〈ユア視点〉







10時を過ぎてやっと一人来院して

新患登録をしてから外来看護師にカルテを回した





症状的に内科の患者さんだろうと思い

先に点数表を見ながら基本算定分だけでもと

計算しておき、特別大きなミスもなく

患者さんは帰っていき…





午前中はその患者さんだけで休憩に入り

問題なく午前の部が終わりホッとしていた…





受付に誰もいなくなるわけにはいかないので

先輩が先に休憩に入り私が1時間後に交替で

取ることになった





外来の看護師やドクターも食事を取るために

休憩室へ歩いて行き受付はシーンと静まり返った





「・・・ふぅー…」





息を吐き、引き出しから

先日、三好先生から渡された

表のマーカーを引かれていた部分を

まとめたメモ帳を取り出し

パラパラと開いて眺めていた…



 



「デパス・・・エチ…エチゾラム?」





ミヨシ「なんの薬か分かるか?」





いつの間にか受付のカウンターに立っていた

三好先生に驚きビクッと体が揺れた





ミヨシ「エチゾラムはなんの薬だ?」




「えっと……不安な人の…為の…」




ミヨシ「今の回答じゃ減点だな…もっと勉強しろ」





そう言って休憩室へと歩いて行き

心の中でまた、ため息を吐いてから

またメモ帳に視線を戻し薬品名を口ずさんでいく





1ヶ月後には辞めるとしても

このまま…出来ないままで辞めたら

自分でも逃げ出したみたいに感じそうで…





せめて三好先生や先輩達から

これ以上怒られないようにと思い

このメモ帳をまとめていたから…




先輩達の休憩時間も終わり交替で

私も休憩に入り、誰もいない休憩室に

お弁当を持って入った




お弁当を食べ終わりスマホを眺めながら

色々と考えるのが嫌でふと瞼を閉じると

しばらくして椅子のぶつかる音が

聞こえパッと目を開けると

身長の高い男の人が

斜めに前の席に座ろうとしていた





「えっと…」





アスカ「ごめんね、起こしちゃったね?」





クスッと笑いながら席に腰を降ろす

男性を少し不審に思い見上げた




だって休憩室には私たち2人だけで

席は沢山空いているのに何で私と同じ机に

座るのかが謎だったからだ…






アスカ「あーお腹空いたなー

  結愛ちゃんはもう食べ終わったの?」




「はい……えっ??」






名前を言われた事に驚いて

男の人の顔を見ると「ん?」と目を開いて






アスカ「聞いてないかな?

  君のお兄さんとは親しいんだけど」


 


「あっ・・・ここを紹介してくれた…」





アスカ「そう、髙橋 飛鳥だよ

  ここの院内薬局の薬剤師をしてるんだ」




「兄から聞いてます……

  紹介してもらって…ありがとうございます」



 


アスカ「いえいえ…でもやっと会えたね

  休憩室でいつもご飯食べてなかったの?」

 




「・・・・ちょっと…電話とか…してまして…」





アスカ「・・そっか!仕事はどう?楽しい?」





「はい…いい人ばかりで…」





アスカ「プッ・・」





「・・・・・・」






飛鳥さんの笑いで私の現状を

知っているんだとなんとなく分かった…



院内薬局にも調剤補助のスタッフはいるし…

噂好きな女子がそれぞれの部署に1人位は

いそうなものだし…病院中が知ってる気がした






「・・・兄には言わないでください…」





アスカ「・・・分かった!女の子は大変だなー

  それに加えて三好先生じゃそりゃ凹むよな?」





「・・・三好先生から怒られてることまで

  知ってるんですね…」




アスカ「そっちの方が有名かなー?笑」





「・・・・三好先生は…苦手です」





アスカ「患者さんにはすっごく優しいんだけどね~」



 


「患者さんにも…あぁだったら…誰も来ませんよ」





アスカ「結構やられてるみたいだねー…苦笑」





「飛鳥さん…あの、折角紹介していただいて

  申し訳ないんですけど…!?」





辞めようと思うと言いかけたその時

休憩室の扉がバンっと開いて





ミヨシ「受付混んでるみたいだから手伝ってやれ」





と三好先生が不機嫌顔で現れて

ドキッとしたが「混んでる」の言葉に反応して

荷物をまとめて飛鳥さんに

「失礼します」と頭を下げて受付に向かった






受付に戻ると患者さんが数人並んでいて

通常なら「混んでる」なんて呼ばない人数だが

一人でまわすにはキツいと分かりそのまま

三輪先輩の隣で「どうぞ」と対応を始めた





数人を対応をしながら三輪先輩を見ると

本を取り出し何かをチェックしながら

ずっと一つのカルテにかかりっきりだった





(何かあったのかな・・・)





三輪先輩はコッチを手伝えない状況なのが

分かりなんとか一人で

患者応対をしてカルテを運んでいく





通常よりも外来看護師の人数も少なく

看護師達も少しバタついていて

いつもならカルテを回したら直ぐに

受付に戻るが奥の整形外科に患者がいるらしく

看護師がつきっきりになっているようだった





 

看「あ!時任さん!ちょっと石井先生の

  触診の時一緒についててあげて」






と言われ石井先生の診察室に「失礼します」と

声をかけて入ると「洋服を上げて」と

石井先生に言われて触診の間

患者さんの洋服を後ろから持ち上げていた





(・・なるほど・・)




患者さんは若い女性の方で

看護師もいない診察室の中

男性ドクターに洋服をめくられるなんて

患者さんも不安に思うだろう…





診察が終わりカルテも一緒に受け取ってから

受付に戻ると三輪先輩の姿はなく

どうしたんだろうと思ったけれど…

とりあえず、今渡されたカルテの計算を急いだ





処方箋を印刷し患者さんを

呼んでお会計を終わらせると

三輪先輩がカルテを手に戻ってきた




「どうかしたんですか?」




と先輩に近づくと

困り顔でカルテを見せて来た





ミワ「うちの整形はふだん患者さん来ないから…」





カルテを見ると怪我をして

来院した患者さんのようだったが…

ここの病院の整形外科は

私が働き出したこの2ヶ月間

ほとんど患者さんは来院されてなく

整形外科からのカルテを見るのも初めてだった…




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