第7話 他の学校と合同大会

 みおんの話を知ってから数日後。

 毎年恒例らしい他校と合同の写真を見せ合う行事がある。今回は凉蘭りょうらん高等学校と近くの海に写真を取りにいくことになった。「うわぁぁすごい綺麗〜」と春香は光に反射する海と透き通って魚がみえる海に感動していた。「うおぉすごいね!」奈桜ちゃんはもうカメラを構えて綺麗な風景を探していた。それを見て朝翔と茉莉は苦笑いをしていた気がするが。「他校がいるがいることも忘れてはいけないよ」と美野先生は言う。

「みんな集まって!写真は一人一人の作業だけども協力して場面を切り取ることで綺麗な写真も撮ることができる。だから互いを知ることも大切だ!自己紹介!私たち百合ヶ丘から失礼するよ。音香から時計回りな。」

「えっはい!百合ヶ丘高校1年。2組の春木音香です。写真は初心者なのでいいとり方があったら教えてください!よろしくお願いします。」パチパチと拍手の音がなりながら自己紹介はどんどん進んでいき、凉蘭高校の生徒へとバトンタッチしていく。

「凉蘭高校 1年。一条 零斗です。モノクロ写真が好きです。他校に迷惑をかけないよう過ごして行きたいと思います。よろしくお願いします。」茉莉は違和感を感じた。

 朝翔にこそっと小さい声で声をかける。

「一条ってさ朝翔の名字じゃなかった?朝翔ってお兄ちゃんとかっていたっけ?」

 朝翔は言う。「俺には弟がいたんだ。多分もう茉莉はわかってると思うけど、一条 零斗は俺の弟だよ。幽霊は特殊な人にしか見えないから、弟には見えてないけどどうにかなんか伝えたい。」「そっかぁじゃあうちが頑張って零斗さんに接触してみるよ。」「ありがとう。」

「同じく1年。夕凪ゆうなぎ 未來みらい。同学年で1番写真を撮ることに慣れています。夢は写真集を作ることです。よろしくお願いします〜」「夢は今回に関係ないだろ!みらい。」「うるさいなぁ零斗。」

「静かに。」と向こうの先生が注意していたけども夕凪さん?と一条さん仲良いのかな?なんか楽しそうだなぁみてて微笑ましいというか。

「1年。美野みの 彩霞あやかです。百合ヶ丘高校の教師の姉がお世話になっています。姉と違って写真に向き合ってきたので今回結果を残したいと思います。よろしくお願いします。」

 なんか彩霞ちゃんはクールでキリッとしている雰囲気が出てきた。他にも凉蘭高校は1年生5人、2年生2人、3年生3人と人数が結構いた。また彩霞ちゃんのことを見ていると、やっぱり姉である美野先生となんかあったのかな?と澪は思っていたところに先生が、違和感なくみんなを集める。

「これでは写生大会in海を開催したいと思う。開催の笛を鳴らしたら少し百合ヶ丘の生徒は私のところに集合な。それでは!」ピ-

「んで先生なんですか?妹さんのことですか?」と澪はすぐ先生に聞く。

「まぁ、そうなんだが、まぁ見ての通り妹彩霞はなんか私をやたら恨んでてな。優しくやってくれ。」「「はーい」」「てゆうかネーミングセンス終わってませんか?先生。」

「奈桜。今私が考えたんだからそりゃそうだろ。まぁ、気にすんな!みんないい写真撮ってこいよ!」

 まず澪は貝を探しているようだった。

「何してるの?」と私が話しかけるとみおんは「海の綺麗な水色を引き立たせてより透き通ってみえる水色の貝を探してるんだァ〜」

 それを聞いて音香は「わたしも探すよ!」とノリノリだった。「ねぇ。今日も本持ってきたの?」とペンダントを握りしめながら音香から本をめくっていた。このまま貝集めだけで終わらないといいんだが……

 

