第2話 雨の横断歩道。

 秋桜市の怪異の本の目次を開くと、1話目は雨の横断歩道で、前回と同じで章数のタイトルは記されて居なかった。

 みおんはそろそろ吹奏楽の部活体験がはじまるそうなので、音楽室に向かった。

 私はページを進めた。


『雨の横断歩道』

 雨の日はジメジメして、雲が暗くて分厚くて

 気持ちまで、体調まで天気と一緒に悪くなってしまう。私の学校だけではなく近所の小学校。中学校まで一時広がったある怪異の話。

 百合ヶ丘高校の門の前にはあまり使わない登校用の横断歩道がある。

 学校側ではないその横断歩道を渡った先の歩道の近くにある標識の下には花束が前から置いて事故については数少ない人がしっている。花束は高校の生徒の目につかないようにに標識の影と歩道ブロックで見えないように

 ひっそりと置かれていた。


 私は数少ない人の1人で、私くらいの歳の子が雨の日門の前で友達と喋っていた。

 その子は近所だったのでみんなが使わない横断歩道を渡ろうとする珍しい子だった。

 渡ろうとしている途中、友達はその子に話しかけた。その瞬間。傘が雨で見えなかったのか、それともその子の不注意が原因なのか、雨にさえぎられて聞こえなかった友の話を聞こうとして少女は後ろを振り向いた。

 鮮やかなドーム型の水色がかった傘は宙を舞い、ビニールの白が血の赤に染まり、傘だけポトッと友達の方の歩道へ落ち少女は反対側の道路にとばされた。よくここを通るトラックに跳ねられたのだった。

あとの警察の話からするといつも誰も通らないし、止まる必要はないと思った。雨で傘も少女も見えなかったから分からなかったと言っていたようだ。

 雨の日。自分の傘に似たものを持った女子生徒。または赤い鮮やかな傘を持っている友達に似た女子生徒に制服姿の少女は話しかける。そして少女はこう言う。

「それ私の傘?持ってきてくれたんだ。嬉しい。私に返してくれないかな?」と。

「いいよ。」と言うと女の子が満面の笑みで

 笑ってくれて「ありがとう。」と言い残してそのまま歩いて去ってくれるらしい。

 しかし、「え?これ私のなんだけど」とか

「間違いじゃない?」など拒否する言葉を言うと少女は最初「ごめんね。私の見間違いだったみたい。」と去ってくれるように思うが、

 その持ち主が後ろを向いた瞬間。その少女が背中を押して何かに轢かれ、少女と同じ末路を辿るらしい。



 その噂が広まった時、優等生で誰にでも優しく接する近所でも評判のいい高一の少女がいた。

 マンションの隣の子は小学二年生ですごく仲が良かった。その小二の女の子 三角みかど 奈桜なおは優等生の女の子 松村まつむら 玲奈れいなに憧れていた。

 奈桜は玲奈ちゃんのような優しい女の子になるんだ!とか玲奈ちゃんならこうすると思うから!などよく言っていたという。

 しかし、玲奈は家ではすごいずぼらで口調も悪く、礼儀正しくない少女だった。

 玲奈の母親もよく同じマンションの人に娘の玲奈ちゃん凄いわねぇ。偉いわねぇ私の娘も見習って欲しわぁ。など褒めてもらえるが家の娘を見ていると信じ難いと思ってしまうとよく言っていた。

「玲奈。今日も褒めてもらったけど、本当にあなた外では優等生なの?いい事だと思うけど、家の中でも少しは行動を見せて欲しいな。」と母親は玲奈が帰ってきたあと言っていた。

 玲奈は優等生になればいいことが増えると思っていた。そしてお母さんにも、お父さんにも認められると思っていた。とよく私に相談してきてくれた。私の前だけでは本当の玲奈を見せてくれる。

 噂が広がって、ついには玲奈と私が住んでいるマンションでも知ってる人が増えてきた。

 玲奈はそんなのあるわけないじゃん。

 と私と話している時そう言っていた。


 そんなことを話していた雨の日。

 私たちは本当にあの少女を見ることになった。私は黒の星が散りばめられた傘を差していた。玲奈はドーム型の鮮やかなトマトが印刷されていた傘を差していた。

 この傘は一緒に買い物に行った時に買った傘だ。私はこの傘を見た瞬間。玲奈はケチャラーなのですごい喜ぶと思った。なので、すぐ呼んだら玲奈は、すごく可愛ぃぃと言って買っていた。私があの傘を見つけなければ。

 その日。横断歩道にあの噂の少女が居たのだ。周りの人には見えていないらしく、私たち2人にしか見えていなかった。

 少女は玲奈に話しかけた。

「それ私の傘?持ってきてくれたんだ澪。嬉しいなぁ。私に返してくれない?何回もね私疲れてるか分からないけどさ色々な人の傘を間違って私の傘だと勘違いして持って帰っちゃったんだよね。大丈夫。きちんと返してあげたから。澪。渡してくれるよね?」

 玲奈は周りを見まわして誰もいないか確認をしてからこう言った。

「澪?誰それ。私玲奈。これは貴方の傘じゃないわ。私の傘よ。あなたの言った通りまだ疲れてるんじゃないの?」

「そうなのかもね。ごめん。それじゃあさようなら。」

 私は叫んだ。「玲奈危ない!!」

「え??」

 少女は微笑んでいた。玲奈の傘を持って。

「やっと戻ってきた。私の傘。

 澪にほんとそっくりね玲奈ちゃん。」と玲奈の横で呟いているような気がした。

 「玲奈…」と言ってから私の視界がぼやけていき、徐々に暗くなっていった。


 私は玲奈を庇った。あの少女が玲奈を押したとき奥から車がすごいスピードで来ていることがわかった。

 私は玲奈を押した。けれど私の押した力が弱くてあまり飛ばせなかった。

 私は意識不明の重体で1ヶ月間目を覚まさなかったらしい。玲奈はあのとき押したおかげであたりどころがよかったらしくほぼ無傷だった。


 玲奈は私のせいだ。と言っていつもお見舞いに来てくれていたようだ。

 私は玲奈が生きてればいいんだよ。と言ったら玲奈が泣いちゃった。


 あのあと三角ちゃんから聞いたんだけど、

 三角ちゃんもあの少女と会ったんだって。

 けど玲奈ちゃんならこうするって行動したから助かったって。玲奈ちゃんのおかげだって言ってた。


 玲奈は本当にすごい優等生で私に素直に見せてくれる性格はちょっと悪いけど、

 最高の親友で、人に認められる子なんだよ。と玲奈に直接言ったら喜んでくれた。


 私は雨の横断歩道の話を読み終えた。

 結構締めがしっかりしてないよなぁ。

 そして、なんで玲奈ちゃんの苗字とあの少女が言っていた玲奈ちゃんに似ている子の名前が文字が滲んでいて見えないんだろ?

 私はそう思いながら茉莉のところへ向かった。






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