第8話 風に吹かれた写真(彩霞視点)
この写真はなんだろう?少しずつ暗くなっていく海を前に彩霞は手を見つめていた。
「風に乗って私の手に降りてきたこの写真はなんだろう……結構古い感じはするけれど……誰かが持ってて落としちゃったりしたのかな?」そう思いながら彩霞は海を後にした。家に帰り彩霞はあまり好きでもない姉に仕方なく話しかける。
「ねぇ瑠々華。この写真知らない?昨日の写生大会で拾ったんだけど。」
「私は知らないわよ?だってうちの生徒はみんなほぼ初心者で今回の学年が入ってこなかったら廃部寸前だったことも彩霞は知ってるでしょ?だからそんな古い写真私が、持ってないってことは私たちの学校のものじゃないってこと。」
「じゃあ違うか……ごめん瑠々華。」
「そういえばあんたが私に話しかけるなんて珍しいね。お母さんとお父さんが亡くなってから私のこと嫌いになったくせに。」
「今回はしょうがないの。ダメダメな姉は嫌なの。話しかけてこないでね。」
そう言いながら彩霞は自分の部屋に走りこんで行った。そういえば。お姉ちゃんの学校の子と仲良くなったんだっけ。
名前は三角 奈桜ちゃんで唯一写真の知識がある子だったかな。その子なら一応分かるかもしれない……
と思って私は交換したばかりのLANEを開く。
「こないだLANEを交換した彩霞です。突然ですみません。写生大会のとき拾った写真があるのですが、そうとう古いように見えます。三角さんは見覚えがありますか?」とLANEを送る。すぐ既読がつき、返信が来た。「確かに古いように見えますね。もし幽霊関連なら霊感ある友達がいるので、できれば写真を貸していただけることは出来ますか?」「全然大丈夫です。」
LANEのやり取りが終わり、次の日の昼に海が見える岡公園のバラ園で三角さんと会うことになった。
次の日の昼。私は展望台の椅子で待っていた。待ち合わせ時間より10分早く来てしまったので展望台の双眼鏡で海を眺めていた。
少し奥を見渡すと、隣町の
周辺の街並みを見ているとふと桜宮市と秋桜市、蒼桜市が
秋桜市が郡の中心としてより栄えて行くのだろうか。色々考えながらぼーとしていたら、後ろから「わっ!」という声と共に誰かが私を脅かした。振り返ると居たのは三角さんだった。もう5分経っていたらしい。
まず、写真を渡し、バラを見ながら部活の話をしていた。「そういえば私の部活10年前?に写真甲子園で最優秀賞を撮ったらしいんだけど、それ以降賞をとったことがなくて…常連校の彩霞ちゃんの学校はなんでそんなに賞とれるの?」「私はとったことないけど先輩が言うには角度や光の反射、カメラの設定、カメラの手入れや点検が大事らしいよ。」それを聞いて三角さんは目をキラキラさせる。
「どうすれば画質が悪いカメラを治せる?」「それって多分カメラ自体が悪いんじゃなくて、設定が悪いんだと思う。カメラの状態を見せてもらえれば分かるんだけど…あっ、ごめんなさい。無理なことを言ってしまって。時間が空いているときにLINEで写真を送ってくれるだけでいいから。」
「原因が分かっただけでもありがたいよ。この写真を返すときにその友達のカメラ持ってくるよ。次いつ会おうか?」「三角さんにお任せするよ。」「じゃあ、解決したらまた連絡するね。」と写真やカメラの話をして三角さんと別れた。
写真解決すればいいんだけど…
顔に水が落ちてきた。急な雨が降ってきたようだ。最初はぽつぽつと降り出していたがすぐにザーと大雨に変化する。「天気予報、雨じゃなかったのにな。そろそろ梅雨なのかな…」と思いながら橋が重なり屋根になっているところに走り込んだ。雨を弾く虹色のビニール傘にカメラを向けた自分がいた。
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