第12話 彼氏の実情
大急ぎでベッドから降りて、ベッドに向かって土下座する。
俺が動いた音で、クロエと団長が起きた。
「だ、団長! ご、ごめんなさい!!」
「ほえぇ~~?、あれぇ……ここ……どこかにゃ?」
団長は眠そな顔で回りを見回す。
そして、視線が俺に向いた。
……。
……。
……。
彼女の顔が段々赤くなっていく。
そして、彼女が俺の前に飛び上がり――――
「ご、ごめんなさいごめんなさい! こんな女と同じベッドで、本当にごめんなさいごめんなさい!」
「い、いえいえ! 俺なんかの男と同じベッドで眠るだなんて、本当にごめんなさい!!」
それから俺と団長の謝り大会が始まる。
一緒に起きたクロエが俺達を見ながら、大笑いしていた。
俺は逃げるかのように団長の部屋の窓から外に飛び降りて、宿屋を離れた。
何となく、団長の部屋から出るのを見られたくなかったのが一番大きい理由だ。
クロエは何が面白いのか、ずっと笑いこけていた。
涙が出るほど笑っている彼女が可愛い。
- スキル『彼女』のレベルが上昇しました。-
- スキル『分析眼』を獲得しました。-
へ?
レベルアップ?
何故このタイミングで?
そんな事を思いながら、泊まった宿屋が怖くてひたすらに走って俺が泊まっている宿屋へ逃げ込んだ。
◇
「く、クロエ……」
「ん? どうしたの?」
「え、えっと……その…………ごめん」
「へ?」
「え? ほら、あの、違う女性と一緒に
「あ、あ~、だって、私も一緒に寝ていたし~」
「そ、そっか……確かにそれはそうよね…………はぁ」
まさか自分がこんな立て続けに女性と同じベッドと共にするとは……。
男女の事くらいは向こうのネットで勉強している。
きっと、ああいう事はなかったと信じたい……うん…………大丈夫だろう……。
「あ、そう言えばね、さっき新しいスキルを覚えたんだよね~」
「あ、俺も聞いた。『分析眼』とか言っていたような? 特に俺には変化がないんだけどね」
「ペインくんは変わりないのね? 私は随分と変わったよ?」
「どんな風に?」
「なんかね、見える物の全てに詳しい情報が見える感じ、でも視界は邪魔されない不思議な感じかな~」
あれかな?
ネットゲーム時代に、ウィンドウ画面で画面が隠れてしまって、狩りに不満が出た時があって、その会社は苦肉の策で、ウィンドウ画面を透けるようにして、ウィンドウ画面を開いても常に画面全体が見えるようにアプデを施してくれた事があった。
使い慣れると非常に楽で、常に道具袋を展開したままでも楽に狩りが行えるようになって、ユーザーからは大変好評だった記憶がある。
きっとそんな感じなのだろうね。
「なんか物とか人とかの情報も見れちゃるかな? ペインくんの情報も見れるよ~」
「おおっ、それはちょっと気になるな~」
「えっとね、ちょっと待ってね…………これをこうして……ごにょごにょ……」
クロエは見えない空間に向かって、指を懸命に動かす。
ウィンドウをクリックしているのだろうか。
「えっと~えっと~ここをこうして…………ああっ! 違う……ここをこうして…………」
一所懸命に指と瞳を動かしている彼女の姿がまた愛おしい。
暫く何かを操作していた彼女だったが、「出来た!!!」と喜び飛び跳ねた。
何がどうなったかは分からないけど、取り敢えず拍手してみる。
ちょっと照れる彼女がまた――――
「では、見せてあげるね。ほらっ」
彼女の声と共に、俺の目には予想していたウィンドウ画面が広がった。
「おおお~!、部屋中の物の名前とか詳細とか色々見れる! これは凄いね」
「うん! 一応、私が見た事ある物しか見せられないけど、一緒にいれば問題ないからね!」
これはまた彼女の力が強くなったんだね。
俺自身と、クロエの詳細は見れないけど、クロエは俺の詳細が見れるらしい。
ちょっと聞いてみたいけど、怖いのでやめておこう。
そういや、とても気になっていた事がある。
ふと、自分の『アイテムボックス』から愛剣を取り出した。
『名前 ダーインスレイヴ、種別 長剣、切れ味レベル SSS、資産価値 金貨百枚』
「えええええ!? く、クロエ!! この、け、剣、とんでもない事書いてあるんだけど!?」
「あはは~きっとペインくんの日頃の行いが返って来たんだと思うよ?」
「日頃の行い……?」
ん……考えれば考えるほど…………俺って、クロエに酷い事しかしてないんだよな……。
「ほら、町を見回ってた時、迷子を案内してあげたり、孤児達にご飯を奢ってあげたりしていたでしょう?」
「えええええ!? クロエ、覚えていたの!?」
それには物凄く驚いた。
実は、カレンさんと出会う前。
俺は三日程、町の雰囲気を感じる為、歩き回っていた。
その途中途中に物乞いをしている孤児達や道に迷って泣いていた子を衛兵さんの所まで連れて行ったりしていた。
善人ぶるつもりはなかったけど、クロエの事をNPCと思っていた時期だったから、この世界の事を頭ではネットゲームと同じ目線で見ていた。こういう子供達に恵んだりしたのは……サブクエスト感覚で行っていた。
だから、正直……誇るような話ではないのだ。クロエにはこの気持ちを素直に伝えた。
それを聞いた彼女はキョトンとした顔になり、次第に笑みに変わった。
「ふふふっ、もしそれが善意ではなかったとしても、ペインくんが一所懸命に孤児達に食料を届けたり……今でも届けているのも知ってるよ。迷子の子を連れて行く時も、怪しまれないように一所懸命に説得してたのも見ているからね。――――――とてもかっこよかったよ。だから善意じゃなかったとしても、ペインくんが行った事は事実だから、私だけはその事実をちゃんと見ているからね!」
あはは……クロエには勝てないな…………。
そうか……俺……誰かの役に立てたんだな。
もしかしたらサブクエストと思うようにして、俺は誰かの役に立ちたかったのかも知れないね。
にしても……この剣、サクサク切れるなと思ったら、物凄く強い剣なのは間違いなさそうだ。
オークの住処でもこの剣が無ければ、あんなに斬って逃げる事は出来なかったんだろうな。
「あ、それとね、ペインくんって異常に運のステータスが高いから、何をやっても良い事ばかり起きると思うよ?」
「え? あ~そう言えば、俺のステータス、運に偏っていたね」
「うんうん! 運のステータスは生まれ持った素質だから、幾らレベルが上がっても一切変動しないの、装備で上げる事は出来るんだけど、運ってステータスの上下値で差が大きいから、元々低い人が上げてもあまり効果はないの」
「へぇー、俺の運は最初から
ネットゲームでも運が良すぎて色々大変だったっけ……はぁ、あんまり思い出したくはないな。
「そのステータスは色んな事象に都合良く働いてくれるステータスなんだよ! 高ければ、他のステータスよりずっと心強いステータスだね!」
「そっか、あ~、でも……確かに俺の運がトリプルなだけあって、得した事はあるな」
「ほえ? どんな事なの?」
「ふふっ」
「???」
俺の前に首を傾げる美女。
俺の人生最大の運の良さは――――――
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