合同査問会議
召喚の朝
無機質なアラームの音が私の耳元で鳴り響く。そのアラームは私の耳を打ち、その奥にある脳を振動させ、さらにけたたましさを増して鳴り響いた。この音は間違いなく午前七時半だ。起きなければ。
「一、二の……」
そう声を出してタイミングを取り、「三」と叫ぶと同時に布団を取る。六月ながらまだ寒いこの安アパートの早朝は、私を冷たく包み込んだ。朝食を取るべく冷蔵庫を開けるが、冷蔵庫は電源すらついていない。そういえば私は四ヶ月間も船に乗っていたのだから、よく考えれば当たり前のことだった。
「さあ困ったぞ」
私は短時間の熟慮をした後に財布を取り出す。中に入っているのは少額硬貨ばかりだが、数えた限りでは牛丼二杯分を優に超える価値があるのは明白だった。……牛丼?
――そうだ、食券販売式の牛丼屋に行こう。
私はそう心に決めて三百六十
「行ってきます」
私の声が玄関に響き渡り、それを扉が閉まる音がかき消す。建て付けの悪い扉はギシギシと音を立てつつ鍵を受け入れ、私は渾身の力で扉を持ち上げてから鍵を回した。カチャリと言う音とともに頼りない鍵が――泥棒に狙われないのが不思議なほど時代遅れのディンプル錠が――閉まった。私は階段を降りて市街地に出ると、牛丼屋を目指してただ歩く。牛丼屋の扉は思いのほか軽く開き、食券機の自動音声が私を出迎えた。
「いらっしゃいませ」
私は学生時代と同じように牛丼の並盛りに味噌汁、酢の物、そして漬物をつけたセットのボタンを押し、三百六十斤の小銭を券売機に流し込む。券売機は苦しそうな音を立てて小銭の額を計算し、数秒の後に薄い赤色の食券を何食わぬ様子でがちゃりという音とともに吐き出した。券売機の横に掲げられた店員の札には見知った店長の名前が書かれている。カウンターで食券を出すべくベルを鳴らすと、店長が現れた。
「いらっしゃいませ」
「これをお願いします」
私が食券を手渡すと、店長は私の顔を見て懐かしげに言った。
「利久村君じゃないか、久しぶりだね」
「覚えていてくださったんですね」
店長は大きく頷いてから質問を投げかけてくる。
「どうしたんだい、ここ一年全然見なかったけど」
「艦隊の仕事が忙しくて、全然戻っていませんでしたからね」
店長は誇らしげにもう一人の店員――新入りらしい正社員に語る。
「利久村君だ。三年来の私の友人だよ」
「り、利久村!?」
正社員は驚いた様子でこちらを見た。何が何だかわからないまま突っ立っていると、正社員はメモ帳とペンを取り出す。
「サインを頂けますか」
「え」
私はさらに困惑した。店長がそっと私に尋ねる。
「えっと……血殺団の乱の鎮圧に多大な功績を挙げ、さらに遠征任務から昨日帰還したっていう情報がトップニュースになってるんだ。わかりやすく言うなら利久村君は今、英雄として認知されてる」
「なるほど」
私は納得し、名前をなるべく丁寧な字でメモ帳に書いた。彼は満面の笑みでお辞儀をすると、「家宝にします」と言ってメモ帳を閉じる。
「さて、調理にかかるから三分待ってくれるかな」
店長は正社員にお茶を淹れるよう指示すると、厨房の方へ戻っていった。
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