橙瑠兵と血殺団機兵
突入後数秒で、たちまち無線は交戦開始の声に埋まる。血殺団の私兵組織、「血殺団機兵」が待ち受けていたことは容易に想像できた。だからこそ橙瑠兵士が必要だったのだと思われるような、そんな状況である。
「第三小隊、戦車とともに突入!敵兵を駆逐します!」
各小隊が突撃をかけ、そのたびに血殺団機兵は倒されていくと報告が入る。私は後衛を担当していた第八中隊に無線を繋がせた。
「第八中隊、応答せよ」
「こちら第八中隊」
「現在位置は」
「本堂中枢の第五ゲート外側です」
「よし、殲滅体制のままそこで待機せよ。敵が出てきたら無力化し、それから検挙せよ」
「はい」
私はそこで通信を切り、第一波の全部隊に命令を一斉送信する。
「第一波全部隊に告ぐ、第五ゲートの方面に敵を追え」
「了解!戦車隊、第五ゲートの方面に敵を追い込め」
「戦車隊に続け!」
前線では橙瑠の兵士たちが命令に従って中枢部の広間で戦った。第一波の部隊が戦闘を繰り広げ、第五ゲートの方向に着々と血殺団機兵を追い込んでいく様子を逐次報告する。
「敵を包囲しました」
待ち望んでいた報告に、私は追撃命令をかけた。
「よし、敵が第五ゲートを開けるまで攻撃を続行せよ。降伏勧告と後方への警戒を怠るな」
「了解!」
橙瑠の部隊が第五ゲートに血殺団の兵士たちを追い込み、次々に撃破していく。と、ついに第五ゲートが開いたようだった。第八中隊から攻撃開始の報告が入る。血殺団機兵たちは一時間ほどで壊滅し、降伏した。
「幹部はいるか」
「
橙瑠の司令官は残念そうに語る。私は次の命令を下した。
「よし、ならば内部を捜索せよ。樺原を捕らえるまで警戒を解くな」
「はい!」
しばらくの無言が広がる。その無言に終わりを告げるように、橙瑠の第三中隊長がとある小部屋に穴を見つけたと報告した。
「よし、穴を探索せよ」
「はい!」
一分十数秒のノイズのあと、小隊長は報告した。
「樺原以下教団幹部十六名を発見、検挙しました!」
「本当か?」
「はい!確認完了しました!」
「よし、護送船に乗せる。接続扉まで幹部を護送しろ。接続扉に護送船をつけさせる
まで接続扉で待機だ」
「はい」
私は艦隊の護送船に接続扉への接舷を命じる。護送船はすぐに接舷し、樺原以下十七名の確保を伝達した。揚陸艦からも兵士の回収を完了したと連絡が入る。私は艦隊に命じた。
「よし、第八艦隊司令部に向かう。全艦、重力航法セット!」
「セット完了!」
「重力航法開始!」
数秒の後、艦隊は第八艦隊司令部前に着いていた。護送船を第八艦隊司令部に入港させ、警察に樺原以下教団幹部十七名を引き渡す。
「ご協力ありがとうございました」
組織犯罪対策課の警察官が去ったのを見て、私は第八艦隊司令部に橙瑠艦隊を入港させる許可を申請した。
「鈴木提督、入港許可を頂けないでしょうか」
「利久村提督、入港を許可する」
第八艦隊司令部からの応答に、私は感極まる思いで応じる。
「ありがとうございます」
「橙瑠艦隊司令官と第一九三日出丸船長、そして鹿波副提督と利久村提督は功一等艦隊勲章の授章式スピーチを考えるように。任務完遂、おめでとう」
橙瑠艦隊と第一九三日出丸は第八艦隊司令部に入港し、式典開始まで自由行動の許可が出された。橙瑠の兵士たちが仮眠室に詰めかける中、私は鹿波と一緒にラウンジに向かった。コーヒーが飲みたかったからである。
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