第6話 澪の宝石
次の日の放課後。部活の時間。
奈桜ちゃんからみおんの話を聞いた。
松村 澪の姉、松村 玲奈は小さい時私と同じマンションだった。玲奈さんは私にとって憧れの存在であり、手の届かない人でもあった。ある日私は玲奈さんが交通事故に巻き込まれたという話を聞いた。その時私はショックで立ち直れなかったが、玲奈さんに会いに行った時無傷だと聞いて安堵した。
その数日後。私は玲奈さんが交通事故にあった横断歩道の前で噂と同じの制服姿の少女を見かけた。その少女に傘を返してくれないか。と言われた。私はその時、玲奈さんなら…とそのまま傘を渡した。
隣の部屋のお姉さんが玲奈さんを庇ったということでお礼のお見舞いに行こうとしたのだが、お姉さんは意識不明の重体だった。
意識を取り戻してからお見舞いに行こう。
そう思ったのだけれども、父の転勤が決まり、お見舞いに行くこともなく引っ越すことになってしまった。
そのお姉さんの名前は…
なんとあの図書館の幽霊。水雫さんだったのだ。私たちは驚いた。それだと辻褄が合わない。水雫さんだと中学生のときに死んだはずなのに、高校生のときに交通事故にあって意識不明の重体になることになる。
同性同名ならまだしも、隣の地区だ。水雫さんも何かあるのか?今ここに水雫さんはいない。この話は今度聞くことにしよう。
奈桜ちゃんは続けてこう言った。
転勤が多いから状態も分からずここまで過ごしてきた。丁度転勤場所が地元で、転校先にいた澪を見て水雫さんのことを聞こうと思った。けれどなぜか聞こうとしても声をかける前にすぐどこかへ行ってしまう…
多分みんなに知られたくなかったし、その事を思い出したくなかったんだと思う。
その本のことが本当ならば、澪は……
多分目の前で友達が死んでしまったんだと……ここら辺は本人から聞いた方がいいと思う。そんな話を聞いてから次の日。
みおんは学校に来た。おはようといつものように挨拶をする。普通に何も無かったかのようにおはよう(*^^*)と言ってくれる。
けれど一昨日のことなんだけど……と話を聞こうとしてもみおん自身がそういえばさと話をすぐ変えてくる。
部活の時間。先生が居ないので、3回目になるけれど聞くことにした。「みおんじゃなくて澪。私澪のこと知りたいんだ。私たちに話したくないなら話さなくていいよ。そういうのもあるよね。けどさ私もう1回言うけど澪のこと知りたいんだ。お願い。いつまでも待つから、話して欲しい。」
「そこまで言うなら……」と澪は話し始めた。
「私はね。昔友達がいたんだ。歳がすごい離れた友達がさ。名前はね
私がお姉ちゃんと喧嘩したときにさなにも考えずに外に飛び出しちゃったときがあってさ。1人で公園で目を真っ赤にさせながらブランコをこいでたんだよね。そしたらさ風羽ちゃんがさ私に声を震えさせながら声をかけてくれて。
「どうしたの?はぐれちゃったの?お名前は?」って言ってくれてさ。
私はそのときすごいパニクってたからさ優しそうなお姉さんが勇気を出して声をかけてくれただけで嬉しすぎて泣き出しちゃったんだよね。泣きながら「私は澪ってゆうの。」って言えたんだ。そしてお姉さんは「私は湊 風羽ってゆうんだ。下の名前は風に羽って書いてふわだよ。」って丁寧に言ってくれたんだ。その時の私は幼稚園生で漢字とか分からなかったけれど、天使のように優しい人なんだなとすぐにこの言葉で気づいた。
そのあとお姉さんは私が泣き止むまでゆっくり一緒に話してくれた。お姉さんのこととか私のこととか。
私の事情を話すとお姉さんは私の家まで連れて行ってくれて、本当に何回も言うけど優しかった。あんまり私と自分から喋ってくれない玲奈お姉ちゃんとは全然違うなと思ったけれど、私が話しかけると遊んでくれるからいい方なんだなとあとあと気づくことになる。
別れる前にお姉さんに私は言った。「友達になってくれませんか?」お姉さんは微笑みながら了承してくれた。
それから私は風羽ちゃんと遊ぶことになった。風羽ちゃんは高校生だけれど私が高校まで行くとすぐ気づいてくれて、唯一の友達にも私の本当の兄弟じゃないけど私の妹!というくらい私のことを大切にしてくれた。
しかし、ある日起きてしまった。その日は雨だった。
門の前の横断歩道の向こうにいつもどうり待とうとしたが、この日は遅れて着いた。風羽ちゃんは友達と話していたが、横断歩道の向こうにいる私にすぐ気づいた。「あっ。澪ちゃんー」と手を振ってくれた。じゃあねーと友達に手をふりながら横断歩道を渡っていた。
