1年

〈ユア視点〉







窓を開けて掃除機をかけていると

相馬先生がご機嫌斜めに出勤してきた





ソウマ「あーッ!中までシミになってるよ」




「おはようございます…溢したんですか?」





先生は診察室に入ると白衣を脱いで

中のシャツについた茶色シミを

ティッシュで拭いていた





ソウマ「そこの廊下で

  コーヒーを持った事務長とぶつかったんだよ…」





ブチブチと文句をこぼしている

相馬先生を見ながら

今日はミスをしたら怖そうだなと思った





ソウマ「あー白衣・・・結愛君!!」





ミスをする前に既に機嫌悪く名前を呼ばれて

「ハイ…」と返事をすると





ソウマ「君の彼氏は

  いつになったら白衣を返すんですか?

  今すぐ取ってきなさい!!」





相馬先生の機嫌の悪さに頬を引き攣らせながら

「ハイッ」と返事をして

診察室から逃げるように出て行った




( 三好先生まだ返してなかったんだ… )




私が先生の白衣を土で汚してから

3週間近く経っているのに

まだ返していなかったんだと

心の中でため息を吐いた…





診察室の扉は開いていて中を覗くが

三好先生の姿はない…





(白衣持って戻らないとまた叱られるよ…)





「失礼します」と小声で言ってから

診察室の中に入り相馬先生の白衣を探すが

見当たらず「はぁー」と言いながら

診察室の壁にかけてあるカレンダーに目を止めた





(3月のままだ…)





今日から4月で壁のカレンダーが

まだ3月のままになっている事に気づき

一枚めくってあげた…





「・・・1年…か…」




ミヨシ「お前がこの病院に来てから1年経ったな」





振り向くと三好先生が立っていて

「どうした」といいながら近づいてきた





「・・・・・」





ミヨシ「なんだ?」





「いえ、相馬先生が白衣を…返してくださいって…」





ミヨシ「・・・返せってキレてんだな…」





三好先生は「あいつのどれだ?」と言いながら

ロッカーの中の白衣を見ている






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