていたペンダントを手で持ち上げる。
星型の金属がキラリと光。
「「ペンダント?」」
「ああ、以前露店で『運気が上がる』と言われた星型ペンダントを買ってさ、クロエがそれを着けてくれているよ」
一瞬二人の目から殺意を感じられた。
いや、きっときのせいだろう。
「それって、もしかして
「ん? 確かそんな名前だったね」
「うわ……ペインくん流石だね……」
「えっ? どうして?」
「そのペンダント……中々手に入る物じゃないの。場合によっては金貨百枚でも買えないわよ?」
「ええええ!? ぎ、銀貨数十枚で買えたんだけど……」
「す、すごいわね…………それも『運』ステータスの効果だと思うよ? あらゆる事象で『運』が良くなるはずだから……」
あらゆる事象で『運』が良くなるか……。
「確かにな、当たる節はあるかな……」
「当たる節?」
「ああ、俺には
【ぺ、ペインくん! か、彼女は私だからねっ!】
いきなり隣に言い寄るクロエを宥める。
別に男性とか女性とか、そういう事を言いたかったわけではない。
俺という人間をちゃんと見てくれる人に出逢えた。そう言いたかったんだけど、どうやらクロエは勘違いしているみたいだ。
でも、少しやきもちをやいてくれたのなら……嬉しいかな。
「「はぁ……」」
イリヤとセリナはお互いの顔を見つめ合った。
二人は呆れたように笑みをこぼす。
「「これは負けられないわね」」
◇
「えっと……この指輪
俺はテーブルに大量に並んでいる指輪を六個眺めた。
綺麗ではあるんだけど……何となく、不思議な力を感じる指輪だ。
「これは、私も普段使っている『ステータス上昇指輪』だよ」
「『ステータス上昇指輪』……」
「これをクロエちゃんに着けて貰って、ステータスが上昇するか試してみよう!」
イリヤのワクワクした表情に押され、俺は指輪をクロエに渡した。
クロエも楽しみそうな表情で、それぞれの指輪を嵌めた。
『ステータスボード』を開いて、ステータスを眺める。
クロエが赤い指輪を嵌める。
「お、力が上がった」
今度は青い指輪を嵌める。
「今度は耐性が上がった」
緑指輪。
「素早さが上がった」
紫指輪。
「魔力が上がった」
黄色指輪。
「体力が上がった」
白い指輪。
「精神力が上がった」
【うわー、指に指輪がいっぱいだよ~】
クロエが両手を上げる、両手親指と薬指以外の指に全ての指輪が嵌められていた。
「クロエ!? 指輪を一気に嵌めたの!?」
【え? あれ? 一個ずつ嵌めるの?】
「えっと、指輪って全部嵌めて効果あるの? 普通なら一つとか二つくらいしか効果がないと思うんだけど」
ネットゲーム時代でも、アクセサリーは二つまでしか装着出来なかった。
しかし。
「あれ? でもステータス全部上がってるな」
「!? ペインくん、クロエちゃんは指輪六つとペンダントを着けているのよね?」
「そうだね、それに俺のステータスが全部上がってるな」
「す、凄いわね……本来なら、補助用アクセサリーは最初に身に着けた物一つだけ効果があるはずなんだけど……全部って…………」
イリヤが驚きを超えて、呆れた顔をする。
俺もクロエを見ながら、笑みをこぼした。
困った表情のクロエがまた可愛かった。
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