地球艦との共闘

「こちら瑠国第八艦隊分遣隊第一別働隊旗艦『入谷』、司令官の利久村下級准将である。地球連邦艦隊、応答せよ」


 私がマイクを握って通信を開始すると、地球連邦の小艦隊はすぐに応じた。


「こちら地球連邦第三十五任務部隊旗艦『ウラナミ』、『入谷』に告ぐ。要件を伝えよ」


「こちら利久村、『ウラナミ』へ。そちらの指揮官と通信させられたし」


「こちら『ウラナミ』、了解。指揮官と代わる」


 その通信が入った二秒後、再び通信が接続される。甲高く芯の通った女性の声が、スピーカーを震わせた。


「こちら第三十五任務部隊指揮官ローズ・マティクス少将。コモドール・リクムラ、要件を伝えよ」


「こちら利久村、応答感謝します。ローズ少将、地球連邦の索敵システムはかなり強力であると聞いております。その索敵能力をもって、我々に協力してほしいのです。我々はあの敵の正体を明確にすることを目的に行動しています。貴艦隊の作戦の邪魔はいたしません」


「わかった。我々の作戦目的もまた、謎の敵の正体を明かすことだ。協力させてもらおう」


「ありがとうございます」


「ただし、貴艦隊が我が艦隊と常に情報を共有することは必須条件だ。我が艦隊も同様に情報を共有する」


「わかりました。ではそうさせていただきます。我々の後ろに艦列を並べてください、火力はこちらのほうが上です」


 通信が終わると、地球艦隊は入谷の後ろに続く駆逐艦隊の更に後ろに続いた。


「我々第三十五任務部隊としては敵艦のあとを追尾して敵の母港なり母星なりを探すべきと考えている。コモドール・リクムラ、貴官の意見を聞きたい」


「我々としては撃破した敵艦をサルベージし、敵の宙図および敵の言語情報を入手することが先決であると考えます。敵艦の残骸を検査すれば、新たな情報が得られると思われます」


「そうか。では撃破した地点まで戻らないとな」


「いえ、それには及びません。我々は撃破した敵艦を回収する準備を既に開始しています」


「ほう」


 その時、駆逐隊からの連絡が入った。


「こちら第二〇三四駆逐隊、サルベージを完了しました。敵艦残骸内に生存者はありません。敵兵はサイボーグのようです」


「了解」


 私は再びローズ少将に連絡を入れる。


「敵艦のサルベージが終わったとのことです。新たな情報も出てきました。分析結果を待って、会議を行いましょう」


「わかった」


 ローズ准将がそう言った直後、駆逐隊は合流を開始し残骸を入れたコンテナを「入谷」に輸送し始めた。「入谷」はそのコンテナを貨物区画に係留し、分析を開始する。分析完了の報告は、一時間後にもたらされた。

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