 一方茉莉と朝翔は零斗たちに接触しようとしていた。「一条さん。どこを撮ろうとしているんですか?」「あっ百合ヶ丘のすみません。お名前もう一度聞いてよろしいですか?僕名前を覚えるの苦手で。」「うちは花宮 茉莉と言います。」「ありがとうございます。さっきの質問に答えさせていただくと、モノクロ写真は光の当たり具合に左右されやすいので、光が綺麗な場所、岩の裏を撮ろうと思っているんです。」「そうなんですね〜私写真はあまり詳しくなくて。よければ教えてくれませんか?」「僕でよければよろしくお願いします。」「写真は……」

 朝翔は2人を見ながら生きているときの事を思い出していた。急に俺が死んで。弟に迷惑かけて。弟はどう思っているのかなぁ……ここの海は昔よくお母さんに連れられて一緒に写真撮ったよなぁ……懐かしいな……あのときの景色と同じ写真を撮れたら……零斗も思い出してくれるかなぁ?


 茉莉は零斗と一緒に写真を撮る場所を探していた。そのとき茉莉は朝翔の変化に気づいていた。探すふりをしながら朝翔に話しかける。朝翔は昔この海で写真を撮ったこと。

 撮った場所がウッドデッキ?の上から眺めながら撮ったことを伝えた。

 けれどウッドデッキの場所が思い出せないという。茉莉は決心した。いつも朝翔に助けてばかりだから私が役に立つことを。

「一条さん。ウッドデッキの場所って知ってます?私の亡くなってしまった友人から聞いたんですが。その亡くなってしまった友人に渡したいんです。」「ウッドデッキの場所ね……小さいときに行ったから曖昧だけど。どうゆう写真を撮りたいのかにも関わってくるから、申し訳ないけど、その亡くなってしまった友人ってどうゆう子なんだい?」「ピアノが上手で優しくて人より感情、自然の感じ方が敏感で。良い友達でした。」「それってまさか一条 朝翔ってゆうかな?」

「そうです。すみません。亡くなった兄の話なんて。」「大丈夫だよ。その代わりほら。君のおかげでウッドデッキの場所まで辿りつけたよ。」

 ウッドデッキの影が海に反射していい雰囲気をしている。落ちそうな日は海を照らし、海も輝いているようにみえる。影を写しながら撮る海はなんか寂しさも滲み出ているような気がする。零斗がシャッターを押し、写真を見るとそこには2つのはずの影が3つになっていた。「朝翔?」と自然と声が零れてしまう。零斗の零は感情、愛が零れるほどの人になって欲しいという願いが。朝翔の朝は朝日のような人を照らすという光に向かって走って欲しいという願いが込められている。

 朝と反対の夕日に照らされて、なぜか朝翔が見えた零斗は朝翔が亡くなったときの悲しみと同時に涙が零れていた。なぜか触れられない体に現実を感じてしまった。けれど朝翔は見ているそんな気がしながら頭を撫でた。

 それを見ながら夕凪 未來は「零斗は抱え込み過ぎなんだよ。」と今までを見てきたかのような表情で遠くから見守っていた。

 零斗は10枚の写真を破いて誰にも知られることのなく海に捨てた。零斗は思った。「僕はこんな写真に引っ張られたくない。」


 写真大会が終わり、写真を集めて写真集にし、文化祭で売ることになった。澪と音香は貝を集めるだけでほぼ終わり、残り5分の先生の声で焦りながら写真をとる形になった。

 奈桜はいつの間に彩霞と仲が良くなり2人で1番多く綺麗な写真を撮っていた。

 撮りすぎて絞れよと先生に言われていた。

 彩霞は先生を見ながらうっすらと笑顔を浮かべていた。奈緒はそれに気づいていた。

 写真はみんなを写す。集合写真を撮って終わった写真大会は他校との結びつきが強くなったと言えるでしょう。この結び目は本の内容に関わってくるのでしょうか。

 バラバラになった写真がなぜか繋がってヒラヒラと風にのって彩霞の手にのった。

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