私は話しかけた。「そういえばさ……」
風羽ちゃんは止まって振り返った。「えっ何か言った?」その瞬間後ろから猛スピードでトラックが風羽ちゃんを轢いた。
一瞬の出来事過ぎて私は少し動けなかった。
風羽ちゃんのところへ行き、私は叫んだ。
「風羽お姉さんしっかりして!!おねがい動いて……おねがい。おねがい!!」
風羽お姉さんはこんな状態なのに私に言った。「傘をささないでどうしたの?澪ちゃん。風邪ひいちゃうよ?私は大丈夫だから安心して。これあげるよ。澪ちゃんの瞳の中心の黒に隠れている青にそっくりな宝石だよ。私のお守り。澪ちゃん大切にしてね。澪ちゃんが居れば私は死なないからさ。大丈夫だよ。傘どこいっちゃったかなぁ……」と薄く涙を流しながら、苦笑いをして風羽お姉さんは目を閉じた。「お姉さんーーー!!!!」
私は必死にお姉さんの名前を言ったけれどもう目を開けることはなかった。
「ほら。これがその宝石」と澪はいつも付けていたネックレスを見せてくれた。凄く綺麗で澄んでいる青色の宝石だった。
そして話は続く。「そのあと私は横断歩道が怖くなったんだ。たまに横断歩道を見ると思い出して怖くなっちゃうんだ。あの時いえなかったけれど横断歩道の前で立ち尽くしてたでしょ?あれそういう事なんだよね。」とよく見ると少し涙を浮かべていた。
「あれから4年が経ってさ、学校から帰ってきたらお母さんがすごい焦って泣いていて、どうしたの?ってお母さんに言う前にお母さんが言ったんだ。「お姉ちゃんがあの横断歩道でトラックに轢かれそうになった。」
その言葉を聞いた瞬間が目の前が真っ暗になったのかと思った。風羽ちゃんだけじゃなくあの横断歩道はお姉ちゃんまで奪うのかと。
すぐ病院に向かったよ。お姉ちゃんは軽傷だったけれど、お姉ちゃんを庇った隣人の友達は意識不明の重体だった。お姉ちゃんが生きていたのは嬉しかったけれど、結構仲の良かった水雫さんが意識不明なんてもう嫌になった。その日から1週間家から出られなくなった。より横断歩道の恐怖が強くなり、一時期心療内科に行くこともあった。PTSDに近い症状らしく。カウンセリングを受けたこともあった。あのときよりかは横断歩道を見てのフラッシュバックの頻度が低くはなったけれどたまに思い出しちゃうんだよね。前にさ音香から水雫ってゆう名前を聞いた時驚いたもん。あの時の水雫さんなんじゃないかって。
けれど中学校の事故で死んだ幽霊とか言うからさ、違う人なんだろうけど凄く運命を感じるなとか思っちゃったんだよね。けどさよく言うじゃん?世界に自分と似ている人が3人くらいいるってさ。だから少し希望を持ったんだよ。あのあと私は病院に行ってないし、お姉ちゃんもあんなことがあったから私に一切話さないんだけど、水雫さんが生きてるんじゃないかって。これからもこの宝石を大事にしたいんだよね。風羽さんのことを忘れないように。」
深呼吸をしてから澪は言った。「本当にごめんね。音香、茉莉、奈桜、朝翔。奈桜、特にごめんなさい。昔遊んだことあるのに避けてばかりで。本当にごめんなさい。音香、私ねあの本を見てしまったの。みんなは文字が滲んで見えないって話をしてたけれど私は見えてたの。そこのところもごめんなさい。
あの話を見て、風羽ちゃんはこの世に未練があるのかもしれない。だから今度茉莉。手伝ってくれないかな?私じゃ幽霊は見えないから。風羽ちゃんと話せばなんとかなるかもしれない。」と夕日の光に照らされながら笑顔で最後に話した。
茉莉は「いいよ!それくらいお手の物さ!」と任せて!って感じでグッと手の形で澪に表していた。奈桜ちゃんは「大丈夫だよ。そうゆうのは誰にでもあるからさ。これから仲良くしてね。」と頭を撫でた。私は泣いている澪に抱きつき、「ありがとう。言うの辛かったかもしれないけれど、話してくれてありがとう。これからも巻き込んじゃうかもしれないけれどよろしくね。」と言った。
夕日の光が澪の宝石に反射して宝石が輝いた。その日の夕日は私たちを包んでくれているように感じた。
追記✄--------------✄
更新遅くなってすみません。
この話はわたし的に大切にしたくて時間がかかりました!この話は伏線回収もりもりなので他の話を読み返すことを作者的にオススメします。読者のみなさんいつも読んでくれてありがとうございます。終わりの雰囲気を醸し出していますがまだ物語は続きますので引き継ぎ読んでくれると嬉しいです。
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