地球戦線の光芒
新たなる航海
「『入谷』です」
「なんだか空母みたいな奴ですね」
「はい。この艦は空母と戦艦、それに格闘機動戦闘艦の機能を組み合わせた複合戦闘艦です。単位編成による艦隊作戦ではなく単独作戦向けの能力を多数備えています」
「……そうですか。具体的には?」
「艦載機甲板から砲戦甲板がせり上がる機構、戦闘能力を高めるための強化型ブースターなどです」
「上手く扱えるかは艦長次第って奴ですね」
「一応前の艦長も事故は起こしていませんからそのようなことは」
「その艦長の経歴もなかなかに凄いからまあ大丈夫だったということですかね……。船体色が緑なのはどうしてですか?」
「ああ、あなたの乗艦である伊〇一二の塗装にあやかったものです」
「あれは確か戦隊
「ええ、いずれはこの緑があなたの個人識別色になるでしょうね。緑はいい色です。
「お気遣いありがとうございます。確かにいい色ですね」
実のところをいうと、私が一番好きな色は緑色なので伊〇一二に着任した時は嬉しくて色をそのままにしたのだった。標準塗装より目立つにしても、負けるつもりはない。
「では乗艦をお願いします」
瑠国皇紀二二六九年五月三十二日午後六時十分、私が乗る新鋭一等戦闘艦「入谷」は第八十二工廠付属泊地を護衛艦「
「全艦、重力航法準備!目標セット、ササク岩礁帯付近!」
私の命令に、機関士が即答する。
「了解、到着予定は九十三時間後です」
「第一九三日出丸より速いじゃないか」
「新型重力航法機関の実力ってやつですよ。伊級小戦艦の二倍出ますからね」
「準備及び計算完了!目的地セット完了!」
「佐留波及び神庭も完了とのことです!」
「よし、重力航法開始」
落ちるような感覚のあと、入谷は再び宇宙空間に姿を現した。電信内容によるとすでに講和会議は始まっているらしい。
「前方、未確認艦五!敵味方識別信号、確認できません!」
「測的完了、どうやら味方艦がやられた敵と同一の模様!」
「機関波長チェック、データベースの敵艦と一致!種族仮称“兵機人”強襲艦です!付近に敵艦載小型艦も確認しました!」
「よし、交戦準備!全砲門、発射準備!艦載機甲板、全機緊急発進の後に砲戦甲板展開!護衛の二隻は協同で敵の背後に回り込み、挟撃せよ!」
艦載機が発艦し、砲戦甲板がせり上がった。敵機が散開し、敵艦は速度を上げる。
「敵艦が接近する前に砲撃だ!主砲、現照準のまま射撃せよ!主砲、撃ち方はじめ!」
「了解!主砲、撃ち方はじめ!」
主砲から猛烈な砲火が敵艦に浴びせられた。すぐに弾着観測の結果がもたらされる。
「
「この距離で命中しないのか……まだまだだな」
私がそう呟く間に敵艦は速度をさらに上げたが、ついに命中した入谷の主砲一発が敵艦の右舷側を抉った。
「敵艦に一発、有効弾命中を確認!」
「続けて撃て!」
敵艦は右舷側をやられてもなお突っ込んでくる。と、敵艦の左舷で白い何かが光った。光は敵艦の前方で大きく広がり、そしてある一点を過ぎると縮小していく。
「敵艦から高エネルギー反応!発射型兵器の兆候と思われます!」
「前方部局所シールド展開!主砲、射撃続行!副砲、撃ち方はじめ!」
シールドが展開され、副砲が射撃を始める。副砲の命中弾はすぐに得られた。
「敵艦に副砲が命中!射撃を続行します!」
敵艦に主砲が二発命中し、敵艦が速度を落とす。と、敵艦が何かを発射した。それはいきなり船体正面のシールドに命中する。
「シールドに抵抗反応!敵艦、撃ってきました!」
「シールド、抵抗指数半減!消失まであと一分!」
敵艦の攻撃はかなり強烈で、一撃でシールドが弱化した。このままではあと数発食らえば「入谷」は木っ端微塵である。
「主砲、敵艦の左舷を狙え!護衛艦、雷撃開始!」
主砲が敵艦にさらに数発命中した。しかし敵艦の左舷にはなかなか当たらない。間髪入れず護衛艦から通信が入った。
「佐留波および神庭、雷撃を開始」
敵艦の左右に魚雷が命中し、敵艦はさらに速力を落とす。敵機は我々の飛行隊と戦闘に入ったようで、至るところで巴戦が繰り広げられていた。
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