第18話 彼氏と彼女達の絆
次の日。
俺はクロエとイリヤさんと共に、商会ギルドを訪れた。
「いらっしゃいませ」
緑色の統一された綺麗な制服の受付嬢が対応してくれた。
「土地を購入したくての相談です」
「土地ですね。ではこちらのプレートを持って、向こうの椅子で少々お待ちください」
プレートに八番って書いてあり、俺とイリヤさんは椅子に座り、数分待った。
数分後、向こうから「八番の方~」という声が聞こえたので、手を上げ、呼んでくれた方に近づいた。
「八番の方ですね、では案内します」
案内された先は、『土地部門』と書かれた部屋だった。
中に入ると、奥の机に少し強面の男性が一人座って待っていてくれた。
「ソファーにどうぞ」
ソファーに腰を掛けると、男性も向かえに座った。
「私はボロスと言います、それで、土地をお探しだと?」
「はい、街の西にあります孤児院の隣の空き地を買いたいんですけど」
「ふむ……」
ボロスさんはテーブルに街の地図を広げた。
そして、西にを指さし、
「この地域ですね?」
「はい、孤児院の丁度隣に空き地がありますよね?」
「確かにありますね…………ただ、ここの空き地は少々問題がありまして」
「問題?」
ボロスさんはソファーに大きく腰を掛ける。
そして、少し俺を下に見つめる。
「あの空き地は本来なら孤児院が立っている土地と同じなんです。ですがあの孤児達が勝手に住んでしまいましてね……この土地を買うなら、隣の孤児院の土地も全部買っ――――」
「それでいいですよ?」
「――――えええええ!?」
「?? 孤児院の土地ごと売ってください」
「え、えっと、既に孤児院が立っていて、色々めんどくさいですよ?」
「ええ、構いません」
顎をひと撫でしたボロスさんは、不敵な笑みを浮かべた。
そして、
「ではその土地の持ち主を紹介しましょう。大体の値段は金貨二十枚になりますが、宜しいですか?」
「へぇー、辺境地だから意外と安いんですね」
「や、安い!?」
土地の値段は、既にクロエの『分析眼』である程度予測していた。
あの土地の値段は本来なら倍は高いはずなのに……その半額か。
「こほん、取り敢えず、土地主に明日の正午にその地に向かうように連絡しておきます。その時、契約書とかも持って行きますので、よろしくお願いします」
「分かりました。では明日、よろしくお願いします」
◇
次の日。
孤児院で待っていると――――
「おらおら、ここは俺らの土地だぞ!」
と強面で武器を携帯した数人の男がやってきた。
「盗賊ギルドのペリシャさんですね。待ってました」
「なっ!? なんで俺様の名を!?」
「土地主の名前くらい、調べるでしょう?」
「くっ、おい、てめぇ……有り金全て置いて、出ていきな」
俺はペリシャに向かって、財布を広げた。
「これが全財産なので、出ていきますね?」
「なっ!? おい、てめぇ! ふざけんなよ! 土地代金貨二十枚置いていけ!」
「ふぅん~土地代二十枚って良く分かりましたね? それも商会ギルドのボロスさんの指示ですか?」
俺は不敵な笑みで返す。
少し焦り表情にあるペリシャ。
「くっ、おい! このガキをボコボコにしろ!」
「「「はつ!」」」
大の大人、十人が束になって出てきた。
「仕方ありませんね」
飛びかかる虫は払わないとね!
最初に仕掛けた男を避けて、ストレートパンチをお見舞いする。
何故か、ドカーンって音がいて、一発で男が口から泡を吹いて倒れた。
あれ?
めちゃくちゃ弱い?
それと、俺のパンチ、こんな凄い音してたっけ?
「こ、この野郎!」
次に仕掛けて来たやつの攻撃の前に、足で転ばせる。
転んだ相手は運悪くそのまま地面に頭を強打して、立ち上がらなくなった。
次々襲うやつらを次々ストレートパンチで沈める。
全員一発でダウンしてるけど……こんな弱いやつらが盗賊ギルドだなんて、情けないね。
「くっ! ガキ一人に何手こずっているんだよ!」
今度はペリシャが襲って来た。
中々に素早い。
しかし、ペリシャの短剣は俺を掠りもしなかった。
足蹴り一発で吹き飛んだ。
「ペインさん! 無事ですか?」
「セリナさん、片付けましたよ」
安堵したように息を吐くセリナさん。
実は、昨日の商会ギルドで既におかしいと思った俺は、クロエにお願いして、そのまま尾行して貰った。
予想通り、ボロスが盗賊ギルドに通じていて、明日、弱そうな俺を襲って金品を奪って消すつもりだったらしい。
なので、ここで迎え撃つ事にした。
クロエのおかげでボロスが盗賊ギルドに繋がっている証拠も揃っているので、証拠回収はイリヤさんに任せた。
そろそろボロスも捕まって、ここにも衛兵が来る頃だろう。
こうして、俺達はボロスの悪事を終わらせた。
――――と思っていた時。
「ぐはっ……せめて女くらい道ずれにしてやる! し、死ね!!」
意識を取り戻したペリシャの短剣が、ものすごい勢いで俺ではなくセリナさんに放たれた。
「あ、危ない!!!」
俺は無我夢中で、セリナさんを庇うため、飛び込み、意識を失った。
◇
「ど、ど、どうしよう!!!」
自分の代わりに短剣を受けて倒れたペインの前に泣き崩れるセリナ。
直後、イリヤが衛兵を連れ戻った。
「!? セリナさん、一体何が?」
「い、イリヤさん! ペインさんが私の代わりに……」
「くっ! 猛毒!? まずい、セリナさん、解毒魔法が使える人を知りませんか?」
「え、え、えっ、ど、どうしよ……」
「くっ!」
パチーン
イリヤの左手が、セリナの頬を叩いた。
「痛いでしょう!? でも、ペインさんはそれ以上に危ないんです! 落ち着いて! 解毒魔法が使える人に心当たりは?」
「あ、あう……わ、私が使えます!」
「分かりました。セリナさんはとにかくペインさんに『解毒魔法』をかけてください」
「は、はい! 聖なる光よ。我の声を聞き届けたまえ。リフレッシュ」
セリナの両手から淡い緑の光が溢れ、ペインを包んだ。
「ど、どうしよう! 私の魔法ではペインさんが持たない!」
見る見る毒が消えてはいるが、ペインの顔色が優れない。
毒が完全に消し去るまでに、ペインの体力が持たないのは、長年戦いに身を任せていたイリヤも、回復魔法が使えるセリナも感づいていた。
「セリナさん! 魔法を辞めないで! 最後まで希望を捨てちゃ駄目です!」
「い、イリヤさん……」
「大丈夫、ペインさんなら絶対に助かる。だから、魔法を続けて!」
イリヤの懸命な励ましに、涙をボロボロ流しながらもセリナは魔法を続けた。
時間さえあれば治せるのに――――と二人の思いが奇跡を呼んだ。
解毒魔法の途中、ペインの身体から初めてみる青い光が溢れ出した。
二人はその光の正体を知る由もなかった。
しかし、その光がペインを守っている事を確信する。
セリナは諦める事なく、魔法を続けた。
――――三分。
その短い時間で、一度は命を落とすかも知れなかったペインは、彼女達
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