彼女 LV.1

第1話 スキル『彼女』

 ※彼女レベル1は暗い話が続きますが、レベル2から爆発します。是非七話まで読んでみてください※




 ふ…………ふざけるなぁぁぁ!!!!


 確かに俺は彼女が欲しいと言った!


 でも……。


 俺が欲しかったのは本物・・の彼女なんだよ!!


 何故なんだ…………。


 何故本物の彼女がじゃなくて、スキルなんだよおおおおお!!!




 ◇




「本当にカノジョで良いんじゃな?」


「はい! 他は何もいりません! 可愛い彼女が欲しいんです!!」


 あの時……俺はどうしてちゃんと・・・・聞かなかったのか。


「本当にギフトスキルはカノジョがいいんじゃな?」


「はい! ギフト本物のは彼女でお願いします!!」


「ふむ、物好きなやつじゃのう、分かったわい。では新しい世界で楽しく生きるんじゃぞ?」


 そして俺は光に包まれ、何処かも知らない世界へ転移した。


 その時――。


 - スキル『彼女』を獲得しました。-




 …………?




 ◇




 俺が目を覚ますと、目の前に広がっていたのは広い平原だった。


 自分の髪をゆらりと揺らす穏やかな風が吹いている。


 こんな自然の風を感じたのはいつぶりだろう。


 この世界は新しい世界だと、夢(?)のお爺ちゃんはそう話していた。


 見渡す限りは只の平原だが、日本のような雰囲気は全くないのが良く分かった。


 さて――――このまま平原にいても仕方がない。


 町でも探すか――。



 - スキル『彼女』を使用しますか? -



 ふと頭の中で声がした。


 そう言えば…………『彼女』が欲しいと言ったら、スキル『彼女』を獲得したんだっけ……。


 はあ…………。


 今更、モテるスキルをくださいとは言えないし……。


 このままいても、何も始まらないし、使ってみようか。



 はい、使用します。



 - スキル『彼女』を使用しました。-


 その言葉と共に俺の前に人型の光が現れた。


 光る影? 見たいな感じだった。



 そして、その影は少しずつ形を成していき……、一人の『女の子』になった。



【こ……ここは?】


 彼女の綺麗な声が俺の頭に響いた。


 何だか……ボイスチャットで耳元から囁いてくれる感じ。


 そんな彼女は周りを見回り、俺を見つけると、少し不安そうな表情で見つめてきた。


【は……はじめ……まして?】


 恐る恐る俺に挨拶をしてきた。


 しかし……この女の子……!


 滅茶苦茶可愛すぎる!!


 こんな可愛い子が…………俺の『彼女』なのか!?


「お、お、お、お、おれは……た、た、た、た」


 ぐあああああ!


 女の子とまともに話した事がないから全然喋れねぇ!!


【ふふっ】


 そんな俺を見て、彼女は優しく微笑んだ。


 その眩しい笑顔に俺も何処か安心してしまう。


【はい、まず深呼吸してみよー!】


 彼女はそう話すと深呼吸の真似をした。


 俺もその姿につられて深呼吸をした。


 す――は――す――は――。


 ふう、少し落ち着いたわ。


 彼女は僕を見つめていた。


 まだ自己紹介の前だしな。


「えっ、と、お、れ、れ、い、と」


【???】


 首をかしげる彼女の姿がまた可愛い。


「お、れ、の、な、ま、え……い、た、み、れ、い、と」


【あ~! 名前ね! レイトくんっていうのね!】


 俺は大きく頷いた。


 嬉しそうに笑う彼女がまた可愛すぎて……。


【私はクロエって言うの!】


 クロエちゃんか! 中々良い名前だ!


【これからレイトくんと一緒に旅が出来るなんて! とても嬉しいわ】


 おう! 俺も凄く嬉しい! こんな美人さんが俺の彼女だなんてな!


 そんな事を思っていると後ろから聞き慣れない声が聞こえた。



 キ――キ――――。



 聞き慣れない声に振り向くと、そこには良く見慣れた・・・・モノがいた。


 それは――――。


 ゴブリンだ。


 ゴブリンはネットゲームでも序盤のレベル上げ用魔物だ。


 身長は一メートルくらいで身体は緑色の醜い小悪魔っぽい魔物だ。


【レイトくん! あれはゴブリンって魔物なの! 今のレイトくんなら倒せると思う!】


 ゴブリンは最序盤の魔物だしね。


 しかし……どうやって戦えばいいんだ?


