突入開始

「突入艇、下ろせ!」


 私の指示とともに、橙瑠の揚陸艦二二隻が船体側面に備えた発進ドックから突入艇を下ろしていく。突入艇は一糸乱れぬ隊伍を組んで、本堂の外壁に開いた破孔から本堂へと入っていった。第一九三日出丸は上陸部隊の指揮を執るため、本堂に接近する。内部で戦闘が始まったという報告を待っていると、第一戦闘艦群が敵艦隊を撃破したという報告が舞い込んだ。


「提督、どうされますか?自分は本堂周辺を封鎖するべきかと」


「その意見、採用する。第一戦闘艦群、重力航法を開始せよ」


 私は鹿波の意見具申を取り入れ、第一戦闘艦群を本堂周辺へ展開するよう指示した。


「要塞内部より報告、戦車を含む全戦力を降ろし終えたそうです」


 その報告が入ってわずか一分後、第一戦闘艦群が展開している最中に上陸部隊から慌ただしい報告が始まった。


「こちら第六中隊、敵戦力と交戦を開始せり」


「こちら第八中隊、現在通気ダクトから襲撃を受けつつあり。すでに三人を射殺せり」


「こちら第一九三日出丸了解。全部隊に連絡、敵から通気ダクトなどを通じた奇襲を受ける可能性あり。十分に注意されたし」


 私がそう言うと、第一中隊からすぐに報告が飛んでくる。


「敵奇襲部隊の撃退に成功。第一防衛線を突破せり。これより戦車を先行させ、指導者の捜索を開始する」


「こちら司令部了解、十分に注意しつつ攻略に当たられたし」


「第一中隊了解」


 連絡が終わると、鹿波は窓をじっと凝視していた。


「どうした」


「本堂の内部に何か光るものが見えました」


「どこの破孔からだ?」


「八十番砲塔……の残骸のあたりです」


「となると本艇のまさに正面……」


 私は熱源確認装置で砲塔周辺を見る。そこには何か砲塔にあったものとは別のエネルギーパックらしきものが運ばれてきていた。明らかに人の動きだ。


「まずい!船長、八十番砲塔に機関砲を向ける準備をしてください!それからいつでも急降下できる準備を!鹿波、八十番砲塔周辺にいるかどうかをすべての上陸部隊に確認しろ!」


「了解!こちら司令部、八十番砲塔周辺にいる部隊は応答せよ」


 普段は一秒で返答があるはずだが、数秒しても応答はなかった。私は即座に船長に指示する。


「機関砲及び機関銃で八十番砲塔を射撃してください!」


「わかりました」


 機関銃と機関砲が火を吹くと、エネルギーパックのものらしい爆発が発生し残骸が飛び散った。そして「光るもの」が正体を現す。それは大型の機動対艦狙撃砲だった。しかも、まだ生きている。


「敵狙撃砲、撃ってきます!」


 銃手が大声で叫び、操舵手が艇首を下げて回避行動を取る。敵狙撃砲の一発目は艦首上方を通り過ぎ、二発目が飛んでくる前に銃手は機関砲を狙撃砲に向けた。


「機関砲射撃許可を」


「わかった」


 機関砲が激しく火を吐き、狙撃砲の周辺に次々とエネルギーが着弾する。エネルギーは狙撃砲の砲身を割ったようだった。


「敵狙撃砲、破損した模様!」


 ほっと胸をなでおろす間もなく、探信儀は次なる脅威を捉えたと叫ぶ。


「警報、敵機」


 機銃は敵を捕捉し、周辺の揚陸艦群と護衛艦群は素早く密集した。そして第一九三日出丸は回避行動の惰性で密集に遅れ、ただ一隻要塞の前に取り残された。


「敵機、攻撃圏内まであと五十秒」

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