飛鳥

〈アスカ視点〉










タイチ「飛鳥!お前の働いている病院って

  医療事務募集してない?」




大学時代の友人である大智から

急に連絡が入り、事務長に確認すると

「増員してもいいかもな」と意外にも

好感触の返答で大智に伝えると喜んでいた





タイチ「いやーホント助かったよー!!

  結愛の奴、内定取り消しにあっても向こうで

  仕事探すなんて言ってるからさ!」





アスカ「何か問題でもあるのか?」




タイチ「アッチの男と結婚なんかしたらコッチに

  帰ってこなくなるじゃないかー!!」




アスカ「なんだ、シスコン事情かよ!笑」




タイチ「シッ…シスコン??俺が?」




アスカ「あぁー!なんだ妹はそんなに可愛いのか?」




タイチ「結愛??・・・可愛い方かもな?」




アスカ「ほら!シスコンだよ!笑」





なんて居酒屋で話していたが…

大智の妹を初めて見たのは

面接に来ていた時だった

大智に似てヒョウキンな性格

なのかと思っていたが

兄とは全然違うタイプだった…





なんていうか…陽気な感じをイメージしていたから

結愛ちゃんを見た時は妙に大人っぽく感じた



彼女はクリッとした目をしているが

愛嬌のあるタイプには見えず

顔の表情筋も最低限しか使っていないような…

よく言えばクールな女の子に見え

悪くいえば、無愛想だった…





彼女が入社してからしばらくすると

結愛ちゃんについての噂を

病院のアチコチで耳にした


【都会ぶってて生意気】


【ツンとしていて可愛くない】


【医療事務の資格もってても全然仕事できない】




だとか…

まぁー結愛ちゃんの垢抜けてる見た目に

嫉妬してる部分も少なからずあるんだろうけど…



そしてその後、直ぐに耳にした噂が

精神科の三好先生に毎日怒鳴られているだった…

さすがに心配になって事務長の所に行ったら





事「いやー・・なんか色々あったみたいで?

  医療事務はしょうがないよな??

  うちの病院まだ紙のカルテだし…

  だけど近々今いる整形の乃木先生が退職して

  新しいドクターが来る予定なんだけど

  その先生は電子カルテ希望だから

  結愛ちゃんが必要なんだよね…

  辞めたいとか言い出したら止めてくれよ?」





(止めてくれよって・・話した事もないのに…)





当番医の日に遅れた昼食を食べようと

休憩室に行くと結愛ちゃんが机に

うつ伏せになって寝ていたから…




(誰もいないし話でも聞いてみるか…)




と彼女のいる席の椅子を引くと

椅子同士がぶつかり目を覚ました彼女は

俺を少し警戒するような目で見ていた…


 


大智の名前を出すと

少し安心したのか話し出してくれたが…





「はい…いい人ばかりで…」




アスカ「プッ・・」





彼女が受付の事務員から

イジメのようなものにあってる事は

病院中の噂だっていうのに

いい人ばかりでと言う

結愛ちゃんが可笑しく思えた





「・・・三好先生から怒られてることまで…

  知ってるんですね…」





ふとドアが少し開いてる事に気づいて

人が立っているのが見え…





「・・・・三好先生は…苦手です」





マズイと思った…ドアから少し見えてる

カーキ色のクロックスは三好先生がよく履いている

物にソックリだったから…





アスカ「患者さんにはすっごく優しいんだけどね~」




「患者さんにも…あぁだったら…誰も来ませんよ」





なんとかいい感じの話にと思ったけど

三好先生への印象はだいぶ悪いようで…




段々と怖くなっていき

もうドアに目線を向けれないでいると


 




「飛鳥さん…あの、折角紹介していただいて

  申し訳ないんですけど…ッ!?」






結愛ちゃんが俺に話してる途中で三好

先生が入って来たからてっきり結愛ちゃんを

噂通りに怒鳴るのかと思ったら

そうでなく、俺は少し拍子抜けをしたが…

先生は明らかに機嫌が悪そうにコッチを見ている





(もしかして俺??フォローしてたよね?)





「失礼します」と頭を下げて出て行く結愛ちゃんに

行かないでくれと内心思いながら見送り

機嫌の悪い三好先生と

休憩室に二人っきりになってしまい

正直気まずくてしょうがない…




アスカ「今日は外来混んでるんですか?」




当たり障りの無い話を振ると

三好先生はソレには答えず

「知り合いか?」と真顔で質問してきた…

一瞬固まり、結愛ちゃんのことかと分かり





アスカ「友人の妹なんですよ!

  彼女のお兄さんから仕事紹介を頼まれて

  紹介したんですけど…大丈夫かなって?」





三好先生は俺から目線を外して

「あぁ」と呟いたあと何かを考えて

そのまま休憩室から出て行った







アスカ「・・・え?・・・」





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