 そんな事を思っているとゴブリンは容赦なく俺に飛びついてきた。


 くっ……。


 ゴブリンの攻撃を紙一重で避ける。


 ひぃ!? これ本当に倒せるのか!?


【レイトくん! 君の素手でも十分に攻撃出来るよ!】


 彼女のアドバイスを聞き、僕は思いっきりゴブリンを殴った。


「う、うわあああああ!!」


 僕の渾身のストレートパンチがゴブリンに直撃した。


 手に感触が真っすぐ伝わってくる。


 今まで誰かを殴った事なんてなかったのに……。


 俺の一撃でゴブリンが吹き飛ばされた。


 意外といけるのか?


 それから数回ゴブリンの攻撃を避けながらストレートパンチを叩き込むとゴブリンが倒れた。


【やったね! ちゃんとゴブリンを倒せたよ!】


 彼女は嬉しそうに喜んでいた。


 はあはあ……向こうでは誰かを殴る事なんてなかったから……ゴブリンではあるけど実際に誰かを殴る感覚ってこういう感覚なんだね。


 俺はあがった息を整えた。


【レイトくん! 心の中で『ステータス』を意識してみて! そうすると『ステータス』が見れるよ!】


 ん? ステータス? ますますネットゲームみたいだな。


 俺は心の中で『ステータス』を意識してみた。


 何となく意識してみただけなのに、心の中にメニュー画面があって、それを押す感覚だった。


 ネットゲームと似た仕様だから、簡単に使えそうでよかった。



 [ステータス]

 名前 ペイン

 才能 平凡

 称号 転移者

 年齢 18

 レベル 1

 体力 E

 魔力 E

 力 E

 素早さ C

 耐性 C

 精神力 B

 運 SSS

 スキル 『彼女』



 おお~! これが俺のステータスか。


 才能が平凡って!


 神様よ……せめて転移させるんならもうちょっとマシな才能にしてくれてもいいじゃないか?


 あ……俺が要らないって言ったっけ……はあ。


 能力値は割と偏っているな。


 運が異様に高いんだけど……確かに俺は運が良い方だったしな。


 自販機で飲み物を買うといつも当たりを引いてもう一本貰っていたっけ。



 そして最後の欄にある……スキル。


 スキル『彼女』。


 俺の前でにこやかな笑顔の美少女だ。


【どう? ちゃんと見れた?】


 彼女の質問に俺は大きく頷いて返した。


「で、で、で、でも…………な、ま、え、ぺ、い、ん、だった」


 ふう、美少女に話しかけるだけで一苦労だわ。


【そっか~こっちの世界の名前だし、仕方ないかも知れないね、どうしてペインくんなんだろう? ではこれからはペインくんって呼ぶね! これからよろしくお願いします】


 彼女はペコリと頭を下げた。


 俺もぎこちない笑顔で返事を返した。


【それじゃペインくん! あっちの方向に街があるはずだよ!】


 彼女が指さす方向には……何も見えなかった。


 どんだけ遠いんだよ。


【多分三日くらい歩けば着くかな?】


「三日!?」


【休まず寝ずに行けば一日くらいで行けそうなんだけどね……】


 いやいや! 休まず寝ずってヤバいだろう!?


 こう見えても引きこもり十年以上やっただけの事はあるぞ!?


 そんな歩いたら絶対足折れるだろう!


 家から出ただけで死んだのに!!



 一先ず、彼女の指さした方向に歩きだした。


 動かないと始まらないしな。


 それから数時間歩いた。


 ――――――無理!!!


 どんだけ歩くんだよ!!


 神様! どうせなら街に転移させてくれよ!



 そんなこんなぐだぐだしながら俺は歩き続けた。


 時折、クロエが何か話してくれたけど、こんな美少女とそう簡単に話せるか!


 相槌くらいしか打てなくて、そのうち何も喋らなくなった。



 そのまま歩き、夜になって野営する事になった。


 道具も何もないのでテキトーに木の元に座った。


 はぁ……。


 いつになれば街に着けるのやら……。


 でもよく考えたら……街に着いてもお金ないんじゃ……。


 俺が頭を押さえていたら、クロエが心配そうにこちらを見つめていた。


 美少女に見られるだけで元気にはなりそうだ。


 しかし――――。


 次の彼女の発言で僕に更なる追い打ちをかけた。



【あ、ペインくん、先に話しておくけど……私はペインくんの『スキル』だから…………他の人には見えてないし、話す事も出来ないからね?】



 え? この美少女って俺にしか見えないの?


 つまり……今まで俺はずっと独り言をブツブツ話してる気持ち悪い奴に見えたって事!?

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